Diary -June 2002-


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30 Jun 2002
Sunday

 時節柄ワールドカップの話題は今日が最後です。

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 なんて書いちゃうと寂しいね。明日から何を楽しみにして毎日を過ごせばいいのかな。大丈夫、心配しなくても時間はどんどん過ぎ去っていく。Time keeps on slipping, slipping, slipping into the future......

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 でも、正直言ってキミがうつむく姿なんて見たくなかった。唇をぐっと噛み締め、真っ白なゴールポストに背中をもたれて動かないキミ。全ての責任はオレがとる、そう身体全体で表現していたキミ。最後までクールだった男、世界最高のGK、ドイツの守護神オリバー・カーンに乾杯。守備的サッカーのドイツ vs 攻撃的サッカーのブラジルなんて言われていましたが、要するに守備ができても点を入れなきゃ勝てないのがサッカーです。キャプテン翼にこんなセリフがあったような気がしてきた。多少違うかもしれないけど。

「そうじゃ、守りのサッカーじゃ勝つことはできんのじゃ!」

 うわ〜相当訛ってるよこれ、「じゃ」 が3回も出てくるよ。とか思っていた訳ですが、今見てみると2つ目の「じゃ」は訛りの「じゃ」とは違ってますね。チキショー騙され続けて約20年かよ。カーンの悔しさが今ものすごく身近に感じられる。ていうか全然関係ないよ。要するに攻めなきゃ勝てない。その意味でバラックの不在があまりにも痛かったドイツでした。

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 さてサッカーはご覧のように非常に点数が入り難いスポーツで、これは自分が中学・高校とやっていたバスケットボールとは決定的に違うところ。もちろん偶然じゃなくてきっと何かの意味がある。最近読んだ記事では、サッカーはイギリスの領主たちが広大な敷地(ていうか山ですな)で召使いなどにボールを蹴らせて長々と遊んだゲームに由来していて、1点入ったらそこでおしまいだったらしい。だからなるべく点が入らないように、つまり長いことお祭り騒ぎができるようにルール改正がなされていったと。その現れのひとつが手でボールを扱ってはならない「ハンド」のルールであり、また「オフサイド」のルールなのだと。これは点数を入れるのが難しくなる。つまりゲームが長続きするというわけです。

 一方のバスケはアメリカナイズドされた派手な空中戦&追いつ追われつのシーソーゲームが魅力。点数はたくさん入った方が面白い、3点シュートもありだい!ってなわけで、NBAの試合なんか103対105なんてスコアになってることが多いです。サッカーの2対1と結果的にあまり変わらないような気もしますがそこはそれ。とにかく目まぐるしく攻守が入れ替わり、ボカスカ点数が入っちゃう。一旦止めたドリブルは再開しちゃいけないとか、ボールを持ったら何秒以内にシュート打たなきゃならないとか、リング下のエリアに何秒以上入ってちゃいけないとか細かいルールもありますが、サッカーを見ていて一番違和感があるのはバックパス。つまり一旦前に運んだボールを、センターラインを越えて後ろに戻しちゃいけないというのがバスケのルールなのですが、サッカーでは当然自由にボールが行き来します。前へ前へ、攻撃へ攻撃へと誘導するバスケットならではのルール。

 そしてバスケットとサッカーの最大の違いは、シュートを打つ対象です。

 つまりバスケットボールでは自分のリング(バスケット)にボールを投げ入れることでポイント(球入れと考えてください)になるのに対し、サッカーは相手のゴール、しかもその前にゴールキーパーなる門番がいて、彼をすり抜けてボールを送り込むことにより得点となるわけです。この違いは大きい。なんというか、2つのスポーツの根本的な哲学の違いを感じさせるものです。先日、朝日新聞のコラムで「ボールは善きものの象徴で、遠慮する相手に無理やりそれを渡すゲームなのである」的な解説がしてありましたがどうも納得いかない。むしろバスケットの方がボール=善いもので、善いものをゲットしたチームがそれを自分のカゴに入れちゃうゲームのような気がする。じゃあサッカーボールは毒/爆弾/汚れたものなのか。汚れたものを相手の陣地に蹴り込んでイエーイと逃げる、そんなゲームだったのか。うーむ、やっぱり聖なるお届け物を相手に贈るゲームっていう方がきれいですね。

