SONGS 90 - 81


順位 曲名 アーティスト チャート順位
90 Don't Talk To Strangers Rick Springfield US#2/82
89 Jeopardy Greg Kihn Band US#2/83
88 My Lovin' (You're Never Gonna Get It) En Vogue US#2/92
87 (Don't Fear) The Reaper Blue Oyster Cult US#12/76
86 Sweet Sticky Thing Ohio Players US#33/75
85 Change The World Eric Clapton US#5/96
84 Hard To Handle The Black Crowes US#26/91
83 I'm So Excited Pointer Sisters US#9/84
(US#30/82)
82 Let The Music Play Shannon US#8/84
81 West End Girls Pet Shop Boys US#1/86



90. Don't Talk To Strangers - Rick Springfield


 数あるリックのヒット曲の中から選ばれたのがコレだなんて、頼むから他人には言わんでくれ。そんな曲です。より正確には「見知らぬ男どもといちゃつくな」に近い歌詞だと思いますけど。

 リック・スプリングフィールドはシドニー生まれで、もともとアイドルバンド上がりです。が、72年にソロになってからはなかなか売れず、途中で俳優業にも手を出したり。"Jessie's Girl"(US#1/81) でスターの座を掴んでからは大ヒットを連発し、この "Don't Talk To Strangers" も2位を4週間続けました。

 自分の彼女が、フランス人と思しきプレイボーイに誘惑されかけているのを悔しがる男の歌。クールなテンポで淡々と進み、キャッチーな長調のコーラスになるとつい一緒に歌ってしまいたくなります。なぜフランス人?かというと、ブリッジでこんなフランス語セリフが織り込まれているから。

♪(Belle amour, aimez moi) / (Vais lovez, mon amour) / (Je te veux aimer pour ce soir)

 それぞれ、[Make love with me]、[Come to bed my love, I love you]、[Give me your heart tonight] といった意味らしい。さすがフランス人ナンパ師は口説き文句も直接的。最近はヒットから遠ざかっているリックですが、"Souls"(US#23/83)、"Bop 'Til You Drop"(US#20/84) といったちょっとマイナーなヒットも好きでした。もちろん、ノベルティの "Bruce"(US#27/85) もね(笑)。



89. Jeopardy - Greg Kihn Band


 グレッグ・キーンという人は、チャート上での大ヒットはこれと "Lucky" (US#30/85) くらいのものですが、シスコ周辺ベイエリアでは絶大な人気を誇るローカルアーティストです。見るからにお気楽で悩みのなさそうなキャラクター、ちょっと情けないルックスもチャームポイント。

 この曲も、2人の愛が危機に瀕している様をすっとぼけたスタイルで歌う、ノリのいいロケンロー。シンプルなイントロや、何か始まりそうで結局ほとんど何も始まらない間奏部分など、いかにも Greg Kihn らしい魅力いっぱい。この "Jeopardy" から "Reunited""Lucky" へと続く連作ストーリィものビデオも大傑作。MTV全盛期にあって強く記憶に残っています。

 アルバムタイトルでも遊んでましたね。必ず Kihn を交えた造語タイトル。この曲を生んだ "KIHNSPIRACY" を始め、"KIHNTAGIOUS""CITIZEN KIHN" などなど。それぞれ、conspiracy(陰謀)、contagious(伝染性の)、Citizen Kane(『市民ケーン』)のパロディです。ベスト盤まで "KIHNSOLIDATION" だったのは流石。こっちは consolidation(統合、整理)ですね。過去の音源をしっかり統合整理したってことで。



88. My Lovin' (You're Never Gonna Get It) - En Vogue


 アン・ヴォーグの登場はかなりセンセーショナルでした。それまでにも女性コーラスグループはたくさんいたけれど、ルックス優先だったり露出度で勝負だったりして、肝心の「歌」の方がおざなりになっている感があったから。

