SONGS 160 - 151


順位 曲名 アーティスト チャート順位
160 Never Too Much Luther Vandross US#33/81
159 Frankenstein Edgar Winter Group US#1/73
158 Opposites Attract Paula Abdul (with Wild Pair) US#1/90
157 Never Gonna Let You Go Sergio Mendes US#4/83
156 Modern Love David Bowie US#14/83
155 Gangsta's Paradise Coolio featuring L.V. US#1/95
154 On The Beach Chris Rea UK#57/86
153 Take Your Time (Do It Right) The S.O.S. Band US#3/80
152 Le Freak Chic US#1/78
151 In A Big Country Big Country US#17/83



160. Never Too Much - Luther Vandross


 英語に "smooth as silk" という言い回しがあります。「絹のように滑らかな」、つまり滑らかであることを強調する比喩表現。しかし断言してもいい、このフレーズ、まさに Luther の声のためにあると。

 ブラック・コンテンポラリーというジャンルがあります。正確に言うと、 『ブラコン』 という名の下に括られている人たちがいるわけです。それは「R&B」とはちょっと違う。むしろ雑誌 『ADLIB』 で支持されているような人々であって、言わばAORに近い手触り。余計わかりにくいですね(^^;)。じゃあ角松敏生はブラコンなのか?みたいな。

 そのブラコン界の代表格が Luther Vandross で、これが記念すべきデビューヒットにしてダンスクラシック。名バラディアとしての印象が強い彼ですが、実はこうしたグルーヴィなアップテンポものも大得意な彼。何を歌わせても抜群の歌唱力で見事にこなす彼、どんなに聴きまくっても「多すぎるなんてことはない」のです…



159. Frankenstein - Edgar Winter Group


 下北沢に ROCK'N'ROLL DINER というお店がありました。

 まあ言わば HARD ROCK CAFE のニセモノのようなアメリカンダイナーで、外国人のお客さんもたくさん来るところでした。そこで飲んでますと、19時だか20時だかにDJタイムがありまして、店内でDJが陽気なおしゃべりとともにオールディーズ中心にリクエストも交えながら曲をかけ始めます。そのDJタイムのオープニングによくかかっていてメチャクチャ印象的だったのが、この "Frankenstein"

 この曲、スゴイです。とにかく一度聴いてみると、あまりにスゴイ構成にぶっ飛ばされます。インストゥルメンタル曲での全米1位は数えるほどしか存在しませんが、その中でもカッコよさと技巧ぶりでは群を抜く1曲。まったく、よくこんな曲で1位になったものです。

 まず、いきなりつんのめるようなギターリフのイントロに導かれて、うねうねしたキーボードソロに突入。続いてリードがサックスに、さらにはギターへと渡り、中盤には何と長々とドラムソロまで登場するのです。プログレ的ギミック満載の大ハードロック大会、終盤になって再び冒頭のリフが登場して「おおお!」と思わせてくれる起承転結ぶり。いやもう、参りました。

 言うまでもなく Edgar Winter はミリオン・ダラー・ギタリストこと Johnny Winter の弟。このバンドには、Dan Hartman, Ronnie Montrose, Rick Derringer (この曲の制作&リードギター)らが在籍したことでも知られていますね。



158. Opposites Attract - Paula Abdul (with Wild Pair)


 1989年は大学1年生で、某洋楽サークルに入って夢のような毎日を送ってました。諸先輩方から次々と教えていただくさまざまな音盤。J-WAVE と出会って毎日飛び込んでくる新曲の数々。そしてついに覚えてしまった禁断の快楽、中古CD屋めぐり。

 その大学生活の比較的初期に買った1枚が Paula Abdul の "FOREVER YOUR GIRL" アルバムで、ヒット曲がたくさん出ていたこともあって毎日聴きまくったものです。非シングル曲も含めて全曲大好きで、彼女の可愛いキャラクターともあいまって、とても気に入っていました。そんな中からこの1曲を。

 デュエット、というより男女掛け合いの構成になっていて、性格が正反対のカップルなのにどういう訳か恋愛だけは相性バッチリという様子をコミカルに歌います。ひとつひとつ挙げられる例がとことん正反対なので、聴いていて笑っちゃうような歌詞です。

 この曲に関して言えば、やはりたいへんによく出来たビデオクリップを忘れることができません。アニメーションと実写を巧みに融合して、Paula と架空キャラの Wild Pair とが歌い、踊りまくるそのビデオを見まくったものです。

 Paula Abdul 自身は Virgin Records と超高額で契約更改を行って話題をさらい、さらにはエミリオ・エステベスと結婚しますが程なく離婚、残念ながらその後はセールスも伸び悩んでしまいました。ちょっと残念。