 真相は詳しいお方にBBSで解説していただくこととして、僕は今年生まれた男の子たちにつけられそうな名前ナンバーワンに思いを馳せて憂鬱になるのです。

 おそらくそれは、「蹴る人」すなわち「蹴人」と書いて「しゅうと」

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 生まれる前から何かが決められていることほど気持ち悪いことはない。職業選択の自由が憲法で保障されているくらいだから、名前も生まれた後に本人がそれで良いか、あるいは変えるかの選択ができるようになると良いね。



29 Jun 2002
Saturday

 時節柄ワールドカップの話題が続きます。

 3位決定戦トルコ vs 韓国、ちょっと感動的だった。何たって開始10秒でトルコが劇的な先制ゴール。決勝トーナメントに入ってからは割と守備的な試合ばかり見ていた印象があるだけに、スピーディな展開に目が点になりました。結局3対2でトルコが勝ったわけですが、韓国のロスタイムでのゴールもなかなか盛り上げました。トルコのGKはカーンさえいなければ今大会のベストキーパーでしょうね。ファインセーブ連発。カッコ良かった。

 ところで今大会ずっと韓国が「アジア勢初のベスト4」とか言われてましたが、トルコはアジアに含まれないのかどうか。まあいろいろな区分があるでしょうがここではヨーロッパにされているようです。まさに境界線というか、西と東を結ぶ地点にあるのがトルコの魅力。これを機会に懐かしい世界史の教科書を引っ張り出して、オスマン=トルコ帝国の歴史を振り返ってみるのもいいね。

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 いよいよ明日の決勝戦でワールドカップもおしまいです。かなり多くの日本人と同様、自分もこんなにサッカーが面白いと思えるようになるとは予想もしませんでした。パブでビイルを飲みながら観戦するのにこれほど適したスポーツはないような気もするし、監督の采配や審判の判定にウンチクを垂れる「にわかセルジオ越後」状態になってしまう気持ちも良く分かりました。そんなワールドカップも、明日でおしまい。ちょっと寂しいね。でも僕らは知っている。明後日は何事もなかったように訪れるし、そのまた翌日も僕らの日常は続いていく。結局ワールドカップがあろうとなかろうと、何の影響もなかった。

 …そんなことないでしょ?
 もし全くワールドカップの話題に触れないように努力し続けた人がいたとして、彼/彼女がどれほど有意義な1ヶ月を過ごすことができたかどうかは知りませんが、少なくとも僕らはこの祭りを盛大に楽しんだ。こんなに面白いのかって思えるくらいに面白がった。たかだか80年前後の人生なんだから思いきり楽しんだ方がいいやと思っている自分としては、きっと死ぬ時に「2002年の6月もなかなか楽しかったやね」と思えるかなあと。

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 さて私事ですが、9月末にかけてますます時間を取るのが難しくなりつつありまして。ひょっとすると8月9月はほとんど更新ができないかも?しれません。もともと気分転換のつもりで始めたサイトですから無理してやろうとは思っていないのですが、昨日はとある方から非常に勇気付けられる言葉をいただいたこともあり、できるだけうまく時間をやりくりして続けようと思っています。読み手のお方の言葉は何より力を与えてくれるものですね。ありがたいことだなあと再認識した夜でした。



26 Jun 2002
Wednesday

 時節柄ワールドカップの話題が続きます。

 今日は見事決勝進出を果たした 「カナリア軍団」 ことブラジルネタ。ロナウド vs カーンの息詰まる闘いが期待されるわけですが、カーンの吠え声が今から聞こえてきそうで今夜眠れるか不安です。ロナウドって目が草食動物系ていうか、優しげじゃないすか。人は見かけによるのかよらないのか。

