●ウィンドシンセサイザーとしての「FM音源のはなし」

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■はじめに

 こちらでは、初代ウインドMIDIコントローラー=WX7の推奨音源となった、DX7やTX802またはTX81Zなどに搭載された「FM音源」についてお話したいと思います。
 しかし、僕自身は“単なる音楽好きの素人”ですし、FM理論やその歴史などに関する専門書などは読んだ事もありませんので、これからお話する内容は僕の経験や主観によるものがほとんどです。
 ですから、より詳細な話は出来るだけ他のシンセマニア系サイトや書籍に譲る事にし、FM音源をウインドシンセで鳴らす場合や音づくりに関する必要最小限の基礎的内容に止めたいと思います。
 やはり、「JWSA」らしくウインドシンセに関わる内容を中心にお話を進めたいと思っていますからね(笑)。

 尚、こちらをご覧になっている方がお持ちのFM音源シンセと「内容が一致しないゾ?」とお思いになる場合があるかもしれません。
 これは、僕が所有しているFM音源シンセがTX802のみで、お話する内容が6オペレータ式FM音源に関する記述が主になることが理由になるかと思います。その点はご容赦ください。
 もちろん4オペレータ式FM音源にも6オペとは違った機能や魅力がありますから、ぜひTX81ZやWT11などをお持ちの方々による追記をお願いしたいと思っています。
 又、SY77/TG77で採用された、FMをより発展させたAFM(アドバンスド・FM)には触れていません。

 

 

■まずは軽くかじってみよう!FM音源のお話

【DX7】
 FM音源を搭載したシンセサイザーと言えば、ご存じ「DX7」ですね。
 「DX7」。世界に誇る日本の楽器メーカー“ヤマハ”から発売された名器中の名器です。
 今では「実物を画像や写真でしか見た事ない」とおっしゃる方もいるかも知れませんが、61鍵のキーボードを収めたボディ(筐体)にスチール(鉄板)を使い、色もありがちな黒ではなく濃い赤茶色で、ツマミ類の突起物がまったくなく、タッチスイッチがズラッと並んだその風貌は当時としてはかなり個性的でした。
 音も従来のアナログシンセとは一線を画し、シャープでキレがあり、なによりデジタルシンセの最大の利点とも言える抜群の音程の安定性とMIDIへの対応が売りでした。
 それまでのアナログシンセは電圧の変化や熱に弱い事から、動作や音程の安定度が低く、機種によっては冷却ファンのノイズが結構耳ざわりでしたが、DX7はとっても静かでした。これは個人的にもとってもうれしいことでしたね。
 これら革新的な機能を持ったDX7は、プロ・アマ問わず世界中の多くのミュージシャンを魅了し大ヒットしました。
 「DX7が売れた事」は後のデジタル楽器普及へのカンフル剤ともなり、結果としてウインドシンセ=WX7開発への予算的余裕を生んだ事が考えられます(これは僕の勝手な推測ですが・・・)。現在のWXプレイヤーにとっても、DX7のヒットは感謝すべき出来事だったかもしれませんね。

 ちなみに「WX」というネーミングですが、このDX7にはじまるヤマハのデジタル楽器「X」シリーズからだそうです。おそらく“Wind(管楽器)の「W」+Xシリーズ“と言うことなのでしょうね。ただ、実際にはウインドコントローラーの構想は別にあって、商品のシリーズ性を統一させるためにXシリーズに組み込んだ・・・なんて話もあるようです。(大脇さん情報感謝です!)

