『囚われの宝石』

 時間軸を切り離され彷徨うキミ
 どの世界も切り離され漂うキミ
 眠ることだけ許され
 考えることは出来ず
 時間軸を切り離され漂うキミ
 眠気、痛み、光、何も無い

 輝きすら閉じ込められ、ただの石に
 目に映るは暗闇のみ、蹲るキミ
 迎え来る人を待って
 動かない時の中で
 輝きすら閉じ込められ蹲るキミ
 悔恨、懺悔、救済、キミは居る
 色彩、姿、楔、キミは死ぬ





『花の慟哭』

「泣いてるの? 寂しいの? 怖いの?
 キミの花は、もう無いけど…
 泣かないで、枯れないで。
 夜の庭で、静かに、鮮やかに、
 ひっそりと咲く、一輪の花。
 泣いてるの? 泣いてるの?
 全てを突き刺す、キミの声」

 夜の淵で咲く
 絵姿艶やか、キミによく似て

「泣いてるの? 痛いの? 思い出したの?
 キミが咲くべき、あの大木は、
 切り倒されて、もう無いけど…
 月の庭で、花びらに、
 光の雫と、赤い涙を、集めて。
 泣いてるの? 泣いてるの?
 全てを切り裂く、キミの声」

 闇の淵で咲く
 寝姿、ほのかにキミを死なせて

 ただ会いたくて
 ただ寂しくて
 ただ咲きたくて
 ただ生きたくて

「泣いてるの? 苦しいの? 悔しいの?
 キミの墓標は、遠い山の中。
 伝承の中、物語の中。
 水の庭で、人形たちが待ってる、
 キミを待ってる。
 迎えの船も、やって来たから。
 泣いてるの? 泣いてるの?
 全てを壊す、キミの声」

 黄泉の淵で咲く
 人型、花影、キミによく似て

 ただ会いたくて
 ただ寂しくて
 ただ咲きたくて
 ただ生きたくて

 迷いの家に影法師
 締め付け結べど、いかなるものも
 あの日の山で咲き誇り、あやかしになろか

 死んでここで咲く





『幽霊船の少女』

 常闇に隠された神々の国へ
 海を渡る夢幻の汽笛が響く
 舵を取る骸骨、異形の船員達と
 肉体から離れた迷子を乗せて

 囚われの宝石よ
 花の香りの少女よ

 忘れられた国の秘密の魔法を
 絶望の海の中、漂う人へ
 血で描かれた絵本抱きしめる少女
 三日月が光るように魂を刈る

 まほらに咲いた花よ
 偽の「少女の命」よ

 救済を、安らぎを、今

 眠りの淵に居て明けぬ夜を見るキミを
 あの娘が迎えに来る
 キミのために、キミのために

 異端と葬られた神々の国へ
 幽霊の船は行く
 黒い霧から遠ざかる世界に
 別れの汽笛を轟かせ永遠の楽園の地へ

 祈りの黒き風よ
 機械仕掛けの双子よ

 救済を、安らぎを、今

 光の日々を見ず夜に飲まれてくキミを
 あの娘が迎えに来る
 キミのために、キミのために

 明けない夜を行く全てを迎える船よ
 あの娘が迎えに来る
 キミのために、キミのために





『もう寝るし』

 夢の中で見てたのは遠い街
 ねぇ、どこに居るの
 呼ぶ声は眠気の中

 眠たい、とても眠たいの
 眠たい、とても眠たいの
 だからもう一度、旅しに行くよ
 知らない街を見に
 知らない誰かと会いに
 だからまだ寝るし
 まだ寝るし、まだ寝るし
 まだ寝るし

 微睡む目に見えたのは銀の月
 もう大丈夫と部屋の隅、微笑むのは

 眠たい、とても眠たいの
 眠たい、とても眠たいの
 なぜか懐かしい気持ちになる
 女神に抱かれて
 お迎えの少女の声
 眠気
 もう寝るし、もう寝るし
 もう寝るし、もう寝るし

