洋楽ロック・ポップ・ソウルアルバムの世界

1976-1977年のアルバム紹介

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Rocks / Aerosmith (1976)

 

アメリカはボストンで結成されたAerosmithの1976年に発表された4枚目のアルバムです。初のTop10入りとなる全米3位を記録し、シングル「Last Child」が全米21位、「Back In The Saddle」が全米38位を記録しています。

Aerosmithの名作の1枚で、オープニングの「Back In The Saddle」のシャウトでスイッチが入ると、シングルヒットした「Last Child」が続くという流れが素晴らしいです。そして3曲目「Rats In The Cellar」がとどめという感じで、ボーカル、ギター、ベース、ドラムがそれぞれ個性がぶつかりあって、ジャムセッションをそのままパックしたような熱さがあります。荒々しさの一方で1枚のアルバムとしての完成度が高く、Rolling Stone誌の選ぶ名盤にも選ばれています。

★★★★

 


Breezin / George Benson (1976)

   

アメリカはペンシルバニア州ピッツバーグ出身のJazzアーチストGeorge Bensonの1976年に発売された大ヒットアルバムで、シングル「This Masquerade」が全米10位を記録したことにより、アルバムは全米1位を獲得し、全米だけで300万枚のセールスを記録しています。

George Bensonと言えば軽快なJazzギターが魅力ですが、Grammy賞の76年 Record Of The Yearにも輝いた「This Masquerade」ではスキャットを駆使したボーカルも披露しています。アルバムタイトルトラックの「Breezin」は日曜日の朝という感じで爽やかなフュージョンサウンド。「Six To Four」は軽快なメロディにGeorge Bensonの高速ギターが展開するなど、Jazzフュージョンアルバムの名盤の一枚です。

★★★


Everybody Loves The Sunshine / Roy Ayers Ubiquity (1976)

   

アメリカはロサンゼルス出身のJazzミュージシャンRoy Ayersとそのバンド Ubiquityによる1976年に発表されたアルバムで、全米チャートで51位を記録しています。

Roy AyersはJazzとファンクを融合(フュージョン)させた音が魅力で、70年代Soulアルバムにも聞こえます。ヒップホップ好きではタイトルトラックの「Everybody Loves The Sunshine」が有名で、90年代にはヒップホップのサンプリングの定番です。AORシンガーGino Vannelliが作曲した「Keep On Walking」はグルーブ感があり、メロウな「The Third Eye」など、隠れた名盤の一枚です。

★★★

Boston / Boston (1976)

 

Bostonで結成されたロックバンドBostonのデビューアルバムで、全米3位を記録して、アルバムセールスは全米だけで1700万枚を売り上げるマンモスヒットを記録しています。70年代のロックは商業的に成功を治める時期でしたが、その象徴的なアルバムです。「More Than Feeling」が全米5位、「Long Time」が全米22位、「Peace Of Mind」が全米38位を記録しています。

ジャケットにあるような大宇宙を舞台にしたコンセプトアルバムで、3曲目7分47秒の「Foreplay/Lontime」のようなプログレッシブロックの雰囲気も持っています。しかし1曲1曲はキャッチーなメロディに彩られていて、重厚なんだけどポップというバランスが素晴らしいアルバムです。

★★★★


Silk Degrees / Boz Scaggs (1976)

 

テキサス出身のシンガーソングライターBoz Scaggsの1976年に発表されたブレイクアルバム。全米2位を記録して、シングル「Lowdown」が全米2位、「Lido Shuffle」が全米11位のヒットを生み出し、AORサウンドを代表するアーチストとして知られるようになりました。

アルバムはお洒落で洗練されたサウンドと構成に、Boz Scaggsの滑らかなボーカルの組み合わせが素晴らしく、日本でヒットした「We're All Alone」はBoz Scaggsの切ない歌声が情景を感じさせて心に響くAORの屈指の名曲。アルバム製作に関わったDavid Paich、Jeff Pocaro、David Hungateは後にToToを結成しました。

★★★★


Dreamboat Annie / Heart (1976)

   

シアトルで結成されたアンとナンシーのウィルソン姉妹を中心としたロックバンドHeartのブレイク作。「Magic Man」が全米9位、「Crazy On You」が全米35位とシングルヒットが生まれたことで、アルバムは全米7位を記録しています。

Heartはチャート的には1985年の復活以降のシングルヒットのイメージが強いですが、70年代のハードロックな時代のHeartも素晴らしく、そんな70年代のHeartの代表作です。曲の躍動感のあるリズムが特徴的で「Magic Man」と「Crazy On You」はメロディの美しさも兼ね備えたロックの名曲の一つ。ウイルソン姉妹がLed Zeppelinマニアだったことがわかる「Sing Child」も素晴らしいロックの楽しさを感じさせるアルバムです。

