Ignace Bossuyt & Stratton Bull
"Johann Sebastian Bach Christmas Oratorio: bwv248"

Leuven Univ Pr ; ISBN: 9058674215 ; Original Edition (2004/12/31)  amazon.co.jp

 

『マタイ受難曲』(礒山雅)、『ヨハネ受難曲』(Marrissen)、『ロ短調ミサ曲』(Stauffer)に引き続き、バッハの4大宗教曲の一 つ、「クリスマス・オラトリオ」に関する解説書が出版されたので、読んでみた。本書はもともと2002年にオランダ語で出版されたものだが、今回英訳され て出版された。

本書はまず、「クリスマス・オラトリオ」全体を巡る状況を概観する。つまり、1734/35年のバッハのクリスマス・オラトリオ創作の背景、クリスマス・オラトリオの宗教的な背景、ギャラント様式を前面に押し出した6つのカンタータよりなる全体構成と世俗カンタータからのパロディについて、オラトリ オとしてのストーリー性とアリア、レシタティーヴォ、コラール、合唱などの役割を例を挙げて説明する。

その後の章では、6つの部分(カンタータ)について、宗教的な説明と音楽的な説明、またパロディの詳細について分かりやすく説明している。本文は 170ページであるが、40の譜例が付属しており親切である。

欲を言えば、かなり高価な本なので、礒山氏の『マタイ受難曲』のように、本分の中に譜例をもっと沢山入れていただけるとありがたかった。スコアを片手に読めば問題ないが、2冊広げずに読めるほうが、忙しい現代人にはありがたい。

全体に分かりやすくまとめてあり、CDの解説などでは物足りない部分が大幅にカバーされてくる。英訳の前書きには、バッハ宗教曲の指揮で定評のあるヘルヴェッへが寄稿している。そのなかで、演奏するたびに新しい発見のあるバッハの宗教曲の難しさ・楽しさを述べた後、「宗教的な理解と音楽的な理解のバ ランスが重要であり、バッハが『音楽の捧げ物』で書いたように、『求めよ、さらば与えられん』の追求のためには、曲についての深い理解が役立つ」と述べて いる。先端で活躍する指揮者の言葉だけに興味深い。

(SH、2005年3月)