157. Never Gonna Let You Go - Sergio Mendes


 夏の終わりに、沈みゆく夕日を眺めながら聴きたい1曲。

 …なんて、こんな聴き方で本当によいのだろうか(笑)。
 Sergio Mendes  といえばBossa Nova / ラテン系の大御所。Brasil '66 や Brasil '77  を従えて A&M からリリースした60年代後半〜70年代の諸作品は、今でもクラブでラウンジっぽい雰囲気を演出するための必須アイテムです。柔らかいストリングスや女性コーラスを巧みに配したそのサウンドは、古びるどころかますます輝きを増していて、"Mais Que Nada" なんかのカッコいいことといったら、何回リピートしてもし足りないくらい。

 その Sergio Mendes が80年代前半に突如放った、ひどく産業AOR的なヒット曲がこれ。邦題の『愛をもう一度』からしてもうAOR度満点。洋楽初心者だった自分は、しばらく Sergio Mendes 自身が歌っているのだとばかり思っていました。実際は Joe Pizzulo と Leza Miller という男女のデュエット形式で、「♪きつく抱きしめて / もう貴方を離さない」と熱く歌い上げるアレンジには、こういうこともできたのかセルメン!と感動すら覚えます。

 この曲の特徴はなんといっても転調で、それこそ小節ごとに過剰なまでに転調していきます。1番は男性ソロ+コーラスは女性のハモリ、2番は女性ソロ+男性ハモリ、ブリッジを挟んで最後のコーラスは男性がオクターブ上のハイトーンで熱唱するというヴォーカルアレンジ。作曲は Robby Buchanan、初出はDionne Warwick  のAOR寄りのアルバム "FRIENDS IN LOVE"

 でもやっぱりこれは狂い咲き系。これだけで「セルジオ・メンデスってこういうのなんだぁ」と思うのは早合点。ぜひ機会を見つけて古い音源を聴いていただきたいものです。きっと日曜の昼下がりの読書なんかのお供になるはず。



156. Modern Love - David Bowie


 『時代がボウイに追いついた』。けだし名コピー。

 間違っても "LET'S DANCE" アルバムがボウイの最高傑作だなんて思いませんが、たまたま洋楽聴き始めの夏で、MTVブームの折にばったり出会ってしまったのがそれでした。ちょうど映画『戦場のメリー・クリスマス』も観に行く機会があり、自分の中で「カッコいい英国人」の地位を早急に固めてしまったのがボウイなのです。その思いは旧作を遡り、"ZIGGY STARDUST" に辿りつくあたりで頂点に。

 それはさておき、変わり身の早さこそが売りの彼 = Changesbowie。ならばこんな Nile Rodgers 制作モノも割り切って楽しむ必要あり。Weather Report の Omar Hakim に豪快に叩かせる黒っぽいリズムセクションに、痛快なサクソフォンをまぶし、極めつけにこんなに早い時期に Stevie Ray Vaughn を起用して、ブルージィでキュッと締まったチョーキングの嵐を聴かされてはたまりません。83年当時、コンテンポラリー性という観点で "LET'S DANCE" アルバムが最強の1枚だったのは確かです。まあ、その後の彼の迷走ぶりを見ると、「追いついた」のは果たして時代だったのかボウイだったのかという疑問は残りますけれど(笑)。

 ともあれ、スピーディな楽曲で若々しいところを演出し、コーラス後半でぐいぐい盛り上げていく彼にニヤリの1曲。大盛況の "SERIOUS MOONLIGHT TOUR" から編集されたライヴビデオクリップでの、間奏サックスソロ付近で天井から降ってくる黄金色の無数の風船のイメージがいつまでも頭から離れません。

 ああ、やっぱりこの人の曲を1曲選ぶなんて拷問ですね。"Space Oddity" はもちろんのこと、"Changes" "Heroes" も、"Ashes To Ashes" "Starman" も外せない。やっぱり "Rock'n'Roll Suicide" を忘れたくはないし、"Golden Years""Young American" のソウル風味も捨て難く、SOUND + VISION ツアーで生で聴いて震えた "Life On Mars?" もやっぱり最高なのです。



155. Gangsta's Paradise - Coolio featuring L.V.


 95年の全米年間チャートは大方の予想を覆すスゴイ結果になりました。映画『デンジャラス・マインド〜卒業の日まで』のこの挿入歌が空前の大ヒット、第4Qから猛スパートで年間1位をかっさらった印象です。米国のみならず英国でも初登場1位になったのにも驚きました。

 一度聴けば忘れられないフックを持った曲なのは事実ですが、大半は Stevie Wonder の "Pastime Paradise" からの借用です。ある意味ずるっこいサンプリングですが、クーリオがやると不思議と憎めません。ちゃんとシリアスなテーマのライムに仕上がっていることもあり、Stevie 自身もそう悪い気分ではないでしょう。

 印象的なコーラスを熱く歌い上げるのは L.V.。彼はなかなか素晴らしいヴォーカリストで、R&B好きなら中古CD店で山積みのソロアルバムもオススメです。

 Coolio は根が真面目そうな人なので、実は個人的にとても支持しています。ラップも歯切れ良く、決して下手な人じゃないと思っているのですが、コアな Hip-hop ファンたちの評価はどうなんでしょ?



