タイムスリップ
--second chance--

第13話
赤いスイートピー

半年の研修所生活の後
白鷺城が建つ街の
支社設計課に
配属された花形部署だ
デスクとドラフターが
与えられた
CADはまだない

巡矢は先輩に
可愛がられた
特に同郷の先輩には
半年毎晩飲みに
連れてって貰い
ご馳走になった
K先輩は網走出身
蘭室工業大学卒
独身平安貴族
バブルカーに
乗っていた

年末は課長の
お宅に招待された
前途有望だ巡矢
初ボーナスの
封筒を開けると
ばぁちゃんの
お年玉より多い
聖徳太子の束
封筒が立つし

ギターはたまに
弾いていた…

しかしわずか2年で
その会社を退社した
K先輩ごめんなさい
課長申し訳ござらぬ
世が世なら切腹じゃ
お手打ちにして
くだされカチョー!
介錯はK先輩殿

関西の支社
文化の違い
子供が関西弁
喋るのは嫌だった
駄目かもしれない
ワガママかも
いやダメですよね

今度は絶対
自分で選んだ会社で
出世してみせる
IT関係に決めた
田中ジョブズ巡矢だ
定年迎える頃には
AIに携わろう
役員で残るのもいい

趣味は続けたい
歌を作るのが
好きなのだ、だが
大椋佳みたいな
見てくれはNGだ
昭和フォークロックの
古典的スタイルが
巡矢のデフォルトだ

人前で演奏する
訳ではないけれど
バーチャル
ロックスターだ
おこちゃまとも言う

ただそのルックスで
会社の組織の中で
生き残れるか
IT関係と言えど
昭和の頑固爺の方が
多いに決まってる
ビートルズに
眉をひそめた
大人達のような

街には
赤いスイートピーが
流れていた

つづく
最終話まで残り2話