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オブジェクト指向のスーパーコライダー
SuperCollider（以下スパコとかきます、愛を込めて。）はオブジェクト指向型のプログラミング言語です。なので、スパコを理解するためには、「オブジェクト指向」を理解する必要があります。オブジェクト指向のプログラミング言語には古くはSamllTalkというものから、プログラミングのことをよく知らない人でも一度はその名前を耳にしたこたとがあるだろうC++など、いろいろなものがあります。
オブジェクト指向？プログラミング？ うぅ、なんだかとっても難しそうなんですけど....
わたしも最初はそう思っていました。すごく難しそうだ...かしこくない私には理解できるのかしら...と思いながら、でもどうしてもスパコでプログラミングできるようになりたかったので、本やウェブページを読みつつ少しずつ勉強していました。そしてあることに気づいたのです。それは、
基本的にオブジェクト指向はそんなにムズカしくない。
ということでした。オブジェクト指向の基本的な概念は、わたしたちの日常的な思考に似ていて、それを理解することはそんなに難しいことではないと思います。しかしながら一般的な書籍は、著者によって用語が統一されていなかったり、スパコに付属の英語ドキュメントと用語が異なっていたりして、ムダな混乱をしてしまうことも多くありました。そこでこのテキスト「オブジェクト指向のスーパーコライダー」をつくってみるとにしました。
スパコの習得に不可欠なオブジェクト指向の基礎を、わかりやすく、そして楽しくお勉強できればと思います。
【 オ ブ ジ ェ ク ト 指 向 の ス ー パ ー コ ラ イ ダ ー も く じ 】
01. オブジェクト指向のプログラミングということ
02. メッセージとオブジェクト
03. 動物分類学のオブジェクト指向
04. クラスとインスタンス
05. メソッド、メッセージ、レシーバ
06. クラスメソッドとインスタンスメソッド
07. スーパークラスとサブクラス
08. ポリモーフィズム
09. オブジェクト指向の初歩 関連資料
01. オブジェクト指向のプログラミングということ
そもそも「オブジェクト指向」という言葉の意味がよく分かりません。どういう意味なのでしょうか？
「オブジェクト指向プログラミング」、英語ではこうかきます。
Object Oriented Programming (これを略してOOPと呼びます)
Object... 英語でとくにかくモノ、とか物体。という意味があります。（語源であるフランス語の「オブジェ」という言葉のほうがなじみがあるかもしれません。「あ、あのデュシャンの便器のオブジェ、可愛い」みたいなかんじで。）
Oriented... Orientには、～に方向づける、とか向かわせるといった意味があります。
スパコのOOPの世界ではすべてのモノがオブジェクト、として扱われます。と、これは一般的な言葉なので、もうすこしOOPよりの意味で定義すると、オブジェクトとは、ただのモノではなくて、
Object = なんか状態を持っていて、何かのアクションに反応するもの
といえます。例えば、わたし。私は今、イスに座ってコンピュータに向かいこのテキストを書いている、お腹はちょっと空いている、といった状態を持っています。そして誰かに名前を呼ばれたらお返事をすることができます。つまり他からの刺激に対して反応することができます。だからわたしはオブジェクトなのです。では、クマのぬいぐるみはオブジェクトと言えるでしょうか？考えてみてください。
02. メッセージとオブジェクト
オブジェクト指向であるスパコのプログラムは、オブジェクトにメッセージを送ることによって進んで行きます。先のオブジェクトの例では、「あたし」というオブジェクトに対して、「テキスト書くのをやめて」とか「ごはんをたべろ」といったメッセージを送り、それにあたしが反応することによって、ことが進みます。スパコでは、どうやってメッセージを送ればいいのでしょうか。オブジェクトに対してメッセージを送る場合は、. (ピリオド)を使って次のように記述します。
オブジェクト. メッセージ
// 実際のスパコプログラム
10.rand // 10という数字オブジェクトにrandというメッセージを送る
SCWindow.new.front // SCWindowというオブジェクトにnewというメッセージを送り、さらにfrontメッセージを送る
03. 動物分類学のオブジェクト指向
Work01 : スキな動物の絵を描いてみよう（この下の空白に書こう）
世の中には生物分類学と呼ばれる学問があります（注：わたしは分類学については全くもって詳しくないのです。そのスジの方、間違っていたらご指摘ください）。これは地球上のいろんな生き物をその特徴や性質から分類していく、というようなものです。生物はまず、植物と動物に分けられますが、どういう基準で分けられるのかというと、植物は葉緑体をもち光合成により栄養をつくりだすもの、それに対して動物は他の生物を食べることで栄養を得るもの、という決まりがあります。同様に、たとえば、脊椎動物は背骨をもっているもの、鳥類は翼と嘴をもつ、などなど、その生き物の特徴に応じたカテゴライズをしているわけです。
逆から言ってみると、それぞれのカテゴリーには、同じような性質や機能をもった生き物が集まっているのです。例えば鳥類の生き物は、みんな翼を持っている、という性質があり、みんなその翼を使って空を飛ぶことができます（ペンギンなどは例外ですが...）。また、魚類の生き物はみんなエラを持っていて、水中を泳ぐことができるのです。さて、そろそろOOPの話にもどることにしましょう...
