6.Infectious Disease of The Oral Mucosa
口腔粘膜の感染性疾患

(text p.115〜p.134)

 ここでは、口腔粘膜に生じる感染性疾患についてまとめます。教科書に準じた形で、手元に講義ノートのある疾患はそれも取り入れてまとめる形で進めていきます。講義ノートの中であまり関係ない内容、教科書であまりにも細かすぎる内容については省いていきます。少しでも量が減ってるほうがやりやすいでしょう。
 ではまず、最初に教科書の本章冒頭で述べられている事について簡単にまとめておきましょう。なんてことはない、病理総論や免疫学などで既に触れられている内容です。それに、各疾患を勉強するほうが試験対策として使えるものになると思うので、ちゃっちゃっとさばいていきましょう。別に読み飛ばしても全く問題はないと思いますが一応形式的に。あと、先掲の和訳索引も、疾患の一言まとめをつけているので、ちょっと簡単に調べたりするのにお使いください。

1.感染症 Infectious Disease
 ウィルス、細菌、真菌、スピロヘータなどの微生物が侵入して宿主体内に定着・増殖したこと(感染Infection)によって、何らかの症状が発現した状態。これらの微生物は、皮膚、気道粘膜、消火器粘膜、泌尿器系粘膜といった「体外」を侵入門戸としていて、宿主の免疫機構によってその侵入・定着・増殖は抑制・防止される。
 口腔粘膜は角化上皮による非特異的防御機構を最前線に張り、リゾチームLysozyme、ラクトフェリンLa ctoferinなどをはじめとした抗菌物質および、sIgA主体の粘膜免疫機構によって外来微生物の侵入を阻害・遮断している。また、常在細菌叢も外来微生物の定着を妨げる因子となっているが、生体の免疫力低下、菌交代現象によってこれらの共生細菌も感染源となる。

2.感染症と炎症 Inflammation
 感染に対して、宿主が起こす反応は炎症反応である(正確には外来の非自己/変性自己抗原への局所防御反応)。特に異物が宿主に抗原性を示す時、これを免疫反応という。
 異物に対してヒト生体は炎症性細胞であるmφ、好中球neutroph il、そして慢性期のリンパ球lymphocyte・形質細胞plasma cellの血管外浸潤によって抵抗を行う(ここでは自然免疫系のNK細胞とかについてはカット)。これらが起こす組織反応が炎症である。
 異物によって、組織傷害、毛細血管拡張および透過性亢進、蛋白成分滲出などが惹起される。この初期状態を急性炎acute inflammationといい、主体となる炎症性細胞は mφ、好中球である。これが持続して慢性化すると、滲出・血管拡張は減退し、その一方でリンパ球、形質細胞浸潤主体となる慢性炎chronic inflammationとなる。さらに、この炎症箇所が吸収されず収束に向かわない時等には、肉芽組織が形成されていく。

 3.炎症に関与する細胞4.炎症の分類については、各疾患で学ぶ方が効率的だと思うので、カットします。では、各疾患について見ていきましょう。講義での内容については、[ ]で囲う事にします。箇条書きでもよかったのですが、あえて文章でいきます。流れで覚えてしまいましょう。(やや無責任ですが・・・・)

・p.117:結核性口内炎 tuberculosis of the oral mucosa: Tuberculous stomatitis
 結核症の初発感染部位は肺である。肺尖・肺門部に初期結核症として現れたのち、管内性・血行性に結核菌が這行して生じた二次結核症の一種が口腔粘膜に生じる結核性口内炎である。また、糖尿病Diabetes Mellitusや免疫不全状態下などでの全身性二次結核症は粟粒結核症となるが、口腔粘膜にこれが現れる事もある。
好発は歯肉で、その他Waldeyer環(舌・咽頭・口蓋の各扁桃によって囲まれる環状の部分)、口蓋、頬粘膜、舌下粘膜など。
 この結節は一般的結核症と同じく、乾酪壊死巣を中心に据え、その周囲を紡錘形〜円柱状の類上皮細胞やLanghans型巨細胞が取り囲み、最外部はリンパ球浸潤像が占める。この乾酪壊死巣や巨細胞内にZiehl-Neel sen染色によって結核菌を認めることが多い。

