同人ソフト温故知新 Vol.2

- 特集その1 特選「遊撃隊」シリーズ -


※ 本文中の人物名は敬称を略させて頂きます ※
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No.3 「遊撃隊 〜最強神復活之巻〜」
機種 PC-8801mkIISR以降、PC-9801VX21以降
初回頒布 '90
サークル T.K.O.Soft


メイクをしなくても、
彼(安木)はこんな顔です。はい。

ヒロイン格(のはず)の陽子。
高慢な態度に見えますが、実際は……

容赦なきジャストミート。
問答無用で「殴る」を選んだらこうなりました。

格闘パート(Anex86CG-ROM無し使用)
体力ゲージが無いですが、実機吸上で回避。

 今回最初に紹介するソフトは、T.K.O.ソフトの代表作とも言えるこのゲーム「遊撃隊」第1作です。PC-8801シリーズ対応で頒布されたこのソフトは、後年PC-9801に移植され、ゲーム内容も幾分アレンジされています。PC-9801は、現在でも少量ながら同人ソフトが制作されていて、マシン自体は先日製産終了が決定したものの、名作ソフトが何本も誕生しています。比較的初期(VXなどのi80286-CPU搭載)の機種でも、後年発売されたソフトが結構プレイ出来たという点で、結構便利なマシンでした。

 さて、ゲーム内容ですが……まず最初に言ってしまうと「アホ」(褒め言葉)です。しかも容赦無くマジメにアホをやってます。ストーリー自体は「葛飾野高校の森で見つかった古代遺跡に、2人の調査隊と呪道師が訪れる。が、調査を始めた途端呪道師は吐血し、他の二人も不思議な紋章が浮かぶ『何か』を見てしまう。一方、5人組のパンクロックグループ『遊撃隊』は文化祭で大ブーイングを受けた翌日、体育祭で憎き美少年・田中を落とし穴にハメた後、アイドル歌手の陽子がいたという古代遺跡へと足を運ぶ。と、そこには前日の調査隊の姿が。問答無用で彼らを張り倒した遊撃隊は、呪道師もそのまま倒そうとするが、誰も歯が立たずに逃げ出してしまう。その先には、不気味なオーラを漂わせる転校生・新井妖助の姿が……」というもので、ジャンル的には「古代サイキックホラー」作品なのですが、主人公である遊撃隊が誰彼構わず容赦なく張り倒したり、人様の娘さんを娘さん以外全員同意の上でポリ袋に押し込んで携帯してしまったりと破天荒な行動ばかり。しかし、設定自体はよく考えられていて、スサノオやクシナダ、ヤマタノオロチといった古代伝承ネタを上手く織り込み、最後の最後でそれを使って壮大なオチ(笑い方面の)に持っていったりと、本当に硬軟自在なシナリオになっています。最後までジェットコースターのような勢いで突っ走るのですが、ただギャグだけをやるのではなく、マジメに物語を書きつつ、その中で必要なギャグを出していくという手法には感服します。

 そして、CGの枚数とクオリティはは本当に驚異的で、主人公である斉藤の顔の崩れは何パターンあるのかわからないし、また色遣いも同様の色調で統一させながらも、アナログ16色の階調を上手く使い、質感がしっかりと出しています。また、男性キャラのほうは極端な顔立ちのキャラクタがいたりしますが、女性キャラは総じて可愛いキャラに仕上がっています。ヒロイン格の陽子しかり、終盤と、そして後々鍵となる弥月しかり……とはいってもこの二人しかいないのですが、テキストとともにCGでしっかりと存在感を出してくれています。

 また、機種ごとにゲーム内容が一部違っていて、主要敵キャラとの対戦が88ではアクションゲーム、98では格闘ゲーム(※1)になっています。後者のインターフェイスとしては「V.G.」や「ソードダンサー」(※2)のように、テンキー+αで操作する形になっていて、最初の敵は簡単に倒せるものの、残りのキャラに関してはかなり固い上に防御がなかなか効かないキャラがいたりと、慣れるまでは倒せないことがあるのですが、ここでちょっとばかり難点が……詳細は伏せておきますが、スルーできてしまうというのがちょっと残念でしたね。なお、特訓モードも別口で付いているのでこの点は便利です。

