洋楽ロック・ポップ・ソウルアルバムの世界

1980-1981年のアルバム紹介

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London Calling / The Clash (1980)

 

ロンドンで結成されたパンクロックバンドThe Clashの3枚目のアルバムで、全英9位、全米27位を記録。Rolling Stone誌が1989年に80年代全体のロックの名盤を選んだ時に1位に選ばれたのがこのアルバムです。「London Calling」が全英11位、「Train In Vain」が全米23位のヒットを記録しています。

アルバムはパンクの持つ攻撃性と、それを包み込むようなポップなメロディが魅力なアルバムです。1曲目「London Calling」は政治的メッセージが高いアグレッシブロック。しかし2曲目「Brand New Cadilac」は2分8秒の50年代ロカビリーなロック。他にJazz的アプローチやスカサウンド、R&Bなどバラエティ豊かな音楽性。「Revolution Rock」や「Hateful」「I'm Not Down」など名曲も数多く収録されているマスターピースな一枚です。

★★★★★

 


Back In Black / AC/DC (1980)

   

オーストラリアはシドニーで結成されたハードロックバンドAC/DCの8枚目のアルバム。「You Shock Me All Night Long」(全米35位)、「Back In Black」(全米37位)のヒットが生まれ全米4位、全英1位を記録しています。全米だけでも2500万枚を売り上げるマンモスアルバムとして知られています。

オリジナルメンバーのBon Scottが亡くなった後のアルバムで、ボーカルにはこのアルバムからBrian Jonesが担当。追悼の鐘の音からスタートするアルバムは心地いいギターのリフとBrian Jonesの甲高いボーカルでグイグイ惹かれます。プロデューサーはヒットメイカーのJohn Matt Lange。ハードロック好きならば一度は聴いておきたいロックの名盤の一つです。

★★★★★


Guilty / Barbra Streisand (1980)

   

ニューヨーク出身のシンガーで映画女優としても著名なBarbra Streisandがディスコブーム時に勢いのあったBee GeesのBarry Gibbと組んで作られたアルバムで、全米1位を獲得しています。シングル「Woman In Love」が全米1位、「Guilty」が全米3位、「What Kind A Fool」が全米10位、「Promises」が全米48位と立て続けにヒットして、アルバムは全米だけで500万枚が売れています。

Barbra Streisandのアルバムで最もポップなもので、全曲Barry Gibbがプロデュースしているせいか、ダンサブルで、中にはロックテイストの曲もあります。Top10ヒットとなった3曲はいずれも名曲ですが、Bee Geesのディスコティックな感じのある「Promises 」やラストの7分30分の大曲「Make It Like A Memory」まで隙の無い構成を持ったアルバムです。

★★★★


Diana / Diana Ross (1980)

 

60年代にはSupremesとして、70年代にはソロDiana Rossとしてトップに君臨してきたアメリカはデトロイト出身のソウルシンガーDiana Rossの80年代最大のヒットアルバムです。「Upside Down」が全米1位、「I'm Coming Out」が全米5位を記録してアルバムは全米2位を記録しています。このシングル2曲は90年代にはサンプリングネタとしても使われています。

アルバムはChicのNile RogersとBernard Edwardsが全ての曲を作曲プロデュースしていて、アルバム全体がグルーブ感あふれています。Chicの音であるカッティングギターのリズム感が最高で、シングル2曲の他にも「Tenderness」や「My Old Piano」など気持ちの良い音が詰まっています。Nile Rogersはこの後大物アーチストを手掛けていって80年代の音を作っていきました。

★★★


What Cha'Gonna Do For Me / Chaka Kahn (1980)

 

70年代はRufusとして、70年代後半からはソロとして活躍するアメリカはシカゴ出身のソウルシンガーChaka Kahnの3枚目のアルバムです。全米シングルチャートでは「What Cha' Gonna Do For Me」が53位に入り、アルバムは全米17位を記録しています。

