Diary -June (1) 2001-

日記才人

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15 Jun 2001
Friday

 センチュリーハイアット27F 『ラプソディ』 にて打ち上げ。ラウンジのようなところですね。照明は暗いし、バンドが入って1時間おきに生演奏があるしで、ちっとも落ち着いて話ができやしない。ま、管理職のオジサンたちと落ち着いて話をする気分でもないしね。もっぱら職場から連れてきた嘱託のオーストラリア人お姉さんたちと会話。Inxs や The Models や Midnight Oil について。あるいは彼女のお兄さんの友達がエージェントをやってるという Tina Arena のコトなんかを。

 生演奏のバンドは6人組で。リーダーがヴォーカル兼サックス、あとドラム/ギター/ベース/シンセが1人ずつ、プラス紅一点のサイドヴォーカルの女の子。割と懐かしめの曲を次々と演奏する。例えば雨にちなんで "Raindrops Keep Falling On My Head", "Rainy Days and Mondays" とか、リクエストに応えて "La Bamba" とか "Stand By Me" とか。

 オーストラリアの女の子は "Raindrops Keep..." を知らないと言って、僕を驚かせた。「誰ノ曲デスカコレハ? 日本人ノ歌カナ?」
 それもそのはず、彼女は28歳すなわち1969年の映画 『明日に向かって撃て』 公開時にはまだ生まれていないのだから。それは自分も同じなのだけれど、「これは "Butch Cassidy and The Sundance Kid" という Paul Newman / Robert Redford / Katharine Ross 主演のクラシックなムーヴィのサントラから全米1位を記録した B.J. Thomas という人の歌だよ。ちなみに作曲は Burt Bacharachだけれど」などと薀蓄を垂れてみる。青い瞳を輝かせて聞き入るモデル系容姿の彼女は、しかし、日本人のダンナとの間に早くも3人の子持ち。

 宴もタケナワ。
 バンドがイントロを演奏するや否や、彼女が「キャー」と叫んで立ち上がり踊り出す。そう曲は大 CLASSIC、アバの "Dancing Queen"。ノリを引っ張ったまま次の曲 『君の瞳に恋してる』 に突入したバンド。リードヴォーカルを取る紅一点の小さな女の子はノースリーヴのワンピース。強い照明を浴びて、真っ白な肌に真っ赤な唇が映える。コーラスに合わせて手を高く掲げた彼女の両ワキは、まるで東京ビューティセンターの広告チラシのようにつるりとしていた。

 つまりそこは、フィクションだらけの現実。現実の中のフィクション。新宿副都心の高層ビル27階で流された汗だけがホンモノ。一晩4回のステージで、彼ら6人のギャラはいかばかりか。そんなことを考えながら家路につく自分は、やっぱりややお疲れ。皆さまよい週末を。



14 Jun 2001
Thursday

 ややお疲れ。

 職場の電話を取って、「はい、マルチメディアサービス企画部です」 などと前の会社の部署名を名乗りだしかける自分に大いに焦る。すっかり忘れていたハズの部署名がさらさらと出てくるあたり、自分でも不思議。
 
 どこか南の方にある無人島で、ぼんやり過ごしたい気持ちに駆られる。
 白い砂浜、青い海。海岸にはヤシの木。波の音を聞きながら、空を眺めて、朝から晩まで何もせず、ただひたすら虚無でありたい。

 「南の島」っていうあたりで既にダメだ。南半球の皆さまにとっては「どこか北の方にある無人島で…」となるべきなんだろう。自分だけの尺度でモノを見てしまう危険性は、日常のあちこちに潜んでいる。

***

 トップページのカウンターがいつの間にか4000を超えてました。これはちょっと驚きです。当サイト外へのリンクについて、「新しいウィンドウを開く」設定にする技を、昨夜初めて知ってしまい、大急ぎで目に付くリンク設定を変更してみました。どんなもんでしょう?



13 Jun 2001
Wednesday

 オークションに出品していた自分のデジカメ CASIO LV-10 を、某女性が落札。

 購入から約2週間、ほとんど新品のままだったので、値段は量販店での新品価格にかなり近い額まで競り上がった。自分ならあと少し上乗せして新品を買ってしまうかもしれない。でも考え方なんて人それぞれだし、ひょっとすると、この方は近辺にそうした量販店がなくて困っていたのかもしれない。いや、この子、マジで俺に惚れたに違いねえ。

 銀行振込後に宅急便着払いで送付するということでよいかと確認したところ、先方の希望によって定額小為替で支払い、ゆうパック着払いで送付するいうことに。もちろん自分はどちらでもOK。待つこと数日、先方から無事に定額小為替が送られてきたので、ウキウキ・ウェイク・ミー・アップして郵便局に出かける。

