Diary -April / May 2004-


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5 May 2004
Wednesday

「Good News & Bad News」

 良いお知らせと悪いお知らせがあります。まずは悪いお知らせから。
 多忙になってきまして、これから5月末までほとんど更新ができません。BBSとメールは毎日チェックしますが、次に Diary やその他のコンテンツを更新できるのは6月になりそうです。ごめんなさい。しばしお待ちくださいませ。
 もう一つ悪いお知らせは、5月28日の産業Night@下北沢Revolverにも参加できないということです。いつも自分自身が一番楽しみにしてるだ けに残念。次回は9月の最終金曜日になる予定です。

 次に良いお知らせを。6月は多少時間が取れそうです。そこで、6月18日(金)夜に下北沢RevolverでDJイベントを行いたいと思います。いろいろ考えたのですが、お題は『80s Night』ということで、昨今ちょっとしたブームになっている80年代もののヒット曲をまとめてかける夜にする予定です。80年代、といってもすごく幅 が広いのです。ロックもブラックもポップスも横並びでチャートに入っていたあの頃を懐かしく振り返る企画にできればと。もちろん若い人にとっては新鮮に聞 こえることでしょう。それもまた良し、です。当サイトのオフ会を兼ねて実施しますので、皆さんどうぞお気軽にお越しください。

***

「何だか歳とっちゃったなあ」
「突然何言い出すんだよ」
「いやね、こないだTVで『ロード・オブ・ザ・リング』放映してたじゃん。相当気合い入れて観たんだけど」
「…つまんなかった?」
「ていうか、入り込めなかった。感情移入できなかった。どうしてなんだろ、って思ってさ。この手のファンタジーにどっぷり浸かるには歳をとりすぎたのか なって思ったわけ」
「なるほどね。でも単純に年齢の問題でもないような気がするけど?」
「そうかな」
「だって『スター・ウォーズ』シリーズならOKなんでしょ? 『ロード・オブ・ザ・リング』も似たようなもんだぜ。少年が通過儀礼としての苦難を経験し、仲間を増やし/あるいは失いながら旅をして、敵を倒して帰って くる。桃太郎とかと全く同じ」
「へぇ、指輪物語≒桃太郎だったとはねー。それにしても、この第1作に関して言うとイライジャ・ウッドが苦しそうな顔して寝込んでる姿しか記憶に残ってな いよ(笑)」
「そうじゃなくてさ、壮大なファンタジーの世界に入り込んでドキドキハラハラするべき映画なんだと思うけどね(笑)」
「なんだかそれが全然できなかった。いちいち『それあり得ないだろー』とか『お前ホビットじゃなくてただの人間じゃん』とかツッコんじゃって。そうやって ツッコむ自分が悲しかった」
「でも中には多分同じようにこの映画ダメだったって人もいると思うよ。世間があまりに持ち上げモードだから正面切って批判しにくいだけで」
「せっかくのエンターテインメントならみんなと同じように楽しみたかったんだけど、でも駄目だった。とにかく長すぎ。さっさと結論言えと。続きをあと2本 観ると思うと気が遠くなる…」
「観なくていいってば(笑)」
「でもそれが悲しくてさ。歳とっちゃったのかなと」
「もうすぐまた歳とるね」
「そだね」
「敢えて見どころをもう一度尋ねると?」
「『マトリックス』のエージェント・スミス役、ヒューゴ・ウィービングが出てます。目が離れ気味なのですぐ分かり ます。子供の頃よく見ていた『吸血鬼ドラキュラ』シリーズで知られるクリストファー・リーが凄い迫力です。お前一体何歳なんだよと(今年 82歳です)。お前身長何cmなんだと(193cmです)。ドラキュラのライバル、ヘルシング教授役だった故ピーター・カッシングの方が好きだったけど、 彼も出演した『スター・ウォーズ』シリーズに現在クリストファー・リーが出てるんですってね。『エピソード2』に続き、『3』も控えている模様。リヴ・タ イラーをまともに観たのは初めてかもしれん。こんなに可愛い子だったとは。『エンパイア・レコード』とか『す べてをあなたに』も観てみたい」
「てな感じでよろしいでしょうか」
「うぃす」

