■ 詩的ぶるぅす ■
2009年10月
〜末日 〜20日 〜10日




モザイク通り カモシカのジャンプで 星と星の間をスルー 流れ落ちた窪みに 白い毛皮を埋めたら びゅんびゅん空中ブランコ ちゅんちゅん雀ダンス テイルランプの信号と 脇の下の体温計 敷きつめられた大理石 かけるかけるたすかける よろしくエーデルワイス 楽観コンプレックス ウグイスに投げキッスで 待ち合わせのお時間です 2009.10.31
森の育て方 森を育てる 人を育てる 森を育てる 人を 育てる 森を 育てる人を 育てる 森を育てる人を 育てる 森を育てる 人を育てる 2009.10.30
ホバリング とまることが 大事なときがある 動くばかりが 良いとは言えないときがある 風に押されるな 神経を切らすな 狙いを定めて 狙いを定めて 動くな 動くな そして今だ 迷いなくゆけ 迷いなくゆけ 2009.10.29
浅き海見し 浅いところは 日の光がいっぱいで やれ珊瑚やら やれ海星やら 色とりどりの 生き物であふれ やれ海藻やら やれ小魚やら それは賑やかに 生き物であふれ 私は生まれもって 浅はかな人間だが 珊瑚や海星や 海藻や小魚に 救われてばかりの 毎日であることよ 2009.10.28
いとま お褒めの言葉? それは有難いですがね いまは要りませんや たいしたことはないんで ちょっといとまをね いただきとうございます なんだかわくわくと 胸が躍るじゃないですか いとま 子どもの頃の遠足で 同じような心持ちだったのを なんだか思い出しましたよ 2009.10.27
タガメ 我は王者 水生生物の王者 メダカもフナも 我にひれ伏す そんな我にも 悩みがある メダカが最近 やけに少ないのだ それに妙な影 ばかでかい影だ すごい音がすると 水中に土砂が降る こんな日がずっと 続きっぱなしだ メダカが恋しい メダカはどこだ 今日もゆめゆめ 水草を抱く 2009.10.26
無人家(むじんか) 立派な家だろう 見事な庭だろう 金をかければ たやすいたやすい 贅を尽くして 築き上げた こらこら触るな 汚れる汚れる 遠く離れて 眺めるがいい こうして人は本当に 家に寄りつかなくなって 無人の家の天井は 見るも無残に朽ちてゆく 2009.10.25
啼く声 雛鳥はくちを開け 餌を待っている 親鳥はただせっせと 餌を運んでいる 彼らはわかっているのだろうか 何のために餌を待ち 何のために餌を運び 何のために生き延びるか 彼らはわかっていないだろう 何のためだっていいのだ ただ自分の為すべきことを ひたすらに為しているのだ 2009.10.24
広い広い飛行場にて 滑走路を走っている 徐々に速度をあげてゆく 滑走路を走っている 徐々に速度をあげてゆく もうずいぶん走っている 速度はだいぶあがっている まだずっと走っている 速度は充分あがっている もうそろそろ気づかねばならぬ 翼がなければ飛ばないのだ 2009.10.23
アカゲラの森 アカゲラが餌を咥え 巣穴に帰ってきたけれど どこにも巣穴が見あたらない 巣穴どころか木の幹も 木の幹どころか木が丸ごと いやいやそこいらの木々が すっかり姿を消していた いまやこの森に留まらず 全土の森で起きている 神の仕業であるならば 仕方のないことであろうよ 哀しく鳴いたアカゲラの 口から餌がこぼれ落ちた 2009.10.22

箸置き 人類はとうとう 一線を越えた 空の青と海の青を 幾筋の光が裂いた 地球の青い色は 羊の毛色になった 地球の青が戻り 発掘調査が始まる 地下三メートルの 地層の中に見つかった 陶器の箸置きが三つ 家族のものと思われる 夕食どきであったのか 三つ寄り添い合っていた 2009.10.21
背もたれ いいのですよ ためらわなくても あなたはね よくやりました 自分のためじゃない ひとのためにただ 走っては転び 笑っては泣き いいのですよ よくやりました さあひとつ息をついて もたれなさい 2009.10.20
三面鏡 どれが本当の私でしょう さあ当ててごらんなさい 左か右か真ん中か ひとつが笑えば皆笑う さあよく見てちょうだい どれかひとつが本当です どうしてわからないのでしょう だんだん哀しくなってくる そういえばかくれんぼのとき いつも最後に見つかってた それではこれはどうでしょう 哀しい気持ちになるときに 本当の心が表れるのだと 聞いたことがあります 2009.10.19
ロッククライミング 誰よりも自分を信じる 自分の脚を信じる 自分の腕を信じる 自分の指を信じる 自分を信じられる 自分を信じられるから 他人(ひと)も信じられる 他人を信じられなければ どうしてロープを預けられよう 綿毛のような空中遊泳 他人の中に自分を見る 他人の中に自分がいる 他人を信じられるのは 自分を信じているからだ 2009.10.18
最高の楽 最高の楽って何だ 何もしなくていいことか 力も入れず寝そべって ぼんやり物思いに耽る 周りが万事やってくれる 食事だって着替えだって 代わりに勉強だって 手足も口も動かさなくていい 何もしなくていいのだ 何もしなくていいのだ 何も何も何も何も 最高の楽 生まれてこないのと 同じじゃあないか 2009.10.17
無人島は海の向こう 人と接するのが嫌だってさ 人と話すのが億劫だってさ 面倒なこともあうだろうさ 煩わしいこともあるだろうさ 人と関わるのが嫌だってさ 人と生きるのが億劫だってさ 面倒なこともあるだろうさ 煩わしいこともあるだろうさ じゃあどうする? 無人島か? 無人島でもいいけれど 面倒も煩わしさも恋しくなるね 好きにすればいい 俺は面倒な方へ行くよ 2009.10.16
カネカネカネ カネは哀しい たくさんあっても 腹は満たない だけどカネが無ければ 腹は満たない 腹が満たなければ 誰かの腹を満たすなど 考えに及ばない カネに狂喜する者 カネに執着する者 カネは命を翻弄する カネは哀しい 2009.10.15
宇宙的確率 地球上数十億人 どうしてこんな 隣同士になるなど 有り得ようか 考えてもみたまえ 時間場所ほか ありとあらゆる事が ぴたり一致しなければ 決して起こり得ない ここまで一致すると うろたえるものだ どうするべきか どうするべきか こういうときはそうだ 時が解決してくれよう 2009.10.14
オニヒトデ オニが出た 人を喰うという オニを退治せよ オニを殺せ 躊躇するな 見たら殺せ オニの都合? オニの家族? オニも生きてる? オニも食わねばならぬ? 考えるな 考えるな 躊躇すれば 人が喰われる 人を脅かすものは 総て排除せよ そういうことだろう? 2009.10.13
避雷針 苦難 苦痛 苦悩 苦悶 苦境 苦汁 どれだけのものから あなたを守れるだろう 避雷針のように 避雷針のように わたしは高い所で 雷に撃たれたとしても 2009.10.12
横断歩道 横断歩道が どこまでもどこまでも 続いていたらいいのに そうすれば好きな人と いつまでもいつまでも 手をつないで歩けるんだ アジア大陸を越えて アフリカ大陸を越えて アメリカ大陸などは縦断 世界が縞々になって シマウマはどこへ行った なんて言いながらさ いつまでもいつまでも 横断歩道なんだ 2009.10.11

