project DUNE act.3

「新義経記」 作・橘 凌

2000年11/10〜12中野ウエストエンドスタジオにて公演致しました。

兄蔵はこの公演に音楽の生演奏という形で参加致しました。

兄蔵が芝居の音楽制作で参加するのは今回で三度目だ
生演奏で参加するのも三度目です。
でも、今回の参加はあくまでも裏方のお仕事なので
精神的に参りました...
実を言うと色々理由もあるのですが兄蔵が頭を丸めたのも
この公演の成功を願ってのものでした

今までの作品は、どちらかと言うと精神芝居で
幻想的な演出が必要だったので兄蔵の音には比較的合いやすいものでした
でも今回は、時代劇でした...
しかも本格的な、殺陣があったりします
当然完全な裏方になるので、仕事の依頼が来た時点では
生演奏なんかは考えてなかった...
〆きりは、確か9月末日

シナリオを読んである程度のイメージで曲を作り出しました
でもなんかいつものペースにならないのです。
役者がそろうまで時間が掛かったせいもあるのですが
稽古の進み具合が余り思わしくなかった
挙句にキャストが寸前で降りたり...
確か締め切り前に、稽古を見に行ったのだが
11月に本番を迎えるとは思えないしあがりだった。
この時点で、何曲か出来立ての曲を持っていって
読み上げを通しでやってもらって、台詞に会わせながら
半分即興で、セッションのような気持でやってみた
本来ならこれがDUNEにおける兄蔵の音楽のやり方なのですが
イマイチつかみ所が無い...

そして〆きりが来たのでちゃんとした形で音を作ろうと思い
葉山のスタジオまで足を運んだ...
で3曲を録音することが出来ました。
ある程度はこの主要な曲からシーン毎に崩していって
BGMを作ろうと思っていた...

今回のDUNEには「新橋 りょう」が
役者兼演出をしていた、彼女はかなりセンシティヴな人間で
実力も年齢の割にはある方である
だが、今回の芝居は役者と殺陣組会わせて総勢11人を束ねなくてはいけない
今回が初演出ということもあってか、脚本の「橘 凌」に頼りがちに見えた
大きなお世話だったかも知れないが、ある程度
芝居にテンポがつけば...と思い
今までの芝居のような感覚で生演奏を申し出てみた
すると、彼女は快く兄蔵に居場所を与えてくれた。
さてさて、コレからが大変だ。
なんせ時代劇だ!シカも役者達はこんな形で音楽が参加するなんて
思っても見なかったようだ。
何か見えない壁があり、どうしても彼らとの距離を感じた

現実何度か稽古に行ってもあまり兄蔵は必要とされてるような気がしなかった。
でもはじめてしまったものは仕方ないので、やり遂げる覚悟を決める。
役者の中には、何人かは面識のある方がいたが
最初のうちは本当に難しかった
ご存知の方も多いかもしれないが、兄蔵は大勢の人に混じるのが苦手な方なのです
そんな自分が、稽古に顔を出せばやっぱりストレスを感じますね
進み具合もあいまって、あせりもありました。

そうこうしてるうちに、本番前の最後の通し稽古の日が来た

役者達の曖昧なテンションは相変わらずだった
でも救われる部分もあった。
役者達が兄蔵の音にちゃんと反応してくれるようになってた
問題は多々あるが、兄蔵的にはバンバンザイなのです。

そして仕込み

兄蔵は当初仕込みの日は、ゲネが無いと云う事で参加する予定ではなかった
音響のブースに兄蔵がベースを弾くスペースを確保していてくれたら
特にそれほど大きな音を出す予定でもないので
PAに関しては備え付けのものを使う予定でした
でもやっぱり、荷物も多いことだし
何か手伝うこともあるだろうと思い、この日も出席した...

だが

案の定兄蔵にこの日仕事が無かった
音響ブースのセッティングなんかは10分もあればできてしまった
後は、途中で両面テープを2回買いにいった位で全然暇でした...