***

 『世界の中心で、愛を叫ぶ』とかいう本がベストセラーになっている。100万部を超えているから、普通の印税で あ ればおそらく著者の元に1億円以上が転がり込んできている計算だ。個人的には全く興味がなくて、たぶん読まずに一生終わるんじゃないかなって気がしてい る。ま、どこぞのタレントだかが「泣きながら、一気に読みました」とか言ったくらいで100万部売れるような本を一緒になって読みたくない、というレベル の低い苦手意識の方がよっぽど恥ずかしいって気もするけど。

 もう一つ、この本を応援する気持になりにくいのはそのタイトルだ。既に『イラクの中心でバカと叫ぶ』とか『吉野屋の中心で並盛と叫ぶ』といったパロディが乱造されつつあるが、ちょっ としたSFファンなら先刻ご承知のとおり、これはもともとハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』が下敷きになっている。

 エリスンは60年代後半から70年代にかけて活躍したアメリカン・ニューウェーブの旗手で、優れた短編を多く残している。そして優れた短編の多くがそう であるように、内容ばかりでなくタイトルにも光るものが多かった。例えばこんな感じだ。

「『悔い改めよ、ハーレクイン!』とチクタクマンはいった」
「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」
「ガラスの小鬼が砕けるように」

 そしてこれらと並んで一際印象に残るタイトルが「世界の中心で愛を叫んだけもの」なのだった。であるから、このタイトルを安易に引用してベストセラー小 説を書かれてしまったこと自体が、一昔前のSFファンとしてスッキリしない。どうも美味しいところだけ持っていかれたような、微妙な喪失感が残るのだ。も ちろん、作者の片山某とやらが筋金入りのSFファンでないとしたら、彼にこのタイトルを使う資格はない。

 タイトルが印象的なSF作家の例にジェイムズ・ティプトリー・Jr.がある。彼の(といってもこれはペンネームで、本人は女性だったのだが)傑作に「たったひとつの冴えたやりかた」という短編がある。これなどタイトルの素晴らしさだけで賞をひとつあげたくな るくらいだ。そして当然の如く、このタイトルはしばしばパロディの題材にされる。個人的に特に印象に残っているのはプリンセス・プリンセスがインタビュー 集の本を出した時に使った「たった5つの冴えたやりかた」というものだ。これは洒落ている。プリプリのメンバー5人は共通点よりは相違点の方が多いくらい の集団だが、彼女たちの方向性の違いを表す上でも絶妙のタイトルだったと言えるのではないか。

 ちなみにティプトリーには他にも次のような記憶に残るタイトルの作品がある。

「ビームしておくれ、ふるさとへ」
「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」
「男たちの知らない女」
「接続された女」
「エイン博士の最後の飛行」
「故郷へ歩いた男」
「一瞬のいのちの味わい」
「愛はさだめ、さだめは死」

 熱心な読者は既に気が付いていると思うが、最後のタイトルは僕もこのサイトのコンテンツ中で借用している。「オーディオはさだめ、さだめは死」が それ だ。

 話を戻そう。『世界の中心で、愛を叫ぶ』を読もうと思わない本当の理由はタイトルなんかじゃない。簡単なことだ。それは、大切な人を失った悲しみなんて あ んたに言われなくてもよぉく分かってるよってこと。そんなもの読まされるくらいなら自分が本を書いた方がずっといい。もし僕にそれだけの筆力があれば、の 話なんだけど。

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 それでは6月までしばらくお休みします。
 またお会いしましょう。ごきげんよう。


25 Apr 2004
Sunday


「ぶらり・ライブラリ」

 寒気が流れ込んで、昨日今日と朝晩はひんやりするくらいだった。そんな朝に調布に向けてチャリを飛ばすのは気持ちいい。甲州街道を西へ、つつじヶ丘を越 え、野川を渡って調布へ向かう。本当は野川に差し掛かるところで、右か左に折れて川沿いをのんびりサイクリングし たいなあという強い思いに駆られる。野川沿いに自転車を走らせるのが気持ちいいことは何人かの女の子から聞いた。川の流れと豊かな緑に恵まれたこの辺りで 暮らすのもきっと悪くないだろう。