講義より:[Micobacterium tuberculosis, M. africanum, M. miuntiiといった結核菌群による感染症。ツベルクリン反応で感染の可能性が示唆される。この反応が陰転した場合には、癌などによる免疫力低下が疑われる。
 肉眼的病態は潰瘍性ulcerativeが65%にのぼる。次いで軟化性が21.5%、先述の粟粒結核は7.5%の頻度である。潰瘍性の物では下掘れ状の病巣が穿下性に進行し、その下方に結核結節が形成される。
 これと類似した疾患である非定型好酸菌症でも好酸菌(結核菌やらい病菌 M. lepraeなどのMicobacterium)を壊死巣に認める。また、頚部リンパ節での結核症は瘰癧Scrofulaといい、若年者に多く、免疫低下時に見られ、口腔粘膜病変は伴わない事も在る。]

・p.118:結核性リンパ節炎Tuberculous lymphadenitis
 結核菌の初感染に伴い、肺門部リンパ節に初期病変の一つとして生じる他、二次結核症として頚部リンパ節にも現れる(瘰癧)。本疾患の発見例としては瘰癧が最多であり、側頚部・顎下部に多発し、肺結核症および陳旧性の石灰化結核巣を基礎とする事がしばしばである。その他咽頭粘膜・リンパ節、鼻腔・上気道などの頭頚部結核病変からもリンパ行性・血行性に波及する。最近は高齢者に多い。
 腺塊の形成、周囲との線維性癒着、瘢痕化による治癒を見ることもあるが、瘻孔形成例もある。乾酪型では一般的結核症と同様の組織像で、陳旧化で繊維化・硝子化に至る。非乾酪型は中心は類上皮結節を形成する。この型はサルコイドーシスとの鑑別が重要である。いずれも結核菌の結節内での検出はまれ。

・p.119:梅毒Syphilis Lues
 Treponema pallidumが起因菌のSTD(性感染症)の一種。この後天梅毒と、梅毒感染母体から胎児への垂直感染による先天梅毒とがある。口腔粘膜に直接感染して口腔および所属リンパに初発症状を呈する。
 第一期では初期硬結、下疳chancre、潰瘍形成、顎下・頤下リンパ節の無痛性横痃が発生する。第二期ではSpirochetaの血行性全身伝播がおこり、バラ疹、リンパ節腫脹が起こる。第三期では3年ほど経て臓器梅毒、ゴム腫ranula、慢性増殖性間質炎が起こる。ranulaは口腔では軟口蓋に多く、辺縁の鋭利な潰瘍が生じ、口蓋穿孔をきたすこともある。
 第一期では硬結巣にリンパ球の血管周囲性浸潤が見られ、下疳では線維素付着性潰瘍と白血球高度浸潤が見られる。第二期バラ疹ではリンパ球・形質細胞浸潤と内皮増殖がみられ、第三期ranulaでは中心部が乾酪化し、線維芽細胞、リンパ球、形質細胞・組織球に富み、類上皮細胞は少ない肉芽腫が形成される。結核結節とは、外層の細胞成分の違いで区別できる。

講義より:[高齢者の血清反応(Wassermann反応)が陽性のことがあるのは、梅毒菌に終生反応性があるため。
 バラ疹は梅毒疹が皮膚に現れたもので、梅毒疹は口腔、舌、咽頭にも生じる。第三期の臓器梅毒とは、脳もその対象。
 先天性梅毒はHatchinson 三兆候:Hatchinsonの歯、内耳性難聴、実質性角膜炎をみる。]