仕込みではかなり混乱があったようです
ホール自体一見よさそうに見えるのですが、管理がズサンなせいか
印象は最悪に近いものがあった
使って良いはずの布や、幕が不可になってたり
ホールを予約した時の、条件が少し変わってしまってたようなのです
話によると、ホールの担当者が変わってしまったとかで...
とんでもない話だ!確かにネームバリューは多少あるが、横柄ではないか?
何かもっと正式な説明があってしかるべきだと思う!
きっとコチラがまだまだ新しい団体で、要領を得ていないものだから
適当に扱われたのだろう。
とにかくこのホールの従業員は、態度の悪い人間ばかりが目についた。
次の日だが、20分も遅刻してきて、入り口の前で15人も待たせといて
挨拶はおろか、謝りもしない人がいたり
入り口の前に、パンパンに入ったゴミ袋を三個置きっぱなしにして
いつまで経っても、処理しようとしないので
コチラのスタッフが聞きにいったら、「入れとく!」とか意味不明な言葉で怒鳴られるし
建物自体地下が劇場で、その上は音楽の練習スタジオになっていた
この構造も、何かやな予感がした...
静かなシーンの多い芝居なので、音が漏れるのでは...?と思ってたら
案の定、初日の本番の静かなとこでヘビメタの当ても無く続く強引なリフが
天井から漏れているのが良く分かった
一体なんだ!この会場は!良くこんなイイカゲンな構造のホールで
あんな大金を取るものである。
はっきりいって迷惑である、練習スタジオや貸しホールで商売するなら
防音設備などはもっと強化するべきである。
その資金が無いなら、ホールが使用されてる間は
スタジオのレンタルを休止するとか対処が必要でしょう!
ま〜以上のようなこもあり、兄蔵はご機嫌斜めのご様子なのでした

本番初日

この日は、照明さんのシューティング等があってから
お昼過ぎに、ゲネが始まった。
考えてみたら、スタッフも役者も全員そろった状態で
このシナリオを通すのは,この時が初めてだった。

ゲネの手応えは、中々のものでした
今までの通し稽古からでは、想像もしなかったほどの出来でした
「コレなら大丈夫!」
胸を張って、お客さんを呼べる!!!と言いつつもう2時間後には初の本番だ

本番1回目

ブースで兄蔵は待機しながら、疲れた両腕と共にまだゲネの余韻を引きずっていた
さて、役者達はどうなんだろうか?
ゲネで体力使い果たしたのか...?
皆の気持が混乱しているようだ、テンションが空回りしてる
そして、静かなシーンでは、天井からヘビメタが容赦無くリフを展開しているのがしっかり聞こえた。
兄蔵も流石に腕が疲れ始めている...ダメジャン

こんなことで良いのか!!!まーヘビメタはもう対処のしようが無いので仕方ないが
役者のテンションの張りの無さ...
もうこうなったら、じたばたしても仕方がないので、やることは基礎練くらい
でもよう,そう言えば、基礎練あんまり見た事ないぞ
と、思いながら兄蔵は黙々と基礎練をしていた

二日目 本番2回目・3回目

さてさて、昨日来た方々には失礼だったが
2時間の舞台の1日2回公演の怖さを知った役者やスタッフには
もう怖いものはほとんど無かった!!!
本番も良いテンションを保った
ただ、台詞を飛ばしたり、かんでしまう役者がいるのが気になった
心なしか、声も小さくなってるような気がする...
実は掛けだったのだが、声の聞き取りにくい役者には
意地悪に思われるかも知れ無いが、わざと台詞にかぶらせて煽るような形で
ベースの音を大きく合わせてみた
するとま〜、ちゃんと聞えるように喋ってくれるようにはなった
のですが
新橋にもう一度、各自の自覚のもとに
基礎練をしっかりやるように進言してみた...