 でも自分が目指すのはもう少し先、心を鬼にして直進するペダルに力を入れる。パルコを越えて京王線の踏切を渡り、ようやく調布市立中央図書館にたどり着 く。自宅からチャリで20分強。有酸素運動としてとらえるならこれからが本番、という辺りだ。午前9時の開館に向けてエレベータを上る。といっても列がで きていたのは受験シーズンの2月頃まで、今じゃ9時前に並んでいるのは自分くらいのものだ。この半年というもの、この図書館に通い詰めの週末だった。何し ろ本が揃っている。専門書も雑誌も文庫本も信じられないくらい多いし、コンディションも良好。本気で読み始めたら多分何年もこもりきりになってしまうだろ う。さし当たっての目的は読書ではないので、本を積み上げて読み耽りたい気持ちをこらえて用事に取り掛かる。

 お昼になると、お弁当を持って1階に下りる。出掛けにささっと作ったものなので、大したお弁当ではないけれど、お昼を食べている時間はつかの間の休息 だ。調布市のコミュニティセンターに出入りするたくさんの人たちを眺めながら、しばしぼんやりする。この後の1時間くらいがかなり眠いので要注意。少しず つ自分をコントロールできるようになったとはいえ、この眠気だけはなかなか飛んでいってくれない。お気に入りのミ ンティア「ドライハード」で2粒で刺激を与える。FRISKが約200円と暴利を貪っているのに比べればこの MINTIA は50粒で100円弱と良心的。特にこのドライハードの強烈さといったら特筆モノで、炎が噴き出すイラストにも納得する。カフェイン配合なので真面目に効 く。

 夜になって帰りの自転車をこぐ頃になると、空気はまた冷たくなる。それもまた野川を越える頃まで。そこから先は身体が温まり、次第に熱くなっていくのが 実感できる。この繰り返しの中で、自分をどこまで追い込めるのか。どこまで追い詰められるのか。プレッシャーをかけるのは苦手じゃないけれど、サイトの更 新をお預けにして皆さんに迷惑をかけていることは少し心苦しい。ネタはいろいろ温めているので、また更新できるようになったらたくさん書きたいと思う。そ れまでもう少しお待ちください。

***

 さて皆さん、もちろん新生銀行の 口座はとっくに開きましたよね?

 えっ、まだ開いてない? これまで一体何を読んでたんですか。今すぐ口座開設してください。もし貴方が経済的自由なんていらない、一生あくせく働いて時 間に追われたまま死にたいのでない限り。無論、同行の金融商品で爆発的にお金を儲けることなんてできません。4月から始まったパワード・ワンだって元本保証の1%円定期といえば聞こえは良いですが、なんと期間5年、しかも満期時に新生 銀行側の判断でさらに3年間期間延長されてしまう(中途解約不可)商品なのです。5年も長いが、8年はもっと長い。おそらくはその頃長期金利は上昇を始 め、巷にはより有利な商品がたくさん並び始めていることでしょう。しかしパワード・ワンに1,000万円とか預け込んじゃうと、もうそこで指をくわえて眺 めているしかないのです。ですから新生銀行のメリットはその商品にあるのではなくて、24時間365日ATM手数料が無料であること(しかも最寄りの都銀 や郵便貯金のATMが使える)と、どの銀行のどの口座に対しても振込手数料が無料であること、この2点です。しかしこの2点は、年間積み上げるとおそらく 数千円に上るものです。そこのところのコスト意識が今問われている。

 さて、普通の生活を送るにあたって必要な銀行口座はあと2つ、多くてもあと3つでしょう。何? 銀行口座なんて1つしか持ってない? ダメです。そんなことでは経済的自由は限りなく遠い。今や各行が商品性に差をつけてしのぎを削る時代です。メリットを最大限に享受すべく、多くの銀行の美 味しいところを掠め取らねばなりません。さて残る2つないし3つの銀行ですが、ひとつは以前もご紹介したイーバンク銀行です。高めの預金金利とヤフ オク・楽天との親和性の高さ、knots のようなネット小遣い稼ぎ(よく利用しています)での現金換金性、さらには新生銀行からの毎月の3万円スイングで勝手にキャッシュバックしてくれるところ がメリットでしたね。