 

【TX802】
 
DX7の大ヒットを受けて、FM音源を搭載する様々な機種が登場しました。
 初代DX7の後継機であるDX7-2D/FDには、初代DX7にはない2音色同時発音機能(デュアル/スプリットモード)が追加されました。
 これは大変に素晴らしいことで、FM音源の音色バリエーションを簡単に増やすことができ、楽器としての可能性を飛躍的に向上させたものでした。
 その後、更に同時発音できる音色数を最大8音色に増やして登場したのが、初代ウインドMIDIコントローラー=WX7用推奨音源としての位置づけでもあった「TX802」です。
 TX802の“8音色同時発音”は、コード演奏こそ2声までに制限されますが、元々ウインドシンセがワン・ノートで演奏されることを考えると、その内容はDX7×8台分に相当し、それまでの単体FM音源シンセでは難しかったブ厚い音を簡単に得ることができる他、複数の音色を交互に発音させたり、音域で音色が異なる楽器のシミュレーションなど、様々な機能で刺激的な演奏を可能にしました。

 尚、ここで紹介したTX802を含むFM音源シンセの画像は、「電子楽器博物館」(館長さま、ご協力感謝です!)で見ることができます。

 

【FM音源=難解なシンセ?】
 
DX7の発売当初は、音作りにおいてオシレータやフィルターといった概念が無く、アナログシンセによる従来の音づくりの手法がほとんど通用しない事から「こりゃ難解なシンセだなぁ・・・」とのレッテルを貼られました。
 しかし、発売とほぼ同時に普及しはじめたMIDIとその関連技術によって、機種間の音色データの互換が実現し、ROMカートリッジを媒体とした音色データのやりとりも可能にしました。
 これは非常に画期的な出来事で、「音づくりなんてワカンナイよ〜」と言うユーザーの方々にとっては大変心強い事でした。だって市販された音色ROMデータを買えば、簡単にプロが作った「良い音」を手に入れられたワケですからね(笑)。
 この状況は「FMシンセ=難解なシンセ」というレッテルを払拭するに充分なものでした。

【FM音源の魅力】
 
FM音源の魅力・・・僕は下記ふたつを挙げることができます。

 まずは、多彩な音色をつくり出せる無限の可能性でしょう。
 現在、普及率が最も高いと考えられるPCM音源シンセの出せる音色の数=内蔵波形の種類数・・・とすれば、FM音源は間違いなくその数を上回る音色を作り出すことが出来ます。
 FM音源というものは、今では少々古いイメージがしますが、楽器としては唯一無二の音を出せるという非常に重要な要素を持っているのです。

 そして、ダイナミックレンジの広さも楽器として大切な部分ですね。
 繊細でソフトな音色から荒々しいノイズ混じりの割れた音まで、ひとつの音色で表現できる幅はとても広く、ウインドシンセ用に使う(ブレス・コントロールする)とその特徴をはっきりと感じることができます。

 

 

■FM音源に関する基礎知識

 ここでは、音づくりをする上で知っておいた方が良いと思うFM音源に関する知識を、いくつかまとめておきます。
 FM音源をお持ちでない方には少々難しいと思われる部分もありますが、「いつかFM音源を手にした日」の為に(笑)、どうぞおつきあい下さいませ。

【特徴】
 
一般にアナログシンセの音づくりは、元波形をフィルターによって倍音を削って加工しますね(倍音については、後ほど説明します)。
これは最もポピュラーな音づくりの方法と言えます。最近のPCMシンセもこの方法を摸したものがほとんどです。
 しかし、この方法は元波形に含まれる以上の倍音の発生が不可能なことを意味しており、波形そのものが音色のキャラクターを決定づけてしまうという制約を自らが持っていることになります。

 これに対し、FM音源はアナログシンセやPCMシンセの様に元波形を加工する為の「フィルター」という概念が存在しないので、”倍音を削る”ことをまったくしないのです。
 ”倍音を削る”のとは逆に”倍音を加える”のがFM音源の特徴で、その結果いくらでも倍音を発生(波形を合成)できるわけで、理論上どんな音でも出す事が可能なハズです。
 「じゃ、リリコンみたいなアナログシンセの音も出せんの?」と聞かれそうですが、なかなかそうは行かないのが面白い所です。
 やはりアナログシンセはその動作の不安定性が”いい味”になっている場合が多いので、デジタルシンセが正確な音程を保つ事を追求した結果、FM音源もその”いい味”を出す事は逆に難しくなってしまった・・・というのが現実です。
 結論としては「それらしい音は出来るが追求し出すと、その設定はすごくメンドウだ」・・・です。