「定額小為替って、ここに名前と住所書いて出せばいいんですね?」
「そうです。印鑑も押してくださいね」
「えっ、印鑑? あ、ホントだ… 忘れちゃったんですけど、拇印でもいいですか?」
「免許証などをお持ちでしたら大丈夫です」
「ありますあります」

 コトバを繰り返す悪いクセが出てしまった。お給料日直前でキャッシュがショートしかけているこちらの弱みを悟られまくる悟られまくる。

「拇印ってどの指で押せばいいんですか?」
「どれでもいいですよ」

 じゃ左足の小指で押しますね、などと郵便局のおばさん相手にボケる余裕もなく、左手の人差し指で5,000円・2,000円・2,000円の定額小為替にそれぞれ押印していく。なぜ左手の人差し指が反射的に出てしまったのか。それは某ディスクユニオンにCDを何千枚も売ってきた長い歴史のなせる業とだけ言っておこう。

 ちなみに、ここのプログレページはプログレ者たちにとって「基本のき」である。だが右のマグマ・マグカップのギャグセンスには素で言葉を失った。先を争ってゲットするであろうマグマ・ファンたち、しかし真のプログレ者である限り、彼らはきっとオークションに出品して小銭を稼ぐことはない。後生大事にしまっておき、ときどき取り出してはふうっと息を吹きかけてそっと磨きをかけるのだ。プログレ者オフ会などあろうものなら、ここぞとばかりに大きなバッグから取り出し、
「ねえねえコレ持ってないでしょ。ねえねえ。コレ。」
などと言いつつにじり寄ってくる、ダブついた体躯の暑苦しい姿がありありと目に浮かぶ。浮かぶでしょ?

 …話を元に戻す。

 郵便局のおばさんとのやりとりを経て定額小為替を現金化し、隣の窓口で落札者の女の子にゆうパックを送付して、職場に戻ろうとしたその時! 定額小為替のお金を財布にしまおうとした僕は気がついた。5,000円のはずのお札が、10,000円札であることに。


 …僕はそこで、一瞬立ち止まってしまったことを正直に日記に書いておきたい。書いておかねばならない。まさに業務がピークに達し、ここ数週間は睡眠時間が激減していることは事実だけれど、それで判断力が鈍ったなんて言い訳を思いつくほど落ちぶれたかと思うと、泣きそうになる。郵便局の仕組みはよく知らないけれど、窓口を閉めた後で計算が合わないことが分かれば、あのおばさんは自分のお給料から差し引いて埋め合わせすることになるのかもしれないのだ。だいたい、今自分の手の中にあるお金のうち5,000円分は、僕が手に入れるべきものではまったくないのだ。僕はきびすを返した。

「すみません、さっきの小為替なんですけど、これ10,000円札でした」
「あっ…  どうもすみません、ありがとうございました…」

 おばさんは深々と頭を下げて、僕に5,000円札と、簡易保険のティッシュペーパーを差し出した。「…いえいえ、とんでもないです。どうもお疲れさまです…」。消え入るような声で返事した僕は受け取るとそそくさと逃げるように郵便局を後にした。良からぬ考えが頭をよぎったことの恥ずかしさと情けなさでいっぱいで、おばさんに合わせる顔がなかった。

***

 今日の出来事は過ち色の記憶
 そして人間は過ちを犯すイキモノ。これだけは、力強く宣言することができる。ちょっと悲しいけれど。



12 Jun 2001
Tuesday


 死刑大国アメリカ。

 先日、米連邦ビル爆破事件の主犯ティモシー・マクベイ死刑囚(33歳)が公開処刑された。米国には根強い「見せしめ文化」があるという。薬物を注射され、息絶える様子を特別中継で見た遺族らがテレビ番組で「目を開いたまま絶命した」などと語る様子は、日本ではちょっと見られない。

 一方で田中真紀子外相も吠える。
 大阪府池田市で起きた児童殺傷事件などを例に挙げ、逮捕された容疑者の顔を屋外で隠そうとする警察の対応を批判したという。

「被害者や一般の人がどういう感情で警察のこういう行為を見ているのか。加害者が成年で特定されているのに、ビニールシートや毛布で顔を隠している。そのことでまた再発につながらないのか」

 容疑者の顔を世間にさらすことが犯罪の抑止につながるという考え方のようだ。米国の「見せしめ文化」そのものである。米国批判やってるバアイではない。パウエル長官に見せしめにされぬよう気合い入れられたし。