・p.120:壊死性潰瘍性歯肉・口内炎Necrotizing ulcerative gingivitis/stomatitis
 壊疽性歯肉炎gangrenous gingivitis、潰瘍性偽膜性歯肉炎ulcerative pseudomembranous gingivitis、ワンサン歯肉炎Vincent's gingivitisと同義(先掲の単語集参照)。病名の通り、壊死と潰瘍形成が主体となる。全身的な免疫力低下時に、口腔内の常在細菌叢からの混合感染によって発生する内因性感染症である。病巣が拡大して歯肉以外に波及したものを、壊死性潰瘍性口内炎という。
 辺縁性歯周炎marginal periodontitisや全身疾患、低栄養状態に続発し、辺縁歯肉、歯間乳頭が高度充血・腫脹を急速におこす。これらの組織は表層壊死、潰瘍化で拡大し、偽膜形成、鋭い疼痛に起因する難清掃性による潰瘍壊疽がおこる。
 表層は壊死、細菌感染をみて、深部では炎症の進行度によって種々比率の炎症性細胞浸潤が生じる。肉芽組織、繊維化などでの周囲との隔壁はみられにくい。

講義より:[全身性免疫力低下は白血病leukemia、悪性リンパ腫malignant lymphoma、無顆粒球症leukopenia等でおこり、病巣が拡大したものはNoma水癌といい、これをVincent's stomatitisワンサン口内炎という。
 また、ANUGはこの急性acuteのものである。]

・p.121, 122:放線菌症Actinomycosis
 緩徐な慢性経過をたどる化膿性・肉芽腫性感染症で、顎顔面〜頚部に留まっているうちは全身状態は良好。
 口腔内常在細菌叢に存在する放線菌による内因性感染症で、Actinomyces israeliiが代表的である。炎症、外傷、抜歯などで齲窩、歯周ポケット等から組織内に侵入、他細菌種との混合感染である。
 下顎下部、顎角部に好発。軽度〜急性圧痛を示す。病巣はびまん性腫脹をきたし、特有板状硬結が起こった後に潰瘍化、互いに癒合して瘻孔形成を見たり、膿汁内に菌塊 Druseを含む。咀嚼筋を侵したり、口腔底、顎下を経て縦隔まで達する事もあるし、頭蓋底を破って髄膜炎を起こす事もある。
 顎放線菌症は下顎大臼歯部に多く、ポケット、歯根嚢胞、抜歯窩などから骨内に波及するが、軽度な症状で終わるケースが多い。骨吸収、骨壊死、反応性骨新生などもおこる。また、腹部、胸部へDruseの嚥下、時には血行で放線菌症は各部に進展する事がある。
 組織像は、菌糸の絡み合ったヘマトキシリン好性(=紫)の馬蹄形菌塊とその表面の棍棒体、好中球付着を見る膿瘍abscessとその周囲の浮腫性肉芽組織、そしてこの肉芽組織内の好中球、泡沫細胞(mφ)、巨細胞、形質細胞・リンパ球浸潤が主体となり、この外方は高度に線維化している。

講義より:[A.israeliiによるイスラエル型、A.naes lundiiによるネスルンド型、などがある。放線菌は真菌に近い性質があり、大きな菌体を示す。混合感染する他菌種はReptospira, Staphylococcus aureus等である。歯周外科治療中の創傷による感染例もある。]

・p.123, 124:カンジダ症Candidiasis, Candidosis
 C. albicansによる真菌症。急/慢性白色病変、または義歯性口内炎のような赤色病変をきたす。種々の免疫機構の不全状態によって、病態が変わる。近年、AIDSでの予後不良指標としての位置づけがなされている。

1) 急性偽膜性カンジダ症Acute pseudomembranous candidiasis
 免疫不全、糖尿、貧血、悪性腫瘍の患者や小児に多い。抗菌薬による常在細菌叢抑制や免疫抑制剤はこのリスクファクターである。鵞口瘡thrushは同義。無痛性である。
組織的所見は周囲に紅斑を示し、払拭可能な白斑・偽膜が形成されることがまず第一(cf:白板症Leukoplakia は拭い去れない)。炎症細胞は好中球主体で、上皮は錯角化、過形成と共に菌糸、芽胞浸潤がみられ、浮腫と相俟って剥離・偽膜を形成する。深層は上皮脚伸張と周囲のリンパ・形質細胞浸潤。