04. クラスとインスタンス
OOPにはクラスとインスタンス、という概念があります。
class = モノの定義 ... モノの状態や性質、振舞いを定義したもの。
鳥クラス（というものがあったとしたら）は、鳥とはどういうものかを定義しているものです。鳥には「嘴があって翼があって、"飛べ！"というメッセージを受け取ったら、飛ぶ。"鳴け"というメッセージを受け取ったら、さえずる」とかね。
スパコにはあらかじめ何百ものクラスが用意されています。それらのクラス定義ファイルは、SCフォルダ>SCClassLibraryフォルダの中に入っています。
instance = クラスから作られた実際のモノ ... 私はちいさいころ犬を飼っていました。彼はラッキーという名前のシーズ犬でそれはとっても可愛くて可愛くて....それから私のお友達も犬を飼っていてそれはクエストという名前の柴犬でした。犬というクラスは犬がどういうものであるか、を定義しているだけの概念のようなものですが、ラッキーやクエストは犬クラスのインスタンスです。
05. メソッド、メッセージ、レシーバ
オブジェクト指向が難しい、と思われがちな理由のひとつに、聞き慣れない言葉がたくさんでてくる、というのがあると思うのですけれども、次は、新しくメソッド、メッセージ、レシーバという言葉が出てきます。
method = あるクラスのオブジェクトがどのように振る舞うかをクラスに記述したもの
message = メソッドをオブジェクトの外側から呼び出すためのメッセージ
receiver = メッセージを受け取るオブジェクトのこと
と、説明されてもヨクワカラナイと思うので、前の節のインスタンスのことを考えつつやってみましょう。
Work02 : Documentクラスのインスタンスをつくってみよう
ヒント：Documentクラスのヘルプファイルを見てみましょう。ヘルプファイルを見るには、Documentの文字の上でダブルクリックして、クラス名が選択されたら、コマンドキー、シフトキー、／キー（?マークのついているキー）を同時に押します。
Work02（回答例）：
Document.new("this the title", "this is a text");
このコードを実行するとDocumentクラスのインスタンスがつくられ、ひとつドキュメントウィンドウが開かれますね。
このコードではDocumentクラスにnewメッセージを送っているのですが、これはどういうことが行われていたのでしょうか？、Documentクラスにはnewというメソッドが定義されていて、これが呼び出されたとき「このクラスから新しいインスタンスをつくる」ようにDocumentクラスに定義されています。このnewというメソッドを呼び出すために、Documetnクラスにnewメッセージを送ったわけです。また、メッセージを受け取るオブジェクトのことをレシーバ、と呼びます。
さらにbackroundメソッドを使って、ドキュメントの背景色を青色にしてみました。
Document.new("this the title", "this is a text").background_(Color.blue);
Documentクラスのクラス定義を見てみましょう。クラス名であるDocumetnを選択して、コマンドキーとJキーを同時に押します。
Document {
classvar <dir="", <allDocuments, thelistener, <>current;
＜中略＞
*new { arg title="Untitled", string="", makeListener=false;
^super.new.initByString(title, string, makeListener);
}
すると上記のようなものがでてきます。中頃に、*newというのがありますが、これがnewメッセージを受け取ったときに呼び出され実行されるnewメソッドの中身です。まだちょっと難しいでしょうか？また動物の話を例に考えてみましょう。
思い出してください。動物分類学のそれぞれのカテゴリーには同じ性質をもった生き物が集まっているのです。例えば鳥類の生き物は、みんな翼を持っている、そして空を飛ぶ、という決まりがあります（ペンギンなど例外はありますが...）。鳥には「飛ぶ」という振る舞いを、魚には「泳ぐ」という振る舞いをして欲しいので、それぞれのクラスにそのメソッドを定義しておきます。「どうやったら飛べるのか」を定義するflyメソッドとか「どうやったら泳げるのか」を定義するswimメソッドとかをつくっておきます。そうすれば鳥インスタンスを飛ばすためにはflyというメッセージを送るだけで済むのです。
