今月の歌はカリプソ(ジャマイカの音楽)風シャンソン『メケメケ』です。1953年に作られた古い歌で、日本でも美輪明宏(当時は丸山明宏)さんが歌って話題になりました。聞き覚えがある方も多いでしょう。軽快なリズムにのって歌われるのは一つの愛の賛歌。マルチニック諸島の褐色の肌の青年が、恋人を置いて今にも船にのって旅立とうとしているところから、物語は始まります。別れを惜しむ恋人の姿に、青年はすでに出航している船から海に飛び込み、恋人の元にもどるのです。
『メケメケ』とはMais qu'est-ce que c'est?(それがどうしたっていうんだ?)の最初の2音節を表しています。「それがどうしたっていうんだ、よくある話じゃないか。一つの愛の終わり、そして新しい一日の始まり…」
この歌は『ケ』『カ』という音で執拗なまでに韻を踏んでいます。言葉遊びの要素も存分に楽しんでみてください。
・参考にしたCD:シャンソン名曲大事典:[8]:ミラボー橋−ムーラン・ルージュの唄
東芝EMI,1990 EMI ODEON TOCP-6428
十字架/ジルベール・ベコー
東芝EMI,1986 ODEON CP32-5145
今月ご紹介するのは、クロード・ルルーシュ監督の映画『男と女』のテーマ曲です。この映画は1966年カンヌ映画祭に出品されて最優秀作品賞を獲得し、アカデミー賞の最優秀外国映画賞を受けました。そして、ピエール・バルー作詞、フランシス・レイ作曲のシャンソン「男と女」も世界的に大流行しました。
フランシス・レイの甘美でロマンティックなメロディにのせて、ピエール・バルーとニコル・クロワジーユの歌うスキャット唱法をとりいれたこの曲は、その時代を代表する新しいシャンソンとなりました。
*参考にしたCD 「フランシス・レイ・ザ・ベスト:オリジナル・サウンドトラック
BEST OF FRANCIS LAI : BANDES ORIGINALES DES FILMS」 (サウンドトラック・リスナーズ・コミュニケ)(レコード番号
SLC SLCS-5044)
「映画音楽 MOVIE THEME」 ( 東芝EMI)(レコード番号 EMI USA TOCP-9090 )
今月の歌は中世から歌われていたという、古い古いシャンソン『A la claire fontaine〜水のきれいな泉へ〜』です。内容はいつの世も変わらない恋の歌ですが、この曲はカナダに移住したフランス人たちの民族統一のシンボルとして、また、ドイツ占領下にあった時代には民族団結のプロテスト・ソングとして、フランスの人々の精神を表してきた歌です。最初に歌集に収録されたのが1704年ということで、現代フランス語とは異なった言い回しが含まれています。やさしい旋律のオリジナルヴァージョンのほか、後世の音楽家たちによって、さまざまにアレンジされています。
*参考にしたCD:アヴェ・マリア〜母と子のアリア〜 ナナ・ムスクーリ Philips PPD-1104
この曲は1981年、ミシェル・ジョナスによって作られました。ジョナスは1947年、ハンガリー系ユダヤ人の移民の子どもとして生まれました。初めは演劇を志しましたが芽が出ず、ロックバンドを組んで活動をはじめました。彼の音楽は、シャンソンの伝統とジャズ(ブルース)とジプシー音楽を融合しています。この曲も、まさにそんな「融合」ですね。
参考にしたCD:La Nouvelle Vie(WEA 2292-42152-2)
1965年、世界中で大ヒットしたSylvie VALTANのirresistiblementは清涼飲料水のCMソングとして去年からリバイバルヒット中ですね。ブルガリア生まれのアイドル歌手、シルヴィ・ヴァルタンは60年代のフレンチポップス全盛期に欠かすことのできない存在です。一部の通信カラオケではすでに配信されているので、ドミニクと一緒に覚えて、レパートリーに加えてください。
今月、ドミニクといっしょに歌ってくれたのは、ライヴのために来日したAnne-LIZEとおなじみPatrick NUGIERのお2人です。Anne-LIZEはエディット・ピアフからフレンチ・ポップスまでこなすベテラン歌手。Sylvie
VALTANとは一味違う、大人のIrresistiblementを楽しんでください。
参考にしたCD: シルヴィ・バルタン・ベスト RCA,P1986 RCA R32P-1015
オールウェイズ・ラブ・ユー:メモリアル・ラブ・ソングス BMGビクター,P1993 RCA BVCP-603
