ロンドン近況報告。


August 1995

★Black Grape "IT'S GREAT WHEN YOU'RE STRAIGHT... YEAH!"

 このところ入れ替わりの激しい全英アルバムチャートですが、Supergrass "I SHOULD COCO" の1位独走は3週間で終わりました。もちろんシングル "Alright" の大ヒットに引きずられた予想外の大健闘。これに続いて初登場で1位の座を射止めたのは… そう、元 Happy Mondays のショーン・ライダー率いるブラック・グレープのデビューアルバム。

 ほとんど毎日のようにレコード屋めぐりをしている自分ですが、先週はこのアルバムが見ているそばからどんどん売れていくので、「これは1位に来るかもしれない」という実感がありました。事実、僕が先週から今週にかけて買い込んだ10数枚のCDの中でもダントツのカッコよさを誇っていて、繰り返し聴きまくっています。ハッピー・マンデーズ時代にも成し遂げられなかった全英アルバム1位。これは快挙!と言ってもよいでしょう。中身はといえば、様々な要素を巧みに織り込んで、アルバム全体で完結している「95年版 完熟ダンス・ロック」といった趣。最新シングルの "In The Name of The Father" のオリエンタルな怪しさはマジ快感です。その薄もやの向こうで、相変わらず確信犯的にヘロヘロ踊っているショーンの不格好な姿が目に浮かぶようで。

 個人的には90年前後の「マンチェ」ブームはすごく苦手でした。何だかどうでもいいようなバンドが雨後のタケノコの如く続々出現しては消滅していったという、マスコミ主導型ブームの典型みたいなダサい終わり方。本当にトホホでした。しかし、昨年大御所ストーン・ローゼズが復活したのに続いて、いよいよショーン・ライダーが始動。UKにおけるこのシーンの急速な活性化の手応えがリアルに感じられます。ますます面白くなっていきそうな予感。10月に行われるロンドン公演もあっという間にソールドアウトらしいですよ。

★星を継ぐもの… Simply Red 新作完成!

 J.P.ホーガンのSF "Inherit The Stars" からタイトル引用してみました。SF好きにしか通じないネタですみませんwinterです。さて、全世界待望のシンプリー・レッド4年ぶり5枚目のオリジナル・アルバムがいよいよ完成しました! ヨーロッパを中心に記録的な大ヒットとなった前作 "STARS"。特に全英チャートにおいては91年・92年の2年連続年間1位という凄まじい売り上げを誇りました。屋敷豪太(GOTA)がドラマーとして参加したことも大きな話題になりましたね。新作のタイトルはやはり1単語の "LIFE"、英国発売は10月9日です。

 とてもホワイトとは思えないほどソウルフルなヴォーカルを聴かせてくれるミック・ハックネル。シンプリー・レッドもここ数作はバンド形態というより、ミックが中心になってソングライトやプロモーションを取り仕切るスタイルになっています。"LIFE" ではプロデュース名義までミック・ハックネルがメインで、長年のブレーンとしてバンドをプロデュースしてきた Stewart Levine は共同制作者名義に。ゲストには、レゲエ界の大物 Sly & Robbie や、P-Funk の大御所 Bootsy Collins らの名前も見られます。安易に "STARS" の続編を作るのではなく、リズムやアレンジに様々な新しい試みを導入したといわれるこのアルバム、全世界的な大ヒットはまたも間違いなしといったところですが、それに加えてミックが「これでもう最後にする」と宣言しての大ワールドツアーも控えています。プライヴェートな人生をこれまで随分犠牲にしてきたから、そろそろ取り戻させてもらわなきゃね、と語るミック。何としても今回のツアーではあの素晴らしいヴォーカルを堪能させてもらわなくちゃ。まずは9月18日リリースのシングル "Fairground" を楽しみに待つとしましょう。

#その後10月にゲットし、興奮しながら聴いた "LIFE" は、GOTAの切れ味鋭いドラムを欠くこともあって、非常に期待外れなサウンドになってしまっていました。残念…

★Blur vs. Oasis、その結果は!?

 先週イギリス中のマスコミが大きく取り上げたこの対決。結果から書きますと今週の全英シングル初登場1位は Blur の "Country House" になりました。もちろん2位が Oasis の "Roll With It"

 Blur は約27万4千枚、Oasis は約21万6千枚枚を売り上げてのチャートイン。ちなみに先週1週間にイギリス全土で売れたシングルは合計約170万枚(これ自体今年最大の売り上げ記録)ですから、両者の合計が全体の約3割を占めるという凄まじさです。これにつられてアルバムチャートでも両者が上昇。Oasis の "DEFINITELY MAYBE" は発売から51週目にして15位から5位にアップ、Blur の "PARKLIFE" は発売69週目にして19位から7位へと上昇しています。確かにどちらも素晴らしい英国ロックアルバムですが、ちょっと異常なフィーバーぶり。

 シングル1位を「マーケティングの勝利」と豪語する Blur 陣営。ライヴヴァージョン入りシングルを同時リリースして2枚でポイントを稼ぐのはアンフェアじゃない?って気もしますけど、大事なのはチャート上の順位だけじゃなくて中身ですよね。個人的には、Blur も Oasis も「まだまだいい曲が作れるでしょ?」と思うので辛めの採点。もちろんこれは叱咤激励する気持ちであって、今やUKを代表するようになった彼らの成長をこれからもしっかりと見守りたいと思っています。次はニューアルバム対決だね!

#ここだけの話、本当は Oasis が僅差で1位になるんじゃないかと予想してました。Ladbrokes や William Hill みたいなブックメーカーで賭けていたロンドンっ子たち、今夜はパブでこの話題でもちきりなんだろうなー。

★Wang Chung と Genesis の大ファンの皆様に捧ぐ

 …そんな人僕くらいのものかもしれませんが(笑)。
 昨日家に帰ってみたらヴァージンレコードからDMが来てました。何と、ワン・チャンのヴォーカルだった Jack Hues とジェネシスのキーボード Tony Banks のプロジェクト、STRICTLY INC. がまずはシングル "Only Seventeen" をリリースするというのです。

 通の皆さんならとっくにご存知のとおり、ジェネシスの解散決定の噂がまことしやかに語られる中でのこのDMは結構こたえました。いや、ワン・チャンのひねくれポップセンスと、トニー・バンクスのひなびた感性のマッチングにはとっても興味あるんですけど、フィル・コリンズのソロ活動にしろ、マイク&ザ・メカニクスにしろ、ジェネシス本体あってこそのサイドプロジェクトという気がするのです。プログレファンには評判悪いみたいだけど、自分自身は3人ジェネシスだって大好きだし…

#その後リリースされた Strictly Inc. のアルバム、一応購入しましたが、イマイチ焦点が絞りきれていない消化不良の作品でした。ちょっと残念。それ以前にこのアートワークは何とかならなかったものか…


December 2002 追記
 以上、95年8月のお買い物や(当時の)最新洋楽情報でした。
 この夏は本当にたくさん音楽を聴いたなあ。今でもヴィヴィッドに記憶が蘇ります。いい時期でした。


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