154. On The Beach - Chris Rea

 夏。海。ほろ苦い恋。

 舞台は整いました。哀愁漂うコード進行と、『渚にて』というイメージしやすいシンプルなタイトル。しゃがれ気味のクリス・レアのヴォーカルが添えるイギリスらしい味わいがたまりません。いかにも日本人ウケしそうな曲で、実際人気の高い曲ですが、意外なことに全英チャートではそれほど大きなヒットにならず。

 歌詞は多くを語りません。君と僕の間に起きた、夏の海岸でのラヴ・アフェアを回想していることは分かりますが、それ以上は描写されず、♪Take me back to the place that I know / On the beach... と繰り返されるばかり。聴き手は行間を読みながら、イメージを膨らませることになるのです。

 この曲にはヴァージョンがいくつかあって、オリジナルテイクももちろんよいのだけれど、後にベスト盤 "NEW LIGHT THROUGH OLD WINDOWS" をリリースする際に再録音されたヴァージョンも広く出回っており、実はそちらも大好きです。いったん終了しかけた後に、盟友 Max Middleton のエレピが静かに鳴り始め、クレッシェンドしていきます。次第に加速し、複雑に構成されたエレピの長い長いソロを展開しながら盛り上がっていく終章には、いつも胸が熱くなるのです。

 (このレビュウは、Chris Rea を心から愛していた、今は天国にいる知人に捧げます。)



153. Take Your Time (Do It Right) - The S.O.S. Band


 今でもダンスクラシックとして大人気の1曲。実は自分も長いこと誰の何という曲かは知らないまま、曲だけは耳でよく知っていました。Jam & Lewis といえば近年は Janet Jackson でのお洒落で可愛いプロダクションというイメージかもしれませんが、The Time から叩き上げただけあって、この曲のような強烈なダンス/ファンクもお手のもの。ベースとパーカッションの音像に独特のジャムルイ印があるような気がします。

 そのビートに乗って vocal の Mary Davis が迫力ある声で歌い上げる、

♪Baby, we can do it, take your time, do it right
 
 というノリのいいコーラス部分には誰しも否応なく引き込まれるハズ。

 S.O.S. Band は Tabu レーベル所属でしたが、他には Alexander O'Neil  や Cherelle といった人たちが在籍しており、Jam & Lewis の充実したサウンドを堪能することができるお勧めレーベルです。



152. Le Freak - Chic


 洋学の世界には『名邦題』と呼ばれるものがありますが、これなんかもそのひとつでしょう。『おしゃれフリーク』。原題は "Le Freak" なわけですが。

♪Aaaahh, freak out!
 Le freak, c'est chic

 という仏語入りコーラスが洒落たイメージを喚起します。Chic のサウンド的な魅力は、単なるディスコに留まらず、メインストリームの聴き手にも訴えるそのお洒落さにあったと言えましょう。

 構成要素を分解するならば、Nile Rodgers の切れ味鋭い特徴的なギターカッティングと、それにシンクロする Bernard Edwards の極めて立体的なベースライン、そして屋台骨を支える Tony Thompson のソリッドなドラミングです。この上にやや没個性的な女性ヴォーカルを重ね塗りすることで完成するそのスタイルは、一度も揺らぐことがありませんでした。

 その意味で、どのアルバムのどの曲を聴いてもハズレはありません。実際、自分自身も "I Want Your Love" "Good Times" "Chic Cheer" "Dance, Dance, Dance (Yowsah, Yowsah, Yowsah)"  など好きな曲が目白押し。シンプルでミニマルなものこそ、実は奥が深いという好例。



151. In A Big Country - Big Country


 スコットランドの広大な大地を思い浮かべると同時に頭の中に鳴り響くこの曲のイントロ。
 ヴォーカルの Stuart Adamson が途中「ハッ!」と気合いを入れるところで、つられて自分も「ハッ!」と言ってたりするから困ったものです。

 やけに豪快な作風。寒々としたスコットランドの大地に足を踏ん張って、熱くロックする若者たちのイメージが完全に定着しました。いや個人的にですけど。一躍有名になったバグパイプ風のギターソロもたまらないですよね。

 洋楽聴き始めの時期に触れたということは、「アーティスト名を含む曲名」を初めて意識した1曲か。しかも邦題は『インナ・ビッグ・カントリー』。「インナ」です。インナ。それもまたカッコよかった。アメリカじゃもう1曲と言われれば "Fields of Fire" が挙がるのでしょうけれど、UKヒットの "Look Away" なんかもいい曲でした。



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