Linkin Park @ 日本武道館



 2003年10月25日(土)、日本武道館。
 アリーナ席がオールスタンディングと聞いて急速に見る気を失い、結局直前まで行くかどうか迷っていた公演。結果としてアリーナ最前ブロックで見ることができた訳だが、そのチケット購入については後に記すとして、コンサート自体は非常に満足度の高いものだった。

 くすんだ水色の巨大な要塞の如きステージセット。ドラムスは上段にセットされ、左右に突き出た先端にマイク・シノダやチェスター・ベニントンが駆け上って歌うことが出来るように作られている。実際、動けるメンバーはほとんど一時も休むことなくステージ上を駆け回り、満員の武道館の全方向に向かってエネルギーを放射してくれた。リンキン・パークの演奏を聴くのは初めてだったが、印象を一言で言うなら「再現性の非常に高いライヴ」だったと思う。オリジナルアルバムはわずか2枚だが、米国を中心に相当な数のギグを重ねてきただけあって、演奏が非常にこなれている。アルバムを聴く限りではスタジオで相当整えられたのだろうと思っていたが、これほどまでに再現できるとは正直言って驚いた。マイク・シノダのラップの切れ味と、チェスターのコーラスパートの再現性には舌を巻く。

 2人のどちらが欠けてもリンキン・パークの音楽は成立しない。最初の頃はシノダのラップはあくまで付け足しで、チェスターの分かりやすいフックこそがこのバンドの魅力なのだと思っていたのだけれど、リミックスアルバムを経て2nd "METEORA" に至る過程でシノダの存在感がとても大きくなっている。一つひとつの単語を噛み締めるように、非常に安定した、それでいて力強いラップを聴かせてくれるようになった。それはライヴでも十分に感じられる。両腕を広げたり交差させたりしながら身体全体で表現されたライムが僕らに向かって飛んでくるのでとても聴き取りやすい。一方のチェスターはといえば、小さな身体を文字通り振り絞って絶叫している。額に血管を浮き立たせ、ステージにしゃがみこむようにして一心にフックを歌う姿にはこちらも熱くならずにいられない。いつ倒れるかとハラハラさせられるような絶唱なのに、曲が終わると息も切れていない様子。一体どうなっているんだろう。ラップのバックでチェスターがコーラスを歌い、フックの部分ではシノダが細かくラップを挟む。阿吽の呼吸でぴったり合ったヴォーカルワークを聴かせるフロント2人にはちょっと驚いた。

 もうひとつ驚かされたのは熱心なファンたち。ほとんど全曲に渡って武道館の大半の客が一緒に歌っているように感じられた。アリーナ最前ブロックではイントロの1音だけですぐに曲に反応してモッシュが始まるし、ブロック後方で身体を揺らしながら観ている女の子たちはラップ部分も含めて歌詞を口ずさんでいるようだ。そう、女の子が多かったのも印象的だった。控えめに言っても半分近くは女性だったのではないか。メンバーは全体に小柄でなで肩のごく普通の男の子たちなのだが、逆にそれが親近感や共感を集めているのかもしれない。自分自身はティーン〜20代の女の子たちにこんなに囲まれる機会なんて滅多にないので、汗だくになって飛び跳ねる彼女たちと接触する度にちょっと不思議な感じになった。ちなみに武道館のスタンディング公演についてちょっとメモしておくと、会場に入る前に広場のテントで荷物を預かってくれる(有料)。多くの子達はここでTシャツ1枚に着替えて乗り込んでいくようだ。手持ちのバッグの類を持ち込むのは賢明でない。どうしても必要ならウェストバッグか、悪くてもたすきがけできるショルダーバッグにすべきだが、理想的なのは手ぶらで入ることだ。入口でチケットをもぎられると引き換えにリストバンドをくれるので、公演中はこれを腕に付けて歩き回る(例えばトイレに行く)ことになる。

 さて最後にチケットについて記しておくと、僕が買ったのは公演のわずか2日前だった。既に同日の武道館公演はほとんどソールドアウトとされていたはずだが、帰り道に立ち寄った近所のファミリーマートでチケットぴあの端末機をいじっていたら、何と土曜日公演のS席があると表示されている。慌てて仮予約してみると何とアリーナの最前ブロックなのだった。発券後に念のためもう一度アクセスしてみたが、同日公演はすべて売り切れましたと表示されるばかりだった。早速友人に電話して1枚引き取ってもらうことにしたが、相手にも非常に驚かれた。実際に会場に出向いてみて感じたのは、アリーナの各ブロックにはそれほど人を詰め込んでいなかったということ。おそらくトラブルを恐れた主催者側が当初かなり制限した枚数で販売したのだろうが、公演が始まってみてある程度安全性が確認できたので、若干枚を追加発売したのではないか。まさに偶然のタイミングで飛び込むことができたのだろう。要するにファミリーマートのぴあ端末も馬鹿にできないということだ。

♪I tried so hard
 And got so far
 But in the end
 It doesn't even matter
 I had to fall
 To lose it all
 But in the end
 It doesn't even matter


 一緒に見に行った相手は、かつて僕にリンキン・パークの良さを教えてくれた恩人とも言うべき存在なのだった。2人でほとんどステージ真下から至近距離でバンドを見て、本当にいいライヴだねと語り合った。本編のラスト、壮絶な無常観に貫かれた "In The End" の歌詞を彼女と一緒に合唱しながら、僕は少しだけ涙を流した。


【Linkin Park@武道館 セットリスト】
1. Don't Say
2. Somewhere I Belong
3. Lying From You
4. Papercut
5. Points of Authority
6. Runaway
7. Faint
8. From The Inside
9. Figure .09
10. With You
11. Be Myself
12. Pushing Me Away(Remix)
13. Numb
14. Crawling
15. In The End
-ENCORE-
16. My December
17. A Place For My Head
18. One Step Closer


(January, 2004)

MUSIC / BBS / DIARY / HOME