Diary -December 2002-


バックナンバーはこちら / 冬メイル
31 Dec 2002
Tuesday

 1月1日午前2時までにこの日記を読んだお方で、その時間帯に何もすることがないという貴方。心配ご無用、NHK教育TVをつけましょう。1999年製作のシンガポール映画 「フォーエバー・フィーバー」。これ最強。サタデー・ナイト・フィーバーの大ヒットをベースにした青春ものですが、非常にテンポの良い脚本と演出でぐいぐい引っ張ります。大いに笑い、大いに泣く。アジア映画に縁遠い貴方にこそお勧めしたい、新年最初の爽やかな感動。初詣なんてそれからでも遅くない。

***

 そんなわけで、今年も今日でおしまいです。
 たくさんの人との出会いがありました。別れは…あんまりなかったですね。差し引きたくさんの友達ができました。一人ひとりの皆さんに、どうもありがとう。僕はご覧のとおり、話題にも乏しいし才能もないけれど、皆さんのお話をいろいろ聞いたりしているととても楽しいのです。相変わらず皆さんに助けていただきながら、何とか1年間無事に過ごすことができました。本当に感謝しています。

 よりたくさんの人たちと出会えること、そしてこれまでの友達とより仲良くなれることを祈りつつ。2003年、すべての素晴らしいことが貴方に起こりますように。


29 Dec 2002
Sunday

 「BGMが流れている状態で本、読めちゃったりします?」

 いい質問です。結論からいうと、読めません。正確には、読めなくなっちゃいました。以前は割と音楽かけながら本も読めたような気がするのですが、最近はまるでダメです。音楽聴くときは音楽だけ、本を読むときは本だけ。どちらか片方しかできない。その代わり、ぐっと集中して聴く/読む。

 一度にひとつだけ。
 これ大事な原則だと思うのです。ちょっと違うのかもしれませんが、僕は街を歩きながら音楽を聴くこともなくなりました(以前はCD/MDウォークマンを持っていた)。コードがぶらぶらしてるのがウザったいというのもありますが、最大の理由は集中できないから。音楽に集中すると周りが見えなくなって車に轢かれたり犬に咬まれたりして大変です。一方、車や犬に気を配ると音楽が聴こえない。いやまだ轢かれたり咬まれたりしたことはありませんが。

 電車の中では走行音が大きすぎてボリュームupにつながります。これは確実に耳を悪くする。慢性の難聴になっちゃったりするとなかなか戻すのは難しいらしいです。喫茶店に入るとたいてい音楽が流れている(しかも酷い音楽であることが多い)。ヘッドホン越しに聴こえてくるそれと格闘しながら音楽に集中しようとするのはかなり無駄な労力。しかもそこで本など読もうとするものなら。

 それより、僕は街を歩きながらお店のディスプレイを眺めたり、電車の吊り広告を読んでみたり、喫茶店の周りの席でしゃべってる女の子たちの会話をぼんやり聞いてたりするほうが面白い。松任谷由実もネタ探しにファミレスに行くようなこと言ってたっけ。要するにそこには持ち歩く音楽は不要なのです、僕の場合。音楽は家に帰ってからじっくりと向かい合って聴く。あるいは掃除や皿洗いや洗濯物干しのような単純作業のBGMとしてかけるのならOKです。でも原則はやっぱり、一度にひとつだけ。

***

 だからもちろん。

 一度にひとりだけ。


28 Dec 2002
Saturday

 昨夜ちょっと飲みすぎて、今日は夕方までベッドから起きられず。仕事上の付き合い飲みとはいえ、無理をするにも程がある。しかも買ったばかりの腕時計と図書館から借りたCDを袋ごとお店に忘れてしまい、さっきバスに乗って三鷹駅前の江戸前寿司屋さんに取りに行ってきたところ。「うちへの差し入れかと思ったよ」と笑う主人と奥さんに頭を下げて帰ってきました。ちゃんと戻ってきて良かった。30歳を過ぎたあたりから急速にアルコールへの耐性が弱くなってきたようです。もっと気をつけよう。

***

 今日、明日とNHK総合で夜中に海外ドラマ「スティーヴン・キングのイット」を放映しますね。僕は確かレンタルビデオで借りて見たことがあります。キング作品の映像化の問題点についてはあちこちで語られていますが、この「イット」について言うと、悪くないです。テレビドラマという制限を考えれば、大健闘していると言ってもよい。とはいえ、このドラマを見て興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひ原作の小説にもトライしていただきたいところ。文庫本では4分冊になった大ボリューム作品ですが、途中からはページを繰るのももどかしいほどスピードが乗ってきます。子供とは何か。大人になるってどういうことなのか。僕ら一人一人の心の中に住まう「イット」との闘いを、どこかに忘れてきてはいないか。まさにオールタイム級に好きな1冊なのです。


26 Dec 2002
Thursday

 はつらつはつらいよ。

 …と思いながら毎日出勤してきたお勤めの皆さん、お疲れさま。明日まで職場ではつらつした顔を見せれば、その後9連休というお方も多いでしょう。しばらくゆっくり休んで心と身体を解放し、映画や読書で充電しましょう。組織の中で働くことは時としてかなりの負担になります。組織から抜けるという幸福な選択肢を持たない僕のような皆さん、あまり無理をしないようにね。Just kick back, relax and enjoy your holidays.

***

 そんな時、ちょっとばかしビールがあると嬉しい。掲示板でベルギービールの話題が盛り上がっているのに引っ掛けて、今年読んだ本 「ビール大全」(渡辺 純 著、文春新書)のレビュウをば。結論から言えば、これはビール好きなら一度目を通しておいて損はありません。ありがちな銘柄列挙の無味乾燥なビールガイドとは決定的に違う。エピソードたっぷりの文章そのものがかなり面白い上に、本人がヨーロッパを渡り歩いて飲んできたビールの印象もリアルに綴られています。

 前半を占めるロビンソン・クルーソー話がいい。デフォーの書いた「ロビンソン・クルーソー」の中で、ロビンソンは無人島でさまざまなものを工夫しながら作って生き延びる。ただひとつ作れなかったもの、それがビールだというのです。なぜ彼はビール製造に失敗したのか。そもそもビールはどうやって作るのか。そしてまたなぜロビンソンはビール作りにそれほどこだわったのか。著者のスムースな語り口に身を任せていると、ビールに関する基礎知識が自然に理解できる仕組みになっています。そしてまたイギリス人であるロビンソンとビールとの切っても切れない関係もわかってくるのです。とにかくこの前半で勝負あった。

 後半は「世界のビールを訪ね歩く」と題した、本場から新参までの名品・一品徹底ガイド。イギリス、アイルランド、ベルギー、ドイツ、チェコ、その他の国々に分類し、個々のエリアにおけるビールの歴史や特徴に言及しながら、絶対に押さえるべきブランドをひとつひとつ丁寧に解説してくれます。やはり、その中でもベルギービールについてはページ数も掲載ブランド数も圧倒的。ランビック、すっぱいビール、小麦ビール、トラピストビール、セゾン、その他の各種エールなど膨大な種類のビールについて、著者自身が飲んだ感想が述べられています。もちろんそれ以外の国々のビールも、読んでいると飲みたくなってしまうものばかり。

