洋楽ロック・ポップ・ソウルアルバムの世界

1982-1983年のアルバム紹介

アルバム画像をクリックすればAmazonで購入することができます

Thriller / Michael Jackson (1982)

 

80年代を代表するポップアイコンMichael Jacksonの代表作で、全米1位を32週間記録し、全米だけで3000万枚を売り上げ、オリジナルアルバムとしては今もなお売上1位の記録を持つマスターピースです。アルバムから「The Girl Is Mine」(2位)、「Billie Jean」(1位)、「Beat It」(1位)、「Wanna Be Startin Somethin」(5位)、「Human Nature」(7位)、「P・Y・T」(10位)、「Thriller」(4位)と全米Top10ヒットが7曲生まれて、これも記録でした。

Quincy JonesとMichael Jacksonとの緻密なサウンドクリエイトは究極に達していて、ロックやAORといったバラエティ豊かな音でありながら、まとまりがあります。MTV全盛時にムーンウォークが登場した「Billie Jean」のパフォーマンスに、最高のクオリティの「Beat It」「Thriller」のビデオクリップの話題と時代を象徴するエンターテイメントなアルバムです。

★★★★★

 


The Nightfly / Donald Fagen (1982)

   

Steely Danのフロントマン でアメリカはニュージャージーPassaic出身のシンガーソングライターDonald Fagenの初のソロ作品で、全米11位を記録しています。オープニングナンバー「IGY」はシングルヒットこそしていないものの、日本ではCMで流れたこともある80年代の名曲です。

アルバムはSteely Danとは違って豪華ゲストのコラボ色は薄くなりますが、音の緻密さは相変わらず、トータルアルバムはより強くなっています。アルバムは冷戦時代のある雰囲気を伝えたもので、タイトルトラックの「The Nightfly」ではアルバムジャケットのDJがそんな雰囲気を皮肉りながら歌います。アルバムの音の一つ一つが洗練されていて、Steely Danの名盤『Aja』に匹敵するほど完璧なアルバムの一つです。

★★★★


ToTo W / ToTo (1982)

   

アメリカはロサンゼルスで結成されたロックバンドToto4枚目のアルバムで、最高傑作アルバムです。シングル「Rosana」(全米2位)、「Make Believe」(全米30位)「Africa」(全米1位)「I Won't Hold You Back」(全米10位)「Waiting For Your Love」(全米73位)がヒットして、アルバムは全米4位、全米だけで300万枚のセールスを記録しています。82年のGrammy賞でAlbum Of The YearとRecord Of The Year(Rosana)を受賞しています。

アルバムはこれぞAORという代表的なアルバムで、リズムが3段階で変わるロックナンバー「Rosana 」の見事さはToToらしいサウンドです。全米1位を獲得した「Africa」のアフリカンなリズムトラックも匠な感じで、切ないメロディとボーカルの「I Won't Hold You Back」に、グルーブ感が最高な「Waiting for Your Love」など名曲が揃っているAORが好きな人は必須な一枚です。

★★★★

High Adventure / Kenny Loggins (1982)

 

アメリカはワシントン出身のシンガーソングライターKenny Logginsのソロ4枚目のアルバムで、全米13位を記録しています。JourneyのSteve Perryとの共作でノリノリのロックナンバー「Don't Fight It」が全米17位、「Heart To Heart」が全米15位、「Welcome To Heartlight」が全米24位のシングルヒットを生んでいます。

まるで冒険映画のようなジャケットが印象的なアルバムですが、AORファンにはたまらないアルバムで、オープニングの「Don't Fight It」で始まれば、Michael McDonaldとの作品「I Gotta Try」やシングルヒットした「Heart To Heart」(全米15位)といったメロウなAORのナンバーが収録されています。特に「Heart To Heart」はチャート順位では低いもののドラマチックな展開が光る80年代の名曲の一つです。

★★★


If That’s What It Takes / Michael McDonald (1982)

 

Doobie BrothersのボーカルMichael McDonaldのソロ1枚目のアルバムで、「I Keep Forgettin」が全米4位のヒット、Kenny Logginsのアルバムにも収録されている「I Gotta Try」が全米44位のヒットを記録して、アルバムは全米5位のヒットを記録しています。

Michael McDonaldの特徴でもある野太い声とシンセサイザーの作るメロウなサウンドが最高です。シングルヒットした「I Keep Forgettin」は90年代にWarren Gが「Regulate」でサンプリングしてヒット。「I Gotta Try」はKenny Logginsとの共作です。アルバムラストの「Believe In It」は「What A Fool Believes」のフレイバーたっぷりで最初から最後まで楽しめる1枚です。

★★★


The Nylon Curtain / Billy Joel (1982)

   

ニューヨーク出身のシンガーソングライターBilly Joelの8枚目のアルバムで、当時の社会風刺が強い独特の暗さから賛否両論あって全米チャートで7位の順位を記録しています。シングル「Pressure」が全米20位、「Allentown」が全米17位のヒットを記録しています。

