| あの9.11以来、坂本龍一氏の「非戦」という考えに貫かれた行動や発言は、突然の事態に現実を把握できず、戸惑う多くの人々にとって、大きな指針となっていたのではないだろうか。そして、はや一年。その間、坂本氏は、人類誕生の地であるアフリカを訪れ、先史時代より、奪い、殺し続けてきた人類の淵源に考えを巡らせていた。そしてまた、そこから抜け出る可能性も・・。
一一9.11のテロ事件によって、明らかになったものとは何だったのでしょうか。
9.11が起きたことで、いろいろなことが明確になりましたね。あの事件があったことで、いろいろなことが見えたという人が多いように思います、僕自身も含めて。
結局、今にして思うと、ソ連崩壊後の90年代から今までというのは、世界唯一のスーパーパワー、いわゆる「帝国」による支配というのを形成してきた時期で、9.11前は、それが見えにくかったということだと思うんです。もちろん、見えていた人もいるでしょうけど。だから、9.11で変わったのではなく、9.11以降の流れがそれを白日の下に晒したということだと思います。しかも、今は、9.11を口実に、「帝国」が牙をむき出しにして、いわゆる「世界支配」を強化している、大劇場のような期間ですよね。
一一そのようなことが、明らかになったことで、坂本さんに、何か変化をもたらしましたか。
もちろん、「帝国主義的な法案」だとか、「帝国」のやろうとしている政策は、一つ一つ注視して読み解いていかなくてはいけない。しかし、結局、人間というのは、全然進化していないという思いが強いですね。先史時代から、そんなに進化してないんじゃないかと。その長い経過の中には、プラトンもアリストテレスもカントもいて、そして20世紀には2つの世界大戦があり、‘世界平和’という想いから国連ができたりと、そういった動きがあったにもかかわらず、全然変わっていない、という思いが強いですね。結局、力の強い者が弱い者をやっつけてしまう。

──といいますと?
『ELEPHANTISM』で取材に行った、アフリカのマサイ族の人に聞いたんですけれど、自分達のマサイマラという、非常に豊かな草原に、他の部族が入り込んだら、やっつけると言っていました。そういう、私たちの性質って全然変わってないわけですよね。マサイ族は、もともと親戚だったトゥルカナ族という弱い部族を、草も生えない荒涼とした地域へ追い払った。それで、自分たちはものすごく肥沃な所で暮らしてるんです。そして、他の部族が侵入してきたら、殺してしまえと・・。
それは資源の確保と力の支配という意味で考えたら、全く同じなんですよ。人類が誕生して20万年と言われますが、その頃から、またはその少し以前から、こうしてホモ・エレクトゥスは、新種のホモ・サピエンスに滅ぼされたわけです。根幹は食糧で、それをどちらが取るか。そして、その食糧を生産をする領土の問題。取った方が生き残り、取られた方は死んでしまう。そうやって、チンパンジー以降、たくさんの種が存在したわけだけど、常に新しいものに滅ぼされていく。今は、ホモ・ハビリスも、ネアンデルタール人もいない。なんで、彼らがいないんだろう、いてもいいんじゃないかと思うんだけど(笑)。結果的には、全部滅ぼされてしまったわけですよね。それは、殺戮もあったかもしれないし、領土を奪い取ることで、食糧がなくなり死んでしまったということもあっただろうと思います。現在の世界と全く同じだと思います。だから、まさに、そこに縮図があるんじゃないかと感じます。
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