Oxford Univ Pr (Txt)019516945X (2003/06) amazon.co.jp
本書は古楽演奏家へのインタビュー記事をまとめたものであり、1997年にハードカバーで、2003年にそのペーパーバックとして出版されたものなので、内容は10年ほど前のものになる。演奏家のインタビュー記事などはあまり好きでなかったので、今まで雑誌やCD解説などで読む程度だったが、400ページ近く、20人以上の古楽演奏家の発言をまとめた本書に興味を持ち、読んでみた。
中世ルネサンスから古典派、ロマン派までのジャンル別にインタビューしている。著者の活動の関係で米国での取材が多いようだが、欧州の演奏家を含め、レオンハルト、ビルスマ、マクギーガン、クリスティ、ヘルヴェッヘ、ノリントン、ガーディナーなどの大所もカバーされている、日本人演奏家がいないのは残念な限りである。
内容は各ジャンルについてかなり突っ込んだものではあるが、著者(インタビュアー)がジャーナリズムで活躍する人だからか、「古楽器 vs 現代楽器」といった話題性に足場をおいた質問と、書きたい内容への誘導尋問的なものが散見された。特に米国の演奏家は、インタビュアーと共鳴して議論しており、あまり楽しめなかったのが正直なところである。それでも、インタビュアーの質問誘導に全く動ぜず、自らの演奏の信念を言葉の端々に感じさせるレオンハルト、饒舌な語り口のなかで本物を探求する姿勢を感じさせるビルスマなど、一読の価値のあるものも多い。全体的に一般の読者が演奏家の語りを通じて古楽演奏を理解するためにはあまり適切でなく、むしろ、演奏家や演奏にかかわる者が、演奏家の語る言葉のなかにいろいろなヒントを見つけるのに適切な書であると感じた。
(SH、2006年11月)