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■ 詩的ぶるぅす ■
2010年04月
〜末日 〜20日 〜10日




フェンス やはりそうだ フェンスをよじ登ると 見たこともない風景 じゃあなかった こちら側と同じ 見たことのある風景 おんなじおんなじ フェンスなんてもの 子どもが遊ぶように 登ってはあっちへ 登ってはこっちへ そうやっていつか いつかのときのため 子どもが遊ぶように フェンスをよじ登る 2010.4.30
泥仕合 やるならとことん やろうじゃねえか お前の汚い手と おれの汚い手と 揚げ足をとり 泥まみれになり たとえばそうだ 買ったばかりの靴 泥がかかってしまえば もうどうなっても良い そんなものだろうさ だからどうせなら とことんやるのさ 真っ黒な顔して 笑ってやがらあ 2010.4.28
テンポ あなたのテンポに合わせたり わたしのテンポを楽しんだり ああ世の中ってなんて なんて素敵なのでしょう 国家を奏でるはずの指揮者の ひとりよがりのテンポは終わった ああ思いっきり息を吸えるテンポ 走りたいときに走れるテンポ 高らかに歌ってみたくなるテンポ ただあなたのもとへ行きたいテンポ 2010.4.28
成魚 よくここまで 生き延びたなあ 天敵 投網 病気 天変 汚染 投身 思い返せば ほんにほんに よくここまで 生き延びたもんだ 2010.4.27
海鳥 目の前の視界がひらけ 遮るものなくどこまでも 前途洋洋 前途茫茫 どう見えるかは海鳥(うみどり)しだい 己れの心に飛ぶ海鳥の 2010.4.26
運否天賦(うんぷてんぷ) 運を天に任せるのか 天を運に任せるのか 運が天を決めるのか 天が運を決めるのか 運と 天と 狭間を 旅する 2010.4.25
末成り うらなりはぽつんと笑う つるの先の方でぽつんと笑う うらなりは小さい 味も良くはない ほかの実は収穫され うらなりだけが残った 残されたものの使命 天変地異が起きたとき うらなりは生きねばならない そうして子々孫々に繋ぐのだ 大いなる不確かな可能性 うらなりはぽつんと笑う 知ってか知らずかぽつんと笑う 2010.4.24
奈落 そこには何が見える? そこでは何が聞こえる? 真っ暗闇か 光はあるが感じないか 何ひとつ音はしないか 自分の鼓動さえないか 時が経つのは早いだろう 時が経つのは遅いだろう 太陽は昇っているか 片目を閉じることはできるか 呻き声をあげられるか 足の指をまげられるか ゆっくり息を吐けるか 奈落の下の人は見えるか 奈落を救う人を見れるか 2010.4.23
ナマケモノ 世間ではわたしを へらへら笑っているだけで 平素なにも考えておらず のんびりと転(うたた)た寝をし 百合の花の匂いを嗅ぎ 落日を見送るだけだと 決めつけているようだけど 厳しい環境で暮らすには 危機をすばやく察知し 機敏に行動へと移して 絶えず警戒心をもって 今に至っているということを へらへら笑っているからか わかってもらえず淋しくて 年甲斐もなく不貞腐る 2010.4.22
鯉幟(こいのぼり) 風が吹けば 翻(ひつがえ)ること雄大 撫でる風は 推し量ること僅少(きんしょう) 風を受ける者 悉(ことごと)く雄大あれ 2010.4.21
まつくいむし 何の為とは聞かないで ただがむしゃらに生きるだけ 枯れる枯れぬは松の事情 食える食えぬは虫の事情 桑の葉にいる蚕らが 順を見据えて食いますか? 砂に転がるぼっくりが 明媚を見据えて生えますか? あれがこれがいけないと わあわあ喚いているけれど こっちはがむしゃらに生きるだけ こっちはがむしゃらに生きるだけ がむしゃらにはがむしゃらで ぶつからないでどうするね 2010.4.20

水の国 ニッポンは水の国 どこもかしこも水に添う 雨が降るるは一年中 森が含むは一年中 川が辿るは一年中 海が囲むは幾万年 夏は冷たや桶の水 冬は温(ぬる)めて燗(かん)の水 春は微睡(まどろ)む軒の水 秋は滴(したた)る稲の水 ニッポンは水の国 ニッポン人は水のひと 手に伝い流る玉の水 汲めば万感の空を見る 2010.4.19
葉織桜(はおりざくら) いつもは逢えないはずなのに 時に季節は悪戯をする 逢わない方がいいんだと 通りゆく人はつぶやき残す 本当はずっと逢いたかった だからこうして待っていた もしこんなことを言ったなら あなたは戸惑うだろうか それでもこうして同じ風を 清々しく吸い込めたから 散るまでのほんの数日が 彩りの日々となるだろう 2010.4.18
かもめ なんの音だろうか どっどっどっどっ びりびりと響いてくる どっどっどっどっ やけに落ち着かない ぐらぐらぐらぐら だけどわくわくする感じ ぐらぐらぐらぐら 汽笛が鳴った そうかもうすぐか ようやく出航するのか 波は高いらしい うろたえる声がする なに行ってみなければ わかりはしないのさ もう幾つかの汽笛で 陸を離れるのだ 2010.4.17
やまみち まわりまわりて まわりみち 寄りてこよりて こよりみち 行きはよいよい むじゃきぐも もどって見上げる はぐれぐも あつめた木の実は なにがなる? 今日あすなどで 芽さえでぬ 一本みちは いまいづこ 2010.4.16
馬と瓜 各馬の脚は腐らない 美しい毛並みのような脚 瑞々しい瓜の底を見よ 腐り始めたものがある 各馬は売りなど構わずに 脚は地を掻き空を掻く 瓜にはわかるはずもない 置きっ放しが故などと 2010.4.15
だし ぼんやりぬくい春の暮れ 家々の窓に人の影 鼻をかすめる醤油だし 鼻をかすめる醤油だし 世界の火は燃え滾(たぎ)る 頭にかぶるは空(から)の鍋 鼻をかすめる醤油だし 鼻をかすめる醤油だし 宵の空には飛行機雲 じわり満ちるやおかしな眼 鼻をかすめる醤油だし 鼻をかすめる醤油だし 2010.4.14
花筏(はないかだ) 川面をすべる花びらは 淡い紅(べに)の風の跡 大きく小さくぶつかれば 姿は刻々ちりぬるを 昨日の風はどこいった 昨日のわたしもどこいった 冷たい頬は春の夢 姿は刻々ちりぬるを 2010.4.13
空母 帰る場所がある 母がいるから帰る 帰る理由があるならば 2010.4.12
暗中咆哮 犬は咆える 威嚇している 先んじているのは 怖れているからだ 怖れたことになれば 尻尾を巻いて逃げる 身の程も知らず 相手のことも知らず だとすればやはり 咆えるしかあるまい 2010.4.11

