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細胞

氷がぜんぶ溶けて 薄まった
ジュース飲み干してから ドアをあけた

勇ましく踏み出す足取りと
裏腹の不安さえも 心地よくて

都会へと走る列車に揺られ
君がくれた本を閉じれば

細胞のひとつひとつに刻まれた
記憶が胸を締め付けて
通り過ぎてく見なれた風景が ぼやけて消えて
今の自らの不確かさ知った

「地の果てに行くわけじゃないのよ」
旅立ちを電話ごしに 打ち明けたら

いつも冷淡を装う君は
「死なない程度にがんばってこいよ」

はかどらない荷造りの間に
なくしたと思ってたテープ
発見したから 流してみたけれど 中身は深夜の
ラジオ くだらない喋りで潰されてた

細胞のひとつひとつに蓄えた
情熱が肌へ溢れて
迫ってきてる見なれない風景が 謎かけるように
光りまたたいて 今の自らの 不確かさを知る


ディレンマ

今日も君は突然に 僕を引きずり出して
行き先も分からずに 列車に乗る
窓横切った喫茶店を 目指し降りた駅から
迷路へと踏み込んだ 昼下がり

曇り空 白く光って 二人から影を奪う
行き止まり 引き返す 回り道 手と手 ほつれ

君の指がなぞる 哀しみの軌跡 かき消すように
降り始めた雨が 心まで濡らす前に 走り出せばいい

近すぎて触れられない 抱きしめてもこぼれて
側にいても怖くて そんな日々の
ありふれたディレンマたちが
この頭 駆け巡る また今も

いくら熱く 燃え上がったって 感情なんてさ 信じられない
目に見えるほど速く 削れてく 愛や憎しみや

それでも胸の中 くすぶってる何かを拾ったんだ
きっと僕らにはまだ 分かち合う 時がある

君の指が描く 切なさの予測 裏切るように
吹き始めた風が 心まで揺らす前に
走り出せるはず 手と手を離さないで


オブラート

アルコールで曇らせた 思考回路の上を
這い回る蟻のように 耳障りな鼓動

いやらしく囁いて 分かり切ったことを
何度でも その口で その腕の中で

包み隠した大事なもの 伝えるためと見せかけて
オブラートだけを固めたような 小賢しさなら
もうたくさんだから
ここで ひざまずき 応えて

人の心 読めるのは あなただけじゃないのよ
鍵穴を覗き込んで 何を盗むつもり?

あなたが好むものは 占い師の使う
白にも黒にも 化けられる言葉

ならば私は振り返らず 裸足のままで逃げ出して
ビルの窓から双眼鏡で 慌てふためく
あなたを眺めよう

眠れない夜更けは 不安ばかり育てるの

包み隠した大事なもの 伝えるためと見せかけて
オブラートだけを固めたような 小賢しさなら
もうたくさんだから
ここで ひざまずき 眼を見て
今だけで かまわない 私を
満たしてよ 不器用な手つきで


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