 ここで死刑廃止論の是非について踏み込むには字数が足りなすぎる。(ホントは眠すぎる)
 ただ、何の落ち度もない人を一方的に殺す者は、後に自分の命が奪われることがあっても構わないという覚悟を持ってやるべきだろう。他方で、人間は必ず間違いを犯すものであって、誤審・誤判により死刑を執行してしまう可能性を完全に排除することは困難だ、ということもメモしておく。

 ハムラビ法典の時代は分かりやすかった。目には目を、歯には歯を。自転車盗んだヤツから自転車盗み返し、ガラス割ったヤツの家のガラスを割る。可愛いネコの前脚切り落とすヤツは右腕切断し、非加熱製剤でエイズ感染させた某医師には同じ非加熱製剤をたっぷり注射してやる。。子供を虐待死させた親は虐待方法に応じて同じように熱湯をかけてやったり、死ぬまで逆さ吊りにしてやったりする。ちょっとハムラビさんの趣旨とは違ってきてるようですが。

 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 での Bjork の演技を、また思い出した。



11 Jun 2001
Monday

 朝9時にヒルトンでインド/デリー高官某氏出迎え。和やかに談笑。オフィスに招いて折衝。観光を所望する某氏に適切なコースを提供。すなわち、

新宿副都心発 ⇒東京タワー展望台 (自分も生まれて初めて登った)
「香港ガーデン」@西麻布で食事 (五目中華焼きそばを強引にもメニューに存在しないベジタリアン焼きそばに作り替えさせるという、最高にイヤな客に大変身する自分)
浅草をぶらりお散歩 (某氏におみくじを引かせたら見事に大吉を引き当てる)
秋葉原視察 (と称して feel H" の新しいパンフをゲットだぜ)
地下鉄に乗りたいという某氏の望みを叶えて遠路新宿まで戻る。

 そんなこんなで日が暮れて、いよいよ明日から本番なり。

 そういや某氏が語るには、
「インド北部の自然公園にぜひ遊びに来たまえ。そこにはたくさんの CATS がいて…」
 はぁ? ネコ?
「…例えば TIGER とか LEOPARD が何種類も…」

 そう、虎も豹も英語じゃネコなのでした。今夜も近所のクロちゃんは出迎えてくれなかった。トラウマじゃなくて、帰りが遅すぎたせいだと信じたい。



10 Jun 2001
Sunday

「猫を叩いちゃったの…」

 相当後悔しているようだ。聞くと、彼女の妹が友人から飼い猫を1週間預けられたらしい。その友人というのは新婚旅行へ。ちなみに預かりギャラは1万円。とりあえずなだめてみる。

「ていうかさ、大丈夫だよ。すぐ忘れるって」
「忘れないよ! だって叩いたあと、目を真ん丸くして部屋の隅から私をじっと見て唸ったもの。自分で理解できない理不尽なことで叩かれたりすると、猫の心にすごく影響するのよ」
「じゃあ叩かなきゃよかったのに…」
「だって部屋にかけてあった私の服に飛びついて、高いところに登ろうとしたんだもの。とっさに近くにあったバッグで思いっきり叩いちゃったのよ」

 そりゃ猫もビックリするだろう。とはいえ、その場でわからせるのが大切。ビシっと言って聞かせれば、悪いことは悪いとちゃんと覚えるそうな。逆に後から教えようとしても、もう忘れちゃってるので叩いてもムダ。というか、それこそ猫の精神に悪影響を与えてしまう。猫にしてみれば、何で怒られているのかサッパリ分からないからだ。

 …そういえば。
 こないだ夜中に帰宅途中、近所の黒猫クロちゃんがニャンニャン鳴きながら近づいてきた。とっさに持っていたデジカメを構えて撮影したら、クロちゃんフラッシュにびっくりして可愛いポーズ取り忘れたの図(右)。トラウマにならなきゃいいんだけれど…

***

 トラウマといえば、角川Oneテーマ21新書、6月の新刊。

 「あの忌まわしい事件から2年、裁判に勝っても、私はまだトラウマと戦い続けている。」と語る、横山ノック セクハラ事件、原告女子大生の手記 『知事のセクハラ 私の闘い』 発売。

 その名も、『横山ノック事件原告 田中 萌子』さん。
 一瞬ネタかと思いました。ゴメンナサイ。戦い応援しています。クロちゃんと一緒に…



9 Jun 2001
Saturday

 キャップの後ろからポニーテイルを垂らした2人が、激しく打ち合っている。

 全仏テニス女子決勝。天才少女と呼ばれたジェニファー・カプリアティももう25歳。低迷期を経て完全に復活したようだ。一方のキム・クリスタース(=TV東京実況中継準拠。クライシュテルスとも。)は昨日18歳になったばかり。174cm 64kg、世界ランキング14位の新星ながら、立ち上がりやや硬めのカプリアティに堂々と立ち向かう。第1セットからブレイクしまくって、あっという間にセットをモノにした。