 僕らが日常飲んでいる日本のビールは下面発酵酵母(ラガー酵母)によるもので、すっきりとした味わいになるものの、クリアすぎて底が浅い感がある。要するに何杯も飲むと飽きやすい。一方、ヨーロッパ系のビールの多くは上面発酵酵母(エール酵母)によるもので、フルーティで複雑な味のビールになります。ベルギービールなどは基本的にすべてが地ビールだから、その土地ごとに独特の原料と酵母による独特のテイストを楽しむことができるわけです。日本で飲めるものの多くはボトル詰めだけれど、現地で生で飲むともう格別の味わい。酵母が生きている感じがありありと伝わってくるのです。(身体にも良い) 一口、ひとくちがもったいないくらいにフルーティで味わい深く、舌の上でゆっくりと転がしながら楽しみたくなるくらい。

 ベルギービールはその銘柄ごとに専用のグラスに入ってサーブされます。つまり銘柄名の入った独自のデザインのグラスに注がれた姿まで含めて完成形とされるもの。そんなこだわりも楽しみのひとつですね。自分がビール好きなものだから、同じようにビールやお酒が好きな女の子と一緒に飲んでいるととても楽しい。美味しそうにお酒を飲んでいる女の子ほど可愛いものはないのです。


25 Dec 2002
Wednesday

 "It takes twenty years to make an overnight success."
  - Eddie Cantor (U.S. Comedian, 1892-1964)
 「一夜にして成功するには、20年の歳月を要する。」

 ちょっと身にしみるいいフレーズ。
 大丈夫、静かに暖めながら待つのは得意だから。


24 Dec 2002
Tuesday

 トップページTea Break という下手っぴ写真コーナーを作ってあります。日替わり、とまでは行かないけれど、数日おきにどんどんアップしてはどんどん消します。少しでも息抜きになればと思って。先日までは秋に出張したロンドンの写真シリーズでしたが、もうすぐベルリンシリーズに突入しますのでお楽しみに。

***

 今年見た映画を急いで振り返ろう。
 これも出張中のJAL機内で見たものですが、『インソムニア』。恥ずかしげもなく告白すると、アル・パチーノの主演作を最後まで通しで見るのは初めてじゃないだろうか。僕の映画歴なんてそんなもんです。『ゴッドファーザー』 シリーズはベッドの中から血まみれの馬の生首が出てくる有名なシーンでもう泣き入ってるし。『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』 は誰がどう読んでも 『セント・オブ・ウーマン/女の香り』 の誤訳なので見る気がしないし。なんて。ウソです。こないだもTV放映してたのに、うっかりビデオに録り忘れました。次こそ必ず。

 で、個人的にはパチーノよりもロビン・ウィリアムズ初?の悪役に興味があって。いつも「いい人」を好演する彼ですが、この作品では狡猾な猟奇殺人犯を演じています。さすがにサタデーナイト・ライブ上がりだけあって何をやらせても上手い。一見何を考えているのかよく分からない怪しさを感じさせる演技です。でもってもうひとつはヒラリー・スワンク。『ボーイズ・ドント・クライ』 でオスカー獲って全国区になっちゃったけど、海外ドラマ好きにとってはいつまでたってもビバヒルのスティーヴの相手。ここではアラスカの田舎町の新人警官役なんだけれども、初々しくてとにかく綺麗なのです。よく気がつく彼女、それが災い/幸いして後半パチーノとロビン・ウィリアムズを追い詰めていくことに。この辺の演出よくできてます。

 アル・パチーノはなんとなく刑事役やってることが多い印象があるのですが、ここでもヨレヨレのベテラン刑事役がハマってます。ただ、肉体的には真面目に衰えがきてるようで、ロビン・ウィリアムスを追走する長尺シーンなどではあまりに苦しそうで、スクリーンの前のこっちまでぜいぜい息が切れる(笑)。ちょっと無理がありますね。ただし顔に刻まれた深いしわの分、本作の伏線のひとつ「不眠症」はうまく表現されていたかと。アラスカの広大な自然のロケ映像も迫力があって、最後まで画面から目を離させませんでした。マル。

***

 あと数本ありますが明日以降に送りましょう。

 クリスマス・イヴの今夜、僕が聴きながら眠るべきアルバムはただひとつ。スティングの 『ブルー・タートルの夢』。誰かを好きになったらその人を束縛するな、と歌い始めるこのアルバムが、好きな人の心の周囲に要塞を築いてしまった男の歌で終わるのは何とも皮肉です。リリースから17年経った今でも僕らは雨の中にうごめく影に怯え、黒い傷あとの修復を試み続けている。変わったのは、あの頃ティーンエイジャーだった僕らが今じゃお酒を飲みながらこのアルバムを聴くようになったってこと。そう、たとえばバーボンなんかを。誰かを好きになったらその人を束縛するな。誰かを好きになったら。

 皆さんに素晴らしいクリスマスが訪れますように。
 そして、貴方にも。


23 Dec 2002
Monday

 あなたはいつも人気者だから。話なんかできなくたっていい。僕はできるだけ邪魔をしないよう、遠くから眺めてる。

 僕はいつも自分のことばかりしゃべりすぎる。大切な何かを見失っているみたいだ。世の中のほとんどすべてはどうでもいいことだというのに。そんなことに縛られて、囚われてばかり。

 あなたは誰にでも、さりげない思いやりと優しさを感じさせる。あなたのそんなところが好き。その一言をそっと胸にしまう。楽しそうなあなたを見ながら。僕にはこのあったかい気持ちだけで十分。

***

 ええと、連休の終わりにベイクト・ビーンズを食べました。
 ちょっぴり、英国の朝のような気分になりました。


22 Dec 2002
Sunday

 しかしどうして誰も教えてくれなかったのか。先週の Ally McBeal。マライア・キャリーが出演してるじゃない。しかも結婚相談所で相手を見つけられなかった役で。しかも法廷でスポットライト浴びて、真っ白な歯を見せてマライア・スマイル! もう爆笑しちゃったよこんばんはwinterです。

***

 そんなわけで、多忙にかまけて溜まっていたアリーのビデオを2週分まとめて見ました。特に先々週の回は今シーズン屈指のいいストーリィと前評判が高かったもの。第4シーズン終盤で彗星のごとく登場して素晴らしい歌声を披露したジョシュ・グローバンが再出演、しかもその父(しかも神父)役にトム・ベレンジャーを連れてくるという荒業で。愛する人を亡くして神を信じられなくなったという彼、でも同じく最愛のビリーを失った経験を持つアリーは「たとえ死んでも魂は生きる」と神父を力づけます。愛する人が自分の腕の中で息絶えるなんて事態に、僕だったら耐えられるだろうか。僕は人を好きになってしまうといつも、まず終わりを想像する。つまりどんなに愛し合い、常に寄り添う2人でも、一緒に死ぬことは(通常)できない。同時に交通事故に遭うか、心中でもしない限り必ずどちらかが先に死に、どちらか1人は取り残される。その時の孤独と恐怖を想像すると、もう気が狂いそうになってしまう。

 だけど人はそう簡単に狂うものではないことも、僕らはどうやら知っている。つまりどんなに好きだった人を亡くしてしまおうと、たいていの人は淡々と生き続ける。むしろそっちの方が恐ろしいというのが本音なのだけれど、ドラマはそこまで突っ込む前に、もうひとつジョン・ケイジのストーリィを用意してくれた。でもって、こっちも実にいいテーマ。「こんな時だからこそ、クリスマスが必要なんだよ!」。ジョンの悲痛な叫びにはこっちも熱くなる。

