■ 詩的ぶるぅす ■
2008年12月
〜末日 〜20日 〜10日



大晦日の小銭 お金が落ちました どこかへ転がりました 探してみました 探してみました 見つかりません 見つかりません 大晦日でした 大晦日で良かった 清算できました 何のかはわかりません 年明け前でよかった 清算できました 2008.12.31
産声 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて ぼくたちは産まれ また産まれるのです 2008.12.30
写生 風景は動く わたしも動く 風景は動かない わたしも動かない 風景はわたしであり わたしは風景である 描き写すものは 風景でありわたしである 風景であるわたしは 描き写される 2008.12.29
最後のカード 本当にこれが 最後の最後です もうあなたへのカードは 尽きてしまいました 決心は変わりませんか? 泣いても笑っても 本当に最後ですよ このカードを最後に あとはあなた自身 何が起こったとしても 自分の力だけを頼りに 乗り越えねばなりません さあよろしいですね? わたしとしてはもはや 幸運を祈るだけです では最後のカードです 2008.12.28
ライ麦パン 両の手が汚れている さあ洗ってきなさい これまでにこびりついた 数々の汚れをすべて 洗い落としてきなさい 落ちないものは仕方ない 出来る限りで構わない ライ麦パンを出して 待っているから 2008.12.27
潮見坂 どうぞこの石へお掛けなさい ここからが一番海が見える あの辺りが築地ですかね あっちが台場の方向で あっちが船橋へ続いています 今日はよく晴れているから 実に遠くまで見渡せます 見納め日和というものです もう私たちはこの場所から 海を見ることはないでしょう 一体どこまで転がり落ちれば 私たちは気が済むのでしょう 海の見えない潮見坂など 今は想像もできません そうなる前にあなたとここで 海を見れて本当に良かった 2008.12.26
サンタの落とし物      ひげ 2008.12.25
フック 人にはそれぞれいくつかの フックがついているのです みんなそれぞれ掛け合って コミュニケーションしています 何を掛け合うのかは 人それぞれ違います だけど何かを掛け合って コミュニケーションしています 相手のフックのことを考えていますか? そのフックに重すぎてはいませんか? 断りなく身勝手に掛けていませんか? 人にはそれぞれいくつかの それぞれのフックがついています 2008.12.24
蝋燭に火 思いもよらない事が 身の上にふりかかる 他人事(ひとごと)のような事が 突然ふりかかってくる とぐろを巻いた炎に 丸ごと呑み込まれ これは夢のはずだと 肌は現実に焼かれる 蝋燭には火 蝋燭はいつだって 倒れないとも 限らない 2008.12.23
藁焼 わらやきのけむりに満ち きのうより早い夕暮れ 鼻をさす季節の匂い かくれんぼももう終わり わたしは寂しかった 遊ぶ時間が終わるからか 夕闇が迫る恐怖からか 刈り取られた田の風景からか 誰もいなくなる気がしたからか それはいつまでも鼻に残り わらやきに似た匂いがする度 うら寂しい風景がちらつくが なぜか安心も覚えるのである わたしは寂しかった 2008.12.22
なんぞ なんぞ なんのために優しくするのだ? なんのために親切にするのだ? なんのために支えようとするのだ? なんのために情を傾けるのだ? 見返りのためか? 見返りなんぞ相手のためではない 自分のためのことではないか 見返りなんぞ 真の優しさとは? 真の親切とは? 真の支えとは? 真の情愛とは? なんぞ なんぞ 2008.12.21