チャート順位は地味ですが、Chaka Kahnのボーカルの美しさとグルーブ感あふれる曲の数々は充実しています。Beatlesの「We Can Work It Out」のカバーに始まり、「I Know You, I Live You」を3曲目とラストに配置するなどトータルアルバムとしての構成もあります。80年代R&Bのアルバムでは隠れた名盤の一枚です。

★★★★


Twice As Sweat / A Taste Of Honey (1980)

   

アメリカはロサンゼルスで結成されたR&BバンドA Taste Of Honeyの1980年に発売された3枚目のアルバムです。A Taste Of Honeyは1978年に「Boogie Oogie Oogie」が全米1位を獲得していることで知られていますが、このアルバムは全米36位を獲得しています。シングルでは坂本九の全米1位獲得曲「Sukiyaki(上を向いて歩こう)」を英語でカバーして、全米3位のヒットを記録しています。

アルバムはGeorge Dukeプロデュースによる70年代後半から80年代前半のディスコブームに乗ったディスコサウンドが中心で、オープニングの「Ain't Nothin But A Party」からサンプリング元として有名な「Rescue Me」、「I'm Takin Bout You」など楽曲が充実しています。「Rescuke Me」のメロディは全米R&Bチャート16位というのが不思議なぐらいの隠れた名曲です。

★★★



Iron Maiden / Iron Maiden (1980)

 

イギリスはロンドンで結成されたヘビーメタルバンド Iron Maidenのデビューアルバムです。1980年の4月にリリースされてUKチャートで4位に入るヒットを記録しています。New Wave Of British Heavy Metal Movementの中心として登場し、後のヘビーメタルサウンドに大きな影響を与えます。

バンド名は中世ヨーロッパの拷問器具「鉄の処女(Iron Maiden)」に由来し、アルバムジャケットはゾンビジャケットが特徴です。音はぶっ飛んだ音と思いきや、曲は実はすごくポップで、ヘビーメタルの激しいサウンドの中にどの曲もしっかりと美しいメロディがあるのが魅力です。切なさと美しさが調和した「Remember Tomorrow」や1stシングルとなった「Running Free」のドライブ感など、今もなお活躍するIron Maidenのデビューにふさわしい名盤です。

★★★★



Airplay / Airplay (1980)

   

数多くのAOR曲を手掛けるDavid FosterとJay Graydonが組んで作られたAirplayの唯一のアルバムです。シングルヒットは無く、アルバムもチャート記録がありませんが、AORファンの中では有名なアルバムの一つです。

アルバムはToToのJeff PorcaroとSteve Lukatherが参加するなど、どこかToToライクな印象もありますが、AORのヒットメイカーらしくアルバムは爽やかでメロウなサウンドが続きます。1曲目の「Stranded」はノリノリのロックナンバー。かと思えば歌謡曲ばりのキャッチーな「She Waits For Me」、Manhattan Transferが歌った「Nothin You Can Do About It」やEarth Wind & Fireの「After The Love Is Gone」のカバー(作曲がDavid FosterとJay Graydon)が収録されています。

★★★


Controversy / Prince (1981)

   

ミネアポリス出身のR&BシンガーPrinceの全米21位を記録したアルバムです。シングル「Controversy」が全米シングル70位を記録しています。記録的には地味な一枚ですが、それまでのシンセサイザーの音を中心とした『Dirty Mind』までとBandとしての『1999』以降を繋ぐ1枚として、分岐点の一枚として高い評価を受けている1枚です。

アルバムはControversy(論争)というタイトル通りに性別・宗教・人種など社会的なテーマを扱って、音もファンクに留まらない実験的な音のオンパレードです。アルバムの中ではR&Bミディアムチューン「Do Me Baby」が有名ですが、爆音ギターに銃声が響く「Ronnie Talk To Russia」、前衛的サウンドの「Annie Christian」はPrinceの作品中でも衝撃的な曲です。

★★★★


Raise ! / Earth Wind & Fire (1981)

   

