Malcolm Boyd "Bach"

Oxford Univ Pr ; ISBN: 0195142225 ; 3rd ed. (2000/11/01) amazon.co.jp

 

本書は、イギリス在住のバッハ学者マルコルム・ボイドによるバッハの生涯と作品を紹介したもの。バッハ生誕250年の2000年に第3版出版となっているが、もともとは80年代の半ばに書かれたもののようで、Wolffなどの最近の伝記に比べると内容が目新しくないようにも感じられた。

全250ページほどの著作であり、一般の伝記のように生涯と関連した作品について紹介している。構成で工夫されているのは、生涯と作品の紹介が、交互にバランスよく配列されており、バッハの生きた過程と関連する作品を関係付けて読める点である。例えば、ワイマールまでの生涯を説明した後に、オルガン音楽の1章を配したり、ケーテン時代の記述のあとに、管弦楽・器楽・鍵盤音楽の章を配したりという具合である。ライプツィヒについては、1730年まで、41年まで、42年以降の3つの期間に分けて説明し、それぞれ、教会音楽、(コレギウムムジクムでの器楽曲を含む)パロディ、カノンと対位法の章を組み合わせて関係付けている。内容は伝記部分よりも、楽曲の解説部分のほうが面白かった。(協奏曲の独創性、パロディの記述、対位法作品など)記述も明快で安定しており、内容の紹介も譜面や図表が適度に使用されてわかりやすいので、教科書的な著作のように感じた。もう1冊のバッハ書として推薦。

(SH、2004年5月)