Essay
第三回:徹夜、一夜漬けの意義
僕はよく徹夜をする。
よく、といってもしょっちゅうしているわけではなくて、テスト期間中に一度か二度するという程度だ。
僕は元来、一部の興味ある物事(音楽とか文学)を除いては、やらなくてはいけなくてもなかなかやらずにギリギリまで放っておくタイプなのである。
現に今、12/6 19:57の時点で明日の科目である英語Wについて、全くやっていない。そもそも何故僕はテスト期間中にエッセイなぞ書いているのだろうか。
まあそれはいいとして、徹夜である。
僕とその友人、MとOは大体前日(正確には当日の場合も多い)から勉強を始める。
Oはちゃんと徹夜をしているみたいだけれど、僕とMは大体夕方から十一時くらいまで眠る。この、寝ている時間って、大体勉強を始める当日零時から学校へ行く準備を始める六時半までとほとんど同じで、親や他の友達に言わせると夕方やれ、ということなのだけれど、僕たちは一年のときからこうである。
テスト中の徹夜はもう風物詩なのだ。
で、十一時くらいに布団から出た僕は、とりあえず着替える。そして、外へ出るのである。
徹夜といえば、なんたって夜食である。『夜食食うために徹夜してるよね』と言ったのはMだが、まさにその通り……っていいのかな、こんなこと言って。
僕のオリジナル曲のテキストにも書いてあるけど、僕は夜の空が好きだ。これだけで一本エッセイが書ける。
夜の静謐とした空気と、どこか儀式的な雰囲気に、僕は感化されるのだ。
コンビニで五百円分くらいの夜食を買って、少しぶらぶらして部屋へ戻ると、大体Mからメールが入っている。
その後メールをしながら教科書を眺めつつ漫画や本を読んでいると知らないうちに三時くらいになっている。
これはヤバイのである。
ここら辺から僕たちの戦いが始まる。Mは大体このあたりでやる気を出してメールをしなくなるのだけれど、一時間後にはもう諦めてまたメールを送ってくる。
で、大体において僕たちは酷い成績に嘆くのだが、それは置いておいて、徹夜していてちょっと得をした気分になったことを紹介する。
時は二学期期末か学年末のことであったと思う。とりあえず舞台は冬の深夜だ。
四時ごろ、そろそろ諦めムードに突入した僕にMからメールが入った。
『おわー!積もってる積もってる!!』
積もってる? 僕は首を傾げた。積もってるって……雪か!?
僕はたまらず机のすぐ左にある窓を開け放った。
そこに広がっていたのは、まさしく銀世界。
ここのところの異常気象で東京でも雪は珍しくなくなったけど、僕のマンションの各棟をつなぐ通路に見事に積もった処女雪には息を呑むばかりであった。
僕は夜が好きな理由に静かだから、と言うのがあるのだけれど、冬の雪もまた静かである。
特に夜とは違う、どこか神聖な空気と、ただ降りしきる雪。見事だね。
さらに春の夜明けも素晴らしい。まさしく緑を感じさせる新鮮な空気。
春はあけぼの、とは、よく言ったものである。
徹夜……というか、夜から朝にかけての景色は、現代人には見落としがちな部分が多く含まれている。
テストで追い込まれることが良いとは思わないけれど、僕がこの三年間で過ごした徹夜の風景は、僕にとってはなかなか『をかし』なものだったのである。
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