アメリカはシカゴで結成されたR&B Soulグループ Earth Wind & Fireの全米5位を記録したアルバムです。シングル「Let's Groove」が全米3位に入ったことでも知られていますが、アルバムの楽曲の充実さではこのアルバムがトップではないかと思うほどシングル以外でもグルーブ感のある曲が充実しています。

シングルヒットした「Let's Groove」はシングルというか、アルバムのオープニングナンバーのような曲で、「My Love」のシンセサイザーとSaxのコラボにEarthの創造力溢れる音はこれぞ80年代のブラックコンテンポラリーという感じで、ラストはギターも唸りを上げるアルバムで最も派手な「The Changing Times」で終わるなど完璧な構成です。アルバムジャケットイラストは日本人の長岡秀星が手掛けています。

★★★★


Something Special / Kool & The Gang (1981)

   

ニュージャージーで結成されたJazz ファンクバンドKool & The Gangの1981年に発表されたアルバムです。シングル「Take My Heart」が全米17位、「Steppin Out」が全米89位、「Get Down On It」が全米10位のヒットで、アルバムは全米12位を記録しています。

アルバムは全体でディスコティックで、「Steppin Out」からメロウで踊れるナンバーが揃います。シングルヒットした「Get Down On It」はディスコの名曲ですが、ダンサブルな「Be My Lady」もメロウな「Pass It On」、「No Show」のエンディングまで充実しています。

★★★


Moving Pictures / Rush (1981)

   

カナダはトロントで結成された国民的ロックバンドRushの81年に発表された8枚目のアルバムです。全英チャートで3位、全米チャートでも3位を記録するなどバンドにとっても代表作といっていいアルバムです。

Led Zeppelinのようなハードロックな側面とYesのようなプログレッシブロックサウンドを併せ持つようなサウンドで、知的な歌詞とバンドメンバーが3人とは思えないような重厚なサウンドが魅力です。『Moving Pictures』はRushの中でも聞きやすいアルバムの一枚で、Neil Peartのドラムの躍動感が気持ち良いです。シングルヒットした「Tom Sawyer」(UK25位、US44位)はアルバムオープニングを飾る華々しいトラック、「Yyz」はプログレっぽいノリのトラック。ノリノリのギターサウンドは思わず陶酔してしまいます。

★★★★


Difficult To Cure / Rainbow (1981)

   

Deep PurpleのギターリストRichie Blackmoreが作ったRainbowの5枚目のアルバム。このアルバムからボーカルがJoe Lyn Turnerになっています。アルバムは前作『Down To Earth』からポップな路線にシフトしていますが、このアルバムは80年代後半のハードロックブームの音を予感させるようなポップとロックを融合した内容になっています。全英チャートで3位、全米ではこれでもヒットせず50位に留まっています。

アルバムのシングルとなった「I Surrender」は問答無用のポップロック。「Spotlight Kid」は間奏でRichie Blackmoreの怒涛のギターソロがあります。Journeyっぽい「Magic」や泣きのバラード「Maybe Next Time」、ラストの第9(ベートーベン)をアレンジした「Difficult To Cure」とポップなメロディをもったハードロックな音でラストまで一気に聞かせます。

★★★


Tin Drum / Japan (1981)

   

南ロンドンはCatfordで結成されたDavid Sylvianを中心とする5人組のニューウェーブバンドJapanの5枚目のアルバムで、『錻力の太鼓』という邦題が付いています。アルバムは全英チャート12位とバンド最高位を記録し、シングル「Ghosts」が全英チャート5位を記録しています。

アルバムはDavid Sylvianのボーカルもなかなか独特ですが、アーティスティックな音が凄くて、単純なポップ、ロックじゃない独特の魅力があります。1曲目の「The Art Of Parties」から圧倒されて、「Ghosts」の切なくもキャッチーなメロディにやや安心しながらも。ドラムのリズムが前面に出ながら、複数のメロディのアンサンブルが楽しい「Vision Of China」など、今もなお異彩を放つ80年代ロックの名盤です。

★★★★


Blizzard Of Ozz / Ozzy Osbourne (1981)

   