 テニスは不思議なスポーツで、競争競技と芸術競技の両方の性格を併せ持っているような気がする。確かに点数で勝敗の決まる競争競技なのだけれど、観客が四方を囲んで見下ろしている中で美技を披露し合う様は、フィギュアスケートなどに近い感覚もある。

 実際、観客は重要な存在だ。若さを武器に、思いっきりナイスショットを連発するクリスタースは、全仏ローランギャロスの観客を次第に味方につける。良いプレイには拍手が起こり、主審にクレームをつけるような選手にはブーイングが起きる。観客を味方につけることは大事なこと。どういうわけか、人はギャラリーに応援されると、ますます強さを発揮できるものだ。相手自身にではなく、相手を応援する大観衆の熱気に押されて負けてしまう例は、テニスに限らずサッカーのアウェイゲームでもよくあること。のみならず人生一般においても。

 もっとも、テニスの観客はマナーを心得ている。白熱のラリーが切れのいいスマッシュで決まった瞬間は大いに盛り上がるが、次のサーブの用意に入るとすぐに静まり返り、コートを静寂が支配する。試合中に何百回も訪れるこの静寂の一つ一つが、何とも言えないほど好きだ。身も心も引き締まる。

 第2セットは徐々に調子を上げてきたカプリアティが取り、第3セットはいずれも譲らずサービスゲームのキープが続く。このクラスの試合になると、基本的な技術にはほとんど差がない。サービス側が有利なので、後は打ち合いの中でどちらかのミスや焦りが積み重なってゲームがブレイクされ、セットが動き、試合が決まるのをひたすら待つしかない。

 …そして、永遠に続くかと思われた第3セット。
 結局制したのはカプリアティ。でもクリスタースもよく粘った。いい試合だった。


 スポーツの試合を観戦することなんて、時間の浪費だと思っていた頃もあった。でも今は違う。よい試合やよい演技を観ることは、よく生きることだ。そこに何らかの教訓を見出すのも、ただ贔屓の選手を応援するのも自由。少なくとも、スポーツ観戦を小馬鹿にするような人にはなりたくない、と思う。



8 Jun 2001
Friday

 『追伸…  私は純粋な菜食主義者で、絶対禁酒主義者です。』


 …はっきり言って、リアクションに困りました。だって日常生活でそんなFAX受け取らないでしょフツー。でも、相手がインドはデリーの高官とあらば、さして不思議なことでもなくて。ヒンドゥー教信者の皆様が牛肉を食さないのはご存知のとおり。ベジタリアンも決して珍しくはないのです。

 困ったのはむしろ、晩餐会の同席者がマレーシアのクアラルンプール市代表、すなわちイスラム教徒で豚肉がNGという点。まあ、ブタが不可なお方と肉類魚類一切アウトなお方をお招きするだけならまだ何とかなる。しかし残る出席者が韓国ソウル市高官であるという事実が、パズルの難易度に拍車をかけるわけです。焼肉とキムチを以って善しとする韓国高官に、完全ベジタリアンメニューはあんまりではないか。ただでさえ晩餐会前の会議では事前折衝でも埋められないほどの溝が見込まれるというのに、お野菜ばかりで気分を害されはしないだろうか。

 そんな私の心配と焦りなどつゆ知らず、主催者たる当社某副社長が 「テンプラなんかええかもなー」 と無責任にのたまひしかば、事務方血の気を失うことムンクの 『叫び』 の如し。だいたい、そんな調整をなぜ自分がやってるのかも謎ですが、いずれにせよ失敗はすなわち国際問題を惹起。イスラム教徒が大挙して押し寄せ 『剣かコーランか?』 と迫り、韓国高官は 『我々には北に力強い同胞がいる』 と某氏へのディズニーランド貸切り開放を要求し、デリー高官は非暴力不服従を叫んで座り込む事態を招いて私のクビが飛ぶ。

 流血の事態を見て小泉首相が泣き叫ぶ。『特攻隊の心意気を忘れるな! 今こそ立ち上がり国のために命を捧げよう!』  思考停止した支持率90%近い国民が、なだれを打ったように突撃していくさまを眺めつつ、地に倒れた自分の心をよぎるのは RUSH の "Manhattan Project" と "Territories" from "POWER WINDOWS"。人は決して学ぶということがないのか。それでも僕は最後までクリアな道、すなわち自由意思を選択するだろう…