 もうひとつは、さしあたって使う予定もないけれど、かといって急に必要になるかもしれないし、5年ものなんて定期に入れるのは不安、という貴方にぴった りの銀行です。それはス ルガ銀行seバンク支店。何じゃそりゃ!って感じですけど、れっきとしたスルガ銀行のネット支店のひとつで、別にシステムエンジニアでなくても口座は作れます。ここのメリットは以上 に高い普通預金金利。都銀の多くが0.001%という超低金利をつけている現在、スルガseは一体どうしたことか、普通預金に0.201%もの金利がつい てしまいます。これはちょっとすごい金利で、実際スルガseの内部でも矛盾を起こしています。だってスーパー定期300万円以上の7年ものの金利が 0.200%なのですから…。もちろんこれを下回る期間の定期は0.2%にすら達していないわけです。普通預金の方が高い利息が付くときに、どこの誰が 300万円以上7年間も動かせない定期に入れるんでしょうか? まあそんな疑問はおいといて、ユーザとしてはこの高金利を存分に活かさなくてはなりません。ATMはアイワイバンク(セブンイレブン店内)などが使えます し、前月に20万円以上預けていれば時間外利用手数料もなしです。とりあえず行き場に困ったお金はこの口座に入れておこう!

 最後にもう1つ、作っておいても良い銀行口座はソニー銀行。ここは主として外貨の取引に使います。外貨預金に関してはTTSとTTBの差が 他社に比べて圧倒的に小さくて有利。ちょっとした円安でも楽々差益を稼ぎ出すことができます。ユーロMMFあたりで小遣いを運用したい貴方向け。

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 さて、そうはいっても預貯金で莫大な資産を作り上げた人なんてこの世に存在しません。若くして引退し、悠々自適の生活に入りたいのであればやはりリスク を取っ て投資しなくてはならない。

 というわけで、自分も遅まきながら先週から試しに株取引を始めてみました。とりあえずは10万円/日までの取引が手数料無料の松井証券にて。10万円以内でも買える株は 結構あります。「雪国まいたけ」とか「東急建設」とか「キューサイ」とか「ソフマップ」とか「キューピー」とか「ピエトロ」とか「ニッポン放送」とか 「ジャストシステムズ」とか「ワタミフード」とか。何せ手数料無料ですから、例えば700円の株を1単元(100株)買うのに必要なのはちょうど7万円。 翌日に株価が710円に上がったところで売り抜ければ、10円×100株=1,000円の儲けです。株価が800円に上がれば10,000円の儲け、小学 生でも分かる明朗会計。もちろん下がれば元本を割 ります。

 株投資についてはここのところ膨大な資料類を読んでいて、急速に勉強しつつあるのですが、次回以降にゆっくり書くことにしましょう。とにかく5万円でも 10万円でもいいから試しに投資してみること。その瞬間に猛烈に経済を勉強するようになります。勉強といっても教科書での勉強じゃなくて。まあ日経新聞の 面白さがありありと分かるようになる、というのもありますが、それよりは世の中の様々な事象がいろいろと気になってくる。イラク情勢が不安になるとどうい う影響が考えられるのか? 100円ショップが店舗を拡大しているというのはどういうことなのか? 介護ビジネスが隆盛すると何が必要になるのか? すべてが投資へのヒントになります。株でも何でもいいのですが、自己責任でリスクを取って投資を始めないと、間違いなく経済的自由はやってこない。貯金す るのも大切ですが、大事なのは貯めたお金を使うことです。自分が働いてお金を稼ぐのではなく、貯めたお金に働いてもらう。そんなちょっとした発想の転換が 求められているような気がします。

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 結局図書館に行っても、あちこちの書棚から持ってきた本や雑誌の類をぱらぱらめくっていて、肝心の用事の方はちっともはかどらないことも多いんだけど ね。果たしてそんなぱらぱらめくりを「読書」と呼べるかどうかは大きな疑問だ。試しに手元の新明解国語辞典(第5版)を引いてみよう。