★★★



Aja / Steely Dan (1977)

 

ニューヨークで結成されたロックバンドSteely Dan6枚目のアルバムで、シングル「Peg」が全米11位、「Deacon Blues」が全米19位、「Josie」が全米26位とシングルヒット。アルバムは全米3位を記録しています。ジャケットの女性はモデルの山口小夜子で、写真は藤井秀樹。

Steely Danの特徴であるプロのミュージシャンを呼んで演奏させるコラボが究極に達していて、アルバムではLarry CarltonやJoe Samle、Lee Ritenourといった著名なJazzアーチストが多数参加していています。特に「Peg」でのJay Graydonのギター、「Aja」ではSteve GaddのドラムとWayne Shorterのサックスは名演の一つ。こうしたセッションミュージシャンによる音のコラボは後のMichael Jacksonなどのアーチストに多大な影響を与えました。

★★★★★



All'N All / Earth Wind & Fire (1977)

   

アメリカはシカゴで結成されたR&BファンクバンドEarth Wind & Fireの8枚目のアルバムで全米3位を記録し、シングル「Sepentine Fire」が全米13位、「Fantasy」が全米32位を記録しています。

アルゼンチンやブラジルを旅行中にひらめいたと言われるサウンドは、ラテンフレイバーで包まれていて、オープニングの「Serpentine Fire」に始まり、独特の「パッパヤ〜」という掛け声のInterlude「In The Marketplace」「Brazilian Rhyme」がアルバムを彩ります。代表曲は「Fantasy」でEarth Wind & Fireらしいスペーシーな壮大なメロディ。疾走感が楽しい「Runnin」が収録されています。壮大なラスト「Be Ever Wonderful」までの構成が素晴らしい名盤です。

★★★★


Rumours / Fleetwood Mac (1977)

   

ロンドンで結成されたロックバンドFleedwood Macの代表作。この直前のアルバムFleetwood Mac』が初の全米1位を記録して700万枚のメガヒットを記録していいますが、その勢いのままリリースされたこのアルバムは全米1位を31週間、全米だけで2000万枚を売り上げるマンモスヒットとなります。バンド初の全米1位に輝いた「Dreams」の他に、アメリカの選挙でよくかかる「Don't Stop」(3位)や「Go Your Own Way」(10位)、「You Make Loving Fun」(9位)と4曲のTop10ヒットを生み出しています。

良いアルバムは1曲目でスイッチが入りますが、このアルバムの1曲目「Second Hand News」はハイテンションな感じで始まり、2曲目が全米1位曲の「Dreams」という構成が素晴らしいです。どの曲もメロディーがキャッチーな70年代を代用するロックアルバムです。

★★★★


Stranger / Billy Joel (1977)

   

アメリカはニューヨーク出身のシンガーソングライターBilly Joelの代表作です。名曲「Just The Way You Are」(素顔のままで)が全米3位、「Moving Out」が全米17位、「Only The Good Die Young」が全米24位、「She's Always A Woman」が全米17位と4曲のシングルヒットを生み出し、アルバムは全米2位を記録。売り上げは2021年現在でBilly Joelのオリジナルアルバムで最大の全米だけで1000万枚を売り上げています。

Billy Joelは日本では絶大な人気がありますが、中でも切ないメロディの光る「Stranger」やパワーバラッドの「Just The Way You Are」は特に人気があります。Beatlesに影響されたような複数曲のメドレーで、ショートムービイのような「Scenes From An Italian Restaurant」といった隠れた名曲も収録されている70年代AORの名盤です。

★★★★


Hotel California / Eagles (1977)

   

アメリカはロサンゼルスで結成されたロックバンドEaglesの5枚目のアルバムで、全米1位を獲得し、アメリカだけで1600万枚を売り上げるEaglesの代表作です。アルバムからシングル「New Kid In Town」と「Hotel California」が全米1位を獲得しています。

Eaglesの魅力は歌詞とギターのメロディで、「Hotel California」の歌詞は当時のロックの現状をストーリー仕立てで歌った名曲。「New Kid In Town」はEaglesらしい爽やかなギターサウンド。アルバム全体で重厚感もある、70年代を代表するアルバムの一枚です。

★★★★★


Never Mind The Bollocks / Sex Pistols (1977)

   

