SONGS 130 - 121


順位 曲名 アーティスト チャート順位
130 Wishing Well Terence Trent D'Arby US#1/88
129 Silent Lucidity Queensryche US#9/91
128 Independent Love Song Scarlet UK#12/95
127 You Oughta Know Alanis Morissette US(Airplay)#13/95, US(B-side, live)#6/96
126 Wake Me Up Before You Go-Go Wham! US#1/84
125 Vegas Sleeper UK#33/95
124 Place Your Hands Reef UK#6/96
123 Stay With Me Tonight Jeffrey Osborne US#30/84
122 Painkiller Judas Priest UK#74/90
121 I Love Your Smile Shanice US#2/92



130. Wishing Well - Terence Trent D'Arby


 インパクトの強さという点において、歴史に残る全米#1ヒットのひとつ。

 初めて聴いた時は、一体なんだこりゃと思いましたですよ。「ヴァース1+ヴァース2+コーラス+ヴァース3+コーラス+ソロ+ブリッジ+…」といった予定調和的な構成はどこにも見当たらず。ある意味コーラスと印象的なリフしか存在しないという特異な形式を持った楽曲です。しかもそれを、あの一度聴いたら忘れられないテレンスの独特の声で歌うのですから、反則技に近いものがあります。

 最初にUKでヒットした頃は、絶対にこれはアメリカじゃ受け入れられまいと思ったものでした。しかし、その年の暮れのNHK-FMの特番で渋谷陽一が「来年はTTDが全米ブレイクする!」と宣言し、年が明けるとあれよあれよという間にヒットしてました。あの頃から自分のチャート予想は全然当てにならないなあ。88年3月のグラミー賞授賞式での "If You Let Me Stay" のパフォーマンスのブチ切れそうなカッコよさを思い出します。

 プリンスや、James Brown らを引き合いに出されて絶賛されていたデビュー当時の鮮烈なイメージを、活き活きと蘇らせてくれる1曲。今でも応援してるよ、Terence。



129. Silent Lucidity - Queensryche


 本当に、聴けば聴くほどよくこんな曲が全米トップ10ヒットになったものです。
 いやもちろん悪い曲だというのではなくて。むしろ素晴らしすぎる曲なのですよ。コマーシャリズムにまみれた全米シングルチャートにおいては。ロックファンでないただのチャートファンにとっては、これはただの一発屋バラードヒットなのかもしれませんが…

 クイーンズライクはシアトル出身のハードロックバンドでしたが、単に非常に歌の上手いハイトーンの正統派ヴォーカリストを擁していたばかりでなく、バンド全体で「知性」を追求していた点が80年代結成の同僚バンドとは大きく異なったところ。

 この曲を含む "EMPIRE" というアルバムは、比較的コンパクトで分かりやすい楽曲集としてリリースされ、その中でもこれは Michael Kamen 指揮のストリングスを大胆に配して編曲された壮大なバラード。ハードロック系のバンドはしばしばバラードヒットを飛ばしましたが、例えば Poison の "Every Rose Has Its Thorn" などとは明らかに質感の異なるものであって、「バラード」というだけで同列に比較されるべきとは思われません。そもそもこの2曲を比較する人もいないとは思いますけれど… 

 特に間奏部分の劇的な展開は、聴く者の心に様々な映像を映し出してくれます。聴き終わった後に訪れる心の「静寂」に浸る瞬間は、良質のロックを聴くことの喜びそのものといっても過言ではないでしょう。



128. Independent Love Song - Scarlet


 1995年、ロンドンでの思い出の1曲。春先から初夏にかけて、FM局で繰り返し繰り返しエアプレイされた、とてもラジオ受けする歌です。

 Scarlet はイギリス北部の港町ハル (Hull) 出身の Joe Youle (Keyboards) と Cheryl Parker (Vocals) という女性2人組。70年代前半生まれとのことなので、この曲がヒットしていた頃はまだ二十歳そこそこだったということになります。どちらも特段可愛いルックスではなかったし、この曲の後は "I Wanna Be Free", "Love Hangover" などの小ヒットが出た程度でした。ハルからロンドンに出てきてひと花咲かせようと、安いフラットで2人で共同生活しながら曲を書き溜め、毎日レコード会社に売り込んで歩く中で93年に Warner と契約。

♪You could say this was an independent love song
 It's nothing like to us what love meant to them
 But, that's not to say the love we have isn't big or that strong
 I'm doing it a different way
 I'm doing it a different way


 ちょっとロリっぽく鼻にかかった甘酸っぱいヴォーカルを聴かせるこの曲は、唐突な感のあるコーラス部分よりも、むしろ歌い出しの可愛いAメロが気に入っています。全然楽曲のタイプは違いますが、例えば Bangles の "Eternal Flame" に感じる可愛さと近い感覚。上記のフレーズは歌い出しであると同時に、ドラマティックに盛り上がった後のラストを締めくくる歌い納めでもあります。きれいに循環する構成が印象的な独立系ラヴソングでした。