2) 慢性肥厚性カンジダ症Chronic hypertorophic candidiasis, candidial leukoplakia
 稀な疾患で、粗造または結節性に、白板症leukoplakiaと区別しにくい白斑を形成する。1)とは違い、払拭は出来ない。口唇、口角部頬粘膜に好発し、中年期以降の男性に多い。喫煙、咬合時摩擦、義歯装着なども関連しており、上皮異形成をしめすcaseでは悪性化能を疑う。数年単位で持続し、抗真菌薬に抵抗性を示す。
 組織所見は上皮錯角化、過形成、カンジダ菌糸の浸潤がまず第一。棘細胞層の種々炎症細胞浸潤や微小膿瘍、異形成も見られる。T細胞中心の免疫システムの劣化で発症しやすい。

講義より:[Candidaはグラム陽性、卵円形の酵母型(芽胞)を作る。口腔内に生後2日目頃までに定着し、常在(細)菌叢を構成する。喫煙、義歯装着以外にも妊娠で惹起され、口内炎stomatitis を起こす。年齢、口渇(利尿薬など)、そして1)冒頭のような状態下でも発症し、唾液中抗菌物質の量的不足や免疫系細胞の異常、機能低下などが実態となる。
 その他のカンジダ症として、慢性萎縮性カンジダ症(義歯性口内炎:上顎に多く、無症状)、急性萎縮性カンジダ症(紅斑、有痛性)慢性粘膜皮膚カンジダ症(家族性、びまん性、自己免疫、late-onset、免疫不全による)などがある。]

・p.125:アスペルギルス症Aspergillosis
 Aspergillus fumignatusをはじめとした所謂カビによる感染症。健常人は強い抵抗力を示すので感染せず、日和見感染として呼吸器に現れてくるものである。口腔領域では歯周疾患を伴う歯肉に壊死性潰瘍性歯肉炎・口内炎として見られてくる。
 副鼻腔の真菌症の多くがこれで、40〜50歳女性に多い。大部分は寄生型で全身性の基礎疾患とは関連がないが、侵襲性のものでは骨破壊、頬部腫脹・眼球突出を起こし、悪性腫瘍との鑑別が求められる。上顎洞(=副鼻腔のひとつ)粘膜は肥厚し、時に鼻腔との交通口付近に菌球Fu ngus ballを見ることもある。
 Fungus ballは副鼻腔内を占め、層状構造を取り、中空で、鹿角状に分岐成長する。内部は死滅菌体と石灰化像。粘膜は肥厚のほか、肉芽反応・好酸球浸潤をみたり、萎縮・びらん・潰瘍形成をおこすだけでなく、扁平上皮化生、粘液細胞増生などを示す。粘膜内には菌体は一般には認められない。

講義より:[腫瘍との鑑別は、X線診断で判定できる。Candidaはこれとは違い、消化器系に感染する。−その他は教科書と変わりません。省略]

・p.126:ムコール症Mucormycosis
 ムコール目真菌による感染症。感染性は弱く、血液疾患、リンパ腫、DM(Diabetes Mellitus:糖尿病)などによる免疫不全状態で初めて感染する。気道を主な門戸とし、その他経口的消化管感染・創傷感染もおこる。
 白血病に続発しやすく、頭頚部、呼吸器、中枢神経などに急性壊死性炎を起こしてくる上に、血管親和性によって迅速な全身性血行性拡散もみる。炎症は生じにくく予後不良で、致死率はきわめて高い。
 顔面頭頚部では鼻腔、副鼻腔、抜歯窩等から感染し、眼窩・脳に進展する事もある。これは重症糖尿病患者に多い(ケトアシドーシス)。上顎洞では頬びまん性腫脹、リンパ節腫脹が起こり、骨破壊、軟組織不均一肥厚などの面で腫瘍との鑑別を行う。口腔では潰瘍、穿孔がおこる。