06. クラスメソッドとインスタンスメソッド
メソッドのなかで、レシーバがクラスのものをクラスメソッド、インスタンスのものをインスタンスメソッドと呼びます。例えば、work2のプログラムでは、Documentクラスに対して送られているnewメソッドはクラスメソッド、newの結果できたインスタンスに対して送られているbackgroundはインスタンスメソッドです。
07. スーパークラスとサブクラス ... クラスには継承（inheritance）の関係があります
sub class = スーパークラスを継承し、それに新しい特徴や性質を加えたもの
基本的にスーパークラスの性質やメソッドを全部引き継いでいます
super class = サブラクスの継承もと
またまた分類学の話に戻します。動物はまず、脊椎動物（脊椎（背骨）のあるもの）と無脊椎動物（脊椎のないもの）に分けられます。動物は「他の生き物をとって食べるもの」と定義されているので、脊椎動物も無脊椎動物その性質を受け継いで、他の生き物を食べます。同様に脊椎動物は魚類や鳥類、ほ乳類などに分けられますが、どれも「他の生き物をとって食べるもの」であり、「背骨のあるもの」です。こうして下位のカテゴリーのものは、より上位のカテゴリーの性質を全部受け継いでいます。これが継承関係であります。鳥クラスは脊椎動物のサブクラスである、または逆に脊椎動物クラスは鳥クラスのスーパークラスである、といえます。
クラスの継承に関するメソッドには下記のものがあります
dumpClassSubtree ... レシーバのクラスのサブクラスを表示する
superclass ... レシーバのクラスのスーパークラスを調べる
subclasses ... レシーバのクラスのサブクラスを調べる
Work03 :WhiteNoiseクラスのサブクラスにはどんなものがありますか
Work03（回答例）：
NoahNoise、GrayNoise、ClipNoise、PinkNoise、BrownNoise
（WhiteNoise.dumpClassSubtree というコードを実行して調べる）
08. ポリモーフィズム（多態性、など日本語での言い方はイロイロ...）
Polymorphism = 異なるクラスが同じメッセージを受け取ったときに異なる振る舞い（処理）をすること
例えば、「前に進め」というメッセージを受け取ったら、鳥オブジェクトは飛ぶし、魚オブジェクトでは泳ぐし、ヒトオブジェクトだったら歩くとか走るでしょうね。「面積を計算しろ」というメッセージを三角形オブジェクトが受け取れば底辺×高さ÷２、四角形オブジェクトなら、縦×横という異なる方法で計算をしているけれども、結果的には面積を計算してくれる....同じメッセージを使ってもそれを受け取るオブジェクト（クラス）ごとにそのクラスに適切な、異なる振る舞いをすることをポリモーフィズムと言います。ひとつのメッセージを使うだけで、あとはそれぞれ適当な処理をしてくれるので、ちょっと便利な仕組みでしょ？
下はスパコのplayというメソッドを、異なるクラスに送ってみた例です。クラスによって、適切な、異なる処理をしています。
// Functionクラス
{ PinkNoise.ar(0.5) }.play;
// Patternクラス
Pbind(\degree, Pseq([0, 1, 2, 3],inf)).play;
// SynthDefクラス
SynthDef("sine800", {
Out.ar([0,1], SinOsc.ar(800, 0, 0.2));
}).play;
09. オブジェクト指向の初歩 関連資料
ウェブサイト「つくる人の味方（オブジェクト指向のはなし）」 URL : http://mikata.curiocube.com/
書籍「オブジェクト指向がわかる本」佐藤英人著 オーム社
"OOP on SC" written by tn8 : tn800@iamas.ac.jp on Mar.2004
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