 クリスマスがこの時期に訪れるのは決して偶然ではない(と思う)。キリストが実在の人で、この時期に本当に生まれたかどうかはさておき、ヨーロッパの冬は想像以上に暗く寂しい季節だ。特に冬至を迎える年末の時期は、陽が差す時間がほとんどなく、人々の心も陰鬱になっていくばかり。もっとも暗く落ち込むこのシーズンに、1年で最大のお祭りをぶつけてお祝いすることを考え付いた人は天才だ。庶民の知恵なのか為政者の仕掛けか、誰のアイディアだか知らないが(何ならその人の名前を今ここでキリストと名付けてもよい)、今ではクリスマスシーズンには街中がイルミネーションで輝き、誕生と再生と復活をモチーフにすべての人々の心は温かく満たされ、大切な家族や大好きな人に贈り物をする時期として定着している。こうして寒く厳しい冬を乗り切る生活の知恵に、人間ってやっぱすごいやと感心しちゃう。

 だから、ジョン・ケイジの訴えが認められてパレードが成立した時の嬉しさといったら。思わず画面の前で拳に力入っちゃったよ。

***

 でもって今夜のストーリィなんだけど、アリーが家を衝動買いしちゃう。これねえ、わからなくはないんだよね。昨年秋に、自分も身辺をリセットしてゼロからやり直したい衝動に駆られ、危うくマンション購入契約書にサインする直前まで行ったから。結局思い止まって、ローンや税金や管理費といった余計なものを抱えないシンプルライフを貫くことにしたわけなんだけれど、もちろん家を買う人を非難するつもりはありません。アリーだって house を買ったつもりじゃないでしょう。「A house is not a home」。よく使う英語の言い回しですが、要するに彼女が一生懸命作ろうとしてるのは home の方。僕がちょっといいなと思ったのは、そんなアリーの気持ちを理解して協力してあげるリチャード。彼ときどきこうやって、孤立無援のアリーを後ろからそっと支えてあげることがあるよね。間違いなくアリーのパートナーにはなれない哲学の持ち主だけれど、根っこから悪い人間じゃないし。アリーはバラエティに富んだ(富み過ぎ!)友人たちに恵まれて本当に幸せだね。

 しかし、今夜のハイライトはやはりジョン・ボン・ジョヴィの登場でしょ。
 わずか数分間の出演で完全に場の空気を変えてしまう爽やかなスマイル。汚れた作業着が恐ろしくよく似合ってる。実は彼が映画やドラマで出演するのを見るのは初めてだったのだけれど、想像以上にスムーズにこなれた演技で、思わず引き込まれます。プロモビデオでは何度も見ている彼が、こんなに自然に俳優もこなしているなんて。自分も家買って全部作り変えて、結局売り飛ばしちゃったよ、とさらりと語るジョン・ボン・ジョヴィにアリーもあっという間にハート鷲づかみ状態。来週以降の展開がますます楽しみになってきました。


21 Dec 2002
Saturday

 ニック・ホーンビィの「ハイ・フィデリティ」(新潮文庫)。今年読んだ本の中では他に10馬身以上の差をつけて圧倒的に1位。それどころか、僕がこの本を書けなかったこと自体が猛烈に悔しい。何故ならば、主人公のロブ・ゴードンは僕そのものだから。ニック・ホーンビィは印税の少なくとも半分を僕のUFJ銀行口座に振り込む義務がある。普通預金のペイオフが解禁される前に。

 …なーんて思っている読者が世界中に何百万人もいたからこそ、映画も含めてきっとあれだけヒットしたのでしょう。最近フィクションのベストセラー動向をよくチェックしていなかったので、ホーンビィが「アバウト・ア・ボーイ」も書いていたってことはつい数日前に知りました。そういえばどっちもロンドンを舞台にした30代シングル男性のストーリィ。もっと早く気づけよオレ。

 音楽を心から愛し、辞典なみの知識をもつロブ・ゴードンは、ロンドンで小さな中古レコード・ショップ〈チャンピオンシップ・ヴァイナル〉を経営している30代の独身男。同棲中の彼女ローラとは、なぜか結婚を切り出す気分になれずにいたが、とりあえずはウマくいっている。そう、あの日まではそうだと信じこんでいた…

 という設定は、この後ローラが家を出て行くこと、ダメ男ロブが自分探しをしながら問題に向き合って、再びローラにアタックするであろうことを瞬時に想像させます。だが僕ら音楽ファンにとってのポイントはもっと別のところにある。つまりロブその他の登場人物は、何事であってもトップ5を考えずにいられない。無人島に持っていくトップ5レコードはもちろん、A面1曲目がカッコいいトップ5レコード、二日酔いの朝聴きたいトップ5レコード etc. etc...。いわんやこれまでの失恋トップ5をや。この感覚、分かるよね? 新しく出会った子のためのオムニバステープ作りに精を出す場面や、女の子が出て行った後の部屋で、棚からすべてのレコードを取り出し、朝までかかって整理し直す場面なんて他人事とは思えない。数百枚以上のレコードを所有する人間なら、ほぼ間違いなく一緒に笑い、そして泣けるシーンが山のように盛り込まれた本なのです。

 いや、これ以上は詳しく書くまい。ぜひ読んでみてください。場面はシカゴに変更されていますが、ジョン・キューザック主演の映画版も原作に忠実な出来だという話ですから、そちらでもいいかもしれません。情けなくてダメダメなロブ・ゴードンそのものである僕にとって、一生付き合っていける良い小説に出会えたことは、今年最高の幸せ。できれば自分自身のオールタイム・トップ5レコードをバックに流しながら、数時間で一気に読みたい。


19 Dec 2002
Thursday

 ボブ・サップは間違いなくジャイアンだ。

 と言ったときに、日本人の一定の年齢層にある人はほぼ一様に、何を言わんとしているか理解してくれるだろう。僕らは無意識のうちに、自分の周辺の人々をドラえもんのキャラクターになぞらえて分類している。あいつはのび太タイプだ。こいつスネ夫みたいなこと言ってやがる。出来杉くんなんて「何でもあり」≒「何にもなし」なんだよ。でもあの人やっぱジャイアンみたいで怖いなあ。むしろこれですべて通じてしまうところが怖い。

 しかし女の子キャラは猛烈に不足している。事実上、静香ちゃんしかいないと言ってよい。いつもお風呂に入っている静香ちゃんだけで良いのか。もっとさまざまな女性のあり方を描こうとは思わなかったのか藤子不二雄。ここでのび太ママとかジャイ子を挙げて反論するのは適切ではなかろう。いわんやドラミちゃんをや。国民的漫画「ドラえもん」に隠されたステレオタイプな理想女性像の問題を、誰かボブ・サップに説明してやってくれないか。

***

 今夜は六本木で飲んでました。「次に部屋を引っ越す時は絶対結婚して出たい!」という純情な女の子と、「オレ馬に恋してるから」という競馬好きの男の子のためのバースデイパーティ。シングルが多いので例によって恋愛論に走りがち。たまにはそんな夜があってもよいでしょう。「いつも考えすぎなんじゃないの〜」とか言われてプチショック。いや、確かにそうなんだけどさ。ともあれ、君たちの新しい1年、すべての良いことが起こりますように。


18 Dec 2002
Wednesday

 昨日の続きから導入すると、水辺とか川下りってのは多くの都市で観光スポットになっているものです。パリのセーヌ川しかり、ロンドンのテムズしかり。テムズ川なんて、本当に数え切れないくらい遊覧船が走っていて、世界中から来た観光客はもとより、イギリス人にとっても評判のよいツアーになっています。ロンドンの地図を開いていただくとお分かりのとおり、テムズ川は両岸に歴史的建造物が絶妙に配置されていて、遊覧船の上でガイドさんの流暢な説明(できれば英語のまま聞いてみてね)を聴いているだけで、ひととおりの観光スポットをチェックできてしまう。これって観光産業政策以前に「まちづくり」そのものの問題で、僕なんか訪れるたびに「うまいことしてるなあ」と感動してしまうのです。

