2015年12月10日(木) 台中3日間滞在よれよれ日記

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 関空発のLCCジェットスター・アジア3K7124便の出発は11時30分。9時発のベイシャトルに乗るため神戸空港の船着場に着くと、すでに奥さんの車でやってきた角が待っていた。白井、東野はリムジンバスで関空まで行っているはずだ。曇り空で外はかなり寒い。

バーンスリーケース持ち込みが4000円?

 予定通り9:40に関空第1ターミナルに到着し、ジェットスターのチェックイン・カウンターに並んでいると、白井、東野も合流してきた。
 ワダスの荷物は黒いリュックとバーンスリーの入ったケースのみだった。
「その長いケースなんですけど、規定では55センチ以上のお荷物は機内預け対象になります。どうされますか」
「えっ、楽器が入っているんです。困ったなあ。手荷物にはならないんですか」
「85センチありますね。ちょっと長いですね。機内預けということになりますと、4000円かかります」
「ええええー、そおーんなあ。でもどうしても必要なものなので、仕方ないですね」
 とその場で4000円払う羽目になったのでした。
「ネットで買う時に荷物を申告しておけば追加分の支払いはないねんで。わしの方がよう知っとるやろ」と何枚も重ね着をした東野。

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機内の角さん


 われわれの便は定刻通り離陸し2時間ほどで台北空港に着いた。現地時間は13:50。空港の長い通路を歩きパスポートチェックへ。
 係官の座るブースの前に小さなディスプレイのついた変な機械があった。両手人差し指を当てるくぼみがある。指紋を記録するらしい。今年2月に(台北に)来た時はなかった。係官に言われるまま人差し指を押し当てると、係官はすぐにゲートを通過するよう促した。

出迎えスタッフ確認

 機内預けとなったバーンスリーケースを受け取り到着出口を出た。客の名前を書いたボードをかざす人がバーに隙間なく待ち受けていた。東野とワダスはすぐにわれわれの名前の書いたボードを持つ二人の男女を確認した。ペタッとしたベレー帽をかぶった青年がシンハイ(シンちゃん)、黒縁メガネで笑顔の若い女性がドリスと名乗った。ドリスは分かりやすい英語を話すが、シンちゃんは英語は苦手のようだ。

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シンちゃんとドリス


 空港ビルの外でタバコを吸って戻っても白井と角はまだ出てきていない。東野は二人のスタッフとすぐに打ち解け、まるで旧友と再会したように笑っている。この、だれとでもすぐに打ち解けるというのが彼の最大の特質で、誰も真似できない。
 20分ほどして白井と角が現れた。角が「腹減ったなあ」と小声で呟いた。これを聞いたドリスがわれわれを地下のコンビニに案内した。東野は「ははは、嫌いやろ、これ」とワダスにパンを見せびらかす。
 外の気温が高いので上着を脱いだ。ここまでは冬支度できていたのだ。雲は出ているがときおり日が差しているので神戸よりはずっと暖かい。
 われわれはシンちゃんの運転する7人乗りのバンに乗り込んだ。荷物を積み込んだので最後部には座席が1つとなりワダスが潜り込んだ。白井を挟んで東野と角が窮屈そうに前の座席に座る。

道中車内の会話

 車はすぐに高速道路に出て台中を目指す。車中、神出で農業を始めた男性と1年前に結婚した白井がワダスの根掘り葉掘りの質問に応える。彼女は昔よりもずっと落ち着いて見える。
「ははは、今じゃすっかり農家の嫁。朝はっやあく起きて夜は早く寝る。まだまだ安定はしないけど。トラクターも運転するよ。お酒?昔はよく飲んでたけど、今はあんまし飲まない」
 そのうち、以前に新竹フェスティバルに招待された時のことが話題になった。
「いやあ、まいったよ、あのチキン・ライスには。毎日だもんなあ。トラウマになっちゃったよ」
 と角。東野が続いて言う。
「そうそう。オレも新竹の演劇に参加したけど、まあー、よく一人ででけたもんやな。なにしろオレ一人やし、何言ってるかさっぱりわからんと、なんとなあく彼らの劇に合わせてやったりして。ま、楽しかったけどな」
「僕も散々だったなあ。アクト・コウベの報告をしろといわれてたんで、スピーチの原稿を英語に直してばっちり準備してたけど、1000人以上入る中興大学のホールに客が20人ほどしかいないのよね。パパローンもプロジェクターの準備をしてくれてたりで発表側は意気込んでいたのになあ」
「ははは、台湾はそういうもんじゃ。現地に着いてみないと何か起きるかさっぱり分からんからね」

