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■ 詩的ぶるぅす ■
2010年02月
〜末日 〜20日 〜10日




椅子取り ランランラン 僕らは輪になり 歌いながら回る やがて曲が止まり みんな輪の中心に 一斉に駆け出した 椅子は埋まった ひとつも余らずに 歌っている者など もう誰ひとりいない みんな椅子の上で 安堵の息をついた 立ち尽くしているのは 僕ひとりだけだった 仕方ないものだから また歌い始めた みんなの椅子の回りを 2010.2.28
黒い受話器 耳から黒い線を吐き 独り言を喚いている ここはどこの黄泉の国だ? みんな誰と話しているのだ? 独り言をよくよく聞けば 確かに誰かと交信している ぼくの耳に黒い線はない ぼくは他国(よそ)から来たようだ 遠い遠い黄泉の国 ぼくはどうやって来たんだろう? どこかの日のどこかの朝に 瞬間移動したに違いない だってぼくの記憶にはまだ 黒い受話器が残っている 2010.2.27
照明弾 照明弾が湿気(しけ)てやがる いくら前方に打ち出しても まるで弾けてくれない 虚しく発砲音を残して 闇は闇のままでいる なんで俺は泣いているんだろう 恐怖感?無力感?諦め感? それともまさかの安心感? ゆりかごで笑った坊や? 島の翁(おきな)はかっかっと眠った とにかく湿気た理由が判り やけになって笑い出した ついでに照明弾を打つと ぱぁっとひらきやがったよ 2010.2.26
太陽系 人生の光は いつもどこにでも 満ち満ちている 黒い竜巻が起こったり 灰色の雲に覆われたり 真っ白な濃霧に包まれたり 暗い夜が続いたりして 道標が見えなかったり 自分の居場所を見失ったり 息や胸が苦しくなったり 不安にもがくことがあっても 地球が回っている限り わたしたちは誰も 満ち満ちている 2010.2.25
厨房 わたしは全身くまなく 小麦粉をまぶしつけ そろそろと足先から 数百度の油の中へ するりと滑り落ちた しゅしゅしゅしゅと 弾ける音が心地良く 意識は次第に薄れ わたしは眠りについた やがて黄金の衣を纏(まと)い 天へ上(のぼ)ってゆくだろう あとのことはすべて きみらに任せよう 2010.2.24
三歩下がって 聞いて欲しいこと 話してしまいたいこと 言えない言えない 言いたいけど言えない カチャカチャカチャ 背中の鞄の文房具 小さい歩幅はだんだんと 一歩二歩と下がってゆく 言えない言えない 言いたいけど言えない 先生に嘘ついたこと 友達が叱られたこと どんどん足が重くなる 一歩二歩三歩・・・ 2010.2.23
散歩をする前に 天気が良くて 風が心地良くて 体の調子も良くて 気分もなんだか良くて そんなふうだから そんなふうだから 近くの公園の池まで 行ってみようと思っただけで うきうきと沸き立ち 周りの人を気にしながら 笑みをこぼしてしまって 飼い主の傍の小犬が おやつをねだる様子さえ いつもより新しい景色に 映ってしまうものですね 2010.2.22
モンステラ ぼくが触れれば きみは揺れる わなわなと ふるふると ぼくはそれを見て ぼくの存在を知る だからますます 触れたくなる きみはどうだい? ぼくの存在がわかるかい? 2010.2.21

ヘブンズボイス 目の前で人が倒れました 目の前で人が倒れたというのに 声が出ませんでした 声が出ませんでした ヘブンズボイス どうか私に声を下さい ヘブンズボイス どうか私に叫ばせて下さい 2010.2.20
歪 色とりどりの光を放つ 海沿いの大観覧車 今日はどうしたことか 光は消えていた 細緻な骨組みと 歪(いびつ)な円形だけが 後悔の念のように 闇に浮かんでいる 回ることのない幻影 その時背景が動いた 微かに微かに回り 闇はうごめき出した 出口のない洞窟で 光を求めるかのように 2010.2.18
ホレボレ ここ掘れ ここ掘れ ここ掘れ ここ掘れ あぁ 爪が割れたよ 届かぬ 届かぬ 届かぬ 届かぬ あぁ 堅い心よ ここ掘れ ここ掘れ これでも 掘れ掘れ あぁ 穿て融かせよ 2010.2.17
繋ぎ目 外れてはいけない繋ぎ目が 長い長い時を経て 今まさに外れようとしている 一度も外れたことがないから もしも外れてしまったときは どうしていいのかわからない 元に戻せるものなのか もう元には戻らないのか 今日も窓から景色を眺め ヒヨドリたちの繋ぎ目を見る マンモスたちの繋ぎ目はそう とっくに外れていたっけね 2010.2.16
ちくちく ちくちく ちくちく そんなことやってちゃあ 大きな事は成せない だからといって ちくちくをおざなりすれば 大きな事もすぐに揺らぐ むずかしいやね せめて気持ちだけは ちくちくせずに 大きくいきたいものだ 2010.2.15
腐食 おれの領域に入るな 事の起こりは およそここから始まる 潮風に晒された廃船 腐食という科学反応争いは 一部から全体へと広がる 2010.2.14
湧出 上から雨を降らせても 出来た湖はすぐに干上がる 底から底から湧き出でて 出来た湖はいつまでも青く 2010.2.13
わがまま聖人 ─お前の望みを  すべて叶えてやろう 金持ちになりたい ─博打を怖れぬ心を養え 総理大臣になりたい ─悪人と呼ばれても平気な心を養え 容姿端麗になりたい ─宇宙人としばらく暮らしてみろ 老後の不安を取り除きたい ─正しい切腹の仕方を学べ ─お前の望みなんて  そんなものか  もっと全人類的な  でかい望みはないのか  つまらん  帰る 2010.2.12
だれのもの? ぼくの視線よ どこへ行く? ふらりふらふら 長い睫毛か 淡い瞳か ふらりふらふら 華奢な顎か その唇か ふらりふらふら おっと目が合う あぶなしあぶなし ぼくの視線はだれのもの? 2010.2.11