 ところが彼女らは歌えた。それも抜群に。加えてルックスもゴージャス。綺麗なドレスからのぞくその脚線美といったらもう。そんなわけで売れて当然、のグループではありましたが、楽曲の良さ、具体的には歌詞の力も大きかったと思うのです。

 1stの "Hold On""Lies" といったヒット曲からしてそうですが、一貫して女性の味方。バカな男たちに騙されることなく強く立ち上がらなきゃ、と元気づける歌詞。これが同性からの圧倒的な支持を得た訳で。"Free Your Mind" では肌の色による差別をも糾弾し、まさに向かうところ敵なしのブラックガールズ。強気のデスチャが到達した頂点も、アン・ヴォーグが舗装した道路あってこそ。もちろん曲を作っていたのは彼女らではなく、Denzil Foster & Thomas McElroy という元クラブ・ヌーボーの2人組。アン・ヴォーグをオーディションし、曲を書き、イメージ戦略を立ててマーケティングした、いわゆるモーニング娘。におけるつんくのような役どころ。

 さてこの曲は、ファンキーなリズムの上で力いっぱいに歌うリード&コーラスの組み合わせが絶妙ですが、特に中間部のブレイクが最高。"Now, it's time for the breakdown!" の声で突如バックトラックが消え、4人がアップテンポのアカペラで "♪Never gonna get it, never gonna get it....." と素晴らしいコーラスに突入します。この鳥肌モノのブレイクだけで勝負あった。無条件降伏。



87. (Don't Fear) The Reaper - Blue Oyster Cult


 邦題 『死神』。アルバム 『タロットの呪い』 より。

 ブルー・オイスター・カルトは誤解されています。デビュー時に彼らの音楽を表現するキャッチフレーズとして "HEAVY METAL" という言葉を用いた最初のバンド、として知られる彼ら。しかしそれは当時のマネージャー/プロデューサーの宣伝戦略で、必ずしも彼らの音楽性がいわゆる 「ヘビメタ」 であるわけではありません。オカルトっぽい歌詞や、ドラマティックな楽曲も確かにありますが、基本はあくまで良質のロックバンド。当初のパブリック・イメージが災いして聴かず嫌いの方も多いとか。もったいないよ〜。

 エレクトリック・ギターのアルペジオで始まる印象的なイントロダクション。ヴォーカルが淡々と乗っかり、幻想的なメロディが次々と紡ぎ出されます。特に、被さるようにフレーズが交錯するコーラスは印象的。

♪Come on baby... Don't fear the Reaper
 Baby take my hand... Don't fear the Reaper
 We'll be able to fly... Don't fear the Reaper
 Baby I'm your man...


 不思議な歌詞です。死の世界に旅立つことで一緒になろうとする恋人たち。この後中間部でプログレッシヴな劇的展開を見せるこの曲は、しかしサウンドだけでも十分なドラマ性を持っています。2番の歌詞で繰り返し 「ロミオ&ジュリエット」 に擬されていた登場人物たちは、一体どうなってしまうのか? 静寂から再び冒頭の繊細なメロディに回帰した時、僕らは知るのです。彼らが 「死神を恐れなかった」 ことを。彼女が彼の手を取ったこと、そして2人が 「飛び立った」 ことを…



86. Sweet Sticky Thing - Ohio Players


 見てのとおりのエロジャケです。最高です。オハイオ・プレイヤーズはエロジャケの宝庫。全アルバムをアナログで揃えるのはエロジャケ通の登竜門です。こんばんは、みうらじゅんです。

 …じゃなくて。
 オハイオはしかし、音とジャケが見事に連動しているバンドの1つ。すなわち音もエロエロ。基本に忠実な、男汁溢れるこってりしたファンクに絡むスウィートなファルセット。時に気だるく時にセクシー。アップよしスロウよしの下半身の強さ。中でもこの曲は彼らの美学全開の美メロ系ファンク。コーラスの後に絡みまくるサックスソロの何とセクシーなこと。爽やかに歌われる 「甘くねばねばしたモノ」 が何であるかはジャケなど眺めながらご想像いただく方向で。