 総合的に見てみると……本当に良く出来たゲームだと思います。ギャグもしっかりとツボを突いてくれますし、話にもパワーがあって、思わず先を読みたくなってしまうような、そんなシナリオになっています。最初は「探偵団X」(※3)みたいなパロディとか多めな感じかな? と思ったのですが、とんでもない。もう別世界の面白いゲームでした。ここ最近でも少ない系統のゲームなので「なんか新しいタイプのゲームは無いかなー」という人には是非ともお勧めです。PC-8801は実機からのBIOS吸い上げが必要ですが、PC-9801では公式エミュレーター本も出ていますし、実機を持っている人ならば実機で、また壊れてしまっている場合でも、手持ちのDOSをイメージ化してしまえば簡単に出来てしまうので、プレイしてみてください。


No.4 「遊撃隊<番外編> -太平洋の赤い神風」
機種 PC-8801mkIISR以降
初回頒布 '90
サークル T.K.O.Soft


筋肉男と美少女の対比というのもまた。
それにしても女の子の描き方が巧いです。


脳痴裸巣号登場。
ソ連やら何やらの単語も連発。

敢えて書きましょう、
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!! と。

ミニゲームその1・ダイビング。
弾が19発しかないのに、この後10倍数の敵が。

 次の紹介は、遊撃隊シリーズ2作目――というか番外編「太平洋の赤い神風」です。番外編とは言っても、ボリュームは前作並み(ちょっと少ないぐらいかな?)ですし、内容もミニゲーム含めてやはり濃いものになっています。残念ながら、こちらはPC-8801用なので、BIOSを用意しなくてはいけません。少々値は張りますが、秋葉原などで実機が安価で売っていることも多いので、購入してBIOSを吸い上げてみましょう(5インチディスクドライブも必要ですけどね……)。

 気を取り直して、ゲーム内容の紹介に行ってみましょう。主人公は相変わらず「遊撃隊」の面々と、前作で仲間になった報道部の怒屋の6人。今回、彼らは茨城の大洗海岸へと旅行に行っていて、何の因果か怒屋とも遭遇して思い思いのバカンスを楽しんでいました。が、そこに突然ネモ艦長が操る「脳痴裸巣号」という巨大潜水艦が浮上し、中からロボット兵たちが出てきて砂浜の人々へと襲いかかり始めた。一方、メンバーの一人・安木は不思議な少女とともに脳痴裸巣号へと行ってしまう、というのがストーリーのさわりになりますね。

 というか「ノーチラス号」「ネモ船長」ですよ。ナディアですよ先生。人物紹介を見て爆笑してしまいましたが、今回もネタ的にツボに入る部分が多くて、腹を抱えてしまいました。数回スペースキーを押すだけでフェードアウトしてしまう敵キャラがいたり、極限状態にもかかわらず突然全裸になったり、もうやりたい放題。でも、ストーリーはやっぱりしっかりと作ってあって、ラストの衝撃には思わずポカーンとしてしまいました。まさか、あそこまで容赦無くバッサリとやってしまうとは……そして、この容赦の無さが「2」で本領発揮をするとは、これをプレイしたときには露にも思ってませんでした。

 さて、今回もミニゲームがあるのですが、全体的に見てシューティングゲームが多いですね。しかも縦シューと横シュー両方で、特に縦シューパートのうち一つは弾幕が凄いことになっていて、もう一つはムチャクチャ敵が固いと来ているので、はっきり言って難しいです。横シューに関しては、もう敵の多さに参ってしまいます。最後の方は敵で埋め尽くされてますから。

 全体的に見て、今回はやはりラストへの持って行き方が上手いと思いました。普通はありえないエンディングがドカンと来ることで「はっ!?」と思ってしまうのですが、その次の瞬間には思いっきり納得してしまいますし、ゲーム性も満点で、番外編とはいえ十分に楽しめました。エンディングは、思わずスクウェアの黎明期の名作「WILL」(※4)を思い出してしまうような感じでした。