127. You Oughta Know - Alanis Morissette


 あちゃー。もう出ちゃいましたか。

 Alanis 自身についてはかなり色々書きたいこともあるのですが、"You Oughta Know" 単体を取り上げると、結構コトバに詰まっちゃうんですよね。まさにそうした言い訳めいたコトバや男の逃げ口上を一切許さない、というのがこの曲のテーマでもあるわけで。

 30年も生きていると、恋愛の1つや2つはします。例えば2つしたとすると、それは1つめの恋愛が終わったことを意味しているわけです。通常は。初恋がそのままトントン拍子に進んで終生のパートナー関係に至った方は別ですが、そうでない場合、終生のパートナーに出会うまでに何度か恋愛をし、それが壊れる経験を積んでいくことになりますね。恋愛の終わりはとても残酷なもので、振られる側より振る側の方が気がラクだなんて簡単に言い切れるものではありません。両方が同時に同じくらいのレベルで相手を嫌いになれば問題は少ないのでしょうが、なかなかそういうことは起こらないようで。

 そこで、"You Oughta Know" だ。

 歌詞に "fuck" という語が出てくることや、しゃくりあげるような独特の唱法で話題を作った感はありますが、基本的にこの曲はとてもキャッチーで覚えやすいメロディ。特にコーラスのつかみの凄さは、恐らく共作・制作の Glen Ballard が持ってきたメロだとは思うのですが、天下一品です。長調に変えてマイケルにしゃくりあげさせれば "Man In The Mirror"、一丁上がりってな感じです。ベースラインの走り具合も最高でしたね。誰が弾いてるかなんて書くまでもなく。

 街中でかかる度に、自分が肩に背負わねばならない重しを思い起こさせ、ほとんど絶望的な気持ちにさせてくれる楽曲。



126. Wake Me Up Before You Go-Go - Wham!


 僕は「ポップソング」の魔法を信じています。今でも。
 辛い時や悲しい時にウキウキさせてくれるのは、ポップソングだけ。それはまさにマジック。本質的な問題解決ではないかもしれませんが、僕らに3分間だけの夢を見させてくれる。夢から覚めた時、新しい道が見えてくることもある。

 ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ。
 実に適切な邦題をつけたものだと思いませんか? ただひたすらハッピーでポップな魔法の時間。良質の懐かしいソウル・ミュージックの楽しいところだけを抽出したようなマジカルな瞬間。

 ジョージ・マイケルという人はとにかく驚異的に歌の巧い人で、アップからスロウまで何でも聴かせる声の持ち主ですが、個人的にはこうしたウキウキするようなアップテンポ楽曲をもっと歌ってほしいなあ。基本的にはとても真面目な人のような気がするので、やっぱりアンドリュー・リッジリーくらいにハズしたボケ役パートナーがいてくれないと、なかなかおバカになりきれないのかもしれないけれど…

 "MAKE IT BIG" アルバムの中では、The Isley Brothers のカヴァー "If You Were There" もまた、ポップソングの魔法に溢れた出色の出来でした。



125. Vegas - Sleeper


 Sleeper のヴォーカリスト Louise Wener は、バンド内部のメンバーを次から次へと食っちゃいましたボーイフレンドにしていきました。「終わった」メンバーも辞めるでもなく、演奏しながら彼女の後ろ姿を眺めていたりします。終演後、彼女は新しい相手と2人で帰っていくわけです。うーんすごいシチュエーション。似たような人間模様を内包したバンドに Fleetwood Mac がありますが、どうも自分はそんな人々に妙に惹かれるものがあるようです。

 Britpop の年だった1995年、Sleeper はこの "Vegas" で颯爽とチャート上位に登場してきました。(実際にはその前に何枚もEPをリリース済み)  綺麗なメロディ展開が印象的な佳曲だとは思いますが、やはり話題になったのは Louise の大胆な発言ぶりや露出度だったような気がします。

 CD シングルは、歌詞にちなんだエルヴィスのジャケットといい、 Pretenders のカヴァー "Hymn To Her" の収録といい、パッケージとしてとてもよくできていてお気に入りです。



124. Place Your Hands - Reef


 豪快! 愉快! 痛快!