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 そもそも、カナリア軍団ってのもどうなのよ。確かに鮮やかな黄色ってのは分かりますが、カナリアに強さを感じる人はまずいないでありましょう。その意味でアフリカのチームが百獣の王ライオンをチームシンボルにすることが多いのは納得できます。それなのにカナリア。ロナウドの目の優しさはこの辺に起因しているのか。

 一方のカーン。コワモテというだけでなく、今朝の朝日新聞によれば何と株式投資についてはプロ級だという。ドイツ国営放送の経済番組にアドバイザーとして出演するくらいだというからシャレにならない。テレビ東京のワールドビジネスサテライトに楢崎が出てきて 「小幅ながら続伸しましたが上値が重い展開でした。今週の狙い目はこちらの銘柄です」 なんてしゃべってるような状況か。ありえない。今や「神の手」といえばマラドーナではなく、もちろん「国富論」のアダム・スミスでもなく、奇跡的なファインセーブをいくつも生み出してきたカーンの両腕のこと。しかしその手は移動中のバスの中で株式専門誌のページを休みなくめくり続けているわけで。文句あっか。文句言うヤツにはパンチングだぞっ。神のパンチング。友へ。

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 そんなことはどうでもいいわけですが、自分のような貧困なる精神の持ち主がブラジルと聞いて想起するのは、例えばボサノバであったりします。それも、具体的には J-WAVE で日曜の夕暮れにやっている「JAL サウージ・サウダージ」という番組のあのユルさなわけです。「あのユルさ」、としか表現の仕様がないユルさ。番組全体を支配する気だるいボサノバを聴く度に想像するのは、行楽地から都心に向かう渋滞につかまった車中で流れる J-WAVE。遊び疲れた週末、相方とのちょっとした諍い、明日から再び始まる現実。そんな夕暮れ時にヘヴィメタルではいけない。ダンストラックもまずいだろう。ジャズというわけでもない。畢竟、ボサノバが浮上してくるわけです。ああこのためにあったのか。ボサノバは。

 うまく説明できないんですけど、ボサノバの歌い手の発声法はたとえばロック歌手のそれとは全然違ってるような気がします。ここには単に言語の違いでは済まされない何か根本的な違いがある。僕は決してボサノバの良い聴き手という訳ではありませんが、きっとどっぷりハマるとすごく奥深い世界が広がっているんだろうな。ボサじゃないけど、NHKのクロスオーバー・イレブンのオープニングテーマ "Fly Over The Horizon" という曲を演奏していたアジムスというバンドもブラジルでした。不思議と惹かれる音世界。クロージングテーマでの揺れるエレピも大好きだったな。

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 音楽ネタでブラジルを続けると、ジョージ・デュークの名盤に「ブラジリアン・ラヴ・アフェア」というディスクがあります。音も然ることながらこのタイトルが醸し出す何とも言えない雰囲気に魅せられて、勝手にいろいろなストーリィが頭の中を駆け巡るのです。だってブラジルでのラヴ・アフェアですよ。短くも熱く狂おしく燃える恋愛。発声してみるとこれまた何とも言えない語呂の良さ。声に出して読みたいブラジリアン・ラヴ・アフェア。

 さて聴きながら眠ろうかなと思ったら、案の定ジョージ・デューク盤は見つからず、代わりに出てきたのは全く関係ないジェネシスの「インヴィジブル・タッチ」。実はこいつのラストを飾るインストゥルメンタル、"The Brazilian" が大好きで大好きで。ポップ過ぎると批判されるアルバムですが、最後の最後で超ヒネクレインストが炸裂します。別に超絶技巧系の演奏ではありませんが、とにかくインチキ臭い雰囲気満載。インチキ臭いブラジル人を誰か具体的にイメージして作ったのか、それとも? そもそも何が「ブラジリアン」なのかも判然としない怪しさの中、緻密に練り上げられた音のパズルを彩る(多分)ブラジルのパーカッション。ある意味アルバムで一番プログレッシヴな楽曲、今夜はこれを聴きながら眠るとしましょう。



