オリヴィエ様が聖地を去って間もなく、俺宛に差し出し人の名前がない手紙が届いた。
届けに来たのは、まだ幼い新人の夢の守護聖。
オリヴィエ様の後任者だった。
「……ありがとう」
受け取ると、俺はドアを閉めてからもう一度その手紙を見た。
白地に花模様が型押しされた、おしゃれな封筒。
俺は胸が高鳴るのを感じていた。
ペーパーナイフで、慎重に封を切る。

本当は宛名の文字を見た時から気付いていた。
それがオリヴィエ様からのものであることに。

「…………」
入っていたメッセージカードから、オリヴィエ様が好んで使っていた香りが立ち上る。
そこには、こう書かれていた。


『風の守護聖・ランディ様。
 元気? わたしは聖地を離れて随分遠くまで来たよ。
 もうここは宇宙の果てと言ってもいいくらいの場所。
 ……でもね、どうしても頭を離れないことがあるんだ。
 それはね、ランディ。あんたのこと。
 どんなに遠くへ行っても、忘れようとしても忘れられない。
 あんたいつもわたしのこと気遣ってくれたし、まっすぐな目で
 見ててくれたよね。わたし、そんなあんたのこと……
 わたしはスゴク好きだったんだ。もう会うこともないだろうから、
 手紙だけでもこの気持ち届けたくて。
 でも、恥かしいから……名前は書かないよ。いつまでも元気で、
 あんたらしくいてね。
 わたしは遠くから、あんただけを見てるよ』


俺は、手紙を抱き締めてその場に座り込んだ――――。



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