 Reef に出会ったのはロンドンに住んでいた95年春のこと。"Good Feeling" のCDシングルが店頭で安売りされていて、何気なく買ってみたのです。粗削りながらもパワフルでファンキーな黒っぽいサウンドに引き込まれました。夏には2枚目の "Naked" が、さらには "Weird" が続いていずれもカッコよかったものですから、相当期待して購入したデビューアルバム "REPLENISH" でしたが、こちらはちょっと肩透かしで、眠くなる瞬間がちらほらと。ブルージーで、妙に老成したような雰囲気を醸し出していましたが、無理して背伸びしている感じがしたものです。

 しかしセカンドの全英#1アルバム "GLOW" で彼らは見事に生まれ変わります。1stシングルのこの曲での Gary Stringer の野太い吠えっぷり、どうです? 一切迷いなし、ただロケンローするだけ。グルーヴィかつファンキーかつソウルフル。ライヴでこの曲を演奏する様子を見たことがありますが、ものすごい盛り上がりでした。こういう「キメ」の1曲ができると、あとあとセットリストを組むのが楽になることでしょう。

 その後音楽性は変遷しつつあり、少〜しずつ自分のストライクゾーンから離れつつあるようです。



123. Stay With Me Tonight - Jeffrey Osborne


 イヤラシイ歌です。歌い出しのジェフリーの声に乗っかる「気」というんでしょうか、そこからしてもう強烈にエロティックです。黒光りしてる感じです。婦女子立ち入り禁止です。でも裸ならOKです。まあイヤラシイ。

 チョッパーを組み込んだ弾力的なベースリフ、絶妙に絡む都会的なキーボード、ロック系の極めてエッジの効いたギターソロ、コーラス中に巧みに織り込まれたハンドクラップ、とすべてが一分の隙もなく構成されたアップテンポのファンクです。弾けきらずに敢えてぐっと抑制したクールネスがたまりません。プロデュースは、言われりゃ納得の George Duke 御大。フェードアウトさせずにそのままフュージョントラックを展開させたくなってしまいますよね〜。

 いいヴォーカリストであるにも関わらず、ジェフリー・オズボーンは(特に日本においては)なかなか正当な評価を得ていないようです。確かに、ソロになってからは楽曲の当たり外れがあったり、プロダクションの方向性が中途半端だったりしたような気も。でも以前在籍していた L.T.D. での素晴らしいヴォーカルは、今でも輝きを失っていませんし、ぜひ若い世代にも聴いてほしいなぁ、と思います。



122. Painkiller - Judas Priest


 「ヘヴィメタル」というジャンルを象徴するバンドのひとつだろう。ジューダス・プリースト。その名を発音するだけで、神への畏れにも似た震えが全身を走る。まさにメタル・ゴッドの名に相応しい…

 …なんて書くからチャートファンの皆さんが引いちゃうんだと思います。
 自分に言わせれば、Judas も Maiden も Purple も Sabbath も、どうしてこんなに何十年も支持され続けているかといえば、そりゃやっぱり楽曲がいいからです。特に Judas なんて、ベスト盤で代表曲を一気に聴くと、そのメロディのわかりやすさとリフのカッコよさに単純に感動しちゃいます。

 この "Painkiller" は、リードヴォーカルだった Rob Halford にとって最後のアルバムのタイトル曲ですが、本当に「これでもか!」というくらいにヘヴィ・メタルの凄さを詰め込んだ傑作。ザクザクと切り刻まれるギターリフと Rob の超人的なハイトーンヴォイス、そしてこの作品から新加入のドラマー、Scott Travis の手数足数の多さに目を回しつつ、2回目からは拳を突き上げてしまうこと請け合いのコーラス部分へ。期待通り、型通りに完璧なギターソロが挿入され、コーラスに回帰して一旦すべてを出し尽くし、ここで終わりかと思わせつつ、もう1回短いギターソロに戻るあたりで狂気乱舞。エンディングのドラムス乱れ打ちの頃にはもはやぐったりしてメタル・ゴッドにひれ伏すこと確実です。マジで。

 そんな意味で、ギターシンセを大胆に導入して賛否両論を呼んだ "Turbo Lover" ですら、自分にとっての彼らの本質である「良い楽曲」という点は十分に満たしており、大好きだったりします。



121. I Love Your Smile - Shanice


 キュートな楽曲は世に数多くありますが、これほど万人に愛されるものはそう多くはないのではないでしょうか? イントロといい主旋律といい歌詞といい、Shanice の初々しいヴォーカルといい、どこを切っても超キュート。数多くの傑作を残してきた Narada Michael Walden にとっても、特に素晴らしい楽曲・プロデュース作といえるでしょう。

♪Time came and showed me your direction
 Now i know i'll never ever go back
 Taught me that
 I can be a better girl with love you give
 You rock my world
 You dig


 このブリッジ部分の可愛さと、続く Branford Marsalis の開放感溢れるサックスソロの妙味。最高です。

 全米2位に終わった曲の中には、どうしてこんな曲が2位まで?というものと、何とか1位にしてあげたかった!というものとがありますが、これは間違いなく後者。ちなみに2位滞在中の92年2/1〜2/15の全米1位の座は、George Michael & Elton John "Don't Let The Sun Go Down On Me" から Right Said Fred "I'm Too Sexy" にリレーされていました。諸行無常の響きあり。トホホですね…

 …それでもやっぱり、僕は彼女のスマイルが大好きなのです。


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