 残念ながら隅田川両岸には歴史的建造物が集積しているとは言い切れませんが、それでも水辺のイメージは有効です。海/水から生まれた生き物だけに、人は水辺に引き寄せられるものだから。水や海と組み合わせた何か、をうまく観光ルートに組み込みたい。お台場などもそういう発想で開発した部分もあるのですが、ちょっと空回りしちゃってるかもしれません。

***

 その意味で、東京を観光都市として売り込むのはなかなか難しい部分もあります。都市としての「顔」がない。ロンドンやパリやニューヨークやローマといった観光都市は、その名前を聞くだけでなんとなくイメージが浮かんできます。著名な建物であったり、食べ物の美味しさであったり、お洒落なファッションであったり。それはもちろん自然とそうなるのではなく、それぞれの都市/国の観光政策担当者(つまり僕のカウンターパート)たちが、一生懸命広報宣伝に力を入れてきた長年の積み重ねによるものです。顕著な例は映画で、ニューヨーク市などは市内での映画ロケを盛んに誘致している。その結果、僕らはニューヨークの街中を歩くデ・ニーロや、ビリー・クリスタルや、パトリック・スウェイジらの映像とともに「こんな街なんだ」という印象を深く刻み込まれるのです。

 振り返って東京はどうか。海外に向けて「このような街ですよ」とアピールしてきたことがどれくらいあったのか。映画も本もヒット曲も、ほとんど輸出してこなかったのではないか。そんな反省に立って仕事をしているわけですが、いざ売り込もうとすると、いったい何が東京の売りなのか、自分でも悩んでしまいます。海外では今でも日本といえば「フジヤマ、ゲイシャ、ハラキリ」といったステレオタイプなイメージしか持っていない人がいます。一方で、秋葉原に代表される家電/IT製品の販売集積地という顔や、世界でもまれに見る高機能化した携帯電話を使いこなす、科学技術大国という顔もあります。これだ、とひとつに絞りにくい。今のところ、「伝統文化と最先端のテクノロジーが同居する、混沌とした魅力があります」なんて表現をしているわけですが、悩ましいところ。だって、「何でもあり」≒「何にもなし」でしょう?

 なぜならば。

***

 美しすぎるルックスに、豊満なバストとくびれたウェスト、キュートなヒップの素晴らしいスタイルを持ち合わせたお金持ちの女の子が、頭脳明晰な上に性格まで優しくて思いやりがあるとしたら、僕はちょっと遠慮しちゃうかもしれない。あなたが女の子ならこの逆のパターンを想像してみて。何でも揃っていると、かえって魅力を欠いてしまうこともあるのです。ちょっとくらいハズれている方が面白い。これきっと真実だと思うのだけれど。


17 Dec 2002
Tuesday

 ここのところ、僕は東京都という街に世界中から観光客を誘致するにはどうすればいいかを考える仕事をしています。ロンドンやパリやニューヨークといった大都市は、同時に圧倒的な観光都市でもあって、世界中から多くの旅行者が訪れ、毎日膨大なお金を落としていきます。これが巡り巡ってその都市の経済を潤し、他の都市に流れて国全体の経済を潤していく。もちろん金融や貿易もマネーメイキングの手段として重要であるわけですが、「観光」を産業として捉えて積極的に取り組む姿勢が、これまで東京には弱かったのではないか。そういう反省に立ちながら、あの手この手を考えているわけです。

 昨日は主要な観光関連事業の皆さんとの意見交換会でした。その一環で夜の水上バスに乗ったわけですが、これが予想以上に良かった。水上バスとは、東京都観光汽船株式会社が運行しているもので、いろいろなルートで船を走らせています。自分が乗ったものは日の出桟橋とお台場海浜公園の間を往復するもので、レインボーブリッジをくぐってお台場に向かう夜景の美しさが売り。昨夜はあまり寒くなかったので、デッキで夜風を受けながらライトアップされたレインボーブリッジを眺めていたのですが、真下を通過する瞬間の迫力はかなりのものです。東京湾全体の夜景も素晴らしく、特に新しい高層ビルが林立する汐留再開発エリアに灯りが点り始めたことは、ナイトクルーズの魅力をさらに増すことになるだろうと思います。もっともっと、こうした東京の魅力を世界中に知ってもらい、訪れてもらうことからすべてが始まるのです。

 船全体に流れていたBGMはマライア・キャリーの「メリー・クリスマス」アルバム。この頃の彼女の声が一番好き。水上バスのデッキで抱き合っていた恋人たちのクリスマスに、乾杯。Cheers。


16 Dec 2002
Monday

 ちょっと気分が乗らない日。ちょっと心がささくれ立っている日。
 そんな時、僕はよく無印良品のお店に出かけます。特に何を買うというわけでもなく。せいぜいコットンパフとか、ちょっとしたお菓子の類。広い店内を、隅から隅までゆっくり歩いてみます。よく整頓されたラックに、シンプルでナチュラルな色使いの商品が綺麗に並んでいる様子を眺めているだけで、少しココロが落ち着いてくる。「自分にとっての避難場所」をいくつか持っておくことは、案外大切なことなんじゃないかと。

***

 僕は毎朝のようにプレーンヨーグルトを食べています。たいていはバナナやプルーン、リンゴなどのフルーツを盛り付けて、それにかけて食べる。カフェオレも飲むし、プロセスチーズもひとつくらい食べているから、結構乳製品の摂取量が多いようです。今朝も昨日買ったビヒダスヨーグルトを開けて食べようとしたら、普段は顆粒状の砂糖パックが入っているところに、「今だけサービス」のフルーツソースが入っていた。全然予想していなかった幸せなハプニング。そんな時に感じるちょっとした喜びも、案外大切なことなんじゃないかと。


14 Dec 2002
Saturday

 今日はお待ちかね、冬ワン忘年会の日。年末の忙しい時期だというのに、渋谷に駆けつけた12人(+α)の洋楽好きたち。盛り上がらないわけがありません。冬ワン定番の渋谷「汁べゑ」から、meantimeのメンツを追いかけて道玄坂のB.Y.Gへ。全員2次会参加なんてマジありえない。要するにそれだけ楽しく盛り上がっていたということでしょうから、幹事としてはとりあえず一安心。

 参加してくださったのは、1次会がけいさん、okkoさんSakiさんま〜さん、sekikoさん、まほさん、nicolaさん、おしょうさん小川ボさんryoさん、Dinosaur Sr.さん、自分(順不同)。女性5割ってのもすごいですね。1次会は完全に女性陣が話題をリードしていたような(笑)。やっぱ女の子が多いと場が賑やかになって良いっす。でもって2次会のB.Y.Gにはmeantimeのメンバーが十数名集合していたので、ざっくり30人くらいの集団になっちゃったんじゃないだろうか。ここから駆けつけてくださったのは、しまけんさん、茶屋さん、se2さん、さだおさん(Beast Feast帰りだ!)、Dinosaur Sr.さんの奥さん。自分ビイルばかり飲んでいたのでよくわかりませんが、皆それぞれあちこちで楽しそうに語らっていたようです。よかったよかった。

 初めての出会いもあり、すごーく懐かしい再会もあり。ネット上ではいつも言葉を交わしているけれど、直接しゃべることはめったにない相手もあり。意外な人が意外なところでつながっていたり。もちろん様々な音楽について、好きな仲間同士で語り合うのは何より楽しいこと。オフ会に参加してみるのはとても面白いものです。これからもできるだけ機会を設けていきたいと思いますので、ぜひお気軽に参加していただきたいなー、と思ってます。