 生きてるの飽きちゃった
 夢でずっと住もうかな、って♪

 御伽の国、お散歩して死体見た
 ねぇ、あなたは誰?
 会ったことも無い人なのに

 眠たい、とても眠たいの
 眠たい、とても眠たいの
 だからもう一度あなたに会うよ
 知らない夢の中
 これからそちらへ行くよ
 だからもう死ぬし
 もう死ぬし、もう死ぬし
 もう死ぬし





『キミは死んだよ』

 キミの夢を見たよ、淡い明け方
 キミの声を聞いた、そんな気がした
 誰も居ない部屋に
 明かりを灯すキミの姿を見た
 そんな気がした

 ただいま、と言う声はなく
 ただいま、と言うキミはなく
 キミは死んだよ、キミは死んだよ
 キミの明かり消すよ、おやすみなさい

 突然消えた日々に戸惑うこともなく
 変わらぬこの世界を見つめ続けてる
 なんにも思い出せず心は晴れやかで
 だけれどキミはすぐに全てを知るだろう

 鏡に姿なく、誰にも気付かれず
 やがて見つけ出したよ
 キミの死体を

 キミの夢を見たよ、短い朝に
 キミの姿見たよ、暮れゆく街で

 ただいま、と言うキミはなく
 ただいま、と言う人もなく
 キミは死んだよ、キミは死んだよ
 キミの光消すよ、おやすみなさい

 突然消えた日々に理解は追いつかず
 戻れぬこの世界を見つめ続けてる
 帰り道すら忘れて彷徨い歩くキミ
 帰る場所すら忘れて、どこにも行けずに

 自分の肉体を探してみたけれど
 残念、キミの身体、既に処理済み

 キミの夢を見たよ、おぼろげな夜
 泣かなくても良いよ、迎えに行くよ

 ただいま、と言うキミはなく
 ただいま、と言う場所もなく
 キミは死んだよ、キミは死んだよ
 キミの明日を消すよ、おやすみなさい
 キミの夢を消すよ、おやすみなさい





『花の香りの少女』

 レースに花散りばめキミを見つけた
 赤い糸で編む桜の記憶
 濡れた草原の上、キミと二人で
 桜に染まる風が髪をくすぐる

 ほのかな明かりの一つ一つには
 春風の淡い香りを
 花びら一枚、傷口に変えて
 フェルトの上でも狂い咲きする
 街灯の明かり消えゆく頃には
 凍える身体を抱きしめ
 花明かり一つ、私は消えゆく
 鮮やかな色に染まりゆく朝へ

 白い光を浴びて行き交う人へ
 夜に埋め尽くされた花の秘密を
 髪を撫でる春風、錆の匂いで
 足跡すら朽ちてく、キミの面影





『黒い風の祈り』

 消えた夢をずっと見てる
 遠い遠いボクの記憶
 消えた道の果てを見たい
 ボクは今も祈るよ
 風見鶏が示す先へ
 淡い甘い香り乗せて
 消えた道の果てを目指すキミを
 ずっと見てるよ
 春風の中、鮮やかに舞う
 花びらのような日を