 しかし、FM音源にはFM音源でしか出せない音色があります。
 実際の音色の特徴を言えば、やはり一般的によく言われる様に、シャープでキレが良く金属的な響きを持つ音色が得意です。有名な「DXエレピ」などは、まさにFM音源の特徴を生かした複雑な倍音構成をもった音色と言えるでしょう。
 ウインドシンセに向いた音色で言えば、金属製リードをもったハーモニカや乾いた感じのフルートをイメージするシンセリード音、それにアナログシンセでいう矩形波っぽい音色や人声フォルマントを摸した音などが挙げられるでしょう。

<倍音>
音色を決定づける要素のこと。
ほとんどの音には、演奏した音程(=基音)以外に、高い周波数を持つ音が含まれており、これを倍音と呼びます。
倍音を含む音色をより詳しく説明するならば、基音上に様々な音程による波形が複数重ねて、それを一度に鳴らしている・・・と言えます。
ほとんどの人間は、その複数の音程が鳴っている状態を耳にした時、それをひとつの音色として感じ取っているわけです。
倍音と呼ばれる波形は、意外と単純なサイン波でしかなく、音色にとって重要なのはどんな音程がいくつ・どのように重なっているか?なのです。
ちなみに、基音と倍音を音そのものの違いで比較すると、下記の様な違いがあります。

 

【仕組み】
 それでは、FM音源の仕組みをキーワードに沿って見ていく事にしましょう。

(1)オペレータ
 
音を発生させる為の最小単位です。
 波形を出力する発振器と音量を調整するアンプのワンセットでひとつのオペレータと考えて下さい。
 オペレータは正弦波という単純な音しか出ない波形しかもっていませんが、オペレータ同士の波形を掛けあわせることで相互に影響しあう状況を作りだし、複雑な倍音構成を生み出すことができるのです。

(2)アルゴリズム
 
オペレータの組み合わせ方の事です。
 アルゴリズムにはオペレータの数によって下記の2種類があり、FM音源の方式を大きくふたつに分類する場合の条件でもあります。

「4オペレータ式」・・・ 4つのオペレータを持つFM音源を指します。アルゴリズム数は8。
(対応機種:DX9、DX27、DX21、DX100、V2、V50、TX81Z、初期EOS)
「6オペレータ式」・・・ 6つのオペレータを持つFM音源を指します。アルゴリズム数は32。
(対応機種:DX7、DX1、DX5、TX7、TX816、DX7-2FD/D、TX802)

 オペレータの数が増えればアルゴリズムの数も増えるので、6オペレータ式は4オペレータ式より複雑で自由度の高い音づくりが可能だと言えます。
 しかし、V2やTX81Zなど一部の4オペレータ式FM音源には、オペレータで作り出す波形を8種類選択できる機能があり、これらの機種は6オペレータ式では出せない音を作りだすことも可能です。

(3)ボイス
 
演奏が可能な音色プログラムの最小単位で、複数のオペレータをアルゴリズムによって組み合わせたものが、ひとつのボイスとなります。
 FM音源では音色へのブレス(息)による感度調整はこのボイス単位で行いますので、ウインドシンセとしてFM音源を使う場合に頻繁に見るのが、この「ボイス」への設定(ボイスエディット)でしょう。
 このボイスへの設定パラメータについては、後述する「
■ウインドシンセでFM音源を鳴らす→【コントロール系パラメータ】」を参照してください。

(4)倍音加算
 
オペレータが並列に置かれたアルゴリズムにおける音づくりの方法を指します。
 音程や音量の異なる音を合成することで様々な音色を得る方法で、ハモンドオルガンと同様の考え方と言えます。

