Jimi Hendrix studio sessions ヴァージョン違い検証 (Part 1)

“新作”「ピープル、ヘル・アンド・エンジェルス(ボーナス・トラック入り日本盤)を入手して聴いているうち、過去に出た音源との違いが気になった。なんかおかしい。同じテイクでもどこかが違うような… こうなったら聴き比べしなくちゃならん。ついでに数多いヴァージョン違いをすべて整理してみようと思い立ち、BBCなどの放送録音やホームデモ以外のスタジオ録音に絞って手持ちの音源を片っ端からiTunesにドッと取り込んだ。複数ヴァージョンが存在する公式発表曲はもちろんのこと、関連する非公式音源も適宜入れて比較していく。冗長なジャム・セッションや練習風景まで全て入れると収拾がつかなくなるから、そこは適当に取捨選択。コンプリートに収集しているわけではない中途半端なファンなので、抜けている音源もあることをお断りしておく。通販オンリーのオフィシャル・ブート Dagger シリーズには手を出していないし、最近LPで出されたファーストとセカンドのオリジナル・モノ・ミックス(Are You Experienced (UK) [Analog] / Are You Experienced (US) [Analog] / Axis: Bold As Love [Analog])も未入手で比較できず。

おおまかに録音順のリストだが聴き比べが目的だから同じ曲・関連する曲を続けて並べる方を優先した。そもそも録音日・場所・演奏者については公式リリースのライナーの中にも誤りと思われる箇所が多少あり、当てにならない。勝手な判断で修正した部分もある。

【通しNo./曲名/時間/収録アルバム名/録音日・場所(演奏者、ゲスト、オーバーダブなど)】
Hey Joe
マスターは take 4。「The Complete Are You Experienced Outtakes」では別ミックスでフェイドアウトせず最後まで聴ける(同盤収録の "with The Breakaways" は正規ヴァージョンと同じに聞こえる)ボックス収録の別テイク【No.4】(リストの通し番号、以下同様)は歌い出しで笑う別ヴォーカルで、コーラスが大きくミックスされ、ギター・ソロが入らない。元になってる演奏は take1-5 のどれとも違うような気がする。フェイドアウトせず完奏。

Stone Free
シングルB面で発表されたオリジナル・テイクに別ヴァージョンは無く(「The Complete Are You Experienced Outtakes」収録の "unknown mix" は正規ヴァージョンと同じに聞こえる)、69年にリメイクされた方に3種類のヴァージョン違いがある。【No.7】はノエル・レディングがベースで【No.8】ではビリー・コックス。全然違う演奏に聞こえるが、元となるテイク【No.7】からヴォーカルとギター・ソロを残し、バックの演奏を後に録音し直して差し替えるという不思議なことをしている(リード・ヴォーカルに若干の編集あり)。【No.6】は【No.7】のテイクを使用してるがギター・ソロは別物。もしかしてここでソロを弾いてるのはジェフ・ミロノフか? 「Crash Landing」はジミの死後1975年に、残された録音テープからジミの歌とギターを抜き出し、ジミとは縁もゆかりもないスタジオ・ミュージシャンによるバックの演奏をかぶせた悪名高きアルバム。今ではこういうリミックスを作る方法はあるし、これはこれで楽しめる。

Can You See Me
この曲はアメリカ版「Smash Hits」のヴァージョンしかCD化されていないらしい。その【No.11】とは別ヴォーカルのモノ・ミックス【No.10】がオリジナルUKヴァージョンと思われる。最後に "You can't see me" と呟く声が入ってない。(「The Complete Are You Experienced Outtakes」収録の "unknown mix" は「Smash Hits」ヴァージョンと同じに聞こえる)

Red House
米国盤以外の現行ファースト・アルバムと編集盤「Blues」にはオリジナルUKヴァージョン(take 1)で、米国盤には take 5 を加工した「Smash Hits」ヴァージョンで収録。もちろんのことアドリブのフレーズが違うし、【No.15】の方がサイケっぽくエコーが深い。約一年半後の【No.16】はオルガン入りで "Voodoo Chile" に近い感じ。イントロは別の日の録音を編集で繋げたとのこと。【No.17】は69年2月、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴに向けたリハーサルから。この時の録音は2010年の編集盤「Valleys of Neptune」などで数多く発掘されている。久々のイギリス公演ということで気合いが入ってたのか。

Foxy Lady
【No.19】はモノに近い別ミックス。テイク自体は同じように聞こえる。ギター・ソロは全く同じだし。

Fire
マスターは take 7。「The Complete Are You Experienced Outtakes」でオーバーダブ以前のバッキング・トラックが聴ける(フェイドアウト)。【No.23】は楽器の分離が良くクリアに聞こえるミックス。フェイドアウトせず最後はビタッと決まる。素晴らしい。

Love Or Confusion
【No.26】は、ヴォーカルが片方に寄っていた正規ヴァージョンより広がりのあるミックス。これもテイク自体は同じように聞こえる。最後の呟き声は入ってないが。

Third Stone From The Sun
【No.28】は、加工され所々に挿入してある芝居がかったセリフの生の状態(録音風景)を正規ヴァージョンの冒頭に追加したもの。若干編集されているようではある。

51st Anniversary
マスターは take 3。「The Complete Are You Experienced Outtakes」でフェイドアウトしないバッキング・トラックが聴ける。

last updated: 2013.4.2

Part 2 に続く
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