【読書】−スル 〔研究調査や受験勉強のときなどと違って〕一時(イットキ)現実の世界を離れ、精神を未知の世界に遊ばせたり 人生観を確固不動のものたら しめたりするために、(時間の束縛を受けること無く)本を読むこと。〔寝転がって漫画本を見たり、電車の中で週刊誌を読んだりすることは勝義の読書には含 まれない〕〔古くは、「とくしょ」〕

 なんと! 僕が読書だと思い込んでいた行為の大半は読書ではなかったらしい。それにしても、たかが読書(されど読書だけどさ)にここまで定義を書き込んでしまうあた りが「新明解」の凄さだ。ヤバさといってもいい。「人生観を確固不動のものたらしめたりするため」って、おい(笑)。残念ながらこの面白さについては僕よ り先に本を書いた人がいる。文春文庫から出ている赤瀬川原平『新解さんの謎』がそうで、これは辞書好きにはたまらない1冊なので、興味がある向きはぜひ読んで みていただきたい。


11 Apr 2004
Sunday

「最近のお気に入り&『25時』」

 まずは最近のお気に入りから。
 ひとつは生協で見つけた「ふつうに炊ける十種雑穀」。これマジでスグレモノ。その名のとおり、十種類の雑穀を、洗ったお米にそのまま加 えて炊き上げるだけで、香ばしい雑穀入りご飯ができるというもの。しばらく発芽玄米に凝っていましたが最近はもっぱらこちらです。雑穀の種類は、黒豆・そ ば・はとむぎ・くこ・小豆・緑豆・とうもろこし・黒豆・黒ごま・アマランサス。お米4合くらいに30gの小袋ひとつを空けて、そのまま水を加えて炊いてし まえばOK。出来上がった雑穀入りご飯は風味が豊かで、ご飯そのものがとても味わい深いものになります。もちろん白米に比べて栄養も豊富。生協以外にもイ トーヨーカドーでほぼ同様の商品が売られているようです。

 もうひとつは仙川駅すぐそばにある BAR jei。しゃれたロックバーで、以前から気になっていたのですが、勇気を出して入ってみたのはつい 2ヶ月ほど前のこと。それ以来、毎週1回くらいのペースでちょこちょこお邪魔しています。お店の外の看板にはたくさんのCDジャケットの写真が掲載されて いますが、ひときわ大きく目立つのは Donald Fagen の "THE NIGHTFLY"。僕も大好きなアルバムなので、マスターとは音楽の趣味が合うんじゃないかなーと 思っていたのです。小さな店内にはテーブル席3つとカウンター。最大で15〜6人入れるかな。マスターは若く見えますが、選曲からするとおそらく30代後 半から40代前半か。70年代後半のAORや80年代前半のポップスを中心に1曲ずつCDを取り替えながら途切れることなくBGMを演出してくれます。 TOTO の初期3枚から固め打ちでかけまくったりしてました。お酒も豊富で、大抵のものは揃っています。マスターが作るカクテルは女の子に人気のようです。僕は ビールしか飲みませんが、ビールに関してはミラーとアサヒ黒生とハーフ&ハーフの3種類が生で飲めます。生でなければギネスやコロナも用意されています。 駅からの帰り道にお気に入りのバーができたのはちょっと嬉しいことでした。一昨日なんてつい Steely Dan の "AJA" をリクエストしてかけてもらいました。BOSEのスピーカーから流れるスティーヴ・ガッドのドラムソロに酔いしれながら。

***

  映画『25時』を2月に恵比寿ガー デンシネマで観た。

 これも邦題が不正確だ。原題 "25TH HOUR" を忠実に訳すなら『25時間目』だろう。最後の24時間を描写したあとに訪れる未知の領域、その25時間目の心境こそがテーマだったはずなのだが… それ はさておき話題豊富な作品だった。何せ監督がスパイク・リー、主演がエドワード・ノートン。他にも曲者な俳優陣を配しながら、熱い炎のような、冷たい鋼の ような、尖ったガラスのようなニューヨークの街を描き切った映画だ。