 どこまでも膨らむ妄想をよそに、インドはデリーの高官から再びFAXが入った。


 『追伸   ただし、牛乳及び乳製品は大丈夫です。
        また、卵を直接食べることはしませんが、原型を留めない状態で
        含有されている分には構いません。具体的には、ゆで卵やオムレツ
        は不可ですが、アイスクリームの原料に含まれていても構いません』


 …事態は果たして改善されたのか、はたまた複雑化しただけなのか。

 来週予定の会合に向けて、心臓破りの丘を一歩一歩登っていくばかり。ピークは決して過ぎ去ることがない。賢人は言った。レースに残りたいなら、ペースをつかめ。生きることは、すなわちマラソンなのだから…


***

 某テキスト庵の「月間テキスト撰」リコさんにセレクトしていただきました。『プログレ者たち』 をご評価いただき、どうもありがとうございます! リコさんの「コビトノクニ」を読ませていただいて、R.E.M.の "Losing My Religion" が許せなかったあの頃をチラと思い出しました。いえいえもちろん大好きだったのです。ただ、聴くほどに人間が弱くなってしまうような気がして、そんな自分自身が許せなかったのでしょう。まだ青かったんだなきっと。

 今ですか? 人は弱いもの。正面から認めた上で、そんな人間そのものを受け止めるようになってきたかも。だんだんと。泣きたい時に泣き、笑いたい時に笑う。どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだろ。マイケル・スタイプの声が優しく、切なく響く今日この頃なのです。



7 Jun 2001
Thursday


 どうもトップページ及び Music ページへのアクセスが異常な伸びを示しているなぁと思ったら、あるサイトでご紹介してくださっていました。あの 『プログレ者たち』 のことを。

 その 『激流川下り(Damn That River)』 というページ、ご覧のとおりスゴイことになってます。ハードロック/へヴィメタル系の音盤感想テキストが豊富、というかマジで激流に呑まれて浮上不可。どこを切っても充実この上なしの迷路のようなサイトですが、こちらの管理人さんは Rush もお好き、特に "POWER WINDOWS" がとおっしゃるじゃありませんか。こんなところで同志に出会えて感激っす。

 そんな管理人さんに 「なんかこないだめっけて読んでる最中笑いっぱなしだった」 とご紹介いただければもう喜び爆発、小躍りして嬉しがっています。この程度でイってしまう自分こそまさに 『プログレ者たち』。しかし実際のところ、最大のポイントは「プログレ者たち」「ヘヴィメタ者たち」「チャートマニアたち」、はたまた「テクノヲタ」「似非 B-Boy たち」など、適当な任意の語句に置き換えても容易に文意が通じてしまうところにあるのではなかろうかと。まさしく数学的帰納法の原理、恐るべし音楽偏執狂の病理。

 まあそんなことはどうでもいいのでありまして、サイト運営者としては 『プログレ者たち』 が牽引車となって、あちこちからアクセスを集めてくれる、WINTER WONDERLAND における看板ページに成長してくれれば、何より嬉しいわけです。あたかも侍魂における 『先行者』 のように…

 …ん?
 『先行者』?




 ここでプログレッシヴすなわち progressive の語義は何であるか。
 研究社新英和中辞典第5版を引いてみる。

 「(段階的に)前進する、漸進する、進歩する、向上する、進行する…」


 そうそれはまさに先を行く
ことを指す形容詞。
 
 つまり 『プログレ者たち』『先行者』たちだったわけです。嗚呼、何たる驚天動地のスペクタクル! これぞ組曲構成を尊ぶプログレファンのハートを鷲掴みにする劇的展開! まるで "Learning To Live" の後半に "Wait For Sleep" のピアノイントロが飛び出して思わず「やられた」と膝を打ちたくなるような瞬間!(ってあんたプログレ者かい)

 何はともあれ、いつもお読みいただいている皆様の温かいご声援が何よりの励み。ありがとうございます。今後とも無断リンク大歓迎、むしろあちこちでご紹介いただきたく。
 ただしこのページ含む allnet.ne.jp のファイルは今週末にURL移転の予定ですのでご注意くださいませ。仕事のピーク越えたら、暖めてるテキスト一気にアップする予定です。



6 Jun 2001
Wednesday

 …何よりもまず癒しが恋しいのです。

 そんな甘い心に喝を入れる強気なユニクロ店長、弥永 利司さん。いい表情してますね。この人こそユニクロのトップ店長さん。月商1億円以上の店を2軒も切り回す離れ業。大手スーパーを退社してユニクロに飛びこんだ心意気が泣かせるよ。

「胃が痛くなるほど働きたかった」

 ああ素晴らしき哉商売人。しかも衣料品の経験もなかったと。トップへの秘訣を聞いてしびれます。「なぜ売れないのか。いつも疑問を持ち、答えを考え、それを本部に伝え、実行した」。