(5)周波数変調
 
オペレータが直列に置かれたアルゴリズムにおける音づくりの方法を指します。
 オペレータ同士の周波数比やアウトプットレベルを組み合わせて音色を得る方法で、その役割によってオペレータの呼び方を下記の様に変えています。

「モジュレータ」・・・ 信号の流れの上流側のオペレータを指し、音の倍音構成(音色)を決定する部分です。
「キャリア」・・・・・ 信号の流れの下流側のオペレータを指し、音の音量を決定する部分です。

 モジュレータとキャリアの周波数比が大きくなるほど高い周波数帯の倍音が発生し、モジュレータのアウトプットレベルが大きいほど多くの倍音が発生させることができるので、ブレス・コントロールに関する設定をするには、音色への効果を得るならモジュレータ、音量への効果を得るならキャリアにおける感度をそれぞれ設定することになります。
 ただし、音量だけのコントロールを狙う場合、アルゴリズムにおいて一番下のキャリアでの感度を設定しますが、そのオペレータはひとつとは限らないので注意が必要です。(6オペレータ式の場合、最大6個)

 ちなみに周波数変調は英語で「フリケンシー・モジュレーション(Frequency Modulation)」と言い、FM音源の名前の由来であり、FM音源独自の音づくり手法でもあります。

(6)パフォーマンス
 
複数のボイスを組み合わせて、様々な効果を得るためのモノです。
 初代DX7では単音色=ひとつのボイスのみでしか演奏できないので、このパフォーマンスという概念はありませんでしたが、DX7-2FD/Dでは2つ、TX802では8音色まで同時に鳴らすことができるようになりました。
 パフォーマンスでは、単音色=ひとつのボイスのみで使う事ももちろん可能ですが、ボイス同士のデチューンや異なる音程で鳴らすことができるノートシフト(トランスポーズ)などの機能を用いて、より厚みのある音を出したり、複雑でトリッキーな音色変化を得る事ができます。
 又、パフォーマンスでは様々なコントローラーに関する設定や、後述するマイクロ・チューニングなどの設定も行います。

 

 実際にはもっと多くのパラメータがありますが、それらの細かいパラメータは音源を操作する都度覚えて行けばいいと思います。
 ウインドシンセ用にFM音源を使うには、おおむね上記したキーワードとその役割を知っておけば良いでしょう。

 

 

■ウインドシンセでFM音源を鳴らす

 さて、いよいよウインドシンセでFM音源を鳴らすお話に移しましょう。

【ブレス関連設定の基本】
 
FM音源をウインドシンセ用として使うには、やはりブレス関連の設定方法を知る必要があるでしょう。まずは、その考え方をまとめておきます。

(1)ベロシティによる強弱は無効にする!
 
「ベロシティ」とは直訳すれば“速度”のことですが、一般にはキーボードによる打鍵強さを意味するようですね。
 キーボードの打鍵とはシンセが発音する瞬間の動作を指していますから、ベロシティによるコントロールは音の出始めのみに影響することになります。
 ベロシティは音の出始めに音量や音色を決定するものなので、発音後も音量や音色を変化させる為にウインドコンローラーを用いる場合、発音後のコントール(いわゆる吹奏感とでも言いましょうか)に不自然さを感じます。
 例えば、軽く吹いたつもりでも突然音量が最大になってビックリしたり、発音後に顔が真っ赤になるくらい息を吹き込んでも音量が上がらない・・・などの現象を引き起こします。
 つまり、自然な吹奏感を得るためには、ベロシティは無効にした方が良い・・・と言うことです。
 FM音源ではベロシティの効果を無効にするには、ベロシティセンシティビティ値をゼロにします。
 ただ、音の出だし部分を強調する必要がある場合や、管楽器風音色以外(ギターやベースなどの音色)をウインドシンセで鳴らす場合などは、この限りではありません。

(2)エンベロープはストレートにする!
 