No.5 「遊撃隊2 〜邪神戦争〜《前衛・ヘガス我狼陰の復讐》」 
機種 PC-9801VX21以降
初回頒布 '98
サークル T.K.O.Soft


物語回想シーン。
斉藤くんはこんなにも立派になりました。

謎の転校生登場。
この後もまた……

傷心の斉藤くん。
鼻水出てますよ、鼻水。

ヘガス我狼陰登場!
彼は凄まじい登場の仕方が多いです。

 そしてシリーズ3作目「邪神戦争編」の前編です。プラットホームを完全に9801に移し、アニメーション満載、CGもクオリティアップと、ディスク10枚組という大容量を活かして、全体的な質が向上している感じです。また、今回のシナリオは前作2作に比べて、飛び抜けたパワーを持っています。何より「容赦が無い展開」で、ギャグもハードな展開もバンバンぶつけて来ます。ギャグの数として前2作に比べて少なめではありますが、破壊力としてはピンポイントに来ているこちらのほうがアップしていると感じました。

 その肝心のストーリー展開ですが、舞台は1と同じ葛飾野高校で、時間軸としては1年後に設定されています。「いつものように学校のアイドル・陽子を追いかけ回している主人公の一人・斉藤は、1年前の事件の後「変態」「女の敵」「強姦魔」というレッテルを貼られてしまい、以来ほとんど女の子に相手にされておらず、それでも陽子にアタックしまくるという不毛な毎日を過ごす。そんなある日、いつもと同じような日々の中で少しずつ不穏な空気が……1で事件に巻き込まれ、記憶を無くしたはずの加川が突然発狂し、追いかけていくうちに次々と強化された人間に襲撃される。そして学校全体に戦火が飛び火し、様々な犠牲を払った後、そいつは現れた。最狂の科学者『ヘガス我狼陰』が……」というのが、序盤のあらすじ。

 初っぱなはギャグチックなのですが、どんどんハードな展開が。死ぬ者は死に、生きる者は生きる――その容赦無さが、ゲームの中へとグイグイ惹きつけてくれます。さらに、下ネタも容赦なし。ギリギリどころかオーバーしてると思えるような描写があったり、CGの色調から違うモノを連想してしまうようなものがあったり、もう見ていて良い意味でゲンナリしてしまうような下ネタが。もうこういう場面では笑うしかありません。

 また、サブタイトルの「前衛」をキッチリと物語の中に織り込んでいるのが上手いです。普通なら「前編」なのですが、この「前衛」を作中で描くことで、キャラの説得力が強固なものになっていて、シナリオの作りとして感服することしきりです。

 CGは相変わらずで、主人公の顔の崩れ具合はもう芸術級。「お前どれが本当の顔だ」とツッコミを入れたくなるようなCGが多いですし、下ネタシーンでは生々しい描写や間接的な描写でポカーンとさせられたり、本当にやりたい放題です。その代わり、女性陣のCGもしっかりと描かれていて、その点はかなり大きいですね。今作から高校1年として入学した弥月や、相変わらずの陽子、他にも斉藤のファンの女の子やクラスメートなど、セピア調で可愛く描かれたキャラがゲーム中で華を添えています。アニメーションも随所に盛り込まれているので、飽きることなくプレイ出来ますね。

 ミニゲームも相変わらず健在で、かなり難しい物ではありますが、番外編に比べると比較的易しくなってはいます。

「出すべき物は出す、出さざるべき物も出し惜しみせず出す」――自分はプレイしていて、こう感じました。しかもそれがプラスに作用しているのがまた凄く、ここ最近では味わったことがないような作風だと感じました。普通だったらもっとソフトにしてしまうような描写を、ストレートに描く。98でもこういう骨太でバラエティ豊かなADVゲームが味わえたんだなと、感激することしきりでした。本作は「前衛」と銘打っているだけあって「後編」も制作中のようですが、その発表が待ち遠しく思います。とにかく「凄い」ゲームです。是非ともプレイしていただきたいものです。とにかく「自己満足じゃ終わらせない、エンターテイメントシリーズ」だと言えるでしょう。