 この曲はもともと大好きだったのですが、これまた好きなディアンジェロが95年にロンドンのジャズ・カフェでライヴをやりまして。今や伝説的なディアンジェロ初期の名演。その際にアース・ウィンド&ファイアの "Can't Hide Love" と共にこの "Sweet Sticky Thing" をカヴァーしたと聞いて悶絶しました。しかも後で出たライヴ盤には収録されず。見逃したのはまさしく一生の不覚。

 後悔朝に立たず。

 …じゃなくて。先に立たず。



85. Change The World - Eric Clapton


 映画 "PHOENOMENON" は、すっかりジョークのネタにまで堕ちていたジョン・トラボルタが復活するきっかけになった映画のひとつだったような気がします。テーマ自体はとてもシンプルだったけれど、妙に心に感じるものがあり、アムステルダム出張の帰国便機中で繰り返し2回も見てしまいました。小さな正義感さえあれば、どんな超能力も要らない。好きな女性と穏やかな日々を過ごせる以上の幸福はないのです。

 それはさておき、90年代以降のエリック・クラプトンは、この曲や "Tears In Heaven" の大ヒットにより、完全にアダルトコンテンポラリーの常連になりました。特にこの曲については、超売れっ子のベイビーフェイスが制作を行ったという点が画期的。いかにもベイビーフェイス節のバラードに仕上がっています。(ソングライターは T. Sims, G. Kenney, W. Kirkpatrick の3人。) 後にベイビーフェイス自身も MTV Unplugged でカバーし、クラプトンにギターを弾かせてますね。

 この曲のポジティヴなメッセージは本当に大好き。

♪And I can change the world
 I will be the sunlight in your universe
 You would think my love was really something good
 Baby if I could change the world


 日本語で歌われたら恐らく赤面モノの歌詞でしょう。でもすっかり脂の抜けたクラプトンが枯れた喉でしんみり歌う時、僕も知らず知らず一緒にハモってしまうのです。実にいいコーラスパートだと思います。



84. Hard To Handle - The Black Crowes


 ロック界に名カヴァーは数あれど、これはその最高峰のひとつではないでしょうか? オーティス・レディングのカヴァーにして、ブラック・クロウズ初期の大ヒット。イントロから超ファンキーなリズム隊と、クリス・ロビンソンの素晴らしい喉。そしてリッチのノリノリのギターが華を添え。

 ビートに乗り損ねそうになるこのコーラス部分は何回聴いても印象的。

♪Pretty little thing let me light your candle
 Cause mama I'm so hard to handle now


 お前の男なんかよりオレの方がずっとスゴイぜ、間違いなくオレにメロメロになるはず。強烈な自信に溢れた口説きソングですが、飛ぶカラス…じゃなくて飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時の彼らにばっちりハマったこのカヴァー。ブルースに根ざした泥臭いロックを90年代に蘇らせた功績は、今こそ再評価されるべきかと。90年の初チャートイン時は45位までしか上がれず、翌年の再挑戦でトップ40入りしたのも、チャート的にはカッコいい。

 ちなみにもし黒烏のオリジナル曲を1曲と言われれば、迷うことなく 2nd の "Remedy" を。できれば10分を超えるライヴヴァージョンで。その名に反して全く治療不可。ドロドロのズブズブです。



83. I'm So Excited - Pointer Sisters


 ポインター・シスターズ はかなり歴史の古いグループです。
 初ヒットは "Yes We Can Can" (US#11/73)。77年までの Blue Thumb レーベル時代はノスタルジックな1940年代風コーラスにこだわりましたが、78年以降はスタイルを変え、よりストレートなR&Bコーラスグループになって大ヒットを連発。

 最初に出会ったのは84年の "Automatic" (US#5)。宇多田ヒカルじゃないよ。これがまたえらく低いヴォーカルの曲なんですわ。エレクトロニクスを大胆に導入して、派手なシンセに重いエレクトロファンクのビート。絡みつくようなコーラスがイヤらしい1曲。続く "Jump (For My Love)" (US#3) のキャッチーなメロディもお気に入りでした。しかしとどめを刺したのは、第3弾シングルのこの曲。