上記同様にブレス(息)で自然な吹奏感を得るには、音源側でエンベロープに凝らず、設定値としてはアタックからリリースまで、オルガンの様なストレートなものが良いでしょう。
 よくリアルなブラス音色をブレス(息)でコントロールすると、なんだか立ち上がりが遅く(または弱く)感じてしまうことがあります。それは音色の設定がエンベロープ+ベロシティによって得られる場合を、最良としていることがほとんどだからです。
 できる限りエンベロープはストレートにすることをオススメします。

 (1)、(2)に共通して言えることですが、ブレス(息)による強弱=音の強弱となる様にするには、プリセット音色など音源側の設定で”自動的”に行われる、強弱に関する設定には凝らない方が良いということです。そうすることで、より「ウインドシンセらしい音」が得られます。

 

【コントロール系パラメータ】
 
FM音源をウインドシンセ用に使うなら、ブレス(息)による音量・音色変化への感度設定がどの程度可能なのか?は、とっても重要なことですね。
 ここではFM音源をウインドシンセに使う際、僕が最も頻繁に見る機会が多い、コントローラー系パラメータを紹介します。
 FM音源では主にモジュレーション・ホイール(
CC#1)、ブレス・コントロール(CC#2)、アフタータッチ、フット・コントロール(CC#4)といったコントロール・チェンジを受信し、下記パラメータの設定によって、外部機器からの操作によるビブラート、トレモロ・ワウ、音量・音色、音程への感度を任意に決めることができます。

(1)ピッチ・モジュレーション・デプス(Pmod)
 
外部MIDI機器によるビブラート(音程の周期的変化)効果深さを決めます。

(2)アンプ・モジュレーション・デプス(Amod)
 
外部MIDI機器によるトレモロ・ワウ(音量の周期的変化)効果深さを決めます。

(3)イージー・バイアス(EGbias)
 
外部MIDI機器による音量・音色への効果深さを決めます。
 僕がウインドシンセ用にFM音源を使う場合、ブレス感度の調整は、ほとんどこのパラメータで行います。但し、その為には後述するアンプリチュード・モジュレーション・センシティビティ(AMS)を最大に設定しておくのが良いでしょう。

(4)ピッチ・バイアス(Pbias)
 
外部MIDI機器による音程変化への効果深さを決めます。

(5)アンプリチュード・モジュレーション・センシティビティ(AMS)
 
外部MIDI機器からの動作やLFOの設定を基にする、上記パラメータ(1)〜(4)への感度を決定します。
 尚、このパラメータの設定値が0の場合、前述したパラメータ(1)〜(4)による効果深さが、無効になってしまうので注意が必要です。
 使用例としては、お気に入りの音色が、もし特定のアルゴリズムを持つものであるならば、ブレスによる効果をある程度前述したイージー・バイアスでオペレータごとに詳細に決めておき、おおまかな設定をこのパラメータで決めることで、ブレス感度の調整を簡単に済ますこともできます。

(6)ピッチ・モジュレーション・センシティビティ(PMS)
 
外部MIDI機器からの動作やLFOの設定を基にする、ビブラートの効果深さを決めます。但し、このパラメータにおける設定は全オペレータ共通の効果となります。

(7)ベロシティ(Velocity)
 
ウインドシンセでは音量・音色コントロールを純粋にブレス(息)によって行いたいので、ベロシティ(打鍵による強弱)の感度を上げることは少ないと思います。
 しかし、FM音源シンセはほとんどがキーボード用に設定されたプリセット音色を内蔵しているので、それらをウインドシンセ用として修正して使うには、このベロシティ値をゼロ(無効)にする必要があります。ですから、このパラメータの所在は知っているべきです。

 

【その他のおもしろパラメータ】
 
ウインドシンセにどうしても必要なモノではありませんが、FM音源には創作意欲のわきそうなパラメータがいくつかあるので、ついでに紹介しておきます。

(1)ランダム・ピッチ
 
発音ごとに音程が不規則に変化する機能です。デチューンやLFOと組み合わせて、アナログシンセをシミュレーションするのに使えそうですね。

(2)マイクロ・チューニング
 
普通、電子楽器は1オクターブを正確に12分割した調律=平均律を用いていますが、この機能は平均律以外の調律(例えば”ピタゴリアン”などの古典調律や、ガムランなどの民族楽器の調律)を設定できます。
 その設定によっては、どんなにメチャクチャな演奏をしても「なんとなく南国風だ〜ラララ〜♪」と聴こえる音楽ができちゃったりします(笑)。