13 Dec 2002
Friday

 さっきまでNHKで「ザ・ホワイトハウス」見てました。大統領報道官のCJにアタックし続けた新聞記者のダニー、ついにデートをゲット。金魚クラッカーと間違って本物の金魚を買ってきたり、どんなに冷たくされてもめげずに口説きまくった努力が実りました。ブンヤ(とうちの業界でも呼ぶ)と報道官(うちだと報道課)のデートって立場上マズいこともあるよね。手を出しちゃったほうが最後まで責任取らなきゃ、みたいな雰囲気がある。今週のロブ・ロウは出番少なし。先週の最高裁判事候補に対する詰問ぶりはなかなか見事だったね。

***

 ところで、よくお読みのお方ならご承知のとおり、僕は一度 Diary でデジカメ引退宣言をしています。人生をより複雑にするものの代表格であるカメラに見切りをつけようと。ところがトップページにもあるとおり、夏以降僕は結構写真撮ってます。これは、人生をあまり複雑にしないデジカメを見つけたから。それはSONYの Cyber-shot U-10。本体わずか87グラム、持っていることすら忘れてしまう軽さ。レンズカバーをスライドすれば起動1秒。シャッターチャンスを逃しません。130万画素あれば僕には十分。ズームこそありませんが、個人的にはむしろマクロの方が重要。しかも切り替えなし、10cmまで近寄れてオートフォーカスできるという圧倒的な利便性。PCのVAIO、CDラジカセとあわせて部屋にSONYのアイテムが増えていきます。

 保証期間の終了前後になぜかちょうど壊れる現象を指して「ソニータイマー」と揶揄する向きもありますが、SONYの製品には、やはりモノとしての完成度というか、遊び心というか、つい揃えたくなってしまう面白さがあるのも事実。そういえば10月末にロンドンで久しぶりに再会したSONYヨーロッパの友人も、このU-10を見て「これいいね〜」と欲しがってました。彼はCyber-shotのハイエンド機種を購入したばかりだってのに、それとは別に持ちたくなってしまう可愛さ。

 驚くべき情報が彼からもたらされた。それはこの製品の開発コードネーム。その形状から「Sushi(寿司)」と呼ばれていたらしい。さらに驚くべきことに、欧州市場ではこの愛称のまま売り出されるんだとか。本物の寿司と並べた写真を撮りたいところだが、あいにくデジカメは1台しかないのでそういう芸当はできない。いや、鏡を使えば可能か? こうして、僕の人生は少しずつシンプルでなくなっていくのかもしれません。


12 Dec 2002
Thursday

 好きになっちゃった人に、思い切って声をかけるまでの逡巡。
 きっと貴方にも、経験があるでしょう?

 悩んだ結果、熱い想いを心にじっと閉じ込めてしまう人もいるでしょうし、勇気を出して伝えちゃう人もいるでしょう。どんなにその人のことを想っているか、その人が自分にとってどれだけ必要な人か。言葉に出して口説いちゃう人もいるでしょうし、何かにつけちょっとしたメールで気持ちを送る人もいるでしょう。そんなメールは、たいてい見向きもされないものです。それでもめげずに一生懸命自分の想いを伝える。(もちろんストーカーなんかになっちゃダメ)。一方で、相手に認めてもらうために自分の内面にも磨きをかける。読書でも映画でもお稽古ごとでも、何かに打ち込んでいる姿は必ず相手の目にも留まるものです。要するに中身を充実させること。その上で、相手に思い切ってアタックすること。

***

 …そして今日、彼女はついに振り向いてくれました。
 僕のメールボックスに、彼女からの返事が。

>こんにちは、Yahoo! JAPANです!
>
>ご推薦いただいたページ
><http://www.col.ne.jp/~winter>
>をYahoo! JAPANに掲載させていただきました。
>
>次回のデータベース更新(約1〜2営業日以内)にて掲載が開始される予定ですので、
>「新着情報」またはURLによるキーワード検索でご確認ください。


***

 これを機会に、また新しい読者の皆さんとの出会いがあることでしょう。一人ひとりの読み手に、それぞれのスタイルで楽しんでもらえるようなサイトにしていきたいと思っています。のんびりと、心地良く過ごしていただけるようなページを作りながら、掲示板やオフ会などで少しでも多くの皆さんと出会えることを、これからも楽しみにしています。


11 Dec 2002
Wednesday

 「だって、それが彼のキャラだからさ。」

 そう打とうとすると僕のPCは必ず「伽羅」と変換する。これは「きゃら」という日本語らしく、辞書を引いてみると「沈香(じんこう)、および沈香から採った香料」とある。誰もがきっと一度は誤変換しているに違いない言葉だと思うが、語義まで遡ってみた人はどれくらいいるだろう。辞書はさらに告げる。本来は梵語(サンスクリット語)であること、沈香はすぐれた香りであって、転じて江戸時代、良いものをほめて言う語としても使われたこと。さらに転じて、江戸の遊郭では、金銭の隠語として「沈香」が用いられたこと。

 「だって、それが彼の伽羅だからさ。」

 同じ文章が、まったく異なる意味を持って僕の前に立ち上がる。辞書や辞典の類は大好きだ。もし必要なら、一日中ページをめくりながら過ごすことだって苦ではない。長いこと使ってきた国語辞典と英和辞典が少々古びて感じられてきたので、買い換えようと思うのだけれど、書店の辞書コーナーで1冊ずつ手にとって眺めていると、どれもこれも欲しくなって困ってしまう。懐古趣味と言われようとも、辞書や辞典は絶対に紙ベースに限る。辞書の魅力は引くべき語の正確な定義だけではない。それにたどり着くまでに、あるいはたどり着いた後に、周辺で目に留まる余計な語句とその説明こそが重要だ。全然関係ない言葉に引っ張られて、またパラパラとページをめくる。そこに必ず、新たな発見がある。たいていの電子辞書では、そうはいかない。

***

 人付き合いも辞書を引くのと同じだなあ、とふと思いました。


10 Dec 2002
Tuesday

 そういえばこないだ新しいシャープペンシルを買いました。たかが300円の買い物ではありましたが、自分でシャーペン買ったのなんて久しぶりなのではないか。そうそう壊れるものでもないし、昔から使っていたもの、もらいものなどでこれまでごまかしていた訳です。しかし思い立ったが吉日、文房具屋さんに直行して、最近流行りの、やや太めのシリコン製のグリップのものを買ってきました。汗でも滑りにくく、長時間握っていても確かに疲れにくいような気がします。なかなかお気に入り。

 文房具、なかんずく筆記具選びに(たっぷりの)時間と(少しばかりの)お金をかけるのは、とても楽しいことです。人間は言葉を用いる生き物である以上、常に自らを言葉で表現し続けねばなりません。だから、グリップのホールド感や、全体の重量バランスといった点で満足のいく筆記具に出会ったら、迷うことなく即座に購入すべき。まさしく一期一会です。その後筆記具から紡ぎ出される言葉の量と質(そう、良い筆記具から生まれる言葉は質が違う)のことを思えば、300円なんてこの際安すぎる投資。あとは手に吸い付くようなこのホールド感に、どこまで思考が一体化できるかでしょう。究極の筆記具とは、それを手にして書いていることを意識させることなく、頭の中に浮かんでくる言葉を次々と紙の上に転記できるものと定義できるでしょう。軽すぎても重すぎてもよろしくない。すべては適度なバランス。どれだけ身体に馴染み、一体化できるかどうか。そこに尽きる。

