かつて存在したマイクのファンクラブ。
そのファンクラブ会報における 「マイク・オールドフィールド来日特集」号を紹介します。
コンサートレポートを読みながら「Just One Night」を聴くと、行けた人も行けなかった人も、心と体は15年前にタイムスリップ!!

このような活動を続けておられた当時のスタッフの方々には、頭が下がる思いです。

来日メンバー

*Mike Oldfield
Electric & Acoustic Guiters
Bass Guiter
Vocoder
Mandolin

*Tim Renwick
Electric & Bass Guiters
Recorders

*Tim Cross
Electric Piano
Synthesizer
Vocoder
Electric Organ
FootBass

*Pierre Moerlen
*Morris Pert
Drum Kit
Africandrums
Glockenspiel
Viberaphon
Kettle Drums
Tubular Bells

*Maggie Riley
Vocal
Percussion

*Jinny Cleeph
Vocal
Roland
Percussion
Electric Guiter
Master Of Ceremonies


コンサート レポート(著者不詳)


「本日はマイク・オールドフィールドグループの日本公演においで頂きましてありがとうございます。マイク・オールドフィールドとメンバー達は初めての日本公演ということで大変緊張しています。どうか、彼らに盛大な拍手をおねがいします。」

「マイク・オールドフィールドグループ!!」

最近のウドー主催のコンサートでたどたどしいMCを入れるマネージメント担当のにいちゃんが叫んだ。
いよいよ待ちに待ったマイクの日本公演開幕である。

垂れ幕が上がり、照明のつかない暗いステージにメンバーが登場する。

メンバーの顔を見分けようとして目を凝らしているといきなり攻撃的なエレキピアノのリフが始まった。オープニングナンバー、エアボーン・・・。プラチナム組曲のイントロである。
次の瞬間、ベース、ギター、ドラムスが加わりエネルギッシュな演奏が繰り広げられていく。同時に、ステージには照明があてられメンバーの姿が浮かび上がった。

この日、ステージに立ったのは総勢7人である。

「QE2」から引き続きマイクをサポートしているモーリス・パート、ティム・クロス、マギー・ライリーの他、二人の新メンバーとゴングのリーダー、ピエール・モエルランが来日メンバーだ。

ステージの両サイドには左にモーリス、右にピエールという二人の天才ドラマーの巨大なドラムキットが配置され、マイクを中心に左右二人ずつのメンバーが立っている。

びっくりした事に、マイクのバンドはマギーの他にもう一人女性のヴォーカリストを参加させていた。ジニー・クリフという名のこの女性、なかなかの美人で最初はマイクの奥さんかな・・・などと思ったほどである。彼女はヴォーカルの他、ギター、キーボード、パーカッションetcを軽くこなして我々を驚かせた。

もう一人の新メンバーはベーシストだ。この人はティム・レンウィックという名前だと後で解ったのだが、何と彼もベースの他にギターやリコーダーを扱うマルチ・プレイヤーであった。昔、クィーザーなるトラッド系のバンドをやっていたそうであるが、どういう関係からかリック・フェンに代わってマイクのバンドのベースをやることになったようだ。彼はサリー・オールドフィールドの3枚目のアルバム「セレブレイション」に一曲だけ参加していたのでそこらへんからマイクに紹介されたのではなかろうか。

マイクは来日時のインタビュー等で、メンバーはフィーリングが合えば一緒にやるような事を言っていたのだが、ティム・クロス、マギー、モーリスの三人はすでにマイクのバンドに長く加わっていることからみて、フィーリングはぴったり合っているのだろう。ピエールについてももちろんマイクお気に入りのドラマーである事は言うまでもない。そこで、これらの新人が今後どう役割をもっていくのか大変興味のある所だ。



マイク自身はステージの中央に各種の器材を従えて立っていた。

あのマイクが今、目の前にいるのだ!

日本でマイクを見れるなんて思ってもいなかったのだが、今や夢ではなく現実の彼がそこにいる。
初めてチューブラー・ベルズを耳にしたときから今までの事が自然と思い浮かんできてとても不思議な気になってしまう。おそらく、僕と同じような事を思ってた人も多かった事だろう。


ステージではそんな我々の感慨をよそに、マイク・オールドフィールドグループのメンバー達が一体となったすばらしいプレイが幻想的な世界を生み出していった。

曲は「エア・ボーン」から「プラチナム」へと流れるように展開してゆく。イントロ部のアップテンポな演奏から一転してすばらしく美しいスローテンポなギターソロに変わる瞬間の感動は言葉では言い表せれない程だ。
マギーとジニーのコーラスが加わると曲はテンポを再び上げて一直線に盛り上がっていく。プラチナムはそのまま切れ目なく「コンフリクト」へと変わっていきレコードとはまた違った印象を与えて終わった。

すると、マイクが一歩前に歩みより、なんと日本語で挨拶をした!