時間のつくり方 我々は時間をつくることができる    時間は最初からある?    時間はつくり物じゃない? さあ 手を叩け さあ 足を踏み鳴らせ それはあなたがつくった時間だ さあ 歓喜せよ さあ 声高らかに それはあなたがつくった時間だ 己れの内側を奮わせること 我々は時間をつくることができる 2008.12.20
心鏡 壊れたら意味がない 誰しもふさわしい時期を持つ 時期を見誤るのは若さ 若さには再生する力がある 壊れたら意味がない 壊れる覚悟でゆく時もある 壊れる覚悟でゆくのである 壊れなかったら運が良いだけ 壊れたら意味がない 誰しもふさわしい時期がある 壊れる前に心の鏡を見よ 「今」が映っているはずである 2008.12.19
食器洗い 昔はよう 山からよう 流れてくるよう 水を使ってよう 洗ったもんだがよう 今ではよう ひょいっとよう 水が出てきてよう じゃぶじゃぶとよう 洗えるからよう 楽しくってよう 楽しくってよう だけどよう 山の水をよう 忘れるなんてよう 出来なくてよう 出来なくてよう 2008.12.18
繰り返すページ 小説を読んでいる 全く同じページがある 果たして読み飛ばすか 律儀にもう一度読むか 読むこと自体をやめるか 製本会社を問い詰めるか これも小説の一部だと疑うか そして意味を解こうとするか それとも自分の運命に対して 何かを明示していると思うか いやこれはある法則があり 絶えず不変的につきまとうもので 誰もがそれに気づかずに 日常を送っているだけなのか 2008.12.17
スタッカート タン・タン・タン・タン さあ・短く・切るように タン・タン・タン・タン 毎日・毎日・ご苦労さん これだけ・長く・生きてると 苦しい・ことも・多いよね 切ない・ことも・多いよね タン・タン・タン・タン それでも・まだまだ・長いから タン・タン・タン・タン さあ・短く・切るように タン・タン・タン・タン さあ・スキップ・するように! 2008.12.16
頬擦り もしもあなたが 何か決めかねて 悩んでいるとしたら 頬擦りできるかを 想像してみるのも いいかもしれない わたしならば 土にだったら 頬擦りできるが コンクリートには 頬擦りしたくない そんなふうに 想像できるのだ 2008.12.15
操り人形 僕は意思を持つことは出来ません 従って自由に動くことが出来ません 手足は繋がれています 痒いところがあっても掻けません 蜻蛉を追いかけることも出来ません 僕は操り人形なのです 最初からわかっていることです だけど光が当たる時だってあります お芝居の中では僕は主役です お芝居の中で蜻蛉を追いかけます お芝居の中で思う存分体を掻きます そろそろ出番のようです それではまたの機会に ごきげんよう 2008.12.14
乾杯 突如こだまする大合唱   カンパーイ 何があったかしらないが こっちまで嬉しくなるほど 誰もが声を弾ませて   カンパーイ 何があったかしらないが きっといいことあったんだろう 誰もが胸躍らせて   カンパーイ 何があったかしらないが 今夜は存分にやってくれ 見ず知らずのあんたたちに    乾杯 2008.12.13
来訪者 静寂の店 カウンターに湯気 その時光の訪問者 すばやく床を伝いゆく 待っていた 待ちわびていた わたし一人だけでは この空間を持て余す さあ打ち破ってくれ ちっぽけだった時間を ちっぽけだった世界を とっくに冷めた湯気など まるで取るに足らない 2008.12.11

神々の面 ムムーン ウォーン カナカナカナ カナカナカナ ムーンムーン ウォーン 確かに話している 神々が話し合っている 我々にはわからない ただあくせくするのみ 2008.12.10
民族衣装に身を任せ 遠い遠い遠い 遺伝子たちが ざわめくざわめくざわめく ときに静謐(せいひつ) ときにウッホウッホ ときにジャララジャララ ときにワイヤアワイヤア 民族衣装とは 我々自身の 血肉に他ならない 2008.12.9
木星 何気ないひと言で 人を傷つけたことはあるか わたしは今日も昨日も 同じことをしてしまった 人を傷つけないなど 星をすべて消すほど難しい 木星よ 写真の中であなたは 一際大きく存在し 小さな星々とともに 周り続けているのですね 全てを消し去るのではなく 全てとともに回るのですね 2008.12.8
切り絵 なにも話してくれないのです ただ同じポーズなのです ただ同じ目でこちらを見て ただ同じ微笑みで 本当に愉しそうに 本当は違うかもしれないのに 声も出さずに 音も立てずに そこにいてくれるのです わたしといてくれるのです 2008.12.7
冬菊 木枯らしはすべてを灰色にし 青々とした千歳の緑でさえ うら悲しく灰みがかっている 冬菊は黄金の光を放っていた 天の憎らしいほどのいたずら わたしの心に光が射し込まれ 一輪二輪三輪次から次へ 眩しさに顔を上げた先には 渡り鳥が灰色の雲を切り裂き 入り込んだ風に冬菊が揺れた 2008.12.6

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