アルバムはBeatlesファンのBilly Joelが作ったBeatlesな音がてんこ盛りで、1曲目の「Allentown」がラストの「Where's The Orchestra」で流れるあたりSGTを意識しています。ベトナム戦争を歌った「Goodnight Saigon」(全米56位)や社会問題を歌った「Allentown」は独特の暗い歌詞ですが、Billy Joelらしいメロディラインがバランスを取っています。

★★★


Lionel Richie / Lionel Richie (1982)

 

アメリカはTuskegee出身のソングライターでR&BソウルシンガーのLionel Richieのソロデビューアルバムです。「Endless Love」が大ヒットした後のアルバムということで全米3位、400万枚のセールスを記録しています。

Lionel RichieはGrammy賞を獲った次のアルバム『Can't Slow Down』が代表作として扱われることが多いですが、70年代のディスコサウンド、そしてAORサウンドの香りが残るこのアルバムも素晴らしく一番だと思っています。Lionel Richieの代名詞ともいえるバラードで「Truly」が全米1位、「My Love」が全米5位のヒット。AORチューン「You Are」が全米4位に輝いています。「Truly」は1番しかない衝撃のバラード(サビは1回だけ)。アルバムは全9曲ですが、最後の曲も1番のみ(1分強)というのも凄いです。

★★★



Midnight Love / Marvin Gaye (1982)

   

60年代から70年代と活躍しているアメリカはワシントン出身のシンガーソングライターMarvin Gayeの80年代に発表されたヒットアルバムで、「Sexual Healing」が全米3位のヒットを記録して、アルバムは全米7位で300万枚の売り上げを記録しています。1984年4月1日に父親によって射殺されてしまい、この作品が遺作になっています。

アルバムは「Sexual Healing」のイメージからは想像もつかないほどの創造的な音で、最後の最後まで実験的なものになっています。オープニングの「Midnight Love」というレゲエ、ソウルのごっちゃな音で始まり、シンセサイザーを使った80'sソウルのお手本的な「Sexual Healing」に入るなど、数々の伝説を作り上げたMarvin Gayeらしい80年代の名盤です。

★★★


Blackout / Scorpions (1982)

   

ドイツはHanoverで結成されたハードロックバンドScorpionsの8枚目のアルバムで、全英チャートで11位、全米チャートで10位のヒットを記録しています。

アルバムはジャケットのガッシャーンがあるオープニングの「Blackout」は躍動感あるロックナンバーで、全米で65位のヒットを記録した泣きメロサウンド「No One Like You」も収録されています。全米でこのアルバムがブレイクしたことで、この後「Rock You Like A Hurricane」(84年全米25位)に繋がっていき、ドイツ発のハードロックサウンドとして知られるようになりました。

★★★


Screaming For Vengeance / Judas Priest (1982)

   

イングランドはBirminghamで結成されたヘビーメタルバンドJudas Priestの8枚目のアルバムで、全英チャートで11位、全米チャートで17位(200万枚)を記録。世界では500万枚をも売り上げるヘビーメタルアルバムの名盤です。

アルバムはメカメカしい鳥のジャケットが印象的ですが、曲は唸りを上げるギターサウンドとボーカルに彩られていて、ドライブ感が満載です。「Electric Eye」や「Riding On The Wind」「Scraming For Vengeance」などジャケットの鳥をイメージさせる曲もあって、最初から最後まで一気に聞かせる流れの良さがあります。

★★★★


Night Birds / Shakatak (1982)

   

イングランドはロンドンで結成されたジャズグループShakatakの2枚目のアルバムで、タイトルトラックが全英9位、「Easier Said Than Done」が全英12位、「Streetwalkin」が全英38位のシングルヒットがあり、アルバムは全英チャート4位を記録しています。

Shakatakはお洒落な都会的なサウンドで日本で特に人気があって、80年代に青春を過ごした人にとっては忘れられない音の一つです。代表曲「Night Birds」は都会的なフィーリングにピアノの調べが絡まって、切ないメロディはいかにも日本人好みの憂いあるサウンドです。サックスをフューチャーした「Streetwalkin」、Chic風のカッティングギターが炸裂するファンキーな「Easier Said Than Done」などいつ聞いても楽しめる一枚です。

★★★


Surprise Surprise / Mezzoforte (1982)

   

アイスランドで結成されたJazzフュージョンバンドMezzoforteの1982年に発売された4枚目のアルバムです。「Garden Party」が全英17位のシングルヒットしたことでアルバムは全英チャート23位を記録しています。

アルバムはインストゥルメンタルではありますが、どこかEarth Wind & Fireにも通じるようなR&Bな感じがあります。「Garden Party」「Easy Jack」「Fusion Blues」の3曲はやはりこのアルバムの軸で、「Fusion Blues」のサビメロは色々なところで使われてるFusion Jazzの中でもポップな曲です。

★★★


Colour By Numbers / Culture Club (1983)

   