 第3弾、というのはあくまでアルバム "BREAK OUT" における順番のことであって、実際には82年最高位30位の小ヒットのリバイバル(ヴァージョン違い)。あの Melanie C がスパイス・ガールズのメンバー募集オーディションの時に歌った曲としても知られます。3人姉妹の力強いヴォーカルを堪能できるこの曲は、まさに今夜(肉体的に)結ばれようとするカップルの興奮を、女の子の側からややエッチに歌ったもの。

♪I want to love you, feel you
 Wrap myself around you
 I want to squeeze you, please you
 I just can't get enough
 And if you move real slow, I'll let it go


 このプレコーラス部分と、間奏の派手なジャズ風ピアノソロが特に印象的。
 みんな、いいセックスをしようね。



82. Let The Music Play - Shannon


 洋楽聴き始めの頃のヒット曲というのは、いつまでも心に残ります。このシャノンもそう。今でもダンス・クラシックとしてクラブでプレイされている曲ですが、流れてくると問答無用に中学生の頃に連れ戻され、自然と身体が動いてしまいます。これぞ名曲。

 重低音を響かせるベースラインと、タメの効いたディープなビート。エレクトリック・ファンクに乗っかるシャノンのヴォーカルに派手さはありませんが、どっしり構えた濃厚さがかえってエレガント。ベストヒットUSA では海外の歌番組で歌ってるビデオが流れていました。プロモビデオはなかったのかな。

 ダンスフロアで知り合った相手といい仲になった。さあこれからというところで曲が変わり、彼は別の女の子と踊ってる、という状況。その時 「愛」 がくれたメッセージとは。

♪Let the music play, he won't get away
 Just keep the groove and then he'll come back to you again
 Let it play
 Let the music play, he won't get away
 This groove he can't ignore, he won't leave you anymore


 そううまくいくかどうかはともかく、「音楽」 の力を賛美する曲には好きなものが多いです。ドゥービー・ブラザーズの "Listen To The Music" とか、それこそマドンナの "Music" とか。この曲もその系譜。

 …ジャケは松任谷由実系ですが。



81. West End Girls - Pet Shop Boys


 「ウェスト・エンドでこの曲を鼻歌で歌いながら道を横切る」
 それはロンドンに行ったとき必ず行わねばならない儀式。

 ウェスト・エンド(West End)とは、シャフツベリー・アヴェニュー(Shaftesbury Avenue)やチャリング・クロス・ロード(Charing Cross Road)界隈を中心とした、ロンドン中央部やや西寄りの地域のこと、もしくはその近辺に軒を連ねる劇場群のことを言います。ニューヨークのブロードウェイみたいなエリアですね。

 この曲が醸し出す雰囲気が独特で。気だるく、虚無感に満ちた街。そこは "Dead end world" ことウェスト・エンド。すべてが淀む行き止まりの世界。絶望でも希望でもない倦怠感を絶妙に描いたプロモビデオがまた秀逸でした。ショーウィンドウ、ネオンサイン、無機質なロンドンの繁華街。「都会」 の冷たさを徹底的に抉り出す醒めた映像。トランペットを模した派手なブレイクを挟み、再び退屈な日々を想起させるイントロのコードが帰ってくる頃、僕らはこの曲とロンドンという街の虜になってしまったことに気付くのです。

♪Too many shadows, whispering voices
 Faces on posters, too many choices
 If, when, why, what?
 How much have you got?
 Have you got it, do you get it, if so, how often?
 And which do you choose, a hard or soft option?


 歌詞も素晴らしく、どの1行も研ぎ澄まされていますが、特に上記のセクションは rhyme として非常に完成されています。"♪If, when, why, what? How much have you got?" のところ、つい口をついて出ちゃいますよね。

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