始まりはいつも唐突なのですにゃ。

 クリアカラーな、ピンク色したカセットテープ。全てはこれから始まるにゃ。これを東北自動車道の、とあるサービスエリアの売店にでも置いておいたにゃ。もちろん、ジャケットは適当にデザインしておいたにゃ。なんかネコのイラストを描いておいて、タイトルは適当に『ヘヴンねこスーパーベスト』とか書いておいたにゃ。でも値段は5000円(税別)と書いておいたにゃ。きっとこれで、よほどの変わり者しか買わないはずにゃ。そんな変わり者を待っていたにゃよ。
 当然、手に取る人はいても買う人はいなかったにゃ。それもそうにゃ、5000円は高いにゃ。でも、それで良いにゃ。変わり者でないと。しかし、ある日それを買う者が居たにゃ。プレミア物のカセットテープでもないにゃ、適当にタイトルつけておいただけのカセットテープにゃ。買ってくれた人は変わり者にゃ。変人にゃ。5000円は高いにゃ。
 その者は車に戻り、サービスエリアを出たにゃ。その者は早速カセットテープを再生したにゃ。
 さあ、始まりですにゃわー。


 さてさて、時代は飛んで、ここは日本のとある都ですにゃ。綺麗な女性が一人、都を出る為にとっとことっとこ歩いていますにゃわー。あえて男装をして、太刀を携え、凛として歩いて行きますにゃ。彼女の正体は蛇にゃ。都の近くに住む蛇神の娘にゃ。要は蛇姫様ですにゃ。彼女は生まれつき持っている凄まじい妖力を駆使して、様々な術を使えるのにゃ。他の人から見れば、まあ、当時流行の陰陽術みたいに見えたのですにゃわー。名前は美鈴といったにゃ。
 彼女が従者も付けず、一人でわざわざ都を出た理由? それは追々話していくにゃ。彼女は蛇神の娘ながら、都のとある貴族に仕えていたにゃ。彼女はその貴族の一人娘である姫に相当なつかれていたにゃ。その姫が屋敷を去った、それから日を置かずのことだったにゃ。蛇姫様も旅に出ることにしたのは。姫の父親であり蛇姫様の仕える主人でもあった貴族の男は当然「お願いだから行かないでくれ」と止めたにゃ。彼にとっては蛇姫様も娘みたいなものだったからにゃ。でも蛇姫様は申し訳なさそうにひたすら謝りながら屋敷を出てきたにゃ。とある目標の為に。

 そして蛇姫様は各地で残された記録に記されたように、あちこちに足跡を残していったにゃ。桜の里、水の姫神の地、火狐の村、鄙びた漁村、水晶の洞窟などなど。ただ、いつしか彼女の記録は途絶えてしまっていて、私たちですら現在地を把握出来ていないにゃ。それで良いにゃ。
 これがピンク色したカセットテープの始まりの方ですにゃ。これより前も記録はあるけれど、たぶん大して意味はないにゃ。蛇姫様の歩いて行った足跡をたどるにゃ。そしてそれとリンクしたり、しなかったりする物語も同時に追っていくにゃ。きっとそれが今回、最も良い結果を産むと信じて、さあ、私たちと一緒にたどってみるにゃわー。