(3)オルタネイティブ・アサイン
 
これはTX802独自の機能で、複数の音色を発音ごとに発音順番を決める機能です。
 単に異なる音色の発音を順番に繰り返してもいいですが、ノートシフト(トランスポーズ)やデチューンを組み合わせると、より複雑な音色・音程変化を得られます。
 かの
マイケル・ブレッカーのサイトでは、TX802に関してこの機能を駆使した設定例が載っています。

 

 

■WX用の市販音色データについて

【市販データ】
 ウインドシンセは生の管楽器との持ち換えで使うことを目的に購入した方は多いと思います。ゆえに「シンセの音づくりなんて、さっぱりワカラン」とおっしゃるWX7ユーザーも多かったはずです。
 そんな方々の要望もあったのか、推奨音源であるTX81Z/TX802に限り、WX7用音色データが市販されていて、我々アマチュアでもプロの手による音色データを手に入れる事ができました。参考として品番を記しておきます。

●YAMAHA WDB 01/FOR TX81Z(TX81Z用データテープ、定価/\2,800)
 
一般に売られているカセットテープを利用した音色データ(64ボイス+48パフォーマンス)。
 普通のラジカセでも使えたのですが、僕はこの為だけにNECの”データレコーダ”を購入しました。「ピ〜・・・ガ〜・・・」という音がもれ聞こえるあたりが、今ではなんともレトロチックですけどね(笑)。EWI1000用音源=EWV2000の音色データの保存にも、このデータレコーダを利用します。
 ちなみに、WX7にはこの市販データとは違うデータテープが、解説ブックと共に付属していました。

●YAMAHA WDB 02/FOR TX802(TX802用ROMカートリッジ、定価/\12,800)
 
DX7-2のボイスROMデータカートリッジを利用したモノ(128ボイス+128パフォーマンス)で、上記したデータテープよりは随分と手軽に音色データのロードが出来ました。
 ちなみにパフォーマンスを除く単音単位(=ボイス)ではDX7シリーズとの互換があります。

 これらデータによる肝心の音色ですが、いわゆる「リリコンやEWIっぽい音」はありません。
 「プロが作った音だから」と理由で、こういった音色を期待するとちょっとガッカリします(笑)。
 管楽器系音色を摸した音色はもちろんありますが、むしろ複数音色を同時に鳴らすことを前提にしたTXシリーズ独特のパフォーマンスやスプリット機能を駆使したデータで、WXのMIDIコントローラーとしての可能性を体感できる・・・というモノですね。
 これらの音色は、もちろんWX11やWX5、それにEWIでも使えます。興味がある方はお探しになってみては?
 僕が購入したデータテープとROMカートリッジは、TX81Z×2台を中古市場に手放した時、いっしょに売ってしまったので、もしかしたらこちらをご覧のどなたかが手にされているかも?(笑)

 尚、ROMカートリッジについて、DX7-2と初代DX7とはカートリッジのサイズが異なる為、初代DX7用のボイスデータをDX7-2D/DX7-2FD / DX7S/TX802に流し込むには、下記の別売りアダプターが必要となるので、品番を載せておきます。(もちろんMIDI経由ならば、こんなモンは不要です)

●カートリッジアダプター=品番:YAMAHA ADP1
 
1997年カタログでは既に「在庫稀少品」との記述があり。今では入手困難か?

 

【おすすめROMデータ】
 
上記した専用ROMを買って”ガッカリした方”の為に(笑)、僕のおすすめROMデータを紹介します。
ウインドシンセ用ではありませんが、EGバイアス(ブレス感度)などをチョット修正するだけでも結構使えますよ!