 恵比寿ガーデンシネマはほぼ満席。でも主役のモンティを演じたエドワード・ノートンのキャスティングには賛否両論あると思う。個人的にはいまいちしっく り来なかった。麻薬売買の罪で有罪判決が下され、24時間後には警察に出頭しなくてはならない男という役なのだが、そんな悪人キャラからは程遠い印象があ る。同じ意味で『ミニミニ大作戦』での悪役キャラも疑問符だった。個人的な先入観なのかもしれないけど『僕たちのアナ・バナナ』みたいな善人キャラの方が似合うなで肩の優男という気がする。特に『アナ・バナナ』は 東京国際映画祭で本人の生舞台挨拶付きで観てしまった印象が強烈すぎるのかもしれないけれど。流暢な日本語でぺらぺらしゃべってたし。

 話を戻して『25時』。
 モンティに残された最後の自由な24時間。待っているのは7年間の監獄生活。古い親友たちによる送別会、恋人との一夜…。彼は刑務所内における性的虐待 を極端に恐れている。24時間後に彼が選択するのは出頭か、逃亡か、それとも自殺か。

 旧友のフランクとジェイコブ、恋人のナチュレル、父親のジェイムズらはいずれも味のあるキャラクターで、このドラマに深みと緊迫感を与えている。ウォー ル街の証券ブローカー、フランクと妖艶な教え子に欲望を感じている高校教師のジェイコブ。ちなみにその教え子というのがアンナ・パキンで、これまでのイ メージを覆すセクシー演技で魅せる。フランク役のバリー・ペッパーはどこかで見たことあると思ったら、こないだ観たばかりの『グリーン・マイル』で長身の 看守を演じていた。映画後半でエドワード・ノートンをぐしゃぐしゃにしてしまう演技は圧巻で、今後ますます伸びそうな感じ。ジェイコブ役はフィリップ・ シーモア・ホフマンで、他には未見ながら『マグノリア』や『あの頃ペニー・レインと』などに出演しているようだ。モラルを守ろうと必死になりながらも教え子をじっと舐め るように見つめ、ついにはトイレに入り込んでキスしてしまう。そこまでの葛藤とねとねとしたいやらしさの表現ときたらちょっと描写に苦しむほどで、他にこ の役を適切に演じられる人がいるかどうか分からない。

 そんなこんなで微妙なキャスティングではあるが、ニューヨークの街並を大々的に取り入れたカメラワークと、回想シーンを絶妙なタイミングで持ってくる編 集はさすがにいい仕事だった。映画を観た後でデヴィッド・ベニオフの原作もざっくり読む機会があったが、個人的な印象では概ね忠実な映像化だと思う。原作 にはないグラウンド・ゼロの描写も抑制が効いていてわざとらしさは感じなかった。ラストシーンはまさにクライマックス。父親ジェイムズがモンティを車に乗 せ、遠く遠く逃げることを勧める。子守唄のように、モンティに「あったはずの未来」を穏やかに語り聴かせる場面はあまりに美しい。真っ白な砂漠を越え、西 海岸で新しい人生を「生き直す」モンティの幻想が素晴らしい映像で描かれる。ジェイムズ役のブライアン・コックスの淡々とした語りが光るシーンだ。

 もうひとつ印象的だったのは、映画中でモンティがNYの街の様々な場面を捉えて "Fuck you ***..." とひとつひとつ罵倒していく長いシーン。罵倒の対象は中国人であったり韓国人であったりゲイであったり黒人であったりするのだが、偏狭な価値観を敢えて強 調することは、実は彼自身がそうした「異物」に怯えきっていることの裏返しでもある。テンポのいい台詞回しは実は「ラップ」そのもので、いかにもスパイ ク・リー監督らしい演出だったのだが、エドワード・ノートンの声は高すぎて、今ひとつ迫力に欠けてしまっている。アイディアはいいだけにちょっと残念では ある。

 観終わってしばらくしてから、ドイルの存在が効いてくる。ドイルというのは映画の冒頭でモンティが助ける瀕死の犬だ。人間たちにひどい目に遭わされたに 違い ないその犬は、モンティに対しても最後の力を振り絞って激しく吠える。結局は助けられ、モンティの飼い犬になるのだが、彼がドイルに示した愛情こそがこの 映画のテーマのひとつだったように思う。映画の最後で自らの顔をぐしゃぐしゃにつぶされたモンティは、映画冒頭の瀕死のドイルそのものだ。そしてドイルに モンティが優しく手を差し伸べたように、今度は父親ジェイムズがモンティに救いの手を差し伸べるのだ。

