Scarecrow Pr ; ISBN: 0810852985 ; (2005/03/30) amazon.co.jp
バッハの器楽と声楽からなる主要な教会音楽についてまとめて記載された、米国バッハ・インスティテュート所長のUnger氏の書籍『バッハの主な声楽・器楽作品』がでたので、早速読んでみた。本書はリスナーズ・ガイドと銘打っており、実際にBaldwin-Wallace Collegeでのバッハ・フェスティバルのプログラム解説として書かれたものを基にしている。
内容は、コンサートやCDでバッハの受難曲やミサ曲を楽しむ人のために比較的平易に書かれたもので、本文121ページの中で、マタイ、ヨハネの2つの受難曲、ロ短調ミサおよびクリスマス・オラトリオの4曲について、全曲の(英語への)対訳つきで、各曲の個々の部分の対訳と簡単な解説をミックスした構成になっている。
コンサートでのガイドブックを基にしているということで、読みやすく簡潔にまとまっているが、礒山雅氏のマタイ受難曲、Stauffer氏のロ短調ミサ解説などに比べると深堀りされた部分がなく、分析も限定的であり、また譜例もない。(レシタティーヴォがなく対訳の分量が少ないミサ曲は、その分、比較的解説が充実しているが)。
残念ながら、日本語の対訳ではないため、その部分の価値は英語圏の読者に比べて低くならざるを得ない。CDに付属するバッハ研究家の杉山好氏や礒山氏の名訳および最近のバッハ・コレギウム・ジャパンのコンサート・ガイドブックにおける鈴木雅明氏の演奏体験に基いた解説や口語訳の質の高さを考えると、残念ながら本書は値段の割には、いささか物足りない気がした。
(SH、2006年4月)