 花の夢をずっと見てる
 遠い遠い春の記憶
 花を揺らす祝福の日
 ボクは今も見てるよ
 花明かり降る懐かしい夜
 黒い草原の火

 ボクに見せてください
 あの日消えた夢の続き
 そっと見せてください
 ボクにくれたキミの涙を

 遠い夢を今も見てる
 長い長いボクの眠り
 暗い夜を花に変えて
 ボクはずっと祈るよ
 春の日々に降る艶やかな雨
 キミの旅路に降る

 ボクに見せてください
 あの日消えた道の果てを
 そっと見せてください
 光浴びるキミの姿を





『FAIRY ≒ RAY』

 陽射しはすぐ闇に消え
 月の森で待ってたよ
 迷い込んだ夜の中でキミを迎えに
 夜の空に星はなく
 妖精たちの明かりで
 蹲って眠るようなキミを迎えに

 だからずっとキミを見てるから

 天使なんかじゃないよ、キミを守るよ
 泣かなくても良いように私が傍にいる

 絵本の中で見たような
 世界を見せてあげたい
 花の中で眠ってるキミを迎えに

 だからずっとキミを見てるから

 天使なんかじゃないよ、キミを守るよ
 泣かなくても良いように私が居るから

 天使の羽根折れても夜に隠れて
 妖精なんかじゃない、私はここにいる





『NURSE CALL』

 呼んでるよ「あの子が来るよ」と
 病室の一番奥から  呼んでるよ、叫びが聞こえる
 ベル鳴らすボタンを握って

「ねえ、来て、早く! 私が死んじゃう!」

 鳴り響くコールの音色と
 たくさんのナースの足音
 鳴り響くガラスの散る音
 泣き叫ぶ患者の悲鳴が

「ねえ、来て、早く! 私が死んじゃう!」

 鳴るナースコール、早く来て
 ナースコール響け

 呼んでるよ「あの子が来たよ」と
 病室のベッドの上から
 呼んでるよ「迎えが来たよ」と
 泣き叫ぶ最後の悲鳴が

「ねえ、来て、早く! 私が死んじゃう!」

 鳴るナースコール、早く来て
 ナースコール響け
 死のナースコール
 救済のナースコール





『LYCORIS』

 途切れてく光ぼんやりと見てる
 暗がりの中で座り込んだまま
 いつの間にか咲いたの
 暗い道を彩るように
 いつの間にか咲いたの
 終わりもなく続く

 途切れてく声をぼんやりと聞いて
 暗がりの果てへ、ふらついて歩く
 誰のために咲いたの?
 暗い道を歩く人へ
 誰のために咲いたの?
 道を照らす明かり

 キミのために咲いたよ。
 迷わないで、泣かないでね
 キミのために咲いたよ。
 今、迎えに行くよ

 キミの足跡に赤い花が咲く
 旅立ちの見送りのため
 キミの足跡に赤い花が咲く
 片道の旅立ちのため
 火のように、血のように咲き乱れ
 咲き誇れ





『機械仕掛けの双子』

 回る歯車と電気の血液
 機械仕掛けの少女、眠りを知らず
 柔らかな皮膚の下は鉄の肉
 機械仕掛けの少女、夢を見られず
 体の中では鉄の軋む音
 機械仕掛けの少女、空を見上げる
 眠ること、夢見ることなど叶わぬこと
 記録したデータで少女は空想する

 同じ体して双子で作られた
 機械仕掛けの少女、一人になった
 せめて眠れれば夢で逢えるのに
 機械仕掛けの少女、動き続ける
 眠ること、夢見ることなど叶わぬこと
 記録したデータで少女は空想する

 双子の姉は今、データの中だけに居て
 双子の妹は、陽射し浴びて駆けてく

 せめて眠れれば、夢を見られれば…
 機械仕掛けの少女、動き続ける
 回る歯車と電気の血液
 機械仕掛けの少女、涙を溢す
 眠ること、夢見ることなど叶わぬこと
 記録したデータで少女は空想する

 役目を終わらせて動力停止さえすれば
 寂しい機械にもあの娘が迎えに来る
 双子の姉は今、データの中だけに居て
 双子の妹は、陽射し浴びて駆けてく





『死体偏愛性』

 苺の香りするカクテルの中で溺れるキミは
 今宵の月の色、知らないまま夢の中へ
 混ぜておいたの粉薬
 キミの鼓動をこの手に感じ続けてる
 磨いておいたの、このナイフ
 キミを綺麗に飾ってあげるから

 ハチミツ塗りたくる
 どろりとしたたる甘い雫を
 今宵の蜜の味、知らずに眠り続けるの
 夢の淵でも抱きしめるキミは
 ダミーの愛情、私にくれるの
 意識途切れる寸前に
 せめて温もり少し思い出して

 血、吹き出して霞んでく世界
 赤い夢の中、奥底に浮かび泳ぐ

 葡萄の香りするソーダをかき混ぜ
 砂糖菓子つまみ
 今宵の月の色、微笑み頬張る
 絞めておいたのキミの首
 二度と逢えないと心に決めていたから
 燃やしておいたのキミの写真
 未練感じて寂しくないように

 トマトの味がするカクテルの中で微睡む私
 今宵の月の味、一人で楽しみ眠るの