ロンドンで結成されたパンクロックバンドSex Pistolsのデビューアルバム。70年代後半に巻き起こったUKパンクムーブメントを象徴するアルバムで、全英1位を記録。全米では106位ながら、メディアで高い評価を受けました。アルバムからは「Anarchy In The UK」が全英38位、「God Save The Queen」が全英2位、「Pretty Vacant」が全英6位、「Holiday In The Sun」が全英8位とシングルヒットも数多く生み出しています。

アルバムは過激な政治的歌詞の「Anarchy In The UK」や「God Save The Queen」があったり、欲望丸出しの「Bodies」なんて曲があったりと突き抜けた感があって、一方でロックの熱さ、パワフルさもあります。アルバムのどの曲もメロディがしっかりあって、キャッチーなところも素晴らしい70年代の名盤です。

★★★★★


Damned Damned Damned / The Damned (1977)

   

Sex Pistolesと同じくロンドンで結成されたUKパンクの代表的バンドThe Damnedのデビューアルバムで、全英チャートで34位を記録しています。邦題は『地獄に堕ちた野郎ども』で、悪趣味満載なジャケットもかなりのインパクトがあります。

シングルヒットは「Neat Neat Neat」の全英52位のヒットだけですが、アルバム全体がハイテンションで、どの曲はメロディアスでポップです。パンクらしい節を外したような音も独特で、内から沸き起こるパワーを感じさせられる70年代後半のUKパンクの代表的なアルバムです。

★★★★


Marquee Moon / Television (1977)

   

ニューヨークで結成されたパンクロックバンドTelevisonの1977年に発表されたデビューアルバムです。全米ではチャートに入らず、全英で28位の記録が残っており、ニューヨークパンクの代表作で、U2やレッチリといった90年代のオルタナロックに影響を与えたとも言われています。

アルバムはパンクと言いながらギターを中心とするロックアルバムで、タイトルチューンの「Marquee Moon」は9分58秒の長尺で、ラスト8曲目の「Torn Curtain(引き裂かれたカーテン)」も7分とどちらかと言えばプログレな感じの曲もあります。アルバムは聞きやすい曲が多く、どの曲もギターのリフが良くてメロディもキャッチー。ボーカルがヘロヘロな感じがパンクっぽいですが、それが呪術者のようでもあり癖になります。

★★★★


Captain Fingers / Lee Ritenour (1977)

   

アメリカはロサンゼルス出身のJazzミュージシャンLee Ritenourの3枚目のアルバムで全米178位を記録しています。Lee Ritenourは1990年にBob JamesとともにFourplayを結成し、2020年もアルバムをリリースするなど今なお活躍を続けています。

Lee Ritenourと言えばブラジリアンリズムと軽快なギターが魅力で、メロディが美しいナンバーが多いです。アルバムタイトル曲の「Captain Fingers.」はドラムと音とギターのアンサンブルが心地いいナンバーで、ポップだけどしっかりとJazzらしさも感じさせます。ドライブにピッタリな「Fly By Night」や、Stevie Wonderのカバー「Isn't She Lovery」などが収録されているJazzフュージョンアルバムに興味を持っている人にお勧めのアルバムです。

★★★


Free As The Wind / The Crusaders (1977)

   

アメリカはヒューストンで結成されたJazz FusionグループThe Crusadersのアルバムで、全米チャートで41位を記録しています。The CrusadersはJazzにFunkやSoulを加えたフュージョン(融合)バンドの代表で、Jazzでありながらポップアルバムとして聴ける魅力があり、ヒップホップのサンプリングネタとしても多様されています。

そんなThe Crusadersのアルバムで最もPopなのはこの『Free As The Wind』で、当時のディスコサウンドを意識したダンサブルなアルバムです。ストリングスをバックにポップな音でアルバムは埋め尽くされていますが、The Crusadersらしい各メンバーのソロの連続はここでも展開しています。オープニングの「Free As The Wind」のフィリーソウルサウンドの気持ちの良い音から始まり、70年代初期のソウルという感じの「Feel It」、8分強もあるのに全く飽きさせないディスコティックな「Sweet N Sour」などが収録されています。

★★★



Sleeping Gypsy / Michael Franks (1977)

   

アメリカはカリフォルニア出身のシンガーソングライターMichael Franksの77年に発表されたアルバムで、全米チャートで119位を記録しています。都会的で洗練された音楽に独特の囁くようなボーカルが見事なコラボを見せるAORの名盤として知られています。

アルバムはCrusadersのJoe SampleやWilton Felder、Larry CarltonにFusionサウンドのDavid Sanborn、Michael Breckerといった名プレイヤーをバックにゴージャスな音が全体で広がります。代表曲の「Antonio's Song」はFMラジオでは一度は耳にした人が多いAORの名曲。切ないメロディと歌声が心に響きます。

★★★