***

 文房具ネタついでに、こないだあれだけ喜んでいた2003年手帳ですが、あっさり能率手帳ネクサスバーチカルというタイプに買い換えてしまいました。同じく縦型レイアウトなのですが、ウィークデイ部分が広くて土日が小さめ。自分の用途ではこちらの方が使いやすい、という結論に達しました。合計2,000円近く投資してしまいましたが、まあいいや、最初から2,000円の手帳を買ったと思えばよろしい。投資額が大きいと、結果的に買ったものをとても大切にするものだから。今回の教訓は来年の今頃活かされるに違いない。無事に1年を終えることができますように。


9 Dec 2002
Monday

 しばらく前に「私はなぜ誤解ばかりされるのか」という本があった。その広告によると、次のとおりだという。

●否定的な言葉を使いがちな人は、どんなに仕事ができたとしても、やる気がない人だと誤解される。
●「理解してもらえた」と話し相手に安心感を持たせることができない人は、信用できない人だと誤解される。
●交渉術が長けていても、服装や髪型に気を遣わない人は、信頼をおけない人だと誤解される。
●怒りをあらわにする人は、それがどんなに正当でも、自信のない人だと誤解される。
●企画書がどんなに素晴らしい内容でも、1つでも漢字の変換ミスがあると、仕事ができない人だと誤解される。


 確かに。その証拠に、僕など幹事の返還ミスばかりしているので、死語とはちっともできないと五階されっぱなしです。ちょっと手を抜いた導入ですみません規制していたwinterです。いや、帰省だったか?

***

 要するに人は表面的なことで判断しがち/されがちだから、お互い気をつけましょう、という趣旨なのだろうが、実は表面的なことで判断するのが正しかったという場合がままある。つまり、人は見かけによらないのではない。見かけによるのだ。九分九厘見かけによるのだけれど、ときどきそうでないことがあって、そのインパクトが強烈なものだから「人は見かけによらない」なんていう諺ができてしまうのだ。

 そういう意味において、ヒュー・グラントは情けなさ度満点の愛すべき俳優、ということになります。あくまで見かけによる判断ですけれど。彼主演のイギリス作品、というだけで猛烈に点が甘くなるのは許してね。『アバウト・ア・ボーイ』。1ヶ月以上前にロンドン行きJAL便の中で観た映画について、今頃感想を書いてみよう。「男性版ブリジット・ジョーンズの日記」なんてコピーは見当違いも甚だしい。正直、イギリスとヒュー・グラントしか接点はありません。ついでに言えばシングルライフか。

 この映画のキーフレーズは「人間は孤島ではない」。冒頭でテレビのクイズ番組で出てきます。「この言葉を言ったのは誰でしょう?」 ヒュー・グラントはテレビに向かってあっさり答えるのです。「ジョン・ボン・ジョヴィに決まってるじゃないか」。えっ? それって英国独身男性の一般常識なのか? "BLAZE OF GLORY" アルバムの4曲目に収録されている "Santa Fe" というトラックの歌詞ですが、別にシングルヒットしているわけでもないし。ボン・ジョヴィ好きとしては自分の不見識を大いに恥じることになりました。

 それはともかく、親の財産で気楽に暮らす独身貴族ヒュー・グラントが主人公。むしろ「人間は孤島である」がモットーの彼、当然定職もなし(∵不要)、煩わしい人付き合いもなし(∴独身)。毎日好きなビデオを見たり、美味しい食事をしたり、欲しいCDを買ったりしています。うーん、どこかで聞いたような生き様(笑)。それはともかく、ひょんなことからシングルペアレントの会に首を突っ込み、そこでいじめられっ子のマーカスと知り合う。大いに端折ると、やられっぱなしのマーカスに次第に感情移入しちゃったヒュー・グラントが、人間として大切なもの、他人との温かい交流といったものに目覚めていくというテーマ。途中ではかなり笑わせるシーンもありました。マーカスが学校の中でウォークマン聴いて首振りながら、ミスティカルの "Shake Ya Ass" を歌いまくるシーンとか大ウケ。"Shake ya ass, watch yourself, shake ya ass, showmewhatyougot!" ってな感じです。

 でもって結論。ラストのセリフ、「人間は孤島ではない。ジョン・ボン・ジョヴィが言ってたとおりだ」 by ヒュー・グラント。この時彼のフラットには、マーカスとその母親や、マーカスの彼女らがごちゃごちゃと入り乱れて食事など作っており、これまで徹底的に独りのスペースを守ってきた彼が、「こういうのもなかなかいいね」などと言っちゃってるのです。ちょっと待った! これってどういうこと? 独りで生きるっていうスタイルの否定なのかな? やっぱり家族がいいよっていうプロパガンダ? 安易な結婚志向に走っていないところは評価できるのだけれど(非婚のまま複数人による共同生活に突入するイメージ)、それにしてもね〜。英国って比較的個々人のライフスタイルに対してはリベラルで、ソロで生きるという在り方についても柔軟に認めてくれそうな感覚を持っていただけに、ちょっと意外な結末でした。

 しかしこの件をある友人に話したところ、そりゃ当然だよとの答え。「シングルの人間がシングルを貫きました、なんて結末じゃちっとも客を呼べる映画になりゃしないからね」。つまり英国がどういうライフスタイルを認めているかなんかに関係なく、ビジネスとしての映画産業はこういう結末に向かわざるを得ないのだ、と。そうだったのか…

***

 むしろ、「私はなぜ誤解ばかりするのか」という本が必要だと思いました。


4 Dec 2002
Wednesday

 今日は懐かしい友が職場を訪れた。その名を仮にぱいぱくんとしておこう。

 ぱいぱくんとネットで出会ったのは94年の後半だから、もうずいぶん昔のことになる。ロック系の音楽の話題が弾み、、パール・ジャムの伝説的初来日公演のチケットを取ってもらって、武道館のアリーナ中央9列目くらいでライヴを見に行ったりしたものだ。偶然彼が僕の大学の後輩にあたっていたことも後でわかった。95年には僕はロンドンに転勤になったが、彼は8月末から9月にかけて約1ヶ月僕のフラットに滞在し、レディング・フェスティヴァルやその他多数のライヴを見に行っていたようだ(生活時間があまり重ならなかったので実はよくわからない)。帰国後、ニフティサーブのロックラインフォーラムでそれぞれ会議室のボードオペをやったりしている間は接点があったが、自分は仕事が忙しくなり、彼もSNOOZERというロック雑誌に就職したりして、結局ほとんど会えなくなってしまった。

 SNOOZERでの彼の活躍は目覚ましいもので、レビュウからインタビューから編集まで、八面六臂の働きぶりだった。僕もときどき書店でぱらぱらとめくりながら、いい仕事してるじゃん、と思ったものだ。そんな彼が、今年の9月ごろ突然電話をよこした。「今度転職するんですよ、それで昔の知り合いに片っ端から電話してるんです」。転職先はぴあ(チケットぴあのあの会社)で、新しく創刊された "INVITATION" という30代ターゲットの総合カルチャー誌の編集だという。するとまたまた電話がかかってきて、「来年3月発売の号で東京再生、みたいな特集やるんですけど、たとえばそちらの社長とか引っ張り出せませんかねー?」なんて言ってる。まあできるできないは内容と方法によるけれど、「とりあえずぴあの人間連れてきますから会ってください」という彼の熱意にほだされて今日会ったというわけ。