 たったそれだけのこと。だがそれをやる人とやらない人とがいると。人間には右脳タイプと左脳タイプがいるとか、几帳面やさんとズボラやさんがいるとかいろいろ言われますが、ありゃ全部ウソです。世の中の人間は2種類に大別できて、それは「やる人」と「やらない人」なのです。それが何であれ。

 癒されてるバアイではない。とりあえずしばらくの間は。

***

 ちょびっとだけ昨日の続きなんぞを。

「これ何? カニみそのとびっこ和えって」
「とびっこってカニの卵やろ。つまりカニづくしや」
「へえそうなん」
「だって他にもシシャモっ子とかあるし」
エビっ子もあるしな」



 …違う違う違ーう! そうじゃないですよお嬢様方!!
 とびっこはその名の通り トビウオの卵 です。ウソだと思ったらここをご覧くださいまし。しかしボケる余裕すらないまま「ふ、ふじっこ?」とか口をついて出てしまった哀れな子羊。お姐様方から下された冷酷な宣告は、

「… 今の、大阪やったら許されんで。」

 チビリそうでした。でも、とびっこネタばらされたくなかったらおとなしくしとき。もうバラしたけど。以上、約2名のお姐様に対する超私信。

 ところで昨日は全然触れる余裕がなかったが(だいたい昨日の日記を今朝7時半に書いてるようでは日記書きとして大物失格だよ)ご同席の某「c」氏の、相変わらずメチャ優しそうなスマイルで癒されてしまったことを書き添えておきませう。なぜならば、本年度約2回訪れる予定の、チョモランマの如く高くそびえる業務ピークに向けて、成すすべもなく突進していくばかりの今日この頃、自身も周囲もギスギスして殺伐化するばかりの今日この頃、何よりもまず癒しが恋しかったのです。

 そう、何よりもまず癒しが…  (⇒ 振り出しに戻って1回休み)



5 Jun 2001
Tuesday

 某お姐さま人脈から突然呼び出されて渋谷で飲む。仕事はそれどころではなかったが、有無を言わさず渋谷で飲む。男に二言はない。(←全然用法が違う)

 ちょっといろいろありまして、ナチュラルハイなモードで乗り込む。が、見事に玉砕。こなごなに砕け散った屍を拾う者もなし。お三方が関西人ないし関西起源の人とあらば、テンションに高いもユルイもないのです。敢えて拾ってみましょう。シカバネ火中の栗を。

「109のことを普通 『マルキュー』 って言わんやろ?」
「それ 『モロキュー』 に似とる」
東急の隠語かと思うた」
「それは丸に東って書くんや」
「告白することを 『告る』 とも言わんやろ」
「言わんなー」
「世代が違うし。だいたい「告る」なんてどこで使うんや。出会い系サイトか?」
「ラーメン屋とか」
「何でやねん」
「そういえば、ベトコンラーメンって知ってる?」
「スプリングスティーンにどやされそうや」
「いや由来を聞いたらビックリすると思うよ」
「何なん?」
「それがな、ベストコンディションラーメンなんやて」
「んなもん略すなよ〜」
「て優香、それを略すならベスコンラーメンだろ」
「あ、ホンマや」
「で、もぐらトーストって何なん?」
「ちゃうちゃう、『小倉トースト』 !」
「うわ、『もぐらトースト』 。想像してもうた。めっちゃエグ」
「このサラダの下に敷いてあるガーリック粉末みたいのがオガクズに見えてきた」
「うわ、これカブトムシの幼虫や」
「やめい!」
「あ。これ何?」

 サラダから出てきた金属片。それは金たわしのカケラなのでありました。有無を言わさず店員を呼びつけ、取り囲んで恫喝する4人の立派なオトナたち。

「あのな、コレ入っててん。どういうことや。人命に関わるでホンマに」
「…申し訳ありません…」
「なめとんのかオラ」(←ちょっとウソ)

 何事もなかったかの如く別のサラダに交換させ、宴は続く。恐るべし関西人。既に黒生/ハーフ&ハーフのジョッキは5杯目に向かう。しかし、このサラダ事件が効いたのか、この後我々のテーブルにはどうにもこうにもアヤシイ微笑(というより薄ら笑いだな)を浮かべた男店員がゾーンディフェンスで張りついてしまった。彼のヤバさについて語り出すと何日分もの日記のネタになりそうなので、この辺でやめとこ。ていうか素でヤバかったっす。

