タイムスリップ
--second chance--

第14話
テッペン目指して

1982.4.1
入社式
巡矢は本七幡駅で
中野行きの
電車を待っていた
行く先はあの日の
大手町ではない

成人式のお祝に
ばぁちゃんに
買ってもらった
BIGIのスーツではなく
量販店の
紺の背広に袖を通した
髪は短髪に整えた
企業戦士たるもの
当然の事だよ巡矢
死んだばぁちゃんに
夢枕で言われた

ここからは
初めての経験だ
選ばなかった
別の人生の始まりだ
出逢った事のない
人が巡矢を待っている
だが巡矢の頭の中には
上手くいかなかった
数々の知識と経験が
ある

どう立ち回れば
失敗しないか
知っている
恐れる事はない
知識は65歳
世の中の移り変わりも
ある程度知ってる
同年代の若い奴など
敵ではない

とにかく働いて
出世して金を稼ごう
妻と子供を幸せに
休日は接待ゴルフ
参観日には行けない
運動会にも
部活の親子大会も
家族サービスは
できない
男とはそう言う者だ
金は運んでくる
心配するな
金だけは持ってくる
他の事は頼む
麻妃!

その為にずっと
勉強して来たんだ
やりたい事も我慢して
友達を蹴落として
上司にこびて
信念を捻じ曲げて
自分を殺して…

巡矢には
その自信があった
タイムスリップ
したのだから
成功は自明の理だ

タイムスリップ体験
文章に残す事にした
誰にも見せないが

最終話につづく