4月は番組のオープニングテーマでもあるブリジット・バルドーBrigitte Bardotの『Ca pourrait
changer(変わるかも)』です。 1960年代中頃のヒット曲。50年代〜60年代にかけて世界中にB.B旋風を巻き起こしたセックス・シンボル.の歌声は、時を経てなお新鮮に愛くるしく歌いかけます。
もちろん、「この番組を見た人はフランス語によって、世界が変わるかも?」というメッセージを込めて選曲しました。
*参考にしたCD (PHILIPS
PHCA-1049)
5月のシャンソンは1866年に書かれた古いシャンソン『さくらんぼの実るころ』。映画『紅の豚』の挿入歌として、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
イヴ・モンタン、コラ・ヴォケール、ジュリエット・グレコら名だたる歌手たちが歌ってきたフランスを代表するシャンソンの一つです。 さくらんぼの実る季節のように、あっという間に過ぎてしまう美しい青春を、大切に生きましょう、と歌っています。
今回参考にしたCD: イヴ・モンタン「スーパーベスト」(東芝EMI)(TOCP-9196) *「スーパーナウ」(東芝EMI) (TOCP-51018)
今月の歌は、ミシェル・ポルナレフの"Love me,please love me"「愛の願い」。どこかで聞き覚えのある人も多いでしょう。 パリ音楽院出身のポルナレフが、見事なピアノの弾き語りをきかせてくれます。
切ない歌詞と、カウンターテナー唱法(裏声)がぴったりのロマンティックな恋の歌です。
参考にしたCD: 「シェリーに口づけ」 ポリドール (POCP-7480)
7月の歌は、革命記念日の月にふさわしくフランス国歌。ただし、レゲエ・バージョンです。シャンソン界のトリック・スターであるセルジュ・ゲンズブールが1979年に発表して物議をかもしました。
フランス革命の時代につくられた「ラ・マルセイエーズ」は、誕生したての「共和国」を守るための愛国的な歌です。ところが、現代の目で見ると、血なまぐさく、排他的な歌詞であるために国歌としてふさわしいかという論争も、最近はおこっています。
レゲエ・バージョン「武器を取れエトセトラ」で、国歌をからかったゲンズブールは、時代を先取りしていたのかもしれません。
参考にしたCD:「ゲンズブール・フォーエバー」(曲名は「祖国の子どもたちに」となっている)MERCURY,P2001MERCURY LICM-1011/1012
今月の歌ははフランスの人気ラップグループMANAU(マノー)が歌う「Mais qui est la belette?」をご紹介します。
MANAUはブルターニュ出身。地元の民族楽器とヒップホップを結びつけた個性的な演奏が魅力です。 この歌もブルターニュ地方の民謡「ミチャオの牝馬」から、ルフランを引用しています。
ラップは俗語表現が多く、私たち日本人には難しく感じられますが、軽快なリズムを体で覚えて、ドミニクと一緒に歌ってみてください。
参考にしたCD: アルバム「Panique Celtique」Polygram
今月の歌はMichel Fugainの不朽の名作、『美しい話 Une belle histoire』です。かつて日本のサーカスというグループが『Mr.サマータイム』というタイトルでカヴァーし、大ヒットしました。
日本語ヴァージョンは一夏の恋が終わり、その思い出に浸るちょっと悲しい内容ですが、原曲は明るい夏のイメージを歌い上げています。愛、人生、自由、夏、太陽…。「大人の国」フランスでの恋を思い描きつつ、ドミニクと歌って見てください。
参考にしたCD: Les Plus Belles Chansons(Olivi;ASIN:B00005J8ZB) ○Best of Michel
Fugain(Sony;ASIN:B00004SIX) 日本では発売されていません(日本版はありません)
今月の歌はジュリエット・グレコが歌う新しい曲「伝道の書に抗して」です。 このタイトルはちょっとわかりにくいと思うので解説しましょう。 旧約聖書の「伝道の書」の中に、「いっさいは空なり」という有名な一節があります。これは信者に対して「だからこそ若いうちにの道に目覚めなさい」と諭すための伏線なのですが、この「いっさいは空なり」だけが一人歩きしてる感もあるのです。
作詞者のカリエールは、これに対して「いっさいは空ならず」とアンチ・テーゼを出したのです。「よい天気も悪い天気も」「大海原の香りも/麦畑に吹く風も」「恋人の熱い肌」「こどもの不安」・・・
人生の中のよいものも悪いものも全てをひっくるめて「空ならず」というメッセージをきいてください。
10月の歌CD: Un jour d'ete et quelques nLIts... (MEY 74 479-2) Juliette GRECO
エディット・ピアフが1958年に歌ってヒットした「群衆」La Fouleです。 元曲は南米ペルーのワルツで原題は「だれにもわたしの悩みを知られたくない」です。アルゼンチンに巡業したときこの歌を知ったピアフが、フランス語への翻案を希望しました。
