ヤクザ石日記(3)薬瓶

ある患者さんは、長い間A病院の整形外科にかかっていたが、最近B病院の内科にもかかり始めた。
人間ドッグで胃粘膜が荒れていることがわかり、潰瘍治療薬が処方されたのだ。で、どちらの処方箋もうちで調剤している。

性格にもよるだろうが、患者の心理として、別の病院にもかかっていることをドクターには言いずらいらしい。
「別の病院にかかる際には、必ずお薬(履歴)手帳をドクターに見せてくださいね」とアドバイスしていたのだが、どうやら手帳も見せず、話しもしていないようだ。。。

その患者さん、実はA病院のほうで10年以上に渡って鎮痛薬が処方されている。この薬は消化性潰瘍の患者には禁忌だ。よって、整形外科の鎮痛薬を長年服用していたことが消化性潰瘍の原因、と疑うことも当然だ。ヤクザ石の立場として、それぞれのドクターにすぐ知らせるべき。

しかし、ここで悩む。患者が隠していることを、ある意味、ドクターに密告するわけだし、患者さんとの信頼関係を崩すこともありえる。
また、それぞれのドクターも快く話を聞いてくれるとは限らない。自分の領域に足を踏み入れられることを不愉快に思うドクターもいる。スタンドプレーになりはしないか?

これも仕事と自分に言い聞かせ、まず、A病院の整形外科のドクターに電話した。オレの話に耳を傾け、「とりあえず服用量を一日3回から一回に減らしてもらい様子をみましょう。次回、そのことを踏まえて消化器への負担が比較的少ないものに変えてみましょう」と言ってくれた。
内心ほっとして、次にB病院の内科のドクターに電話する。
受話器越しに面倒くさそうな雰囲気を感じる。やはり、整形外科にかかっている事、鎮痛薬を10年以上服用していることをドクターは知らなかったようだ。
オレが「どの程度の潰瘍なのでしょうか?」と尋ねたとたん、「そんなのどうでもいいじゃない!ずっと(同じ処方を)出すから、出しといてよ!

電話は切れた。オレの頭の中も切れた。んまぁ、そういう反応もあるかもしれないと少しは予想していたので、すぐに冷静にもどれたが。

たしかに、電話で病状まで踏み込んだのはまずかったかもしれない。しかし、意をもう少しくみ取ってくれてもいいんじゃないかねぇ。。。

この件はこれで終わったわけではない。次回患者がやって来た時、処方箋の内容がどうなっているのか?また、患者がどんな反応を示すか?   ま、どうにかなるべさっ!

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