Jimi Hendrix studio sessions ヴァージョン違い検証 (Part 6)

曲を完成させる気があるのか無いのか、スタジオ・セッションはまだまだ続く。関連する曲を優先して並べているため、日付が錯綜して分かりにくくなってきた。

【通しNo./曲名/時間/収録アルバム名/録音日・場所(演奏者、ゲスト、オーバーダブなど)】
Bleeding Heart
【No.160】【No.162】は共にスロー・ブルース版だが、歌詞が微妙に違うしアレンジも演奏のノリも異なる全くの別テイク。実際【No.160】は Experience(レディング&ミッチェル)で【No.162】は Band of Gypsys(コックス&マイルス)によるもの。その間わずか1ヶ月半、しかも間にファンク・ロック・アレンジ【No.161】も試している。次に取り上げるのは約1年後。
【No.163】【No.164】【No.165】は同一テイクのミックス違い。【No.163】は、ヴォーカルが所々で後ろに引っ込んだり、リード・ギターが大きかったり、バランス悪いがフェイドアウトせず完奏する。試しの音出しから始まる【No.164】は【No.165】よりもヴォーカルが明確で、ギターが左右にくっきりと分離してる。【No.165】はマイルドにブレンドしたようなミックス。パーカッションが【No.164】より目立ち、間奏でギターが左右に揺れ動く。
【No.160】の録音データ:「:Blues」98年版ライナーでは、69年5月・コックス&マイルスと記載してあるが、レディング&ミッチェル説が有力。歌詞("Peoples Peoples People")も三連のノリもアルバート・ホールでのライヴに近いし。録音時期・場所は「People, Hell And Angels」ライナーから、4月・オルムステッド・スタジオと推測される。

Come Down Hard On Me Baby
"Bleeding Heart" から発展(一時的に "Honeybed" という未発表曲を経由)して出来たような、ファンク・ロック化したブルース。初期のバッキング・トラック【No.166】以外は同一テイクのようだ。【No.167】は生っぽいスタジオ・ライヴのようなミックス。【No.168】はエコーを掛けたりして手を加えたミックス。早めにフェイドアウトする。【No.169】は例によってバック差し替えヴァージョン。左右でリズムを刻むギターの左側はたぶんジェフ・ミロノフ。【No.167】【No.168】はギター・ソロのまま歌が入らずに終わるが、【No.169】は終盤で少しヴォーカルが入る。おそらく前半の歌をコピーしてオーバーダブしたのではないか。

Midnight
"Peace In Mississippi" に似た感じのヘヴィなインスト。【No.171】は【No.170】より出だしのリフ繰り返しが多く、1分10秒過ぎからギター・ソロが始まる(【No.170】は40秒過ぎから)。テイク自体は同じだが楽器バランスは違い、【No.170】はベースが中央、加工されたギターがゆらゆら動くのに対して、【No.171】はベース右チャンネル、ギターはどっしり構える。
【No.170】【No.171】とは別テイクの【No.172】は例によってバック差し替えヴァージョン。ところが、前半の凄まじいソロ、スピーディーなノリ、ジミらしからぬ(プログレ的な?)展開、どれもカッコいい。ファンの大半からはゴミ扱いだろうだが、個人的にはかなり気に入っている。元になってる演奏は Dagger Records の「Hear My Music」で聴けるものかもしれない。(未確認)

Midnight Lightning
【No.173】はジミ一人の弾き語り。【No.174】はバックの演奏と女声コーラスを付け加えたもの。ただしヴォーカルは【No.173】とは別テイクのようだし、【No.175】が元となってる訳でもなさそう。上記 "Midnight" から派生して出来た曲なのか、タイトルだけでなくリフもなんとなく似ている。