23 Jun 2002
Sunday

 東京JAZZ 2002 というイベントがこの夏行われます。調布市の東京スタジアムにて、8月末の野外ジャズフェス。音楽プロデューサーはハービー・ハンコック。

8月24日(土)
■ 東京 JAZZ TAKE OFF SESSION
■ 熱帯JAZZ楽団
■ ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ PRESENTS オマーラ・ポルトゥオンド
■ ウェイン・ショーター・カルテット
■ ハービー・ハンコック FUTURE 2 FUTURE BAND
■ スーパー・ユニット
  ハービー・ハンコック
  ウェイン・ショーター
  マイケル・ブレッカー(スペシャルゲスト)
  ニルス・ペッター・モルヴェル
  ジョン・パティトゥッチ
  ブライアン・ブレイド 他

 ジャズってのは気取ったええカッコしいの音楽だと思っていた時期がありました。何かをきっかけにしてその偏見は氷解し、今ではひどくリラックスできる身近な音楽だと感じています。歌の入ったナンバーもありますが、基本はお約束のコード進行の上で各楽器のプレイヤーが息を合わせたり、順番にソロを回したりしながら、その場限りの即興で作品が演奏されていきます。歌詞を深読みするのも好きですが、時々は頭を空っぽにしてグルーヴに浸りたい時もあって、そんな日はジャズもしくはジャズっぽいインストをかけてみたりします。

 東京JAZZのチケットが届きました。アリーナS席、A7ブロック11番。まだ席配置図面が発表されていないようなのでどの辺かさっぱり分かりません。一見良さそうな数字ですが、所詮はイープラスの先行発売分なので、ひどく端っこの席かもしれません。それでもいいや。この日だけはお昼から夜まで、ひたすらジャズに浸りたいなーと思ってます。まあ、お祭りだからね。こういうのは。

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 リーガルのブラウンのシューズがお気に入りだったのですが、つま先部分などが傷んできたので初めてリペアに出しました。3週間くらいかかって帰ってきたシューズは、ソールを完全に取り替えて、一部色落ちしかけていた革も仕上げ直しされて、ほぼ新品同様になっていました。代金は8,000円強といったところですが、愛着のある靴だけに「安い」というのが正直な感想。

 靴には最大限投資せよ、という人がいます。背広など2〜3万円のものでも構わない、だが靴には10万円平気でかけるべしという訳です。ちなみにこの逆の投資をする人が多くて、立派なスーツなのに足元が貧弱な靴のために全体として台なしになることもあるらしい。自分はとても高価な靴を買う余裕はありませんが、代わりに手入れはしっかりしようと思っています。靴を磨くのはちっとも苦にならないので、週末の昼下がりにお気に入りのCDをかけて、缶ビイルなど空けながら鼻歌を歌いつつ順番に手入れしていきます。

 良い革はしっかり汚れを落とし、クリームを塗る作業を続けていれば非常に長持ちします。靴底は基本的に消耗品ですが、底を取り替えながら何年もお気に入りの靴を履き続けることが可能です。時間を経ることで革の色合いに深い味わいが出て来たりもします。何だか非常に人間的なアイテムですね。一方で履きつぶし用のシューズももちろんあって、適当なタイミングで適当に使い分けてます。

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 自分が手入れするタイプなものだから、街を歩いていても同じように靴の手入れがしっかりされている人のことは少し気になる。きちんと磨かれた靴を履いている人もいれば、どう見ても買ってから一度も手入れされていない靴を履いている人もいます。だからどうということはなくて、そういう靴たちが目につくというだけのこと。同じように最近安物の腕時計をいくつか買ったものだから、街行く人々の腕時計も気になる。自分のものと同じタイメックスのアイアンマンをしているスポーティな女の子がいたりすると、ちょっとだけ嬉しい。だからどうということはなくて、彼女はすたすたと歩み去っていくというだけのこと。

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 僕は確かに一人でお店に行き一人で帰ることができるけれど、行った先でも一人きりだときっと少しだけ寂しいんじゃないかと思いました。相変わらず間が悪い自分に舌を出しつつ、明日からまた1週間。