 コレに懲りずにまたお誘いくださいね(超私信モード)。



4 Jun 2001
Monday


 ニコラス・ケイジが苦手だ。

 理由なんてない。でも無理矢理こじつけるなら、フランシス・フォード・コッポラを叔父に持つその毛並みの良さ(ひがみです)と、濃いんだか弱々しいんだかよく分からないその風貌なんだろうか。だいたい、演じるキャラクターがケシカランものばかり。『フェイス/オフ』では冷酷なテロリスト、『コン・エアー』では人殺し(悪意じゃないにせよ)、『リービング・ラスベガス』では飲んだくれ、『パラダイスの天使たち』では強盗、『ワイルド・アット・ハート』その他刑務所上がりや強盗役がなんだか圧倒的に多いような気がする。

 しかし何を隠そう、自分の自慢はそんな虫唾の走るニコラス・ケイジ出演作を1本も観たことがないということなのだ。上に書いた映画も1つも観ていないぞ。



あーせいせいした。



 …とたった今まで思っていたのだが、何と! 恐ろしいことに、少なくとも3本はニコラス・ケイジものを観ていることが判明しました(泣)。

 その1:『バーディ』。そりゃ観るでしょ。マシュー・モディンのファンとしてじゃなくて、ピーター・ゲイブリエルのファンとして。観るというより聴く、か。ベトナム絡みの重い映画なのは確かだけれど、爽やかな後味を残してくれますね。

 その2:『ランブルフィッシュ』。えっ、出てたっけ? 全然記憶にないなぁ。どうせフランシス・コッポラ監督のコネ出演だからよしとするか。この頃のマット・ディロンとダイアン・レインは荒削りながらも、やっぱり若さでしか演じられないモノがあって素敵。ミッキー・ロークについて言いたいことは山ほどありますが、やめとこ。

 そしてその3は、その3は… 『初体験 リッジモント・ハイ』らしいっす(笑)。いやマジで82年の風を感じたければ必見の学園モノ、初期ショーン・ペンや可愛かったフィービー・ケイツ見てるだけでも楽しめます。

***

 夢に出てきそうでコワイもの。それはやっぱりニコラス刑事
 まさかと思ったけどあるんですね。『貴女に降る夢』とか。『フェイス/オフ』も入れ替わってからはある意味ニコラス刑事なわけで。ああこの世に神はいないのか。




3 Jun 2001
Sunday

 最近スポーツ関係で話題になったのは次の2つでしょう。1つは大相撲夏場所千秋楽、貴乃花について。もう1つはヤクルト藤井投手の 『暗黙のルール』 問題

 貴乃花の方からいきますと、小泉首相も絶叫したくらい、怪我に耐えての優勝に対して感動した人も多いとは思います。一方で、全力を出さなかった武蔵丸のフェアプレー精神を称える人や、むしろ貴乃花は休場すべきであったとおっしゃる方も現れる始末。そんなこと言ったって、本人が自由意思で出場しちゃったのだから、今さら「べき論」を振り回してみてもしょうがないのであります。怪我して引退なら、それもまた自己責任で引きうけるしかないのです。

 出てきてしまった貴乃花と、対戦しないわけにはいかない武蔵丸。いくつかの勝敗パターンは考えられましたが、結果から言うとあの形に落ちつかざるを得なかったのでしょう。あれで正解です。あれがオトナです。場外でアレコレ言うのはいかがかと。ともかく優勝の瞬間の表情は絵になりました。瀕死の日本相撲協会、窮鼠猫を噛みましたなこれは。

 もう片方のヤクルト藤井投手の件も何だかなー。巨人戦での勝負の行方がほぼ決まった後で、藤井がヒットを狙って全力疾走し、巨人ファンから 『野球の暗黙のルールを知らんのか!』 と野次られた、というアレ。こっちについては、死者を鞭打たないという暗黙のルールの是非云々、藤井の行為の是非云々、巨人ファンのマナー云々のはるか前のところで、この野次に傷付き、ボロボロに打たれた後で涙を浮かべ、「僕は暗黙のルールを破ってしまったのでしょうか…」と語った藤井選手そのものがいちばんヤバい。

 破ったかどうかなんぞ気にせんでもええから、まず投げ切って勝ちたまへ。相手ファンのヤジをいちいち気にしてたら精神もたんぜよ。気の抜けた消化試合を見せられるくらいなら、点差がついてても最後まで全力投球の方が嬉しい自分。だいたい、巨人ファンにしてみても、どうしようもない負け試合だと分かったら、野次なんか飛ばさずさっさと見切って球状を去り、冷たいビイルを飲みに行くという選択肢があるんだから。

 どんなに好きなもの/こと/ヒトでも、それくらいの距離は置いて付き合いたい。醒めてると言われればそれまでですけれど。



2 Jun 2001
Saturday

 友あり遠方より来る。また喜ばしからずや。孔子さまのおっしゃるとおり、実に楽しいことでした。意外なことに、渋谷の夜の人通りが少なかったのですが、あれはサッカーの影響だったのかしらん?