70年代に活躍したUKのヘビーメタルバンドBlack SabbathのボーカルでイングランドはWarwickshire出身のロックシンガーOzzy Osourneのソロデビューアルバムです。82年に飛行機事故で亡くなったギターリストのRandy Rhoadsが注目を集めたアルバムで、全英で7位、全米でも9位に入るヒットを記録しました。

Black SabbathやOzzy Osbourneと言えば黒魔術的な伝説やエピソードが語り継がれていて、ジャケットもホラーチックな感じですが、アルバムはRandy Rhoadsのギターが炸裂していて、「Crazy Train」の演奏はVan HalenのEddie Van Halenとともにギターの歴史を作り上げました。アルバムの曲も結構ポップで、ミディアム・バラードの曲もあったりして、中でも「Goodbye To Romance」は今聞いてもシングルヒットしそうなぐらいのポップスとして聞けます。

★★★


Niteflyte U / Niteflyte (1981)

   

キューバ出身のSandy ToranoとMiamで活躍していたHoward Johnsonの二人組Niteflyteの2枚目のアルバムです。このアルバムからはシングルヒットは無く、アルバムもチャートインしていませんが、1曲目の「You Are」がAORらしいギターサウンドやメロウな音が評判となり、輸入盤ながら日本人がこぞって買ったという話が残るほどAORの名盤として知られる1枚です。

アルバムの「You Are」は日本のアイドルグループSmapの「がんばりましょう」が似ているということでも有名なメロウなギターロックナンバー。2曲目「You're Breaking My Heart」はシングルヒットしなかったのが不思議なほどの感動的なバラード。デビューアルバムで中心的だったChicのようなカッティングギターサウンドや、Earth Wind & Fireのようなソウルサウンドも収録されている、大人なロックアルバムとして楽しめます。

★★★


Nightwalker / Gino Vannelli (1981)

   

カナダはモントリオール出身のシンガーソングライターGino Vannelliの全米18位を記録したアルバムです。アルバム『Brother To Brother』の次のアルバムで「Living Inside Myself」が全米6位、「Nightwalker」が全米41位のヒットを記録しています。

アルバムはAORなメロディの美しさはさることながら、プログレッシブロックの香りも漂う映画音楽かと思うようなドラマチックなところが魅力です。シングルを中心にメロディアスな曲が充実していますが、Gino Vanelliらしいハードなギターとドラムが楽しい一枚です。

★★★


Breakin Away / Al Jarreau (1981)

   

JazzボーカリストAl Jarreauの1981年に全米9位を記録したAl Jarreau最大のヒットアルバムです。シングル「We're In This Love Together」が全米15位に入った他、「Breakin Away」が全米43位を記録しています。また、Jazzの名盤Dave Brubeckの『Time Out』(1955年)収録の「Blue Rondo Aa La Turk」のカバーも収録されています。

アルバムはポップな楽曲を歌うAl Jarreauのボーカルが魅力で、とにかく優しくて、スキャットを交えながら囁くような声が素晴らしいです。2曲目の「My Old Friend」は後にMr Misterを結成するRichard PageとSteve Georgeが作曲をしています。

★★★


Never Too Much / Luther Vandross (1981)

   

80年代にはR&Bで活躍し、90年代にはポップスチャートでも活躍を見せたアメリカはニューヨーク州マンハッタン出身のソウルシンガーLuther Vandrossのデビューアルバムです。タイトルチューン「Never Too Much」が全米33位のヒットを記録して、アルバムは全米19位、200万枚のセールスを記録しています。

アルバムは後のLutherのイメージでもあるバラードというよりはディスコテックな音を中心としていますが、Lutherのねっとりとした歌はデビューから異彩を放ちます。アルバムは全7曲で、内5分を超えるのが5曲ありますが、その長さが気にならないほど高い密度があります。アルバムのトピックスはラストのBurt Bacharach作曲「A House Is Not A Home」のカバーで、最後にはTwista(Kanye West)が「Slow Jamz」でサンプリングしたパートが流れます。

★★★