 まあ企画のほうはどうなるか、これからのお楽しみということで詳細は伏せるとして、ぱいぱくんが自らのことを「激太りなんでわからないと思うっすよ」と何度も言っていた割には、わりとすんなり視認できた。それでも彼が言うには95年当時比30kgアップなのだという。マジかね。何でも前の職場が想像を絶する激務で、12日間連続で泊り込みで風呂にも入れず、毎日2時間くらいウトウトしては飛び起きるような生活だったらしい。猛烈なストレスとハードワークで、無意識のうちに食べる方向に走ってしまい太るというメカニズムなのだそうだ。それからすると自分なんて95年からほとんど変動なし、むしろ今の職場に来て少し痩せたくらいだから、よっぽどストレスフリーなのだろう。「いやー winter さん全然変わってないっすね」。余計なお世話である。ていうかなんだかちょっと悔しい。

 とにかくそれくらいストレスとハードワークに溺れると、まさに死が迫ってくるのだとぱいぱくんは語る。「もう、すぐそこまで死が来てる感じなんすよ」と背中付近を指す彼。どうしてそれがわかったかというと、「いやー、めちゃくちゃ疲れてるから全然性欲とか感じてる場合じゃないはずなのに、なぜか頭の中がセックスだけになってたりするんですよ。それで、ああこれかと。死期が迫ると本能的に子孫を残そうとする反応か!と思って、ああ今俺は死にかけてるんだなって」。なるほどねえ。しかし君は素敵な奥さんができたのだから、まあよしとしたまえ。

 ぴあの人、というのも元は同朋舎出版という会社にいた人で、実は自分が前の会社にいたとき営業していたお客さんでもあった。総務担当のSさんのネタで大笑いして急に距離が近くなる。世の中狭いものだ。ちなみに同朋舎は当時、マドンナの「SEX」とか独占出版して爆発的に売れたりしていた会社。あと「バースデイブック」とか。そんなこんなで旧友を温めつつ、ぱいぱくんが本来やりたかった総合カルチャー系の仕事を存分に楽しんでいる様子が見られて、とても安心した。何せ彼の文才と細やかな感情は本当にすごくって、僕なんて絶対に足元にも及ばない。そんな才能あるやつだからこそ、彼にはいろんな意味で幸せになってほしいし、僕にできることであれば協力してあげたいって気持ちにもなるというものだ。僕にはそう思わせてくれる友人が何人もいるのだけれど、そのこと自体、とても幸せなことだという気がしている。


3 Dec 2002
Tuesday

 帰りの電車は新宿始発なので座れます。するとどうなるか。もう、5分ともたず爆睡ですよ。読み残しの新聞を広げても、買ったばかりの文庫本をめくっても、向かいの席に可愛い女の子が座っていても、5分ともたない。これってどういうことなのか。

 思うに、電車の振動ってやつには何か不思議な秘密がある。轟音にも関わらず、人を心地良い眠りに誘い込む魔の振動。ひょっとして 1/f ゆらぎなのか。はたまたα波でも出ているのか。ガタンゴトン、ガタンゴトン。理由を考えることすら許さない究極の催眠振動に揺られながら、僕は危うく仙川の駅を乗り過ごしそうになるのです。(実際、ときどき乗り過ごしてつつじヶ丘や調布まで行ってしまうこともある)

 ところが部屋に帰って音楽を聴いたり、本を読んだりしていると、これが妙に目が冴えてきて。逆になかなか眠れなくなってしまうわけです。6時間眠るためには00:30にはベッドに入る必要がありますが、入る気になんないし、入ってもちっとも眠くない。結局眠りにつくのに1時間以上かかってしまうこともある。なんて非合理的なんだ。眠るべきでない時に睡魔につかまって駅を乗り過ごし、眠るべき時に眠れずベッドで寝返りをうつ。その相乗効果による時間のロスを積み重ねると、自分は人生のかなりの部分を無駄に過ごすことになってしまうじゃないか!

 そこではたと気がついた。
 あの電車の振動を部屋に持ち込めば良いのです。つまりあの強烈な熟睡効果を誇る京王線のシートを引っぺがしてうちまで運び、これをベッドにして同じようにガタンゴトン、ガタンゴトンと振動させる。すると間違いなく僕は5分以内に熟睡モードに突入し、無駄なく快眠して朝を迎えることができるというわけです。一方で、部屋のベッドでは眠くないわけだから、僕は毎朝このベッドを背負って出勤し、京王線の車中ではこれに腰掛けて読書を楽しめばよろしい。一向に眠くならず、充実した知的生活を送れるというわけ。

***

 …そろそろ誰か止めてください(笑)。
 とまあこんな無駄な空想をしながら猛烈な勢いで人生を空費してまっす。今日のお昼は新宿ワシントンホテルの地下のインドカレー「ガンジー」に行きました。辛さは5段階で、真ん中の「Hot」で十分辛いです。ライスとナン、サラダとタンドリチキンにドリンク(ラッシーなど)が付いて、1,100円。ときどき食べに行くにはいいお店です。お気に入り。


2 Dec 2002
Monday

 昨日の掲示板ネタでひとつレスし忘れました。某氏から 「物欲の秋も終わり…」 というコメントをいただいていたのですが、どうやら自分にとっては物欲の冬が来ちゃったようです。転職してから2年半以上ほとんどCDを買わずに過ごしてきましたが、Beauty's Night の余波なのか、突然火がついてしまいました。この週末に一挙購入したアイテムを挙げると、

"TURN IT ON AGAIN - THE HITS" - Genesis(ベスト盤)
"PROMISE" "THE BEST OF SADE" - Sade(2000年リマスター盤、買い替え)
"LOVERS LIVE" - Sade(ライヴ盤。大・大名盤)
"AN EVENING OF YES MUSIC PLUS" - Anderson Bruford Wakeman Howe(ライヴ盤買い戻し)
"... ALL THIS TIME" - Sting(ライヴ盤)
"GLITTER" - Mariah Carey(大コケ、最初で最後のVirgin盤)
"GLITTERING PRIZE" - Simple Minds(グリッターつながり(笑)ベスト盤)
"FOOTLOOSE" - Original Soundtrack(リマスター&増補追加盤、買い替え)
"BASIA ON BROADWAY" - Basia(ライヴ盤買い戻し)
"ONE WILD NIGHT LIVE 1985-2000" - Bon Jovi(ライヴ盤)
"THE BEST OF CRYSTAL WATERS" - Crystal Waters(ベスト盤)
"REINVENTING THE STEEL" - Pantera(「激鉄」)
"FEVER" - Kylie Minogue(今年のヒット)
"HOW I DO" - Res(今年のヒット)
"THE SCIENCE OF THINGS" - Bush(少し前のヒット)

 ぜいぜいぜい。14枚、平均単価は1,000円くらいかなあ。ちょっと高めですね。500円くらいのもあるけれど、2枚組ライヴは1,500円くらいしちゃったし。でもこのくらいの枚数では驚かない。何せ1日で30枚くらい平気で買っちゃう人たちを知ってるから。などと他人事を装いつつ、勢いにまかせて以下の日本盤7インチシングルも購入。各100円なり。

"Rise" - Herb Alpert
"Always Something There To Remind Me"(「僕はこんなに」) - Naked Eyes
"The Safety Dance" - Men Without Hats
"If Anyone Falls" - Stevie Nicks
"Go Insane" - Lindsey Buckingham
"What You Need" - Inxs
"Poison Arrow"(「嘆きのポイズン・アロウ」) - ABC
"Paperlate" - Genesis

