アメリカ海軍
2007年4月29日 14:55:開店

ワスプ級強襲揚陸艦

ワスプ級強襲揚陸艦Wasp class amphibious assault ship）は、
アメリカ海軍の強襲揚陸艦。
4万トンを越える大型艦であり、1989年に一番艦ワスプの就役以降、2006年現在までに7隻が就役、8番艦が建造中である。

概要

世界最大の揚陸艦であり、タラワ級強襲揚陸艦の拡大強化型として建造された。
タラワ級と同じく、それまでの貨物揚陸艦(LKA)、ドック型揚陸艦(LPD)、ヘリコプター揚陸艦(LPH)、
揚陸指揮艦(LCC)の各艦の機能を併せ持つものとして設計されている。

そのため、全通甲板を装備しているほか、艦の後部にはウェルドックがある。
艦橋構造物は、艦の右舷中央部にあり、甲板形状は長方形で、
アングルドデッキではない。
舷側エレベータが左舷中央部と、右舷後部に一基ずつ、飛行甲板より突出して取り付けられている。

海兵隊員は約2,000名（一個大隊）を輸送でき、戦時には上陸用にLCAC揚陸艇三隻、AH-1W攻撃ヘリコプター、UH-1、CH-46、CH-53Eなど
各種ヘリコプター最大42機かヘリコプター最大30機およびAV-8B戦闘爆撃機6〜8機に、M1A1戦車5輛をはじめ
M2歩兵戦闘車、AAV7水陸両用強襲車、ハンヴィー高機動多用途車、LAV-25装甲兵員輸送車25輛、
M198自走砲8輛、各種トラック68輛、補給車10輛及び支援車輛数輛の搭載が可能。

なお、地上支援・制海を重視する場合は、ハリアーを最大20機とSH-60対潜ヘリコプター6機を組み合わせて搭載することができる。

ワスプ級強襲揚陸艦

• ワスプ (USS Wasp, LHD-1) - 1989年7月就役
• 　ワスプ級はアメリカ海軍が保有する最新の強襲揚陸艦であり、又世界最大の揚陸艦艇でもある。本級は1980年代初頭に想定されるソ連軍の脅威と必要とされる輌用作戦能力の検証により、輌用作戦艦艇の老朽化と不足が各種の委員会で指摘された結果イオー・ジマ級ＬＰＨの代艦として建造されたものである。
  
  　本艦型は完全装備のアメリカ海兵隊１個戦闘群(大隊規模)を迅速に展開させることを作戦目的として建造された艦である。基本的な性格はこれの前に建造されたタラワ級ＬＨＡと同様の艦であるが、輌用作戦兵力構成にフレキシビリティを増すことを求められて計画されたため、タラワ級に比べて排水量はほぼ同等ながら兵員輸送能力／航空機／上陸用舟艇の搭載能力が増しており、病室のベッド数もタラワに比べて200以上増大している。
  
  　本級は完全装備の海兵隊歩兵１個大隊及びその支援部隊、加えて必要とされる各種揚陸機材を同時に展開させることが可能となっており、また搭載する海兵隊航空部隊による航空支援を与えることが可能な多目的揚陸艦である。艦内に展開可能なものは、１個海兵大隊の兵員並びにＭ１戦車5輛、LAV25輛、M198自走砲8輛、トラック68輛、補給車10輛、及び支援車輛数輛とその乗員である。
  　本級の揚陸能力の根幹を成すのはその搭載する航空機である。搭載するCH-46とCH-53により迅速な部隊展開を可能としていると共に、加えて揚陸艦自身の抗堪性も増している。なお、現在LHD-1に展開している海兵隊混成航空群はAV-8BハリアーIIx10、CH-46中強襲輸送ヘリx12、UH-1N軽攻撃ヘリx5、CH-53重強襲輸送ヘリx4で編成されており、揚陸能力より攻撃力を重視した編成となっているのは本級が紛争地帯に派遣されることが多いためであろう。
  
  　本級はＬＣＡＣ(エアクッション揚陸艇)3隻(もしくはＬＣＭ６型揚陸艇6隻)、ＬＣＰＬ4隻を艦内に収容しており、これによる重貨物及び要員の揚陸を行うことも出来る。これはかつてイオー・ジマ級ＬＰＨで懸念された荒天時にヘリが運用できずに揚陸不可能となる恐れを解消すると共に、１隻の強襲揚陸艦で必要とされる重装備を含めて輸送する事を要求された結果である。なお、本級はホイットビー・アイランド級ＬＳＤと共に最初からＬＣＡＣの運用を考慮して建造された初のアメリカ海軍輌用戦艦艇でもある。
  