小の山 山の上で小便して ざまあみろと下山して やあ喉が渇いたと ぐびりぐびりと水を飲み うまい水だとうなったら 小便山の水だとさ なるほどこれは参ったと 巡り合わせの摩訶不思議 自分で垂れた小便が 自分の元に戻るとは 汚い話と言うなかれ この山はどこにも聳えてる 2010.4.10
宵酔横丁(よいよいよこちょう) 意気のあがらぬ淋しい夜は 引いて入れるお店が好きさ 声もかけれぬ女々しい夜に 押して入れるはずもない まるで凍えた心の夜は 淡い明かりのお店が好きさ 裸足裸身(はだか)で転んだ日々の 笑うあの娘(こ)が目に浮かぶ やおら気持ちが高ぶる夜は 押して出られるお店が好きさ 遠く離れたまあるい月も ちょいと伸ばせば手が届く 2010.4.9
かわいいひと 夜の窓に姿を映し 髪をかきあげているね ひとの目を気にしている その証拠なんだろうね かわいいひと 誰を想っているの? かわいいひと ふっとひとつ息を吐く 知るも知らぬも春の夜 窓の向こうの灯が揺らぐ 2010.4.8
立て板 弓矢が飛び交うので 立て板で防ぎました 一枚では足りないので 四方囲むように立てました それでも安心できなくて 二重三重で防ぎました これならもう大丈夫 安心しておりました 出られなくなりました 叫んでみました 呼んでみました 自分の声だけ響きました そんなことがあってから 弓矢が飛び交うくらい 何でもない顔をして 防ぐことをやめました 2010.4.7
小さな傷たち 小さな傷というものは いつか跡形もなく消える 例えばそれが後になって 残したい傷だったとしても 痛みなど早く忘れたい ぼくたちはそう信じてきた 傷なんて早く消し去りたい それが当然だと思ってきた 小さな傷たちはそうして 空のかなたへ溶けていった きっともう大丈夫だよね そんなことを言い残して 2010.4.6
いかがでしょうか 今日は素晴らしい日となりました いかがでしょうか 明日はいよいよ大事な日ですが いかがでしょうか 苦しい日々が続きました いかがでしょうか みんなが期待を寄せています いかがでしょうか 放りっぱなしの いかがでしょうか なんとかよろしく いかがでしょうか うるさいうるさい 答える気も失せるわい 2010.4.5
花海棠 天がふるえれば 葉の滴は落ちる 地がもだえれば 根の血脈は飢える 誰が決めたか この世の定め 恨めしき声は 天地に染みる あぁされど花海棠(はなかいどう) 何事にも移りなく 薄紅色の耳飾り 往来見送りまた迎え 2010.4.4
縄跳び 縄跳びしながら歩くという 街にはそういう人だらけ リズムはいいけど ぴしゃぴしゃり 近づけませんよ ぴしゃぴしゃり 友人知り合い はいどうぞ ほかの人たち? 知りません ひゅんひゅんこっちは 二重跳び おやおやあっちは 五人跳び 行き場を失くした山鳩が 街の神社で啼いている 2010.4.3
帳の中で 切れてしまった電球は もう何をも照らさない ほのかに熱を残しつつ 夜の帳(とばり)に紛れ込む 人々は慌てふためいて 方方探し回っている どうして良いかもわからずに 手探り手探りうろたえる 明かりを!明かりを! 口々に叫んでいる 私が悪かった! 哀願する者もいる 切れてしまった電球は もう何をも照らさない 2010.4.2
積み石 平たい石を積み上げて 天の近くへ行きたいと 願うことが常ならば どうして私ができましょう 歪(いびつ)な私が挟まれば どうして高く積まれましょう 崩れることを知っていて 素知らず間にいることは 罪とは言わず何でしょう 高く積まれた石たちを 私は下で見上げている どの間にも挟まらず これで良いと見上げている 憐れみなんて要らないと 密かに角を削りながら 2010.4.1

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