●向谷実ROM(DX7用、発売元:リットーミュージック、定価¥9800)
 
初代DX7用なので単音色(ボイス)単位のみのデータとなり、全部で64音色分入っています。
 向谷実氏ご本人による詳しい解説も楽しいのですが、音色自体も素晴らしく、存在感は「さすが!」の一言で、これらのデータのおかげでFM音源を手放せない・・・と言っても過言ではありません。
 実際のレコーディングやライブで使われた音色も多くあり、昔のCDを聴くと「あ、向谷ROMの音だ」と分かるものもあります。
 本来キーボード用のデータですが、シンセブラス/リード/ボイス系音色などの持続音が半分を占め、ウインドシンセ用に使えるものも多く入っているので、僕の大切な一品となっています。
 尚、DX7-2やTX802には別記したアダプターが必要となります。

●BO TOMLYN ROM(ボー・トムリン、DX7-2用、発売元:リットーミュージック、定価¥11800)
 
こちらはDX7-2用ですから同機種をお持ちの方でしたら、デュアル音色を楽しめると思いますが、僕はTX802しか持っていないので、”ボイスのみ+独自のパフォーマンス”で使用しています。
 これもキーボード用なので、オルガンやストリングス音色が多いのですが、ウインドシンセ用としては特にパンフルート音色が使えますね。
 FM音源にしか出せない独特のパンフルート音色で、おそらくVA音源では無理だと思います。この音に深いディレイをかけると、大変気持ち良くトリップできます(笑)

 ちなみに、プロフィールによるとこのボー・トムリン氏、ヤマハ製シンセ=DX1/5/9/21/27/100、RX5/11/15の内蔵音色を作成した方だそうで、シカゴ/ドナルド・フェイゲン/デビッド・フォスター/フリオ・イグレシアス/アル・ジャロウ/モーリス・ホワイト・・・などエラく有名なミュージシャンのプログラマーで、どこかの大学の名誉教授だそうです。
 パッケージに「史上最強のマニピュレーター」と書いてあります。←僕はコレで購入しました(笑)。

 いずれもDX7-2発売当時(1990年あたり)に購入したものですので、現在手に入るかは不明です。

 

 

■おわりに

 どんなシンセサイザーにも言える事ですが、その機種にはその機種でしか出せない音があり、その個性に新旧の優劣の差はありません。
 特にこちらで紹介したFM音源は、非常に多彩な音色を作り出せることから、その多面性ばかりが注目されましたが、実は揺ぎ無い個性を放つ独特の音源システムであり、誕生以来多くのアーティストによって愛され、そして奏でられて来ました。
 FM音源は、これからも楽器として将来の音楽シーンを彩り続けていくでしょうし、僕自身もこのFM音源と出会った時のトキメキを胸に(笑)、FM音源との付き合いを続けて行きたいと思います。

 

 尚、今回は時間の都合でカットしましたが、下記内容も練ってみたいなぁ・・・と思っています。

■いろんなウインドシンセでTX802を鳴らしてみた!
 
EWI/WX両シリーズで鳴らす場合の設定方法や僕の所感などです。

■音色データ公開!(ソロパート音色編)
 
僕の大切な財産ですが・・・ちょっとだけヨ(笑)。

■音色データ公開!(おどかし音色編)
 
FM音源ならではの、インパクトのある音色を紹介!(予定:オーケストラヒット、「ミョ〜ン」な効果音、「FM音源がしゃべる?歌う?」・・・など)

■他のシンセとの相性を探る!
 
他のウインドシンセ用音源(EWV2000、EWI3020m、VL70m)とのレイヤーサウンドの可能性を追求することと、プリセット同士の参考例を考えてみたいと思います。

■FM音源にまつわる思い出ばなし
 
要するに僕の個人的雑談ですね(笑)。

 

以上。


●ウィンドシンセサイザーとしての「FM音源のはなし」

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