今月のドミニクはロックンロールで決めています。60年代にシクローヌというロックバンドで活躍していた硬派のミュージシャン、ジャック・デュトロンの歌う『Les
cactus』を歌います。「あいつのこんにちはにも、俺のベッドにもサボテンがある。世の中とげだらけだ!」歌詞は比較的分かりやすいフランス語が並んでいるので、ぜひ、一緒に歌ってみてください。
参考にしたCD:GRANDS SUCCES DE JACQUES DUTRONC : GREATEST HIT RCA,P1986 RCA R32P-1015
発売 VOGUE/1983/フランス レーベル・レコード番号 VOGUE 600005
今月は番組のエンドテーマ、『六夜眠れず』。ドミニクのオリジナルソングです。彼の友人Philippe BERGONZOさんが作詞、ドミニク自身が作曲しました。「番組の最後にかかる曲について教えて!」というメールやお手紙もたくさんいただいているので、この機会にぜひ、たっぷり聞いてください。歌の紹介でフィリップさん本人も登場しますが、ご覧のとおりルパン三世そっくり!ドミニクと一緒に『ルパンのチャチャチャ』など楽しい歌を作っている仲間です。
10月の歌CD: ドミニク・シャニョン『C'est la vie セ・ラ・ヴィ』 ビクター レコード番号VICP-62380
今月は昨年2月、87歳でなくなったフランスシャンソン界の大御所、シャルル・トレネ作の『詩人の魂』です。トレネは1930年代から活躍し、戦争中や暗い時代にも、人間の歓び、悲しみを独特の言葉で歌にして、人々の心を照らしてきました。『詩人の魂』の一節、♪歌を作った人がいなくなっても、歌は歌い継がれ、巷を流れ行く…まさに、トレネの歌の姿です。
参考にしたCD:レーベル: フィリップス 商品番号: PHCY-3021
この歌は1998年にパリで初演され、今もロンドンでロングランを続けているミュージカルの中の一曲です。美しいロマの娘、エスメラルダに恋をした3人の男たちが、熱い思いを切々と歌います。醜いノートルダムの鐘つき男・カジモド、神に仕える身でありながらエスメラルダに魅了される副司教・フローロ、そして婚約者を裏切ってエスメラルダを追う、王室親衛隊長のフェビュス。番組ではドミニクがフローロ役を、パトリック・ヌジエさんがカジモドを、そして、フランスでミュージカル俳優として活躍しているマーク・マリアンさんがフェビュス役を歌います。
参考にしたCD:レーベル: (輸入版)ソニー・クラシカル 商品番号: K89335-S1
この歌は1983年にセルジュ・ゲンズブールがつくり、ジェーン・バーキンが歌ってヒットしました。歌詞の内容はゲンズブールらしく、ひねったものです。「幸福はあっという間に消えるはかないものだから、幸福を避けてもっとほかのことを考えなさい。幸福(虹)の彼方にはもっといいもの(太陽)がある。私との愛の幸福よりもいいものがあるはずだ」
参考にしたCD:
ジェーン・バーキン・ベスト(ジェーン・バーキン)Mercury(PHCA-1065)
コンサート・イン・ジャパン:完全版(ジェーン・バーキン) Mercury (UICM-9001/9002)
1917年南米のギアナで生まれたアンリ・サルヴァドールは今年86歳。今でも元気一杯、現役バリバリのミュージシャンでありコメディアンです。2000年に出したアルバムで人気に再び火がつき、昨年は日本にもコンサートにやってきました。常に時代の最先端を走ってきたサルヴァドールはロックをフランスにもたらしたり、ユーモア溢れる作品を数々生み出したりしてきました。彼が愛する美しい音楽をお楽しみください。
参考にしたCD:
「performance!:ライヴ・アルバム/アンリ・サルヴァドール」発売 東芝EMI/2002/東京レーベル・レコード番号 EXXOS VJCP-68427
死後20年以上たった今も、フランスはもとより世界中のシャンソンファンのカリスマでありつづけるジョルジュ・ブラッサンス。常に反骨の精神で歌を作ってきたブラッサンスの究極のフェミニズムを表しているのがこの歌です。女性を家事にしばりつけることなく、『ぼくはつつしんで、きみに結婚を申し込まない。愛する君よ、永遠のフィアンセでいてくれ』と歌うこの歌は、発表された当時は結婚制度を否定した反社会的な歌だと非難を受けました。今、みなさんの耳にはどんな風に聞こえるでしょうか?
参考にしたCD:
『ジョルジュ・ブラッサンスのすべて』シリーズ名 ポエジー・エ・シャンソン 2
発売 オーマガトキ/1994/日本 レーベル・レコード番号 PHILIPS SC-3104/3105