22 Jun 2002
Saturday

 時節柄ワールドカップネタが続きます。

 結局何だかんだ言いながら、可能な限り全試合TV観戦しています。これまで馴染みの少なかった国々に思いを馳せることができるのも、ワールドカップやオリンピックの恩恵のひとつでしょう。近くて遠い国だった韓国は言うに及ばず、トルコやセネガルについてはなかなか調べる機会などありませんから、こうして身近に感じることができるチャンスを大切にしたいものです。

 ベスト16くらいから上の試合はどれも面白いですね。ブラジル vs イングランドの試合は不要なファウルや精彩を欠くパス回しなど、決して名試合と呼ばれるものではなかったと思いますが、ロナウジーニョのプレイにはいくつか輝くものがありました。ベッカムの人気でイングランドを応援する人も多かったようですが、僕は「国」を単位に何かに肩入れすることはほとんどない(「出身県」とか「地方」でも同じこと)ので、特に応援するチームはありません。ただ良いプレイヤーたちが良いプレイをするのを楽しむだけのことです。

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 「サッカーは人生の縮図である」などと力説する人もやや苦手です。確かにサッカーと人生とは双子のようにそっくりだとも言えます。幾多の困難を乗り越え、それぞれの持ち場でFWなりGKなりの役割を分担しながらゴール目指し続ける。多くのスポーツ同様、サッカーは人生の縮図と言えるかもしれません。

 ですがサッカーと人生とは赤の他人のように異なります。サッカーにおいてはあらかじめゴールはそこにあり、はっきりと見えていて逃げも隠れもしません。でも僕らの人生というゲームでは、ゴールがどこにあるのか、何がゴールかを決めるのはプレイヤーである僕ら自身です。なのに大半のプレイヤーは、自分のゴールを定めないまま闇雲にピッチの中を駆け回り、後半時間切れで力尽きて倒れていく。サッカーとは要するに、ゴールにボールを蹴りこむゲームです。なのにほとんどの人はそのことを忘れてしまい、4−4−2だとかフラットスリーだとかオフサイドトラップだとか、余計なことに気を取られて一番大切なことを忘れてしまうのです。
 
 自分のゴールが何か、得点するために何を行うか。それさえ明確になっていれば、ほとんどの試合には勝つことができる。勝ち負けなんてどうでもいいのだけれど、少なくとも「いい試合をすることができた」と笑いながら死んでいくことができる。そんなことを考えつつビイルを飲んでいると、サッカーが人生の縮図なんじゃなくて、人生こそがサッカーの縮図なんじゃないかという気すらしてきます。いよいよ訳がわからなくなってきた。

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 トルコの国歌がクラシック風でこれほどカッコいいとは知らなかった。
 セネガルの監督っておとなしいイアン・ギラン似だと思いませんか。
 スペインのGKカシリャスはビバリーヒルズ青春白書のデビッドに似ています。



16 Jun 2002
Sunday

「ねえ、見たいんでしょ?」
「…見たいって何をだよ」
「チラって見えるのがいいんでしょ? 全部見えちゃうのより」
「そ、そりゃそういうのもあるけどさ」
「じゃ見せてあげようか」
「えっ、ま、マジで?」
「ほ〜ら」

 まさかパンチラか? 期待をよそに彼女がめくりあげたのはスカートの裾ではなく、Tシャツの裾だった。チラチラチラリ。ベルトがチラリ。チラベルトかよ。

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 相変わらずワールドカップ三昧の日々でございます。日本と韓国が揃って決勝トーナメントに進出して、ますます盛り上がってますね。中でも異彩を放ったのは、昨日ドイツに負けてしまいましたがパラグアイのGK、ホセルイス・チラベルト36歳。修行僧の如き豪快なルックス。194cmの巨大な壁。しかも恐るべきことに彼は素晴らしいキッカーでもあり、フリーキックのチャンスを得ると相手ゴール前まで飛び出してきて自らボールを蹴り込むのです。結局昨日のドイツ戦ではW杯初のGKによるゴールは決められなかったものの、大いに見せ場を作ってくれました。