 本当はリック・スプリングフィールドの "Bruce" がこないだ落ちていた箱。相当探したのですがやっぱり誰かに買われてしまっていました。中古盤との出会いはまさに一期一会。だからといってこんなヤケ買いに走らなくてもという気もするが。全部キズ盤だし、実はアナログプレイヤーも持っていないので、完全にジャケット入手目的。「コレクションのためのコレクション」はやめようと固く誓っていたのに… 

 ひとつの理由は、最近部屋にぴったりくるCDラックを見つけたこと。実はクローゼットの脇に幅50数センチの微妙なスペースがありまして。これまでCDを入れた段ボール箱を縦に積み上げていたのですが、通販でCDすき間ラックなるものを発見。だいたい15cm×45cm×180cmくらいのラックがちょうど3つぴったり収まることから即購入。キャスターが付いていて自由に引き出せるのも素晴らしい(写真はずらして引き出したところ)。これ以外のすき間用にもうひとつ、合計4つ購入。あとは学生の頃から使っているこれまた180cmのスチール本棚にもぎっしり並んでいるので、CDは概算2千数百枚ということになります。

 枚数だけなら単位が「万」の人だっていくらでもいると思いますが、僕はかなり厳選してここまで絞ったので、こうしてアルファベット順に並べ直してみると、どれも懐かしいCDばかり。これはあのお店で安く買ったなあとか、あの頃はこれを聴いていたんだなあとか、1枚1枚に思い出が詰まっています。箱にしまっておくことは死蔵に他ならず、CDや本はやはり棚に整然と並べていつでも手が届くようにしておきたい。どうやら自分はそういうタイプらしい。そして並べてみた結果、あと数十枚は入ることが判明したので、ちょいと安心してどっと在庫を増やしてしまったということらしい。などと相変わらず他人事を装いつつ。皆さんのレコード/CDの整理法はいかがですか??

***

 でもね、ここんとこ一番聴いているのはこれらのCDじゃないんだ。5月の誕生祝いに友人からプレゼントしてもらった、ニール・ヤングの独自編集MD4枚組なのです。秋の試験が終わったらゆっくり聴こう、と思って大事にとっておいたのです。さすがに筋金入りのファンが選曲しただけあってどれも心に染み入る曲ばかり。繰り返し繰り返しかけています。こんな素晴らしいオリジナルMDを聴けるなんて、僕はなんて幸せ者なんだろう。良い友を持つことができたことに、心から感謝。願わくば僕も彼のために、そんな良い友であることができますように。


1 Dec 2002
Sunday

 そんなこんなで、結局グレンはジェニーとよりを戻してしまった。つまりアリーはまた独り。でも彼女自身が判断して選んだ道だからやむを得ない。それにしてもグレンの歌った "Always On My Mind" はぐっと来た。ちゃんと伝えてこなかったかもしれないけれど、君はいつも僕の胸の内にいるよ。初めて聴いたのはウィリー・ネルソンのヴァージョンだったけれど、例えばペット・ショップ・ボーイズのように料理しても美味しく仕上がる。素材が良ければ料理人を選ばない。(というわけにいかないところが現実社会の難しいところ)

 というわけで今週の Ally McBeal を見終わりましたこんばんは、winterです。今日はリンのセミヌードよりも、エレインが久々にバーで歌ってくれたことが嬉しくて。前向きに。


***

 ところで先週はこっそり平日も Diary を更新していたら、なぜかアクセスしている人々がいて。しかもその反応が掲示板に溢れかえってて大変なんですけど。皆さん読み過ぎ&書き込み過ぎで嬉しい限り。結構レスつけたつもりなんだけど、それでも漏れたものについて少し採り上げてみます。

 まずですね、「女王蜂」経由で角川/横溝正史もの映画ネタが出ています。金田一耕助役として誰が思い浮かぶか、ということで石坂浩二・古谷一行・鹿賀丈史・西田敏行・渥美清・豊川悦司・片岡鶴太郎・役所広司などの例が挙がっています。いやすごいっすね。中には冗談みたいなキャスティングもありますが、架空の探偵がこれだけさまざまな顔を持ちうるというのは、横溝先生のキャラ設定不足というわけではないでしょう。むしろその自由度の高さを楽しむべき。「八つ墓村」なんて渥美清さんなんですが、これ意外とすんなり見られます。他のキャストも豪華絢爛だし、山村に潜む狂気をひたひたと描いて秀逸な演出は、一度は見ておいて損はない作品かと。

 次にBRITAユーザが殺到して大変なことになってるわけですが、ある方の書き込みにもあったように、最近はスーパーで美味しい水(と称する、例えばマイナスイオン水など)を無料もしくは格安で提供するところも多いですね。うちのそばのクイーンズ伊勢丹にもそういうのあります。要するにスーパーもリピーターを確保するためならミネラルウォーターの売り上げ減なんて安いもの、という発想なのでしょう。僕は車に乗らないので、家まで重い水を持ち運ぶことが難しくてBRITAにしちゃったわけですが、この書き込みのポイントはむしろ「それはそれとしてBRITAは欲しい気がする…」とあること。

 そうなんです! BRITAには「モノ」としての所有欲を満足させる何かがある。蛇口につける浄水器だと瞬時に水が出るわけですが、それじゃつまんない。BRITAの浄水ポットは、上から水を注ぐと、ろ過フィルターを通って出てくるのに約3分かかります。これを眺めてるだけでも何となく楽しい。「ああ、今しっかりろ過されてるんだな」ってのがヴィジュアルに確認できる仕様。あと、僕のタイプは取っ手や底面に滑り止めゴムが引いてあって、これも極めて実用的なのです。

 このように、「モノ」としてのこだわりが感じられる作りを突き詰めると、ドイツ製品に行き着く。例えば電気ひげそりや電動歯ブラシで有名なブラウン社。例えば自分が愛用する3枚刃かみそりマッハシンスリーを生み出したジレット社。こないだベルリンに行って、ジレットの本社(という説明だったが)の巨大な工場を見たときにはマジちょっと感動した。ジーメンスの工場群(というか町全体がジーメンス。トヨタみたいなものか)にも圧倒された。モノ作りといえばドイツ。ゲマインシャフトだかゲゼルシャフトだか、職人すなわちマイスターの魂が現代に引き継がれている。所有する喜び、日常使用する喜びをしっかり感じさせてくれるのがゲルマン仕込み。もっと卑近なビイル飲みレベルだと、ブラウマイスターを飲む喜びも忘れちゃいけない。

 あと、とても感銘したのは「月曜から日曜までの7日間に1度はイベントを入れることを自分に課している」というお方。そうすると、「何もなかった日」は最大でも12日しか連続しない。確かにこれは張り合いが出るね!と思ったのだけれど、よく考えてみたら自分も無意識のうちに同じようなことをしていることに気づきました。ただ僕の場合は「イベント」の閾値/threshold がかなり低くて、例えば近所の図書館に出かけて思いっきり活字の海に溺れてくるとか、部屋のビデオで立て続けに3本映画見ちゃうとか、普段と違うルートで街を歩いてみるとか、そんなものまで含んじゃってますけれど。でもできるだけ芸術作品に触れたり、生の音楽を聴いたり、友人とのつながりを持ったりするような機会は大切にすべきだと思います。自分だけの時間を持つのと同じくらいに。

 そんな彼女に渡したお土産の写真を撮り忘れて後悔。でも彼女のサイトでしっかり公開。これ真面目に素晴らしいアイディア商品、紅茶好きの心をくすぐりまっす。(直接画像にリンクしちゃって&粉がこぼれまくっててごめんね)

バックナンバーはこちら

MUSIC / BBS / HOME / E-mail to winter