  　蛇足ながら、本級は建造計画ではその大きな航空機運用能力から、戦時に制海艦として行動する事も求められていたが、冷戦が崩壊し、洋上防空／対潜支援の必要性が薄れた結果この任務に当たることはまず無いだろう。もしこの任務に付いていればソビエト海軍のキエフ級戦術航空対潜巡洋艦を上回る航空兵力が展開できたことからみて、極めて有用な対潜空母として作戦する事が可能であったと思われる。
  
  　本級の１番艦ワスプは1985年5月に建造が開始され、1987年に進水、1989年7月に就役した。本艦は就役後大西洋艦隊に配属されたが、以降共産主義体制の崩壊による紛争勃発に対応するため地中海へ、アフリカの紛争勃発に対応するためアフリカ沿岸へと世界中の紛争地帯を走り回る状況にある。その間1993年のソマリアPKF時には座礁事故を起こし、軽微な損傷を受けるという事故も起こしている。以降の艦は１〜２年に１隻のペースで就役が続き、97年には5番艦バターンが就役しており、2000年までに7番艦まで就役する予定である。就役後各艦はやはり紛争地帯を走り回る状況にあるようだ(笑)。因みに本級の艦名は第二次大戦時に就役した航空母艦から取られているが、タイコンデロガ級と艦名の取り合いをしたせいか１、２番艦を除くと戦功輝かしい空母の名前が付けられていない。ようやくタイコンデロガ級の整備が終わったので、これから名前が付けられる艦はきっとメジャーな空母の名前が付くだろう(多分近日除籍されたエセックス級諸艦の艦名が付けられるだろう)。
  
  　本級は未だ整備が続いており、最終艦たる９番艦は2003~5年程度に就役するとみられ、以降多年に渡る就役が見込まれている。この事からも当分紛争があれば該当水域に必ずワスプ級の姿があることは確実である。その点から行くと
• 、本級は「世界の警察」アメリカの顔とも言うべき艦なのかもしれない。
• 同型艦

• エセックス (USS Essex, LHD-2) - 1992年10月就役

• キアサージ (USS Kearsarge, LHD-3) - 1993年10月就役

• ボクサー (USS Boxer, LHD-4) - 1995年2月就役

• バターン (USS Bataan, LHD-5) - 1997年9月就役
• 
  

• ボノム・リシャール (USS Bonhomme Richard, LHD-6) - 1998年8月就役

• イオー・ジマ (USS Iwo Jima, LHD-7) - 2001年6月就役

• マキン・アイランド (USS Makin Island, LHD-8) - 2008年就役予定。

関連リンク
LCAC

原子力空母
原子力空母
建造中とか　艦内とかエレベーター

現在の軽空母

強襲揚陸艦ワスプ(LHD-1), 正規空母フォレスタル(CV-59), インヴィンシブル

現在、固定翼機を運用できる正規空母は、アメリカ海軍のキティ・ホークとエンタープライズ、ニミッツ級航空母艦。ロシア海軍のアドミラル・クズネツォフ、フランス海軍のシャルル・ド・ゴール、ブラジルのサン・パウロ（元仏海軍のフォッシュ）のみである。

本体価格

ニミッツ級原子力空母 45億ドル　４５００億円
ワスプ級強襲揚陸艦 14億ドル　　1４００億円
エアクッション揚陸艇（LCAC）2900万ドル　２９億円
こんごう級イージス艦 　　　1244億円

次期揚陸艦
LHA (R)

アメリカ海軍が現在計画中の新型強襲揚陸艦。

タラワ級強襲揚陸艦の更新艦として建造計画中でワスプ級強襲揚陸艦の8番艦「マキン・アイランド」
と同じガスタービンエンジンを動力に採用している。
また、艦橋には新型のステルス性を重視した艦橋も考えられている。

満載排水量5万トン・全長も280ｍとタラワ級・ワスプ級より30ｍ近く大型で正規空母並の規模で
揚陸艦の域を超えており、最大の特徴はこれまでの揚陸艦にあるウェルドックを廃止して航空機の運用を最重視している事である。

搭載機

これまで海兵隊で運用していた短距離離陸・垂直着陸（STOVL機）のハリアー IIの後継機の
F-35B、ティルトローター機のV-22等の大型機の運用を前提としておりCH-53E、MH-60、AH-1W等も搭載を予定している。