Ships Passing Through The Night / Night Bird Flying
【No.176】は "Midnight Lightning" のバッキング・トラックになんとなく似てる。インスト・テイクの上に別のとこから持ってきたヴォーカルを乗せたものらしい。"Night Bird Flying" と歌詞やメロディに共通点があるとはいえ、印象はかなり異なる。
【No.177】【No.178】【No.179】は同一テイクながら複雑に交錯するギターのバランスなど微妙にミックスが違う。【No.177】では冒頭で左右に移動する効果音が大きく、後半ギター・ソロが左右に揺れ動く。【No.178】【No.179】で 3:20 から入る高音部のギターが【No.177】には入らない。フェイドアウトせず完奏した後もスタジオの会話が入ってる。【No.179】ではパーカッションが引っ込められ、あまり聞こえてこない。

Dance / Lullaby For The Summer / Inside Out / Ezy Ryder
ノエル&ミッチ作とされる "Dance" は "Ezy Ryder" のイントロ・リフがそのまま曲になったようなもので、ミッチのヴォーカル入り。そこから発展したのが "Lullaby For The Summer"(未完成バッキング・トラック)。"Inside Out" からはそのリフとは別の "Ezy Ryder" 中間部(ブリッジ)および後半部分("Cat Talking To Me"【No.59】にも似ている)の萌芽となるフレーズが聴き取れる。これら未完成(未発表)の断片が集まって出来たのが "Ezy Ryder" か。
イントロをやり直す【No.183】は最初期のテイクと思われ、ギターの重ねが少なく、生々しいヴォーカルは本テイクと歌い回しも歌詞も違う。コーラスも入らない。
【No.184】はドラム以外が別テイクらしい。ギターのフレーズなど、かなり違う。パーカッションやスティーヴ・ウィンウッドらのコーラスが大きく入っている。
イントロ前に少し音出しが入ってる【No.185】はラフなミックス。音が悪く、ほとんどモノラルに近い。エンディング間近のギターが一本少ないように聞こえる。正規ヴァージョンをいじってでっち上げたフェイクという可能性も捨てきれないが…
【No.186】ではヴォーカルが終始ダブル・トラックだが、【No.187】は大部分シングルで生々しい。エンディングも違い、【No.186】ではいったんフェイドアウトしてからまた一瞬大きくなるが、【No.187】では普通にフェイドアウト。

MLK (Captain Coconut)
長尺即興ジャム【No.188】には "Ezy Ryder" との表示があるが、それらしきフレーズは聞き取れない。強いて言えば 1:10〜1:30 付近のフレーズがブリッジ部分("Inside Out" の出だし)に近いのとビート感が似てるくらいか。13:50〜の部分が "MLK" と思われる。18:30〜には "Cherokee Mist" という未完成曲へ移行。
【No.189】は【No.188】の 13:50 付近から始まり最後は【No.188】より10秒ほど長く収録され、ジミの話し声まで入ってる。音は定位が不安定であまり良くない。
【No.190】0:25〜3:10 の部分が "MLK"。【No.188】13:50〜17:10 のギター・ソロを切り詰めて使用。思ったほど加工はしていないようだ。それにしても、ここでのディスコ風ビートは先進的だ。ロバート・フリップのディスコトロニクス "The Zero Of The Signified" (Under Heavy Manners) にそっくり。
【No.191】は【No.189】の前後に【No.190】の前後部分(Hey Baby / New Rising Sun)を付け加えた上に中身を繰り返して水増ししたもの。編集箇所:Hey Baby (0:00) > MLK (0:25) > MLK (2:50) > New Rising Sun (3:20) > (crossfade) > MLK - Cherokee Mist (4:00) > New Rising Sun (9:20)

Crash Landing
後に "Freedom" のブリッジ(中間部)となるフレーズ("You don't have to say that you love me...")はここ("You don't love me...")から繋がっている。後半のリフも然り。【No.192】と【No.193】は別テイクのようで、ヴォーカルも曲構成も多少異なる。【No.192】は2分過ぎからギター・ソロとなるが、【No.193】はリズムを刻むだけでソロは無し。【No.192】は複数のテイクをツギハギ編集して形にしているようである。【No.194】は【No.193】が元。ギター・ソロはジミではないような気がする。ファンキーな女声コーラスが微苦笑を誘う。

last updated: 2013.4.30

Part 7 に続く
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