メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

6月11日(火)  前日  翌日
 日本を出てちょうど2ヶ月経ち、日記の文字数も12万字を超えた。あっという間だ。ときどき近隣の町や村へ出かけてはいるが、気分は旅行者モードから生活者モードに徐々に変化している。スペイン語レッスンもかなりの回数になってきた。しかし、まだまだ会話もできない状態だ。あと3ヶ月あるがどうなることか。
 昨日と同じように12時からレッスン。これまでの復習が主だった。とはいえ、新しい言い方も加わる。「夢見る」という動詞から夢の話へ。覚えている夢はどんなものだったか、という話だが、現在のスペイン語能力ではなかなかに難しい。エリカは「亡くなった大叔父の幽霊の運転するオートバイの後ろに乗った」夢。久代さんはトイレの夢だが、エリカはそれをシャワーを浴びる時と解釈していた。スペイン語のバーニョEl Bañoは、英語でいうバスルームなので、必ずしもいつもトイレのことを指すわけではない。
 雑談は昨日の両替の話から銀行について。エリカは「私は銀行は信用していないので、現金を家に置いてる。場所?それは言えない。父もそうしているみたい。でも、母は銀行に預けている。あと、メキシコの郵便も信頼していない。たいてい少額のお金を払って私書箱を借りるので、郵便物が家に届くことはない」と言う。メキシコにも当然郵便システムはあるはずだ。しかしここのバチェの家にも郵便受けは見当たらないので、やはり信頼されていないのかも知れない。あるいは、配達人が家にやってくることを警戒しているのか。インターネットのいろいろなブログを読むと、こちらの郵便システムは日本のようにはなっていなく、手紙を出すのももらうのも、時には届かなかったり、ものすごく時間がかかるようだ。「瓶に手紙を入れて海に流すような心構え」と書いているものもあった。そう言えば、久代さんが神戸に絵葉書を送ろうとしていたら、咲子さんが「届くかしらねえ」と言っていた。
 宿題は童話「赤ずきんちゃん」現代バージョンを声に出して読むこと。読むのは難しくないが、これまで習っていない言い回しの連続で意味が取れない。
 前庭で水やり手伝いのオミとバチェが話をしていた。ワダスを見たバチェが尋ねた。
「マエストロ、あなたに演奏を頼むといくらかかるの。ギャラリーのオープニングの準備なんだけど、ワインを用意したりするつもり。予算があるので聞いてみようと思って」
「要りませんよ」と応えると「OK」と笑顔が返ってきた。
 2時45分、セントロまで散歩することにした。まずボデガ・スーパーの近くにある銀行のATMでデビット・カードを使って、10000ペソ引き出すつもりで何度か試した。ところが何度やっても元に戻ってしまう。係員に聞くと、一度に引き出せる金額は8000ペソまでとのこと。8000ペソで手数料は税込81ペソ(約500円)だった。
 銀行からセントロに向かって歩いていると、車から手を振る女性がいる。なんとエリカの母親のアリシアだった。歩くと知り合いに出会うことは珍しくない。あとで聞けば、倒れてきた木が彼女の車に落ちてきて車が壊れ、そのためにどこかへ行く途中だったらしい。
 にわかに懐が暖かくなったので、セントロの大広場に面したレストラン「La Sultidora」で食事することにした。インターネットの案内によれば、パツクアロ最高のレストラン、バー、カフェとなっている。表の回廊の下にもテーブルが並ぶが、2面の壁の棚に天井まで酒瓶、葉巻、古いラジオなどが飾られた屋内のテーブルに座った。重厚な表紙のメニューに料理の名前が並ぶ。
 頼んだのは伝統料理のチレChile la SultidoraとエンチラーダEnchiladas Placeras。まずサルサとカリッと焼いたパンが運ばれてきた。サルサは辛さが遅れてやってくる奥深い味で、パンにつけて食べる。やがてやってきたチレは、大きなピーマンの中にほんのりと甘いトウモロコシ粉を詰めた料理。大きなピーマンの皮が黒に近い紺色なので、真っ赤なトマトソースの海に浮上した潜水艦のような眺めだった。トマトソースの味付けはなかなかだが、肉けがないのがちと寂しい。久代さんの頼んだエンチラーダには、グリルしたチキンの足1本分に、ジャガイモやニンジンの炒めたものがチーズを挟んだトルティーヤの上に大量に盛り付けられた料理。グラスワインも頼んだ。
 美味しかったが「パツクアロで最高」なのかはなんとも言えない。回廊側では男がギターを弾きながら歌っていた。あとでチップを請求された。「あの人たちもチップくれた」と回廊にいた客を指して言っていたが「いやあ、ワダスもミュージシャンだし、こっちは中にいてちゃんと聞いていなかったので」と言うとあっさり彼は外に出て行った。
 勘定は全部で366ペソ。チップも奮発してトータル400ペソ(2400円)の大豪遊だった。メニューリストの値段を合計すると、勘定にはすでにチップが含まれていたようだったが。
 ひょっとしてプリシリアーノのカフェの開店準備をしているかもしれないと、坂道を上がって文化センター(Centro Cultural Antiguo Colegio Jesuita)へ。入り口に地元大学主催による「短編映画祭Corto Metraje」の看板があり、若者たちがたむろしていた。以前ジャズコンサートのあった左手の劇場の客席には観客がボチボチといて上映を待っているようだった。我々が後ろの方で様子を伺っていると、若い女性スタッフが前に行けと言う。最前列の席に座って間もなく、上映が始まった。数分から十数分程度の短編映画が切れ目なく映された。目の周りを赤く染めた女性たちとカカオの木、街でジュース売りの車を押すかつてのオリンピック選手のボクサー、ホセ・ルイス・セルトゥチェJose Luis Zertucheのインタビュー、小人の歌手、などなど。ドキュメントとフィクション映像。まだまだ続きそうだったが1時間ほどして退場。客席は満席になっていた。
 館内のパティオを囲む回廊を回ってみたが、カフェの開店準備をしている様子はなかった。プリシリアーノには今週末の15日に開店するので演奏してほしいと言われていたが、どうなんだろう。
 小広場に面したホテルでコーヒー。中庭に面したソファに座り、3階まであるホテル宿泊室を眺めた。レセプションにはタブルベッドで1泊1000ペソとあった。まあまあ高級なホテルのようだ。
 小広場に近いスーパーで、トイレットペーパー、シリアルを購入後、コンビで帰宅。8時頃だった。
 写真は撮っていたのだが、PCに移行したらほとんどが消えていた。どういうことか。というわけで、この日記には写真がない。

---やれやれ日記
どうもダニではないような気がしてきた。皮脂の欠乏による赤いポツポツではなかろうか。そうでなくても乾燥しているのに、シャワーの後など、きちんとタオルで拭かず自然乾燥に任せたりしていたから。エンチラーダ、おいしかった。

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