この日の夜の部の出来は、今までの中の最高の出来という事になったが
兄蔵はそうは思わなかった。
確かに悪とこもそれほど無かったが、良くも無かった
今のところ「最高はゲネだよ!」といったところ
誰も反論の言葉は出なかった...
やるからには、更に高みを望むのがここにいる皆の仕事
ここまで来たら、技術や思考ではなく気持で芝居を仕上げて欲しい
裏方の兄蔵でもそうなんだよ。

最終日 4回目・5回目

ここに来て、役者達の意識が少しづつ変わった来てるのが何となくわかった
役に自信がついて来ると、周りに対して良い意味で注意を払えるのか
役者達が兄蔵の音を必要としてくれている
また、楽器を持ってないときでも、対する目が優しくなってきてる
「傷ついた数だけ優しくなれた...」と言う唄が兄蔵にはあるのですが
まさにこんな感じ...また兄蔵自身もそうなのかも知れない
達成を目の前にした確信である
それぞれが、それぞれの役で自分の持てる最高の物を出せる自信
そんなのが役者達の表情に映っていた。

昼の部が終わった...
ナンだか最高の気分だ。良い余韻でした
少しなれ過ぎて若干まったりしてしまったが、まずまずの出来だった
次まで、余り時間が無い
忙しいついでにナンだか幽霊騒ぎまで起こってしまった!!
おおあらわ結局時間がなくなってしまった!

最終公演の前に兄蔵は幽霊騒ぎがあった楽屋回りをチェックしていた
あと10分でお客が入ってくる...
兄蔵は無意識に役者達に声を掛けた

「ラクです!皆さん!ヨロシク御願いします」

たったコレだけだったが、多分全員が反応してくれた。
考えて見れば、初めて兄蔵から役者達に話し掛けた言葉だ
なんか、凄く良い気分だ。

きっとコレが終わったら、もっと凄く気分良いような気がした。ブースに入ってから
兄蔵の携帯用の掲示板にこんなことを書いていた...

「実は今から芝居の最終公演。
兄蔵はブースにて待機中です。
時代劇やっぱり難しかったです。
考えてたより裏方度が高いので疲れる。
でも、良い芝居になればそれでいい。
誰にも出来ない事をやりとげた充実感は
これからも続けて行くであろう音楽に
又一つ大きな自信を与えてくれるでしょう
では参ります。

いよいよ最終公演

役者達は、はっきりいって、空回りに限りなく近いテンションで挑んでいた
かく云う兄蔵も余裕なんてありゃしない。
2時間に及ぶ演奏をもうこの三日間で五回もやっている
20年以上弾きつづけている強靭なはずの手首や指先が限界のサインを出していた

でもこれこそが、兄蔵が参加してる芝居の醍醐味なのでしょう
コントロール不能の高揚憾、脳内麻薬が分泌されている
役者達は、物語の中でそれぞれの役の人物の最高の人生にふれ
それを又、堪能しているかのように演じる
こんな感覚、培った技術なんてほとんど関係無い
台詞回しは未熟な面も多々あったが、もう気にはならなかった
むしろ、それそのものが生きた言葉のようだった。
技術やセオリーでは、きっとこんな芝居は出来ないだろう

少し残念だったのは、「清乃・尚子」役の役者さんが殺陣のシーンでケガをしてしまった
にもかかわらず、彼女は最後までしっかりと役をまっとうしてくれた。
顔の怪我だったので、彼女の役者活動や人生に影響が無ければ良いのですが...
一緒に芝居を創った仲間として見守っていきたいと思う
彼女の頑張りもあって、このシナリオは幕を閉じることが出来た

そして終演

しあがりそのものは大して良い点数がとれるものではなかった
けど、気持の面ですばらしい公演が出来上がっていた。
アンケートに目を通してみてもわかったったが
しっかりと、シナリオにある気持が伝わっていたようだ
やり終えた自信が、皆にみなぎっていた
こんな良い気分は初めてだ


終わってみて皆でバラしをはじめる
兄蔵と役者達の間にはもう、最初感じられた距離は無かった
ワイワイがやがやしながら手っ取り早く片付けた
珍しく、皆ともっと一緒にいたかった...
兄蔵の居場所を空けててくれてありがとう
ホントにありがとう
そしてカンパイ!!!

Project DUNEのホームページで
「新義経記」に関する詳しい情報
役者の稽古日誌や、作者・橘 凌のぼやき
等など、ついでに兄蔵の曲のMP3配信までやってます
ドウゾ遊びに来て下さいね

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