台中ホテル到着

 そうこうしているうち、5時過ぎに台中市内のホテルに到着した。ガラス張りの立派な玄関のある10数階建ての四つ星ホテルだった。壁面に52HOTELと表示がある。
 玄関前には、ラン、チェン、エミリー、フェイフェイがわれわれを待っていた。
 これまでメールでやりとりしてきたチェンとは初めての顔合わせだった。整った目鼻立ちにメガネをかけた、ちょっとシャイで冷静な青年だった。そのチェンがいきなり2通の現金の入った封筒をワダスに手渡した。航空券支払い清算金と今回の謝礼金だという。
 背が高く整った顔つきのエミリーも一時メール連絡先だったので名前は分かっていた。かつて外国のホテルに勤めた経験もあるというエミリーは、その後われわれの主要な世話がかりとして気配りのある対応をしてくれた。角は「ちょっと小太りだよね」と言ってたが。書くのは苦手だが話すのは大丈夫というエミリーの英語は分かりやすい。
 今回の企画者で主催側代表であるランとランの娘フェイフェイは4月にランと一緒に神戸に来たので、会うのは9ヶ月ぶりだった。十代のころから東野になついていたフェイフェイは東野に抱きついた。ランとフェイフェイは英語は話すがかなりカタコト。
 エレベーターに乗るのにも必要なカードキーをもらって部屋に入った。ダブルベッドのかなり広い部屋だった。
 荷物を解く間もなく、明日のパフォーマンスをする予定の場所を見学するためホテルを出た。

パフォーマンス会場見学とディナー

 10分ほどして案内されたのが、商店街に挟まれた遊歩道の一角だった。地図には精明一街商圏とある。1階がカフェになっているビルの2階がわれわれの待機所だった。普段はギャラリーとして使われる部屋だという。
「さて、ディナーへ行きましょう」
 ランの合図で全員が車に乗り込んだ。ほどなく「無為草堂人文茶館」という古民家風の茶店に着いて席に着いた。ラン、フェイフェイ、ドリス、エミリー、チェン、シンちゃん、そしてわれわれの4名。中庭には小川が流れ鯉が泳いでいた。
 それぞれトレーに並ぶフツーの定食を食べていると、ランがバッグから昔の写真の束を取り出した。10年ほど前にわれわれが台湾を訪れた時の写真だった。
「ほらほら、フェイフェイも若いなあ、はははは」東野は隣に座ったフェイフェイをつつきながら写真を見ていた。
 画材や紙、バナナなどを購入しに出かけた東野と白井と別れ、角とワダスはランとフェイフェイの住むマンションへ。

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tea 最上段左/エミリー、シンちゃん、チェン

ランのマンション

 明日の会場である遊歩道を見下ろす11階部分の広いマンションだった。猫が4匹と犬が1匹いた。バルコニーからは、三角錐の屋根が電飾で縁取られた大きな高層ビルが見えた。
 途中で購入したビールや杏仁豆腐のデザートなどをいただきつつ、二人のおぼつかない英語で話を聞いたり、彼らが脚本を書いて出演したドラマのビデオを見せてもらった。壁一面の本の詰まった書棚のある書斎にも案内された。
 角は、言葉のせいもあるのか口数が少ない。長時間の移動で疲れていたのかもしれない。
「フェイフェイとここで二人暮らし。ここに引っ越してまだ3ヶ月なの。いろいろ探したんだけど、猫と犬が飼える家がなくてねえ。10年前の家? あれから10回以上引っ越しちゃったから昔の話。私自身はそんな変わっていないけど、男はいろいろ変わったの。ははは」とラン。

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lang

 そのうち合流した白井、東野としばらく談笑の後、ランの運転する車でホテルに戻り、ワダスの部屋で明日の打ち合わせ。手渡された謝礼金から帰国後入院することになっている東野にカンパを渡した。
「いやあ、ありがとう。CAPからもけっこうなお金もろたし。それと、姫路の展覧会に出した作品が全部売れたんよね。ありがたい」
 22時57分に打ち合わせが終わり、それぞれ部屋に戻った。

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