・p.127:単純ヘルペスHerpes simplex
 単純ヘルペスウィルスHerpes simplex virus HSVによる。口腔領域ではHSV-1による一次感染で、小児にヘルペス性歯肉口内炎herpetic gingivostomatitisがおこり、境界明瞭な水疱、びらん、潰瘍が形成される。新生児では重篤なヘルペス性脳炎や、アトピー患者では皮膚の疱疹性湿疹Eczema herpeticumをおこす。二次感染では口唇ヘルペスが多く、紅暈に囲まれた小水疱が多発・単発し、びらん、潰瘍となって痂皮化・治癒にいたる。HSV-2は性器に分布する。
 上皮は細胞間橋が破壊され、網状変性、上皮内水疱ができる(棘細胞萎縮acantholysis)。遊離した棘細胞はTzanck細胞という。上皮は多核化し、好酸性封入体を伴う事もある。水疱部では網状変性とともに空胞化した風船細胞balloon cellもみられる。この水疱が破れるとびらん、潰瘍となり、固有層に白血球、リンパ球浸潤を認める非特異的炎症性変化をきたす。
 二次感染は、初感染後三叉神経N.Vの半月神経節に潜伏し、再燃感染で神経這行性に皮膚に達する事でおこる。

・p.128:帯状疱疹Herpes zoster
 HSVと同じくα群のヘルペスウィルス・Varicella-Zoster virusVZVによる感染症。小児では一次感染として水痘(水ぼうそう)を起こし、初感染後の成人ではHSVと同じく神経節に潜伏感染していたVZVが帯状疱疹をきたす。ただ、繰り返し発症する事が少ない点でHSVとは違う。本疾患は免疫抑制状態にあるがん患者の初期合併症などのようにあらわれる。AIDSにおいては約5倍の発症率になり、致命的である。
 発熱、不快感などの軽度全身症状に次いで、片側性に知覚神経走向に沿った疼痛、接触痛が生じる。口腔内では著明な紅暈をもつ小水疱が形成され、やはり片側性である。局所リンパ節腫大も伴い、Herpes simplexの治癒機転とほぼ同じ機転を取る。治癒が始まるまで疼痛は続く。
 HSV類似の組織所見を取れる。上皮内水疱、核内好酸性封入体、風船変性、細網変性などがそれにあたる。小水疱は破れると二次感染をおこす。

講義より:殆ど上記内容と同一なので省略。

・p.129:ヘルパンギーナ・手足口病Herpangina, hand-foot-and-mouth disease
 ピコルナウィルス群・enterovirusによる感染症。coxsackie A-5, 10, 16/enterovirus 71による(cf.小児科)。ヘルパンギーナは夏風邪として幼児が侵され易く、突然の高熱から、咽頭痛、食欲不振、嚥下困難などがおこり、咽頭、口峡が主に侵される。病変部粘膜には紅暈を持つ小水疱が散在し、すぐに破れて浅い潰瘍が形成されるが完全治癒・持続免疫を獲得する事が出来る。
 手足口病は前駆症状もなく口腔では発症し、皮膚病変に先行する。軟・硬口蓋、舌、頬に多く発生し、赤色丘疹から水疱化しやはり破れて浅い潰瘍が形成される。この潰瘍のために疼痛が主訴となる。皮膚では手掌、手背、指の腹側に水疱が出来るが痂皮化せずに治癒に至る。ヘルパンギーナと違って、咽頭、口峡に限局した口腔病変にはならないことも多い。
 病変部はいずれも細胞内・細胞間浮腫によって広範な海綿状態、上皮内水疱、潰瘍化をしめすが、Herpesと違って核内封入体や多核細胞は見られない。

・p.130:サイトメガロウィルス感染症、巨細胞封入体症Cytomegalic inclusion disease
 Herpes virusβ群、Cytomegalovirusによる感染症。初感染の後、どこかに潜伏するという点でこれまでのHerpes virusとよく似ている。その潜伏部位は唾液腺細胞、内皮細胞、mφなどである。成人の40〜80%が保有しているとされ、免疫不全状態下で発症してくることがある。垂直感染による先天性感染では、腎、肺、唾液腺上皮細胞に核内封入体を形成する。
 新生児では肝脾腫、皮膚での髄外造血、発育性歯牙欠損などがおこる。AIDS患者の1/3が感染するとされ、Kaposi肉腫との関連も疑われている。
 口腔粘膜では脈管内皮の腫大と核内封入体がみられ、唾液腺導管上皮にも核内封入体(owl eye)がみられる。owl eye周囲はhalo明庭である。間質はリンパ浸潤が主体で、萎縮性である。