 しかし流石に決勝トーナメント、ものすごいレベルの試合が続いてますね。アイルランドが後半終了間際に計ったように同点ゴールを決めるのにはびっくり。スペインはまったく無駄なところで反則しちゃったものです。スウェーデン vs セネガル戦はジムでトレーニングしながら見てたんですけど、すっかり引きこまれて通常の1.5倍くらいのペースで運動しちゃいました。「運動量が豊富」、これまたいわゆるサッカー用語なり。

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 うちの職場の課長は50代の肝っ玉母ちゃん系なのですが、彼女が言うわけです。

「ねえ、TOKIOの招待券が2枚あるんだけど、要らな〜い?」
「えっ、TOKIOですか! 課長なかなか若い趣味してますね」
「何言ってんのよ、TOKIO じゃなくて都響よ。クラシックよ」

 そんなこんなで、今週は東京都交響楽団 featuring 庄司紗矢香のコンサートを見てきました。パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール史上最年少かつ日本人初の優勝者である彼女、お上品な中にも激しい情熱を感じさせる、いかにも天才少女風の演奏を聴かせてくれました。演目はブラームスのヴァイオリン協奏曲だったのですが、これがまた非常に分かりやすいロマンチックな作り。すっかり好きになって帰ってきました。たまにはクラシックも良いねえ。



11 Jun 2002
Tuesday

 今日のちょっとした幸せ。

 そりゃもう世間はワールドカップでたいへんですよ。で、サッカーにもっとも適合した飲料は何であるか。まさしく愚問であります。答えはビイル。これしかない。

 まあエビスでもスーパードライでも良いのでしょうが、幸いにして今僕の部屋には2本のスタウトがあります。スタウトとはこれ即ち、英国風の上面発酵黒ビイル。ギネスならいつだって飲めますが、なんたってこいつは Murphy's なのです。アイリッシュ・スタウトの雄。アイルランド南部でスタウトと言えばギネスではなくてむしろマーフィーズ。さあ皆さんご一緒に。
"A pint of Murphy's, please."

 マーフィーズの缶が日本に輸入されるようになったのは喜ばしいことです。ところでこの缶には妙な能書きあり。それは "NEW DRAUGHTFLOW SYSTEM"。厳密には DRAUGHTFLOW なる造語の後に丸で囲んだRマーク付き、すなわち登録商標であることを高らかに宣言。しからばそのシステムは一体何であるか。缶の裏側には日本語の説明シールが貼られているのでした。曰く、

<美味しい飲み方>
1. グラスは常に清潔で乾いたものを使用してください。
2. 最低2時間は冷蔵庫で冷やし、丁寧に缶を開けます。
3. 缶の中身を一気に注ぎ、60秒ほどグラスを置いて落ち着かせます。
4. マーフィーズ・アイリッシュ・スタウトのスムースでクリーミーな味わいをお楽しみください。
・マーフィーズ・アイリッシュ・スタウトの缶の中に内蔵されている小さなプラスチック製の
 ウィジェットにより、クリーミーで豊かな泡のより一層美味しい生ビールが造り出されます。
 ウィジェットが缶の中に内蔵されている為、、カタカタと音がする場合があります。異物では
 ありませんので、安心してお楽しみください。


 おいおい「ウィジェット」って何なんだよ〜とツッコむ間もなく、食器棚から取り出したパイントグラスによく冷やしたマーフィーズを注ぎます。缶の中にはプラスチック製の穴開きボールみたいなのが入ってまして、こいつがカラカラと音をさせながら泡を立てている模様。出来上がりは右の写真のとおり。ロンドンのパブで飲んだやつに比べれば泡のキメは全然荒いけれど、いい感じの a pint of Murphy's がここに。缶なりに少しでも「飲むまでの時間」を楽しませてくれる仕掛けに乾杯、さあちびちびとスタウトをやりながら一緒にワールドカップを観戦しようじゃありませんか。

 マーフィーズの缶2本をプレゼントしてくれた相手に、乾杯。
 そしてこの世にマーフィーズを授けてくれた神様にも、乾杯。



8 Jun 2002
Saturday

 その昔NHKで「にこにこぷん」という番組がありました。いわゆる被り物系の幼児向けキャラクター番組。キャラは3種類で、それぞれ「じゃじゃまる」「ぴっころ」「ぽろり」というのですが、最近より詳しいキャラ設定があることが判明しました。すなわち、