イングランドはロンドンで結成されたポップバンドCulture Clubの2ndアルバムです。日本盤は「Time」(全米2位)が収録されていますが、オリジナル全米盤は「Karma Chamereon」(全米1位、全英1位)、「Church Of The Poison Mind」(全米10位、全英2位)、「Miss Me Blind」(全米5位)、「It's A Miracle」(全米13位、全英4位)、「Victims」(全英3位)がシングルヒットして、アルバムは全英1位、全米2位を記録しています。

80年代の第2次ブリティッシュインベイジョンの中心となったCulture Clubは女装のボーカリストBoy Georgeを中心にファンキーなラテンサウンドやMotown、フィリーソウル、ゴスペルなどカラフルな音が魅力です。シングルヒットを中心にアルバムは起伏ある展開で、ラストは壮大なバラード「Victims」で締めくくるポップアルバムの傑作です。

★★★★


War / U2 (1983)

   

アイルランドはダブリンで結成されたロックバンドU2の3枚目のアルバムで、全英チャートで1位、全米チャートで12位のヒットとなったブレイク作です。「New Year's Day」が全英2位、全米53位、「Two Hearts Beat As Ones」が全英18位を記録しています。

オープニングの「Sundeay Bloody Sunday」は1972年にアイルランドで起こった事件をエッジの書いたバンドを代表するナンバー。ブレイクのきっかけとなった「New Years Day」はEdgeのジャカジャカとしたギター、Larry Mullen Jrのハードなドラムといったハードロックな音の一方独特の切ないメロディラインが魅力で、U2の名前をMTVと共に一気に広めていきました。

★★★★


Pyromania / Def Leppard (1983)

   

イギリスはShefieldで結成されたハードロックバンド Def Leppardの3枚目のアルバムです。MTV時代においてこれまでハードロックはバッドボーイなイメージがありましたが、Def LeppardはスポーティなイメージのPVからシングル「Photograph」が全米12位、「Rock Of Ages」が全米16位を記録して、アルバムは全英チャート18位、全米チャート2位を記録。全米だけで1000万枚を売り上げるマンモスアルバムとなりました。

アルバムはAC/DCの『Back In Black』のJohn Matt Laungeをプロデューサーに迎えて、ハードながら聞きやすいメロディアスなロックサウンドが展開します。サビでのハモり、コーラスが特に印象に残ります。シングル以外も曲が充実していて、オープニングの「Rock Rock」から流れるような展開が素晴らしいアルバムです。

★★★


Shout At The Devil / Motley Crue (1983)

   

アメリカはカリフォルニアで結成されたヘビーメタルバンド Motley Crueの2ndアルバムで、全米チャートで17位ながら400万枚を売り上げるメガヒットとなっています。

Motley Crueは80年代前半のハードロックらしいKISSを彷彿とさせるビジュアルと当時のロックそのもののバッドボーイな感じがあり、MTVを中心に人気となります。Motley Crueと言えば特にVince Neilの甲高いボーカルやTommy Leeのドラムとパフォーマンスが魅力でした。アルバムからは「Shout At The Devil」と「Looks That Kill」がロックチャートでヒット。Beatlesの「Helter Skelter」のカバーも収録されています。Motley Crueはこのアルバム後シングルヒットも生まれるようになり80年代のハードロックブームの中心として活躍をするようになりました。

★★★


Breakout / Pointer Sisters (1983)

   

アメリカはオークランドで結成された女性3人組ソウルグループPointer Sistersの10名目のアルバムで、「Automatic」が全米5位、「Jump (For My Love)」が全米3位、「I'm So Excited」が全米9位、「Neutron Dance」が全米6位のヒットを記録してアルバムは全米8位、300万枚の売り上げを記録しています。

アルバムは70年代ソウルの伝統と80年代のシンセサイザーサウンドが合わさったものになっています。特徴的なのはシングルヒットした「Automatic」で、Ruth Pointerの低音ボイスから始まるシンセサイザーポップスな1曲。躍動感のあるFlash Dance的な「I'm So Excited」はエンパワーソング。最も70'sソウルな感じのある「Neutron Dance」は人気映画『Beverly Hills Cop』で使用されました。

★★★


Between The Sheets / Isley Brothers (1983)

   

アメリカはオハイオで結成されたR&BバンドIsley Brothersは60年代、70年代と形を変えて活躍し続けていましたが、そんなIsley Brothersが80年代にリリースした22枚目のアルバムで、「Choosey Lover」や「Between The Sheets」がR&Bチャートでヒットしたことを受けて全米19位を記録したアルバムです。

アルバムタイトル通りにスウィートソウルに舵を切ったアルバムで、これが90年代に入りR Kellyを始めとするアーチストに再評価をされて、90年代の復活に繋がります。シングルヒットとしては100位には入らなかった「Between The Sheets」はDa BratやNotorious BIGがサンプリングして大ヒットしたネタとして有名な名曲の一つ。「Ballad For The Fallen Soldier」もJay-ZやDJ Khaledにサンプリングされています。

★★★