未来とのキャッチボール 未来の大エースは 孤独に壁とキャッチボール 人が通ったって 猫が通ったって 見ている先はそう 広くて大きなキャッチャーミット 少年よ 投げ続けるんだ たとえ大エースならずも たとえ野球じゃなくとも 孤独なキャッチボールは きみを大人にしてくれる 少年よ 投げ続けるんだ 広くて大きな 未来のキャッチャーミットへ 2009.2.28 ほくろ いつからきみは そこにいるんだい? ちょっと前までは いなかったはずさ もしかしたらぼくが 気づかなかったのかな? うんそうかもしれない いやそうに違いない だって近頃のぼくは 自分というものを持って 自信と勇気とを持って 歩き出そうとしているもの 周りの人たちが見えて 助けられているのを知って そうしてやっときみに 気づくことができたんだ 2009.2.27 翼のある言葉 翼のない言葉は 口から放り出されると ただ落ちてゆくだけ 落ちた言葉たちは どんどん溜まり続け やがて腐り始める 翼のある言葉は 口から放り出されても 自由に空を飛び回る ふわりと言葉たちは まるで天使のように 人々を幸福にしてゆく 2009.2.26 防風林 咆哮をあげる潮風 地吹雪のような飛沫 耐えれば耐えるほど 研ぎ澄まされてゆき どんな名画にも負けない 美しき姿をつくり出す 役目に徹すること 決してたおれぬこと 驕らず誇りをもつこと 成長をやめないこと 津々浦々で出会うたび 私も潮風に向いてみる 2009.2.25 疑似針 騙し騙され 釣り釣られ 誘惑 魅惑 甘い罠 騙される奴が 悪いのだと 騙す奴は 孤独を深め 騙す奴が 悪いのだと 騙される奴は 魚の群れに 今日も疑似針を 投げ入れる 2009.2.24 応援旗 わかるでしょう? この旗を見れば だからあなたは決して ひとりで闘ってるわけじゃない わかるでしょう? この旗を見れば だからあなたは決して ひとりで背負う必要はない わかるでしょう? この旗を見れば だからあなたは決して ひとりで悲しみに暮れることはない わかるでしょう? この旗を見れば だからあなたは決して ひとり引け目を感じなくてもいい 2009.2.23 クレバス 氷の割れ目に落ちた 手足を張って耐える 指先の感覚はない 足先も同じくない 太陽に解けた雫が 時折頬に落ちる 絶望という雫が 背中を伝い落ちる 美しいブルーの壁 手足を動かしてみる 左手 左足 右手 右足 必死というのは こういうことなのだ クレバスの隣に寝転び 広いブルーを仰いだ 2009.2.22 時限爆弾 赤を切るか 青を切るか どちらか切らねば 未来はないという そんな馬鹿げた話 信じるなど無理な話 しかし誰もが皆 時限爆弾を抱えている どちらか切らねば 未来はないという 心積もりが必要だ 動じてはいけない 潔さが必要だ うろたえてはいけない 赤を切るか 青を切るか くす玉だと思えばいい 2009.2.21 上に戻る 傷口 傷口が勝手に塞がれば あんたは元気に生きている 傷口が勝手に塞がらなければ あんたは死んでしまっているか 死んだように生きているか わざと傷口をいじくっているか 相手をなじることで消耗しているか あるいは傷なんて実はないか だいたい傷口なんてのは 痛みが伴うものであるから だいたいの人たちはみんな 元気に生きているはずなんだ きっとそうさ本当はね きっとそうさ本当はね 2009.2.20 スモッグ 掠れたリンゴが並ぶ 掠れたトマトが並ぶ 掠れたチェリーが並ぶ 掠れたピーマンが並ぶ 掠れた僕が立つ 掠れた声をあげる 掠れた声で笑う 掠れた人が笑う 掠れた空は鳥 掠れた空は風 掠れた空は僕 掠れた空は明日 2009.2.19 哀しいうた 哀しいうたは嫌いですか? 哀しいうたは嫌いですか? 父親は永遠ですか? 母親は永遠ですか? 故郷は不変ですか? あの川は不変ですか? 友人は絶対ですか? 恋人は絶対ですか? わたしにはわからない わからないからでしょうか 哀しいことを嫌いになれず 哀しいうたを嫌いになれず 2009.2.18 はふはふっ 熱は冷ましちゃいけません 無理に冷ましちゃいけません ミツバチはスズメバチを 熱というもので攻略し 人体は病原体を 熱というもので攻略し ロックは愛と勇気を 熱というもので攻略し 地球は生態系を 熱というもので攻略し 熱は冷ましちゃいけません そのうち自然に冷めるまで 2009.2.17 ブルーマウンテン 最後の一杯 そんな日が来たら 覚えておいてくれ ブルーマウンテン 最高級の豆さ 最後ぐらいいいだろう それに値しない男? だから最後ぐらい 値打ちをつけさせてくれ ああつまらない男だ 最後の最後まで 2009.2.16 待つひと ひとが目の前に来るまで きみはじっと待っている ひとが目の前に来たら 素晴しく仕事をこなす そうしてまた次の時まで きみはじっと待っている ああ きみはなんて立派だろう 自分がやることやれること 心得ていなければとても じっと待つことなんて出来ない 仕事として待つことは出来ない ああ ぼくはいつからだろうか きみのように待てなくなって ただうろたえてばかりいる 2009.2.15 堤防 どうしようもない激流に ざぶざぶと入っていき