『壊れた世界で』

 瓦礫の上で眠って死んだ朝日を迎えた
 微睡みの中、私に告げるその声
「キミの為に輪を作れ」と
「なお生きよ」と
「思い出せ」と

 歪んだ時の欠片と鱗散りばめ弔う
 語ることなく花を手向け続けてた
 キミの為に泳いでいる
 歌っている、悶えている

 キミよ、まだ遠くに立つキミよ
 キミはまだ思い出せず
砂時計返すように何度でも呼ぶよ
 キミよ、まだ目覚めないキミよ
 キミをただ宿している

 壁のひび撫で淡々と死んだ夕日を見送る
 広場で一人、夕闇飾る人影
 キミの為に道を示す
「なお息め」と
「産み落とせ」と
「キミの為に輪を作れ」と
「なお生きよ」と
「火を灯せ」と
「光有れ」と





『UNDULATION -胎動‐』

 時の流れを泳ぎ再生の日へ
 在りし日の香り包む風を背に受けて
 橋を渡る人が語る天界の夢
 潮騒に揺れる花を散らす雨の音

 貝の火を愛でながら眠る
 夕立に洗われて「おかえり」と告げる
 キミが恋しい、キミが恋しい
 舞う風にも乗せた響きは
 まだ遠い日のうねりの中

 潮の流れを泳ぎ果ての岸辺へ
 懐かしい音を包む細胞の記憶

 引き波に花を撒き眠る
 夕立に洗われて「ただいま」と告げる
 キミが恋しい、キミが恋しい
 淡い夢を窓辺に見せる光の帯はうねりの中
 キミの感触、キミはもう来る、うねりの中
 待ち続けてた私は未だうねりの中





『驟雨』
 亡き人の記憶、宿り木は倒れ
「ねんねこよ」と歌うよ
「ねんねこよ」とキミの為
 微かな夢消えて

 彼女には夢を、淡い無垢の夢
「良い子だね」と歌うよ
「良い子だよ」とキミの為
 キミの日は産まれ

 亡き地図の果て
 白露浴びて息吹き返す細胞の火を
 人には告げよ、血に濡れ癒す雨

 幻燈の花をさざ波が描き
「ねんねこよ」と歌うよ
「ねんねこよ」と明日の為
 キミの火は消えず

 水晶の砂、花梨の花を
 握りしめては水面へ伏して
 遠くで沈み視野覆う影
 人には告げよ、血を食み癒す雨





『TALE -細胞の記憶-』

 血の道を行け、火守の巫女よ
 子宮の中でなお彼の地に生きて
 海の旋律奏でる泡と
 人魚が産み落とす再生の日へ
 幾重にも幾重にもキミを想うよ
 火を宿し、火を宿し…

 魔の道を行け、堕胎の姫よ
 消え行く火の森の木漏れ日忘れ
 花園の奥、眠るドールよ
 記憶の紐手繰り島へ導いて
 来る日々も来る日々もキミは犯され
 血を吐いて、血を吐いて…

 生まれ変われよ、流れの中へ

 死の道を行け、星の娘よ
 異形の国でなお彼の地を目指し
 時計の針を歪めて翔ける
 翼を持つ人の「標」手にして
 何度でも何度でもキミは求める
 火の日々を、火の日々を…

 楽園消えて、花を散らして
 再び舞えよ、巫女よ、彼の地で





『明日への投影』

 キミの夢を見ていた、祈りの朝に
 血管をめぐる記憶で火を灯してる
 イドを乗せてさまよう船の航路は
 鉄の匂いの海を私に見せる
 また来る光の花は
 過去から続く海へと