 なお、こちらのソフトは株式会社秀和システムから販売されている「Anex86 Windows95/98/NT/2000/Meオフィシャルガイドブック」にも収録されており、MS-DOSなどのシステムディスクなどを集めることなく簡単にプレイできるので、98シリーズを所持していない方はこちらのほうをご購入ください。


ファミコン後期スーパーファミコン初期の当時
にしては細かい描写だった。

凄まじい描写。
すいません、勘違いしました(何と)。

ヘガス魂の叫び。
その顔で言われると、凄まじい説得力が。

- おまけ・登場人物紹介 -


斎藤 浩壱
 葛飾野高校のパンクロックチーム『遊撃隊』において、バンドリーダー兼、エレキドラムを担当。強い正義感の裏に卑屈な性格が潜んでいる。井ノ頭陽子を(勝手に)愛している。
野笛 裕一
 パンクロックチーム『遊撃隊』においてエレキギターを担当する。IQ20000の天才。5歳でケンブリッジ大学を首席で卒業し、以後、5つのノーベル賞を受ける。

黒爽 輝
 パンクロックチーム『遊撃隊』においてエレキハーモニカを担当。何かとリーダーシップをとりたがるがチームワークは乱さない。慎重な男だ。
怒屋 健志郎
 新聞部のエース記者。これまでに彼の書いた記事には『葛飾野高校陰毛体育教師事件』などがある。なお、卒業生を送る会において『遊撃隊』のボーカルを担当した。

安木たかよし
 パンクロックチーム『遊撃隊』において、エレキオカリナを担当。中学時代に柔道とスイミングによって鍛え上げた己の肉体を愛している。
井ノ頭 陽子
 TKOプロダクション所属のアイドルタレント。現在は、新作主演映画の撮影で忙しい。高慢な態度とは裏腹に、実はナイーブな心の持ち主。

富沢 広史
 パンクロックチーム『遊撃隊』において、エレキカスタネットを担当。変な顔の奥に秘めた実力は、計り知れないものがある。普段は静かなる男。
玄海 弥月
 呪道師・玄海の孫娘。1で事件に巻き込まれた後、2では新一年生としてレギュラーとなる。祖父思い、先輩思いの優しい女の子。


※1 格闘ゲームパートについて
 Anex86では実機BIOSからのフォントの吸い上げが必要(体力ゲージが表示されず)で、NekoProjectIIではキャラが表示されない(黒ベタで表示される)という不具合があるようです。

※2 ソードダンサー
 1994年に発売された、TGLのデビュー作。格闘RPGという風変わりなジャンルで、アクションゲーム用のスペックとしては物足りないPC-9801のマシンパワーを極限まで発揮したゲームで、そのゲームスピードは目を見張りました。なお、ファーランドサーガ以後のTGLのことは、当方は一切関知致しません。

※3 探偵団X
 1989年、ハート電子産業(現・インターハート)発売。もうバカゲーと言うしかないソフトで、アホというかバカ空気満点の作品。いきなり主人公が鼻血垂れ流したり「夢幻戦士ヴァリス」やら「スナッチャー」やら「ソーサリアン」「スナッチャー」やらのパロディーが満載。ゲーム内容のほうはと言うと……でしたが。尚、続編の「帰ってきた探偵団X」ではかの名作STG「R−TYPE」までパロるという暴挙に出ています。

※4 WILL
 1985年、スクウェア発売。スクウェアは今現在もあるあのスクウェアで、前作「デス・トラップ」の続編。シンプルなテキスト形式のADVゲームで、現在搭載しようものなら他方からブーイングが来そうな「ハマり」(行き詰まり)システムを搭載。しかし当時では当たり前の要素で、プレイ時間が20時間を越えるのも当たり前でした(最短ルートで8分クリア出来ますが)。
「主人公・ベンソンは核爆弾が眠っているトリニア島に潜入し、地下のマザーコンピューターを停止させなければいけない」という内容で、一つ一つの仕掛けで頭を使わなければいけないハードなゲームでしたが、アイシャというアンドロイドのヒロインの存在が少々気分をやわらげてくれました。今現在でも、WILLは名作だと思います。