 モンティは結局のところ、この街のはみ出し者として生きるしかなかった。唯一心を許せる相手たりえたのが ドイルだったのではないか。自分勝手に生きているようでありながら、そんなところに垣間見せたモンティの優しさと哀しみが、あとからじわじわと伝わって くるような仕掛けになっている。ここはニューヨークではないけれど、同じように精神的はみ出し者として生きる僕らは、きっとモンティと同じ感覚を共有して 生きているんだろうな。そんなひりひり感が印象に残る1本だった。


4 Apr 2004
Sunday

「自分から自分に振り込むだけ」

 皆さんもう新生銀行の口座は開設しましたか? 口座開設&維持コストは無料ですから、プチ財テクに興味のある貴方はまずは口座を開きましょう。今日はその続き。

 イーバンク銀行というところがありま す。ここのメリットはいくつかありますが、一般的にはYahoo! JAPANのオフィシャル銀行であることでしょう。オークションやYahoo! ウォレットなどの利用時に便利になっています。楽天フリマの使用料の支払いもできますね。

 この他、ネット専業銀行であることによる高金利もメリットです。1月まで1%定期を取り扱っていましたが、残念ながら現在は最高利率でも0.7%(5年 定期)となっています。それでも口座開設とキャッシュカード(ニコスのクレジット付き)は作成&維持費が無料ですし、郵便局ATMとセブンイレブン店内の アイワイバンクATMが使えます(月5回まで手数料無料、特に後者は24時間営業)から、使い方によってはイケるかもしれません。

 実はイーバンクと新生銀行を組み合わせるとちょっとした小銭稼ぎができます。イーバンク銀行は、本人名義の他行口座からの振込に対して、その手数料相当 分としてキャッシュバックサービスを行っています。月に1回だけですが、3万円以上の振込に対して210円、3万円未 満なら105円がイーバンクの口座にあとで入金されることになっています。さて勘のいいお方ならもうお分かりですね。新生銀行のメリットは他行への振込手 数料が無料であることでした。つまりイーバンクの自分の口座向けに毎月3万円振り込めば(手数料はかかりません)、勝手におまけが210円付いてくるので す。

 210円/月ということは年間で2,520円。馬鹿にしてはいけません。0.001%の金利でこれだけの純益を上げようと思ったら元手がいくら必要か計 算してみてください。それが元手なしで、PC上の操作でちょちょっと振り込みをしてしまうだけで手に入るのです。中古CDを5枚買うもよし、WINTER WONDERLAND のオフ会に出て美味しいビールを飲むもよし、はたまたこれを元手に更なるプチ財テクに走るもよし。何もしなければこの2,520円は絶対に手に入らないも のです。そうやって前向きに捉えることができるか、それとも「たったの210円/月か」と馬鹿にするか。財を成して早期にリタイアできるかどうかはほんの 小さな心がけにかかっているのです。

***

 今日のBGMはけいさんに聴かせていただいた OutKast の "SPEAKERBOXXX / THE LOVE BELOW"。いやー、グラミー賞年間最優秀アルバムに輝 いただけのことはあります。実に濃密で多様な音楽性を楽しむことのできる2枚組。僕などはつい、Prince の "SIGN O' THE TIMES" を初めて聴いたときのことを懐かしく思い出してしまいました。

 この比較が適切なものかどうかは分かりません。しかし Prince の作品は圧倒的なエネルギーとバラエティに富んだ楽曲で当時の僕に衝撃を与えてくれました。グラミーにもノミネートされていたわけですが、結局はU2に 持っていかれてしまいました。今にして思えば、それも「時代」の成せる業だったと思うのです。あの時代に OutKast のこのアルバムが出ていてもやはりU2には勝てなかったと思うし、Prince が2004年にこのレベルの新作を出していたら、ひょっとしてグラミーを獲ったかもしれないと。