・p.141:伝染性単核症Infectious mononucleosis、腺熱Glandular fever
 Herpes virus γ群、Epstein-Barr virusEBVによる感染症。小児では家族内拡大による感染が多いが無症状性であることが多く、成人の方が発症の可能性は高くなる。疲労感、拒食に次ぎ、発熱、咽頭・扁桃炎、頚部中心のリンパ節腫脹がおこる。口腔では軟・硬口蓋に点状出血を認めることがあり、ANUGもみられる。白血球増多、リンパ球増多、異型リンパ球(伝染性単核症細胞)出現が血液検査所見。

・p.142:ネコひっかき病Cat scratch disease
 軽度発熱、所属リンパ節腫大が2週間から3ヶ月、特に頚部、顎下、腋下、鼠径リンパ節に多くみられ、弾性軟で無痛性である。皮膚では引っかき傷が丘疹化し、後に痂皮化していく。全身症状としては倦怠感、頭痛、肝脾腫など。
 リンパ節は濾胞を成長・増多させ、経時的に中心から壊死をおこし、結核結節に類似した肉芽腫形成に至る。類上皮、リンパ球・形質細胞浸潤が壊死巣周囲にみられ、巨細胞は少ない。

講義より:[診断は、猫や犬に引っかかれたという事実がないと下すことはできない。]

・p.143:AIDS後天性免疫不全症候群Acquired immunodeficiency syndrome
 HIVによる感染症。免疫能低下とこれに起因する二次的感染症が合併した病態をとる。HIVはレトロウィルスで、逆転写によるDNA生成・宿主遺伝子組み換えをきたすことで宿主に害を与える。感染様式は体液感染、経胎盤感染になる。
 CD4+T cell(helper T)が感染対象で、感染直後は感冒様症状を見せ、抗体陽性になる。その後2〜5年の潜伏を経て、AIDS関連症候群AIDS related complex(ARC)=倦怠、発熱、全身リンパ節腫脹、慢性下痢等、をもって発症となる。
 口腔内ではカンジダ症candidiasis(舌、口蓋、頬粘膜)、毛状白板症hairy leukoplakia、重度の歯周炎(ANUG様)、Kaposi肉腫(硬口蓋、歯肉。血管腔様裂隙形成性の紡錘形細胞と出血、ヘモジデリン、炎症性細胞)、帯状疱疹、アフタ性口内炎などが見られてくる。hairy leukoplakiaではEBV感染が疑われ、上皮過角化、acantholysisを組織所見として舌側縁に対称性に生じる。

・p.144:トキソプラズマ症Toxoplasmosis
 Toxoplasma gondiiによる原虫感染症。妊娠初期の妊婦初感染では胎児に経胎盤感染がおこり、流産・死産がおこるか、先天性トキソプラズマ症として中枢神経系が強く侵され、内水頭症、小頭症、脈絡膜炎・叢石灰化などがおこり、精神・運動障害、痙性麻痺などの障害をおこす。
 後天性感染では発病に至る事は少ないが、リンパ節(Piringerリンパ節炎・頚部好発、長期的。)、中枢神経、心筋、骨格筋等を侵す。
 急性感染を受けた臓器ではトキソプラズマはmφなどの中で増殖し、隣接細胞に侵入していくので小壊死巣が発生し、急性・慢性炎症細胞浸潤が起こる。陳旧化で繊維化・石灰化に至る。リンパ濾胞は過形成で、リンパ節傍皮質領域では類上皮細胞が結節性に散在する。洞内には単球様B細胞増殖巣がみられる。

 第6章、感染性疾患@口腔領域については以上です。本筋から外れたものも多々ありますが、取捨選択してください。そこまで深くは聞かれないと思います、たぶん。全部書けばむこうとしても文句ないと思いますが・・・・。

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