★ふくろこうじ・じゃじゃまる
 うらおもてやまねこの子供。5歳くらいだと思うニャ。いじめっ子と思われてるけど本当はやさしいんだ。
★ふぉるてしも・ぴっころ
 “ふん”ボルトペンギンの子供。年は3〜5歳。おしゃべりとオシャレが大好きな、おしゃまな女の子。

★ぽろり・ガジリアッチ3世
 家柄はネズミの海賊という名門。4歳。とてもおりこうさんで、便利な道具をたくさん作るんだ。


 だからどうしたと言われても困りますが。
 「にこにこぷん」って「肉骨粉」と似てるような気がする winter ですこんにちは。

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 気を取り直して今日のちょっとした幸せ。

 皆さんは植物を育てていますか? 確かに動物の方が感情を身体で表現してくれるし、可愛かったりもするのでしょうが、如何せん賃貸マンション暮らしだと制限があります。日中家を空けている間も心配だし、エサやトイレの世話もたいへん。そこへいくと植物は文句も言わず黙々と育ち、夜中に起こしたりトイレを汚したりせず、しかもその緑で僕らの心を癒してくれる便利な存在なのです(←そんな理由で植物を育てちゃいけないという悪い例)

 でもってうちで今すくすくと成長しているのは、綺麗な花を咲かせるでもなく美しい葉っぱを広げるでもない、トゲトゲのアロエだったりします。ほらほらそこのキミ、毎日アロエヨーグルト食べてるくせにイヤな顔しないで!

 アロエは割とタフな植物です。これなども今年の冬にもらってきて水かけながら育てていたのですが、寒い夜を越せずに葉っぱが赤く枯れてしまい、もうだめかと思っていたところ、春になって急に青々と芽が出てきて元気に生い茂り始めました。アロエはまた、実用的な植物でもあります。ちょっとしたケガ、特に火傷の類には非常によく効きます。葉っぱを適当にちぎって皮をとり、半透明の葉肉が含む汁気を火傷の個所に塗ると、驚くほど早く回復してしまいます。あっ、これはあくまで肉体的な火傷の話であって、恋のヤケドには全然効きませんのでご注意。(試したのかよ)

 何にしろ、毎日少しずつ成長していく緑が自分の部屋にあるのはちょっとした幸せ。一度枯れかけた時には「自分と一緒にいると植物ですら枯れてしまうのか」と悲しくなりましたが、ある人によるとそれは違うらしい。つまり、植物はその人の「気」を吸うのだというのです。悪い「気」を吸ってあげて、自らは枯れてしまう存在。だから深く気に病むことなく、また新しい植物を置いて育ててあげれば良いのだと。

 そんな不思議なお話を思い出しながら、今日もアロエに水をあげました。



2 Jun 2002
Sunday

 今日のちょっとした幸せ。

 正確に言うと昨日なんだけど、ビイルを飲みました。またかよ!ってのはナシね。だって世間はワールドカップ・サッカーで大騒ぎ。BBSへの書き込みもほとんどない様子からして、貴方もきっとこの週末はワールドカップ三昧だったでしょう? で、ワールドカップといえばビイルですよ。これ自分的常識。部屋でちびちびやりながら小さなテレビ見てるのもいいけれど、いい天気&いい気分だったので渋谷まで出てブリティッシュ・パブっぽいお店でバス・ペールエールを飲みながら大スクリーンで見ることにしました。ちなみにバス社のサイトは改修中です。あしからず。

 そしたらもうお店は大混雑で。ちょうどアイルランド戦が終わった頃で、続々お店から出てくるアイルランドファンと思しき外国人たちと入れ替わりでテーブルにつきました。渋谷にはよりアイリッシュな DUBLINER'S というパブがあるのですが、ここなんかテラス部分が黒山の人だかり。スクリーンで繰り広げられる激しい攻防に歓声があがってましたっけ。僕の入ったお店ではこれからドイツ戦。ご存知のとおり8得点を挙げて大勝したわけですが、シュートがネットを揺らす度に大騒ぎ。「サッカー+パブ+ビール=興奮」。そんな公式どおりのヨロコビ。ね、小さいでしょう? 小さいけれど、それは確かな幸せの時間。