祭りの日の雑踏の中で、人混みに押されて偶然抱き合うことになった男女の物語。二人を結びつけた雑踏が、今度は無情にも二人を引き離す。そして二人はもう二度と会えない。…という祭りの一日の悲劇が、女性の視点から描かれた歌です。
解説と歌詞の翻訳をしてくださっている松島征先生は、歌詞の内容から「群衆」というタイトルよりも「雑踏」の方がぴったりするのでは、と翻訳タイトルについてコメントされてます。
11月の歌CD: エディット・ピアフ大全集:1946〜1963:6 東芝 EMI,P1993 EMI ODEON TOCP-7556
今月ご紹介するのは、ちょっと風変わりなノエルの歌です。 レゲエのリズムにのって、のどかなノエルの光景を歌っています。一人の男の子の誕生が歌われます、救世主イエスを連想させますが、実はそうではなくて平凡な子どものことです。常夏のカリブの島は、温かく、開放的なノエルを迎える…という歌です。 オリジナルを歌っているのはLa Compagnie creole。アンチル諸島とフランス領ギアナ出身の4人組で、レゲエやサンバのリズムのダンス音楽で活躍しています。 このグループはフランス語で歌う一方で、クレオール語(フランス語や英語をベースに、アンチル諸島の現地人の語彙を一緒にして作られた混成言語)でも歌っていて、自らの文化的なルーツを大切にしています。 12月の歌CD: chante noel (La Compagnie Creole)865100 SC865 (2000 ERAFI MUSIC)(輸入盤を扱うお店で問い合わせてみてください)
今月ご紹介するのはポワトゥー地方の民謡「バラ万歳」です。 ポワトゥーは、フランスの大西洋岸中部の地方で、中心都市はポワティエ、観光地としてはレ島、ラロッシェルなどが知られています。 恋人が私のことをなおざりにして、もっと美人で裕福な女のもとに通っているらしい。でもどうせ、あの女は病弱だから死んでしまうよ。あの人が私のもとに戻ろうとしても、お断りよ…。という内容の歌です。 失恋の歌のようですが、明るくてリズミカルなメロディです。ドミニクと一緒に歌ってみてください。
1月の歌・参考にしたCD: Vieilles Chansons De France (Nana Mouskouri ナナ・ムスクーリ)PHILIPS
822 507-2
Monde Musical Des Petits Chanteurs A La Croix De Bois(パリ木の十字架合唱団)FORLANE
UCD 19019 (輸入盤を扱うお店で問い合わせてみてください)
今月の歌はRachid TAHAが歌う『ほらほら Voila,voila』です。 TAHAは若者を中心に絶大な人気を誇るRAI(北アフリカの音楽)のミュージシャンです。
現代フランスを語る上で避けて通ることができないのが、移民労働者とその家族の存在。労働力として必要とされたり、なにか事件があると疑いをかけられたり、あるいは労働力が余れば真っ先にくびを切られる…
『♪ほらほら、また始まった、ほらほら、やつらがのさばってくる〜』 TAHA自身、アルジェリアからの移民で、祖国の音楽RAIをベースにロックやラップのテイストを加えた独自の音楽を作り出しています。
この歌は移民の置かれている厳しい状況に警告を発している歌なのです。
参考にしたCD: フランスBARCLAY POCP-1344
北アフリカの音楽"RAI"については"Rai大好き" をぜひご覧下さい!!
今月の歌はBrigitte FONTAINEが歌う『きみとぼくのあの子 Cet enfant que je t'avais fait』です。
1968年に発表された歌で、男と女の対話のような歌です。しかし、会話はまったくかみ合っていない。 男が「きみとぼくの間に生まれたきれいな子どもをきみはどこにやってしまったのか」と問いかけているのに、女はそれをはぐらかしているのか、あるいは聞こえないかのように、娼婦が客を誘うように甘く歌いかけるばかり…
1963年にデビューしたブリジット・フォンテーヌは、前衛的な一見奇妙な詩を書くことで知られています。刺激的な歌詞の内容とは裏腹に、繊細な歌声が多くのファンを魅了してきました。彼女の歌には常に『狂気』が内包されています。
いつも解説を書いてくださる京都大学教授・松島征先生は時代背景を鑑みるに、この歌には成長することなく散った五月革命(=きみとぼくのあの子)を暗示しているのでは?と指摘しています。
この歌はブリジッド・フォンテーヌ作詞、ジャック・イジュラン作曲の異色のシャンソンです。男女の会話のすれちがいを美しいメロディにのせて歌っていますが、実はいろいろな読み方のできる詩なのです。
この歌のタイトル、原題を直訳すれば「ぼくがきみのためにつくってあげたあの子」となりますが、松島先生が、もう少しタイトルらしく訳してくれました。テキストでは歌詞の和訳と同じ、松島先生のつけた『きみとぼくのあの子』を掲載しています。
参考にしたCD: アルバム『ブリジット・フォンテーヌは…』 日本コロムビアC・3・21/ 日本コロムビア CY-4666 ほか