 降り注ぐ日差し浴び、砂を掴んで
 天使の立つ塔から迎えが来る日
 また来る鈴の音色は
 遥かな夜へ戻れる

 夢の狭間で漂うキミをここで見つけた
 淡い色で塗りつぶされたキミ
 おいで、この日へ

 キミの夢を見ていた、青い景色に
 35mの底、泳いで応え
 また行く炎の影は、明日から続く海へと

 雨が消えたキミを彩らせ、果てなくめぐる
 泳ぐ魚の中で眠るキミ
 おいで、この日へ





『ECLIPSE -雨の国の人魚姫-』

 塔の上でキミの火を見た
 響く潮騒、時のエコー
 キミを夢で遊ばせてた日
 遠くで集う船に乗せて

 深い夜に隠れ脈打つ箱舟のよう
 航路を行く
 キミを月に映していた日
 広場を翔ける風が讃え

 月は欠け
 降りてくる螺旋のハレーション
 雨の止んだ刹那に
 キミの為、身を投げる夜

 塔の上でキミを見たような
 懐かしい声聞いたような
 キミの血潮混ざり合う日は
 欠けた月夜に終わりを見る

 残響音
 産まれ来る螺旋のハレーション
 霞む視野の片隅
 道を行くキミを見たい

 人魚の祈りの果て
 最後の月夜の見せた景色に
 咲いた花の色は燃え
 人魚の旅路の果て
 月明かり濡らす雨露に迎えられ
 キミの還る日に





『RING -再生の日へ-』

 RING 再生の音
 RING キミの物語
 RING 月宿す海
 RING キミが始まる

 RING 痛みの唄を
 RING 人魚姫の夢
 RING 雨に打たれて
 RING キミの物語

 遠い日の砂浜で
 落ちた火の子抱き締めた
 海の流れに揺られ時を待つ日々
 雨の天使に抱かれ
 セルロイドの花が散る
 暗い水の回廊さまようキミへ

 RING 再開の海
 RING 終着地の海
 RING 生まれ落ちた火
 RING 紡ぐ物語





『あぶくぶくぶく』

 あぶくぶくぶく
  キミの記憶、波のしぶきで弾け惑う
 あぶくぶくぶく
  雨の国で光の粒を
 あぶくぶくぶく
  キミの姿、水面に消えたあの日の火を
 あぶくぶくぶく
  海の底で再生の火が浮かぶ浮かぶ
 あぶくぶくぶく
  キミの影は羊水の海、揺れて遊ぶ
 あぶくぶくぶく
  夜の奥で雨の雫を浴びて浴びて
 あぶくぶくぶく
  キミの声を想う波濤に消える泡よ
 あぶくぶくぶく
  雨の国の時の砂山
 あぶくぶくぶく
  キミの体温溶かし包んだ海の明かり
 あぶくぶくぶく
  海の底で再生の日へ泳ぐ泳ぐ

 雨降る夜へ、深みで眠る泡は弾ける
 ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち

 あぶくぶくぶく
  キミの脈を感じるたびに泡は踊る
 あぶくぶくぶく
  雨の国の天使の話
 あぶくぶくぶく
  キミの吐息、泡と弾けて雨に宿る
 あぶくぶくぶく
  雨の国の人魚の話
 あぶくぶくぶく
  キミの姿、水面に消えたあの日の火を
 あぶくぶくぶく
  遠い海の珊瑚の色を映す映す
 あぶくぶくぶく
  海の底で紅い宝石、眠る眠る
 あぶくぶくぶく
  遠い海の貝の墓場へ届け届け





『UMBILICAL CORD -結ばれる世界-』

 あの時にも聞いてた歌が
 遠くどこかで聞こえたような
 まだ眠気が覚めない日には
 ただ包まれ眠りの中へ

 夕立浴びて微笑む砂浜の人魚
 雲間に見える陽射しへキミが帰る日に

 血の流れる音聞き眠る
 でも私を思い出せない

 ガラスに響く雨音
 キミの心臓の音聞く紐をほどいて
 キミが還る日に

 夕立浴びて微笑む砂浜の人魚
 雲間に見える陽射しへキミが還る日に





『11月4日の手記』

 何もかも無くし彷徨う日々は
 暗い海底に残されたよう
 眠れない夜の果て
 睡眠薬の代わり
 昔の光を眺めてただけ
 無慈悲な朝には胸を裂かれる
 心臓鷲掴み潰されるよう
 いくつもの層を抜けようやくたどり着いた
 雨の降りしきる世界の果てへ
 キミが還る花の宴、炎孕む花の園、海に

 また泳ぐために始まりの音探し続けてた
 遠い海まで続くいくつもの河
 投影された景色くぐり9番目の街まで着いた
 キミが帰る海の月、炎宿し産みの月
 血が流れ染まる海覚えてる、ずっとずっと
 血だらけのキミの声
 抱き締めることが出来ずに、永久に

 流れの分岐点
 橋の上にベリルの守り石置いてきたの
 風が運んだ故郷の日
 ほのかに光る珊瑚の色をして
 旅の終着点、雨はやんで
 坂を上がった場所で天使と逢った





『SAIL -葬送-』

 海風に揺れる火、夕立によく香る
 花を積んだ船が行く、キミの元へ
 雲間にのぞく月、夕凪によく燃える
 島を目指し船が行く、キミの島へ
 雨音に響くのはキミの鼓動、息遣い
 遠くまで行けるはず、光降る帆を張って

 花びらを揺らして夕闇彩る風
 影を乗せて船が行く、キミを乗せて
 雨音に消えるのはキミのいた日々の夢
 遠い国見るために雨に濡れ帆を張って

 火影に映る日々、海鳴りに応えて
 濁流越え船が行く、キミのために
 雨音に喘ぐのはキミが残した記憶
 時の中、物語紡ぐため帆を張って

 雨音に響くのはキミの鼓動、息遣い
 遠くまで行けるはず、光降る帆を張って





『エイル』

 音も無く海の中積もる光の花びら
 幾度でも夢に見た景色、遠い島の日々
 ひとひらの光降る、ひとときの花となる 

 海の底、月の輪が見える雨のやむ刹那
 人が行く街の片隅で貝の火が燃える
 ほろほろと降り注ぐ、ほろほろと零れ落ち

 天使の羽舞うこの場所で
 空へと舞いあがる海風

 広場には花を売る娘、塔の影高く
 優雅にも舞う鳥の群れは今も讃えてる
 海色の人魚姫、海風に消えた歌

 花束たずさえ砂浜へ、海色のベリル握って
 あなたが残したこの夢と雨音の福音伝えて
 花束あげるよ人魚姫