<売りに出された想い出>

バブル期に友人が湯沢に買った、リゾートマンションを
売りに出す事になったと聞いた
1993年頃から、長男が高校受験で行けなかったつい最近まで、、、
家族でよくお世話になった、ありがたい。

彼は下町で製造業を営む会社の2代目、、、
昨今の景気、経済事情、製造業の海外拠点化・・・
時代の潮流が日本の製造業に非常に厳しいことは言うまでもない
懸命な選択、、、ボクもそう考える

ボクが土日休みの仕事に変わり、まだ小さかった子供達を連れ
年にたった1度、2泊3日で出かけたスキー、、、その頃、1年で最も楽しみにしていた行事だった

滑る事が楽しかった訳ではない、ゲレンデでは、滑った本数より飲んだ缶ビールの方が多く
寒い外から帰った後の温泉、露天風呂、そして冷えたビールやワインや地酒 ^_^
子供達の明るい笑い声、、、何物にも変え難い幸福感がそこにあった

そしてそんな楽しい行楽、レジャーの後の月曜の地獄の筋肉痛
数日後、スキー用具は楽しい想い出と共に暗い物置にしまわれた、1年後、また逢う日まで、、、

日本の現在や未来は誰が創っているのでもない
ボクら自信の日々の選択が、この国を変えていっているのだ

ボクが子供の頃、スキーやスポーツ用品は町の運動具屋で買った
店のおやじかお兄さんが親切にアドバイスしてくれ、親と一緒に買いに行くのが、楽しかった
いつからだろうか、その店の前を避けて通り
遠くの大型スポーツショップやディスカウントストアへ行くようになった
○×%OFFのチラシに誘惑され

その後、店は皆潰れ、後にはボーリング場が建ち、やがてスーパーになり
カラオケ屋に変わり、ケータイショップに塗り替えられた

日本ではもう、製造業は成り立たなくなってしまった
安い人件費で作られた外国製品が、日本の市場で大手を振っている
失業率が5%に迫ろうかと言っているにも係わらず、3K職場には見向きもしない国民達
2代目の彼も、スキーや洋服、殆どの生活用品を安い量販店で買っている、
made in china と書かれた日本発の最新文化、自分で自分の首を締めているのと同じだ

日本で作られた高価な製品は、誰も見向きもしない、安くて早くて便利なものを愛するボクら、、日本人
自分自身の選択が彼の会社を痩せ細らせ、リゾートマンションを取り上げてしまった

いったい日本はどこへゆくのだろう
ボクらが描いている未来は、ほんとに明るいんだろうか、、、

温泉や子供達の笑い声や景色のいいマンションはなくなったが
スキーや想い出は、物置に置き去られることなく、ボクは毎週山に行くようになった
ビールを飲んでのレジャースキーは終り、コンクリートのようなコブとの戦いが始まった
およそ10年の月日が流れ歳をとったが、筋肉痛からは開放され
心地よい疲労感と達成感に満たされる夜を車内で過ごせるようになった

他愛無く笑っていた子供達にも、受験や大人世界の不条理がのしかかり
矛盾だらけの既存社会との葛藤の日々が待っているだろう
確実にひとつの時代が終わり、また新しい明日がやってくる

そうしてボクは、また山に向かう、いつ終わるか分からぬ人生で

微かな目標を達成するため?
本当にやりたい事をやりぬくため?
金では買えぬ優越感を掴むため?
見たことのない明日を見つけるため?

知らない自分に出会うため、、、つづく

                                  2002.12.16

| TOPMENUON-LINE MUSICおまけトークBBSLINK
自己紹介全曲暴露相性診断♀相性診断♂多重録音唯我独尊直情径行交遊見聞 |