満席 もうもうと立ちのぼる 煙の中に入ってゆき 勇ましく腕を伸ばしては 黒い円盤を掴み取る すかさず小さな箱を出し 白い巻紙を引き抜くや ちちっと火花を散らしては 自ずの口からも煙吐く なんと勇猛果敢だろう きっと火をも恐れない つわものどもの子守歌 だけど子どもは入れない もうもうと立ちのぼる 煙は未(いま)だ晴れゆかず 2010.2.10
遠景 背広を着込んだ猿がいる 袴を羽織った猿がいる 作業着姿の猿がいる 水着に着替える猿がいる 漁船に乗り込む猿がいる 土を耕す猿がいる 墓前に手合わす猿がいる 世を憂い海見る猿がいる 明日の銭探す猿がいる 豪奢安穏な猿がいる どれも猿は猿であり 木があれば登ろうとし 水があれば浴びようとし 果実があれば食おうとする 何を着ていても猿である 2010.2.9
悲痛 可哀想に あなたは生まれ落ちてから 金銀財宝という土台に 風雨も知らぬ屋根の下 きらびやかに暮らしてきた 可哀想に その土台が傾いて あらゆるものが瓦解し 屋根さえない寒空の下 尚も求めるのは金銀財宝 可哀想に あなたの笑顔の下には 子ども達の手ではなく 金銀財宝を掴む手が ありありと見えてしまう 2010.2.8
列車 列車は 横浜駅を発つ レール上 好きな場所に 停まってくれない 好きな場所を 通ってもくれない 目的地 目的地に向かい まっすぐに 適確に 堅調に 融通もきかずに 進んでゆく 良くもあり 良くなくもあり 2010.2.7
木目 時は刻刻 止まることはない 刻刻の上には 美しさが伴う 永遠不変を想い 儚く消えてゆく 波頭がすぐに 飛沫になるように 木目の美しさよ 私は感じる 一筋一筋は 私の細胞と同じ 刻刻として 強く儚く 2010.2.6
孤立無援 雀がなく 欅がさやぐ 猫がはしる 竹がはえる 蛙がなく 薄(すすき)がさやぐ 風がはしる 虹がはえる ぼくは全然 孤立無援じゃない 2010.2.5
桜草 丘一面に咲く 絵葉書のような桜草を 美しいと思うか 工場の片隅に咲く 一輪の桜草を 美しいと思うか 踏まれてもなお 上を向く桜草を 美しいと思うか わたしは狡くて 意地汚いから どれも美しいと 答えるだろう 2010.2.4
一粒の豆 恭(うやうや)しく跪(ひざまず)き ひたすらに平伏する 今日の私があるのは あなた様の御蔭です どうかどうかこれからも お護り下さいませ 信じる力は偉大であり 漲(みなぎ)る力を与えてくれる たとえそれが一粒の 小さな豆であろうとも たとえそれが世間での 悪童と呼ばれる類でも 2010.2.3
河原路 人前で泣くなと 誰かに教わった 遠い幼少の記憶 風景がぼやけるたび 何度も言い聞かせた ひとりきりの河原路 教えてくれたのは 釣り人であったのか 犬連れ人であったのか 日が暮れるたび 赤き河は流れた 今は遠い記憶 2010.2.2
碁 白か 黒か 板(ばん)の上には どちらかしかない それなのに 引き分けという 色が存在する 碁でさえも こうなのだから 白か 黒か だけではなく 別の色も 打てばどうだい 2010.2.1

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