***

 それとは別に、昨日の話を。ちょっと煮詰まりかけていたので、京王線での帰り際、普段めったに降りない駅の周りを散策してみました。まずは笹塚駅。

 ここにはちょっとした思い出があります。あれは確か89年の7月頃。大学1年生だった自分にとって初めてのアルバイトでした。衆参同日選挙の世論調査 by 朝日新聞社。割り当てられた名簿にしたがって1軒1軒訪問し、投票に行くかどうかや支持政党などをお尋ねしてまわったのです。予想どおり、大方の家では冷たい対応でした。「うちは朝日読んでねえんだよ、帰れ!」と言われて追い出されたところもありました。

 そんな中で1軒だけ「お疲れさま。私もマスコミ勤務だから調査の大変さは分かるつもりです。協力しましょう」とおっしゃってアンケートに答えていただいたところがありました。「さあ、どうぞ」と玄関口でその綺麗なお姉さんに出していただいた1杯の麦茶の美味しさは、今でも忘れることができません。

 そんな笹塚も、12年も経ってずいぶんごちゃごちゃしてきたようです。不動産屋さんの前に立って物件情報をながめると、自分が住むにはちょっと高めのお家賃のところが多いみたい。ちょうど夕食時だったので、商店街のちょっと裏にひっそりとあった中華料理屋さんに入ってみました。テーブルも椅子も内装全体も、年季を感じさせる昭和40年代風そのまんまの古そうなお店。ひそかに人気店のようで、近所の人と見える皆さんで賑わっています。五目あんかけ焼きそばを頼んでみましたら、大きなお皿に盛られた焼きそばに、大根の味噌汁がついてきました。文句なしの美味しさ、たいへん気に入りました。

 食後、ファーストキッチンでブレンドコーヒーと白玉あずきソフトみたいなデザートを頼んだら、店員がお金の計算を間違ってました。半分くらい食べたところでなぜか突然気付き、一応尋ねてみたら先方の単純ミスで37円返してくれました。なんだかちょっとセコい自分。

 電車に乗りましたが何だかまた降りたくなり、今度は八幡山で降りてみます。ここはあんまり見るべきものがなくて、はっきり言ってドン・キホーテに入るのみ。相変わらずごちゃごちゃした宝探し風の店内をひととおり眺めてます。店内のあちこちに置かれていて印象的だったのは、お風呂がゼリー状になる入浴剤。今流行っているみたいですね。購入するまでに至らず、夜風に吹かれながら再び電車に乗って帰りました。

 たまには寄り道もいいね。



1 Jun 2001
Friday

 今日から6月。3タイプある勤務時間帯のうち、もっとも早い08:30-17:15にシフト。出勤時間も早くなる。

 それはある意味新鮮な体験

 早朝の世田谷。
 駅へ向かい軽やかに歩く。
 爽やかな風。
 澄みきった青空。
 いつもと違う街の風景。
 いつもと違う電車内の女の子たち。


 それはある意味新天地





 …隣に口の臭いオジサンが立ってなければな。


 口臭は一種の公害なのではないでしょうか。
 百歩譲って人の五感にブレがあることは認めましょう。つまりある人にとっての悪臭は別の人にとっての芳香。逆もまた真。短い人生、ゆすりゆすられ譲り譲られ生きるべし。

 しかし今朝の口臭はあんまりではなかったか。
 タバコとコーヒーと、その他モロモロの悪臭成分が混ざり合い、発酵し、異臭ガスとなって周囲に拡散していたのですから。これはもはやエチケットの問題。否、マナーの問題。否否、人間の実存に関わる根本的な重大問題であります。もし内臓の病気とか、やむを得ない理由で口臭を発していらっしゃったのなら御免なさい(って変な敬語使いだが)。

 ところで不思議なことに、口臭オジサンの多くは既婚者。これ見よがしにリングなどしてたり。可愛い奥様はダンナの口臭が気にならないのか。ひょっとして奥様にとってはよい香りだったりするのか。どこまでも熱いキスを交わしたりするのか。まさに愛の力恐るべし。ここで『あばたもえくぼ』に代わるべき新たな諺を提唱したい。


 『口臭も芳香』


 しかしひょっとすると単に奥さんや娘にケムたがられ、「近寄らないで!」などと言われて相手にされないため、自分の口臭のひどさに気付く機会すら失っているのかもしれず。

 …痛い。

 でももっと痛いのは、



 ひどい口臭、
 かつ既婚者を装ってリングだけしてる
単身者


 っていうかこんな日記書いてる自分がいちばん痛いのは間違いない。

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