 OutKast のことをただのヒップホップデュオだと思っていた人は大いに認識を改める必要があるでしょう。特に "THE LOVE BELOW" の方はいわゆる「ラップ」からはかなり遠い作品ですが、もともとこの2枚組は2人のメンバーがばらばらに制作したソロ作品を無理やりくっつけてひとつの商 品に仕立てられたものであることを考えれば、それほどおかしなことではありません。どちらのアルバムも力作ですし、2枚に渡って繰り広げられる様々な音楽 パターンは、ブラックミュージックの歴史を振り返りながら最先端の切り口で纏め上げたショーケースとして楽しむことができます。ジャズ風味あり、ゴスペル あり、ブルースあり、キャッチーなファンクあり、もちろんラップもあり。黒人音楽はこんなところまで来てしまったと聴くか、それとも結局本質の部分は変 わっ ていないと聴くか。

 ほとんど変態的なレベルにまで到達してしまった Andre3000 の "THE LOVE BELOW"。正統派ヒップホップのエンターテインメント性を忘れない Big Boi の"SPEAKERBOXXX"。後者に収録された "Ghetto Musick" における超高速のライミングには血が騒ぎますし、前者において様々な形式で展開される「愛」賛歌にはいろいろと考えさせらるでしょう。Big Boi と Andre3000 が OutKast として活動を共にするのはあとわずかのことだと言われています。もったいない気もしますし、その潔さやよしとしたい気もします。間違いなく現在の米国のブ ラックミュージックを代表する才能だけに、今後も切れ味鋭い作品を作り続けてほしいものです。

***

 えと、種明かししてあるのでとっくにお分かりとは思いますが、1日の日記はもちろんエイプリルフールでした。その後も何件かおめでとうメールをいただい てしまったので、反省してお詫び申し上げます。ちなみに今のところ家族構成を変動させる予定はまったくありません。まあ、予定なんていつまでたっても未定 ですが…


1 Apr 2004
Thursday

「ご報告」

 縁があったということなのでしょう、6月に結婚することになりました。

 いいパートナーになれそうな相手であれば結婚してもいい、というのが自分のスタンスでした。別にシングルであることにそれほどこだわっていたつもりはあ りません。それにしても進むときはとんとん拍子に進むものなんだな、と我ながらびっくりしています。

 「プリンスとか好きなんだよねー」。きっかけは何気ないこんな会話でした。紹介してくれた友人は両方がプリンス好きだということを意識していたようです が、まさか "PARADE" と "AROUND THE WORLD IN A DAY" の2枚にここまで愛着のある同士だとは思っていなかったようです。正直、この時期のプリンスに関しては朝まで語り明かせるくらい思い入れがあるからなー。 その他もろもろの洋楽話でいきなり意気投合しちゃったのでした。

 留守電に意味深なメッセージが入っていたのが先月半ばのこと。既に何度か会ってはいましたが、あれ、普段と違うぞと思ったので彼女の職場近くのバーに急 いで駆けつけたのでした。結果からいえば他愛のない話だったのですが、いろいろ話し込んでいるうちに、何かすごく穏やかな気持ちで、きっと僕らは何十年後 もこうやって2人でテーブルを挟んで語り合っているに違いないと確信できる瞬間があったのです。それからどちらともなく、自然に話がまとまったという感 じ。

 風流な式を挙げるつもりはありませんが、サイトの読者の皆さんをご招待して簡単なお披露目会はやろうかな、と2人で話し合っています。この数ヶ月は自分 でもまったく意外な展開で、それこそまるで『スウィート・ノベンバー』でも観ているような気分でした。キアヌ・リーヴスが人を愛することを知って、初めて 優しい気持ちになれた時のような。お披露目会では Enya を流さなくちゃ…なんてね。シングルライフの看板は下ろしても、シンプルライフはできるだけ貫きたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いしま す。

***

 そうそう、留守電の意味深なメッセージというのは「各段落の先頭文字に気をつけてね〜」というものでした。すなわち「縁」「い」「プリ」「留」「風 流」。…エイプリルフールかよ。

 4月1日の日記なんてこんなもんです。はい。なかなかここココのように洒落たエイプリルフールは書けないものですね。

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