フラッシュ おい! 何撮ってるんだ! カマキリが叫んだ 2009.10.10
ゲーム ゲームが繁盛 ゲームな社会 ゲームが繁盛 ゲームな通勤 ゲームが繁盛 ゲームな学校 ゲームが繁盛 ゲームな交際 ゲームが繁盛 ゲームな事件 ゲームが繁盛 ゲームな家族 ゲームが繁盛 ゲームな人生 2009.10.9
コンセント どこにもない どこにもない 見つからない 見つからない もうすぐ切れる もうすぐ切れる 震えはじめた 震えはじめた もう寸前だ もう寸前だ わあわあわあ わあわあわあ どうかコンセントを どうかコンセントを 愛のコンセントを 愛のコンセントを 2009.10.8
葉 ほらごらん 木の葉が一枚 落ちてくるだろう 落ち葉になれば 小さな虫たちが 小さなあごで噛み 小さなフンをし さらに小さな虫が そのフンを噛み さらに小さなフンは 土という名に変わり 母なる大地とは 小さな積み重ねで 仮の区切りとしては 一枚の落ち葉であって ひょっとすると私たちは 単に一枚の落ち葉に すぎないのかもしれないよ 2009.10.7
福神漬け 鈍い泥の大海と 白く小さな地蔵の山 風ぐるまは湯気に回り 甘辛い花の香が漂う 片隅に目を見やると 艶(あで)やかに輝く一群れ 金属の反射光を受け 尚一層煌めきを放つ 福を呼びこむ神が こんなところにいらっしゃる にこにこと笑いながら いまかいまかと待ってらっしゃる 有難や有難やと 歯切れの良い音がする 2009.10.6
風速計を見上げて あんたはそりゃあ どれだけ優秀かしれない だけどこの 頬を柔かい手で撫でるような 日和に満ちたそよ風までを 測れやしないだろう 時に冷たく世の道理を示し 時に厳しく辛抱することを 教えてやくれないだろう 惠みの雨や雪を降らせ 落ちた小羽根を舞い上げる 広き風を知らないだろう あんたはそりゃあ 上にくっついてばかりだもの 2009.10.5
駄駄 待ってくれ 置いていかないでくれ 今行くから すぐに追いつくから すぐに追いつける すぐに追いつける そう言い続けて 立ち上がろうともせず 確かにそうやって 待ってくれ 置いていかないでくれ 寝転びながら そう言い続けて いつしか追いつけないほど 離れてしまった 置いていってくれ そう言える度胸もない 2009.10.4
幽閉 決められた枠で 決められた生活 決められた仕事 決められた娯楽 この境界線から 一歩も出られない もはや人畜同然 一生をここで終える 運命(さだめ)という一言は あまりにも哀しい 皮肉という言葉は 働く時にこそある だから私は歌う 同じ人たちと歌う 私たちの憧れの歌は 美魂(みたま)となって世を渡る 2009.10.3
稲刈り 巷(ちまた)では豊食豊食と 騒いでいるとか 言葉の氾濫とは 恐ろしいもので それならいいかと あり余るほどの 食い残し 巷のことは よくわからんが ここではそろそろ 稲刈りが始まる 今年もなんとか 昨年並みよ 有難や 有難や 2009.10.02
くろくつ 苦労を知るは 一時の苦痛 苦労を知らぬは 一生の苦痛 わずかな苦労からも 逃げてばかりでは 苦痛は一生 つきまとうだろう なぜなら人生は 苦痛に満ちている それゆえ人生は 苦痛に満ちている いちいち逃げていたら 何も成し遂げられない 一時か一生か どちらがよろしいか 2009.10.1

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