林アキオ Lyrics&Songs
Vo&G.林アキオ
with "TELLY"




 きっと、余り認知されていなかったのではないかと思う。もしくは忘れ去られたのではないかと思うのが、この林アキオ。'90年にフォーライフよりデビュー。先に言ってしまうと、'94の『Honey&Toys』で活動休止。事実上、行方知れず。もう何年経ってしまったんだろう。それでも、彼の作品は、時折思い出したように聴く時がある。聴きたい音楽がなくなると、決まったように林アキオの作品を手にしてしまう自分が居る。ライヴは数回しか見れなかったが、あんな感覚を味わえる人は彼しか居なかったかもしれない。グルーヴ感に溢れた演奏と、唸りを上げるような衝撃的なギター・プレイは本当に「凄まじい」の一言に尽きた。まるで雷風が通り過ぎてゆくようで、見ている人間を釘付けにさせてしまうような引力を持っていた。


 初めて彼を見たのは、'93年1月のイベントだった。何気なく見たライヴ、そのライヴが終わる頃には完全に私の中に入り込んでしまった。ライヴを見ているうちに「この人は一体何者なんだろう」と思わせる、惹きつける"何か"を感じた。それが何なのかはハッキリしないが、今まで感じた事のない感覚を味わいながら私はステージから目が離せなくなっていた。『High Tension』のSingleを手にした時、何度も取りつかれたたように聴いた。夕刻の空が暗雲で覆われ、雷鳴が轟く怪しげな天気の日だった。曲を聴いた時の事など普通はあまり覚えていないものだが、とても記憶に焼きついている。あの、身体と脳がトリップするような感覚は今でも鮮明に甦る。


 アマチュアの頃はギタリストでもあったので、元々の気質はギタリストなのではないかと思う。フルアコから始めて、サブ・ギターとして買ったテレキャスターがメインに。そして、かなりの宅録魔だった。彼は、ライヴでエフェクターを使用せずアンプで音作りをしていた。それまで見たり聴いたりしたアーティストでも、エフェクターを使用せずプレイする人は居なかった為(そういう人は稀なケースらしく)、インタビュー記事を読み音のカラクリが判った時は感動したものだった。ギターも自分で中身を施し独特な質感を出していて、ギターに対するこだわり方も相当なものだったように思う。中低音域のリフが印象的で音圧は洪水のように押し寄せて来る。それは心地良く歪んでいて、ライヴでの壊れっ放しの姿は圧倒されたものだ。その反面、ノスタルジックな世界やロマンティックな面も感じた。スローなアコースティック・ナンバーでは、打って代わって繊細でしなやか。元々がフルアコから始めているせいか、アコースティック・ギターの余韻の残る響きも好きだった。彼の繊細さは硝子細工のような脆さのあるものではなく、水面の上に雫が落ちた時の波紋に似ている。一つ一つ紡ぐようなメロディが、その水面に漂っている。壊れ具合と繊細さのバランスは絶妙で、ギターは歌い、まるで身体の一部のように見えた。自然と聞き手の体も操られてしまう。テクニック云々というより、音そのものの雄弁さを持っていた。ひねくれていながら鋭く突いてくる詩の世界。リスペクトしている音楽を反映つつ、そこに溺れないメロディ。それは物憂げで優しく、破天荒でナチュラルだった。シンプルでストレートなのに何処か屈折していた。


 ソロ形態の人ですべてがいいと思える人は、私の中では滅多に居ない。でも、林アキオに関しては、バンドでなく完全に単独の個性で好きだと言い切れる。詩、曲、歌とギター。そこに放たれている彼そのもの。本人も自ら語っていた事だが、他の手が加わって欲しくないと思ってしまう。微妙なバランスで対極なものが混在している。そんな所に惹かれたのかもしれないと。時代に置いていかれない音楽をやれる人だと今でも思う。たった4枚のアルバムで終わるなんて勿体ない気がする。アルバムは当然のように廃盤になっているが、こんな人こそ埋もれさせたくなかった。半分は諦めているが、もう一度、たった一度でもいいからライヴが見たいという想いが今だ消えない。本当に才能のあるアーティストなど滅多に居るものではないが、私にとって、その中の数少ない一人だったかもしれない。


― 2001年5月記



DISCOGRAPHY
 Single
'92.7.17 『New Boogie
FORLIFE Records(FLDF-10213)
1.New Boogie
2.抱きしめたい
3.New Boogie(オリジナルカラオケ)
4.抱きしめたい(オリジナルカラオケ)
'93.3.19 『小さな世界
FORLIFE Records(FLDF-10237)
1.小さな世界
2. 2階の踊子
3.小さな世界(Instrumental)
4. 2階の踊子(Instrumental)
'94.3.18 『またお会いしましょう
FORLIFE Records(FLDF-10272)
1.またお会いしましょう
2.TELEGRAM SAM
3.またお会いしましょう(Instrumental)
 Album
'91.11.21 『GOLD
FORLIFE Records(FLCF-30118)
1.GOLD
2.GRANDAD
3.壁のヘリをはう
4.サンタは死んでトナカイは逃げた
5.BINNYの目論見
6.GROUND&GUN
7.ROCK HOUSE
8.Number 8 line
9.BRAND-NEW CAR
10.南へと航路をとれ
11.SUNRISE
'92.8.21 『Information Rock
FORLIFE Records(FLCF-30141)
1.New Boogie
2.Information Rock
3.Crying
4.抱きしめたい
5.576 Bond Blues
6.un title
7.何も言わずに
8.The Basic
9.彼女は出て行ったよ
10.いやな夢の後で
11.All My Life,All My Time
'93.4.21 『High Tension
FORLIFE Records(FLCF-30203)
1.RIDE
2.High Tension
3.小さな世界
4.君と毎日
5.She said, I said
6.Modern Life
7.Control
8.彼女の家に向かうところ
9.2階の踊り子
10.Oh!Groove
11.FADE
'94.3.18 『Honey&Toys
FORLIFE Records(FLCF-30239)
1.Roll Over
2.Bird
3.Hi-Fi
4.Love or Tax
5.月へは行けない
6.North Place
7.Enjoy
8.Honey&Toys
9.Please
10.Not Crazy Toy
11.TELEGRAM SAM
12.またお会いしましょう



BIOGRAPHY
Real Name:林 昭夫
Birth Place:東京都文京区
Birthday:1964.6.30
1976年 小学6年生で、キャロル、ダウンタウン・ブギウギバンド等に影響を受け独学でギターを弾き始める。洋楽のロック&ポップスにも目覚め、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス等に強烈な影響を受ける。
1977年 エレキ・ギターを購入し、初めてバンド結成。オリジナルも含め活動。
1980年 エルビス・プレスリー、エディ・コクラン、バディー・ホリー等、50'sの影響でアコースティックなサウンドに深く傾倒してゆく。
1982年 ロカビリー・バンド"PENNYS"に参加。ニューロカビリー、サイコビリーの方向へ。ロフト、ルイードで活動。各種のコンテストにも出場し賞を受ける。
1985年 PENNYS解散後、ERECTRIC&ACOUSTIC PENNYSを結成。ボブ・ディランの再認識、T-REX初期のブギに触発され、新たに活動。自己のデモ・テープを本格的に創り始める。その後、'88にバンド活動休止。
1991年 フォーライフ・レコードよりアルバム『GOLD』でデビュー。



OTHERS
Do You Know Akio Hayashi? 恐らく、Web上唯一と思われるファン・サイト。
Memorial Pamphlet&Post Card。
よくぞ、残しておいたと思う...。





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