「ミナサンコンバンハ。
コンヤハワタシノワールドツアーノサイシュウビデス。
ツギノキヨクハシバアンドミラージュ!」

マイクは言い終わると新兵器フェアライトCMIに向かって演奏を始めた。

このマシンはうわさのデジタル・シンセサイザーである。シヴァのあの呪文のようなヴォイスはCMIを通じてよみがえった。
マイクのヴォイスにマギー、ジニーのコーラスがかぶさって会場は不思議な雰囲気に包み込まれていく。

続いてピエールのヴァイブに導かれてミラージュがはじまる。
ここでは曲を盛り上げていくのはマイクの役目だ。例の赤いギブソンを持つマイク。 モーリスとピエールのダイナミックなリズムとティムのキーボードが緊張感あふれるサウンドを作り出す。レコードより一層荒々しい印象の演奏が嵐のようにうずまいている。特にピエールは「ここと思えばまたあちら」という感じで、ドラムキットからヴァイブ、ティンパニー、アフリカンドラム、ドラムキットというようにステージせましとかけずりまわっていた。


二つの小曲の後、マイクはギターをアコースティックに持ち替えて「チューブラー・ベルズパート2」を演奏。会場の幻想的な雰囲気を更に盛り上げるためか、ステージにはM・C・エッシャーの手になる四次元的な作品をイラスト化した映像が映し出された。

一瞬の間をあけて、今度はフラットマンドリンの登場だ。
言うまでもなく超絶技巧の「セーラーズ・ホーンパイプ」である。両肩の筋肉を盛り上げ全身の力をこめてマンドリンを弾くマイク。ピエールのドラムが負けじとスピードを上げる。指が目にもとまらぬ速さで動くすさまじさだ。

「ツギノキヨクハ、タウロスツー!」

再びアナウンスするマイク。

最新アルバム「ファイブ・マイルズ・アウト」のA面をつらぬくあの重厚なリフレインが始まる。
アルバム以上に力強い演奏がくりひろげられる。
前半マイクはベースを担当、ティムはバグ・パイプのパートをリコーダーで見事にカヴァーしてみせた。数種のリコーダーを次々と手渡すジニーの好サポートも見物である。マギーのソロヴォーカルもここに来てついに本領を発揮。すばらしい美しさをもつ声をたっぷり聴かせてくれた。
25分に及ぶ「タウロスII」は圧巻である。再びギターを手にしたマイクは曲の最大の山場であるエンディングの部分をぴしゃりと引き締めてみせた。

「オマドーン!」

曲名を告げるマイクの声が会場に響き渡る。

「オマドーン」の発音は「オ」にアクセントをおいて「 オマドーン!」という感じが正しい。
マイクの弾くアコースティック・ギターの美しいひびきに二人の女性コーラスが絡み合って幻想的な雰囲気は一層強くなってゆく。エキゾチックで、力強くて、そしてどこか狂気じみた感じのサウンドがひたすらクライマックスへ向けて昇りつめてゆく。 次々と楽器を持ち替え、サウンドを導いて行くメンバー達。アフリカンドラムスの呪術的なリフレインにからむマイクのエレキ・ギターはすばらしいの一言につきる。 言いようも無いほど躍動的な、すばらしい演奏だ。


今夜のコンサートの最大の山はすぐ次にはじめられた「チューブラー・ベルズパート1」である。
アメリカ製のベストアルバムのカヴァーにもなった例の Ian Emes のアニメーションがスクリーンに投影され、聴きなれたフレーズがはじまると、会場からは大きな拍手が沸き起こる。

「エクスポオズド」のツアーの時のアレンジを基本としてさらに展開を加えたアレンジでマスター・オフ・セレモニーズを担当するジニー・クリフのチャーミングなヴォイスが新しい色気を添えていた。(レコードには女性の声がMCをやったものはないのだから。)



演奏が終わり、メンバー一同が肩を組んで挨拶をすると、すぐさまアンコールを求める拍手が始まった。
例のごとく、一度は引っ込んだメンバー達が再登場し、再び演奏が始まる。

アンコール・ナンバーは「ファイブ・マイルズ・アウト」から「マウント・テイド」と「オラビドゥー」の一部分という二曲が演奏された。
特にオラビドゥーは Ian Emes の手になるすばらしいアニメーションが再度投影され、音楽とサウンドの一体化した見事なステージを見せてくれた。
今度のアニメは模型飛行機が海岸上空を鳥のように自由に飛びまわるもので、最近出た「インプレッションズ」という二枚組のベストアルバムの内ジャケットに使われたものだ。
すばらしくファンタジックな音と映像は、コンサートの締めくくりとしてふさわしいものであった。


全体的に見ると、スタジオでのものよりどの曲も攻撃的というかよりダイナミックな味付けがなされており、エネルギッシュな演奏であると言って良いだろう。
メンバーは多少ツアーの疲れがあったようだがそれに負けずに頑張ってくれた。

マギー・ライリーなどは出番が無いときステージに座り込んでしまったりして心配したのだが、その分ジニーがマルチ・プレーヤーぶりを発揮して元気よく跳ね回ってくれたのでステージ・アクションも結構楽しめたのであった。



コンサート終了後、ビクターの佐藤さんを交えて20人程で喫茶店へ。
誰もが感動していた。半ズボンで髪を振り乱し、ドラムキットを叩き壊しそうなくらいだったピエールが一番感動を巻き起こしていた。
ビクターの人にも「来年は武道館でやろう!]という声があったという程である。

ともかく、今世紀最大の出来事はこうして幕を閉じたのであった。