どうしようもない流れを まずは受け止めてみせよう すべて受け止められたら 少しずつ新しい支流を作り どうしようもない激流を やわらかなものへ変えよう どうしようもない激流が みんなのものになったら 堤防は静かに役目を 終わらせることにしよう 2009.2.14 鴉 鴉(からす)は嫌いだった 全身真っ黒 まるで悪の権化 廃棄物荒し ぱっと飛び立ち 上から見下ろす 憎らしかった 石を投げる素振り 飛ばない時もあった ますます憎らしかった 歳をとった 世の中を知った 憎しみは何も生まない 憎しみは憎しみを増す だから憎むのをやめた 嫌いになるのをやめた 好きになることにした 不思議だった 鴉の見方が変わった 黒には艶があった 頭の良さに呻った 飛ぶ姿が凛々しかった 鳴き声に愛嬌があった 悪者にしていたのは僕だ 廃棄物を捨てたのは僕だ 嫌っていたのは僕だ 鴉は昔から鴉のままだ 憎しみは何も生まない 好きになれば見えてくる 鴉は教えてくれた 美しい黒があることを 2009.2.13 自力宣言(仮) 誰か 誰か 助けてくれ 救ってくれ 金をくれ 仕事をくれ 水をくれ 解ってくれ 僕を解ってくれ 見てくれ いや見ないでくれ 教えてくれ どうしたらいい? 助けてくれ などと 僕はどれ程 人任せに 生きてきたろう 2009.2.12 躾 まずは大人がやれ 2009.2.11 上に戻る 去ること わたしは去る 去ることは 新しい何かの始まりだから わたしは去る 去ることは 寂しさに気づくことでもあるから わたしは去る 去ることは 道や流れをつくることだから わたしは去る 去ることは 命あるものの運命(さだめ)でもあるから 2009.2.10 瞑想の真ん中で 目を見開いておりますと 見えているものが見えます 見えているもののすべてを 見ているわけではありません 見たいものを見ているか 漠然と見ているかです だから目を閉じ瞑想します 見えているものはありません 見えているものがないので 見たいものだけ見れます もちろんみなくたっていいです 瞑想の真ん中におりますと 難しいことは何ひとつない 難しくしているのは私の目だ そんなことに気づかされます 2009.2.9 返り水 水を浴びせかけたら 返り水を浴びるのは 当たり前のことだろう? そんなこともわからずに 何を喚いているのだ 自分のしたことをもっと わきまえねばならない わたしも返り水を覚悟で もしくはもう最初から 自分で水を浴びておく それをしておかなければ とても他人様になぞ 水を浴びせかけるなど できるものではない ものの道理を知れ ものの道理を知れ 2009.2.8 夢とバス 乗客は僕一人 きっと終点まで 最後の乗客だ いくつの停留所を 素通りしただろう 僕と運転手は 無言のまんまで 決められた道を 走り抜けてゆく ねえ運転手さん ちょっと寄り道してさ うまいもんでもさ 食べに行こうよ どこか知らない? そうしたいけどねえ 仕事中だからねえ 僕は少しうとうと 夢を見始めた 2009.2.7 うららか うららかだ こんな日は いつもより うららに歩き いつもより うららに話し いつもより うららに伸びて いつもより うららに進む こんな日は 二度となく あったしても どうせ忘れる だから今日は いつもより うららに生きる 2009.2.6 オモチャのピストル オモチャだと思って 本当さ そうじゃなきゃ 人に向けるなんて 有り得ない 絶対に 有り得ない オモチャだと思って 撃ったんだ でも本気でそう 信じてくれる人は 少ないだろうな 見て見ぬふりを するんだろうな あるいは慰めを 口元にうっすら 笑みを浮かべて 言うんだろうな オモチャだと思って 本当さ だけどこの手で 撃ったんだ オモチャだった ピストルを 2009.2.5 手のかたち 新しい何かを掴むためには いま手の中に握っているものを 離さなければならないという 新しい何かを望まなければ 手離す必要はないのだろう 新しい何かを望まないなんて 出来る人がいるのだろうか 手のかたちをよくよく見たら 何かを掴みたがっていた 草木が空へ繁茂するように 猛獣が血肉を捕えるように 何かを掴もうとしていた 2009.2.4 ふじちょう 不死鳥になんて なりたくないな だって死ねないなんて 考えただけでも 恐ろしいじゃないか 挙げ句の果てには 自ら火に飛び込み 自ら終止符を打つ 不死鳥の末路 不二鳥がいいよ ふじちょう 二羽といない鳥 ああ いい響きじゃないか ふじちょう 2009.2.3 白化現象 呼吸が止まり 律動が止まり 営みが止まり 温度が止まり 今このときにも 白化現象は 止めどもなく 進んでおり なんだかまるで 雪が積もって みんなみんな 埋もれてしまって 恐いのかい? 嫌なのかい? でもぼくたちは 今このときにも 白になってんだ 2009.2.2 つま先立ったら 犬がつま先立ちで歩き 猫がつま先立ちで歩き 亀がつま先立ちで歩き 蛙がつま先立ちで歩き 象がキリンがシマウマが 蟻がヤモリがクワガタが みんなで みんなで つま先立って ついついこっちも つま先立って ひょこひょこ ひょこひょこ おかしなステップ だけどなんだか たのしいステップ 2009.2.1 上に戻る