 ところで僕は全然サッカーを見ない人なので、実は選手のことはよくわかんないんですよねー。イングランドのベッカムちゅう人も、今回初めて顔を見たような気がします。なんか俳優みたいなルックスですね。それで人気があるのかな?と思ったら、サッカーもなかなか巧いらしい。スパイス・ガールズのヴィクトリアの旦那ってことしか知りませんでしたが、ちょっと興味が湧いてきました。

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 もうひとつの幸せは、メイルでした。すごーく古い知り合いの方から、サイト見つけましたってメイルをいただいて。リンクをたどっていくうちに、大昔すれ違ったことのある知人や友人のページに出くわすことってありますよね。それはまったくの偶然のような気もするし、あらかじめ用意されていたリンクに一筋の光が流れてつながった必然のような気もする。いずれにしても、新旧問わず全てのご縁は大切にしたいと思っています。多少時間がかかるかもしれませんが、いただいたメイル類(ありがとうございます!)には全てお返事書かせていただいてますので、今しばらくお待ちくださいませ。

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 「縁」 といえば、大好きな ALLY McBEAL 絡みでこんな台詞を思い出しました。朝の通勤時間帯に例によって考えごとしながらボストンの通りを歩いていたアリーが、ある男性と出会い頭にぶつかります。お互いびっくりするわけですが、彼がアリーをじっと見つめて発した台詞とは。

「僕、わりと運命を信じてるんです。
 しかも貴方が結婚指輪をしてないとなると…
 今度一緒にお食事してくれませんか?」

 海外ドラマの魅力のひとつは軽妙洒脱な会話のやりとりだと思うのだけれど、道端でぶつかった女の子に対してこんな言葉をサラリとかけられるなんていいよね。もちろん、言葉にできる感情もあれば言葉にならないものもある。でも、できる範囲で、思っていることを相手に伝えていかなければ、本当に理解し合うことなんてできないんじゃないのかな。…そう思う一方で、言葉を胸にしまって今夜もビイルをすする自分もいる。

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 上の台詞、以前の Diary で既に引用したことがあるような気もしてきました。その時は、よっぽど気に入ったんだなと思ってどうか読み流してやってください。



1 Jun 2002
Saturday

 今日のちょっとした幸せ。

 前から知っていて、興味もあったのになかなか買う機会がなかったアイテムが、松山油脂の無添加石けんだったのです。アミノ酸石けんシャンプーとPHバランスヘアリンスも。無添加石けんにこだわるお方なら知らない人はいないとまで言われる有名なブランドですが、何かきっかけがなければなかなか使ってみる機会は訪れないのもの。ぶらりと入った東急ハンズで、石けん+シャンプー+リンス+トリートメントがセットになった、小さな小さなお試しパックがあったので買ってみました。

 前にも書いたことがありますが、僕は子供の頃ちょっとだけアトピー持ちだったので、今でも皮膚がそれほど強い方ではないようです。塩素の強い水道水に添加物だらけのシャンプーやエタノールたっぷりの化粧水だとダメージが大きいみたい。無添加石けんの香りって何だかすごく素朴ですよね。昔懐かしい感じがして好きです。石けんシャンプーの方は好き嫌いあるでしょう。最初はごわごわする感じですが、すぐに弱酸性リンスで中和してあげれば気にならなくなりますし、くせっ毛の自分でも毎日使っていると少しずつ自然な髪質になっていくような気もします。

 松山油脂は東京都墨田区にある会社です。僕は全然知らなかったのだけれど、墨田区は「石けんの町」と呼ばれるくらい大小さまざまの石けんの会社がいっぱいあるらしい。石けんの香りが漂う町を、浴衣など着て流すちゃきちゃきの女の子はカッコよさそうだ。今日から6月。そろそろ夏らしくなってきました。



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