Jimi Hendrix studio sessions ヴァージョン違い検証 (Part 3)

今回は「Axis: Bold As Love」を中心に。ここでは、ジミのガールフレンドからオークションに流出したとされる Sotheby's Tapes(「Axis」完成前のラフ・ミックスやBBCセッションなどが入っていた)からのミックス違いの類が多くなる。とはいえ、後でステレオの定位を派手に動かして完成させるケースが多く、たいした違いは無い。超マニア向け。

【通しNo./曲名/時間/収録アルバム名/録音日・場所(演奏者、ゲスト、オーバーダブなど)】
Burning Of The Midnight Lamp
【No.63】は試しにやってみましたという感じで、歌が入らず短いデモ・テイク。ジミがハープシコード(チェンバロ)を叩きまくる。

The Stars That Play With Laughing Sam's Dice
出だしはポップだが、すぐさまギター・ソロとなり混沌としたまま元には戻らず終わる。元々はシングル "Burning Of The Midnight Lamp" のB面、さらに「Smash Hits」に収録された後、1972年にリミックスされたものが「Loose Ends」(出来の悪いボツ・テイクばかり集めた駄盤)に、現在は「South Saturn Delta(出来の良いボツ・テイクを集めた優良編集盤)で聴くことができる。左右に音が行き来する派手なリミックス【No.66】の方が10秒ほど長い。定位が比較的安定している【No.65】はオリジナル・ステレオ・ミックスか? それにしては音が悪い。

Little Miss Lover
ヴォーカルの定位が不安定だった正規ヴァージョンに対して【No.68】は中央にどっしりと構えた初期ミックス。【No.67】はイントロに口笛が入り、ヴォーカルとギターが異なる初期(?)テイクでモノラル。エンディングにギターのリフが入らない。

You Got Me Floatin' (You've Got Me Floating)
【No.70】は薄い音質で、聞こえるべき音が聞こえかったりするが、正規ヴァージョンの右チャンネルを抜き出しただけのようだ。ジミヘンのオフィシャル未公認音源にはこのようなフェイク(小賢しい騙し)がよくある。「Axis Outtakes」も悪質なハーフ・オフィシャル(ハーフ・ブート)のひとつ。買わなくていい。

One Rainy Wish (Golden Rose)
【No.72】はギターの聞こえ方が微妙に違い、サビのヴォーカルがシングル(正規ヴァージョンはダブル)で、エンディングはフェイドアウトしない。

Bold As Love
【No.74】は終盤のソロが延々と続くインストの初期テイク。素晴らしい! 【No.75】はリード・ギターとハープシコードが入る前の初期ミックス。フェイドアウトが早めでフェイジング効果も無し。サイド・ギターに焦点を絞って聴くのも良いものだ。ヴォーカルも少し違うのかな?

Castles Made Of Sand
【No.78】はヴォーカルがやや大きくミックスされ、フェイドアウトのギターがちょびっと長く入ってる。はつらつとした【No.77】はノエル抜きのインスト初期テイク。オーバーダブ無し。"Bold As Love" 同様に聴きごたえがある。やっぱりジミのギターは音そのものが気持ち良いな〜

Little Wing / Angel
【No.80】【No.85】は【No.74】【No.77】と同様にシンプルな一発録りのインストによる初期テイク。どちらも "Little Wing" というタイトルだが、【No.80】は後年の "Angel" へのプロトタイプで別の曲。【No.85】が実際の "Little Wing"。こんな宝物のようなインスト・ヴァージョンを続けて聴いてると幸せを感じる。長生きしてジェフ・ベックのようなインスト・アルバムを作っていたら…と夢想してしまう。
【No.81】【No.82】は珍しくリズム・ボックスを使用し、歌・ギター・ベースを一人で重ねたデモ。【No.81】の方はイントロが欠けており、いきなり "story yesterday..." と始まる。一方【No.82】はイントロの後、"story yesterday..." ではなく次の "about the sweet love..." から歌いだす。完全版といいながら何らかの編集が施されていることになる。
【No.84】はヴォーカルのエフェクト処理が少なく生っぽいが、サビのとこだけ【No.83】のようにエコーが深くなる。ドラムの音は【No.83】の方が派手に響く。エンディングも違い、【No.83】ではいったんフェイドアウトしてからシンバルの響きが戻ってくるが、【No.84】ではフェイドアウトしない。

Wait Until Tomorrow
【No.87】はヴォーカルにエコーが掛かっており、エンディングが10数秒長く、フェイドアウトではなく中途半端で止めるとこまで入ってる。

Ain't No Telling
【No.90】では右から左に移動する間奏のギター・ソロが【No.89】では右のまま移動しない。【No.90】はエンディングでの音量操作が大きく【No.89】は小さい。(そんな程度しか違わない…)

Spanish Castle Magic
ジミが弾いてるらしいファズがかったベースが大きく聞こえる【No.91】は歌とピアノが入らないバッキング・トラックのみの初期テイク。【No.92】は酷い音質だが、正規ヴァージョンをいじっただけのような。これも【No.70】と同様に右チャンネルだけ抜き出したフェイクか。【No.94】は69年2月、ロイヤル・アルバート・ホールに向けたリハーサルでの一曲。ライヴ仕様でギター・ソロがたっぷり。

Up From The Skies
【No.96】では頻繁に左右の音が入れ替わるが、【No.95】では固定。【No.95】でシンバルやブラシの音が目立たないのはモコモコした音質のせいか。
ちなみに、参考音源に並録されていた "EXP" の別ミックスは左右チャンネルが逆になってるだけだから省略。

last updated: 2013.4.4

Part 4 に続く
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