沢村功君(仮名)は、小学三年生の時に近所で拾った犬を飼っていました。犬のなまえはジョンといって雑種犬でしたが、利口な犬で沢村君はとてもかわいがっていました。沢村君とジョンは兄弟のように仲が良く、いつも夕方になるとジョンを連れて河原に散歩にいってました。土手をジョンと駆けっこしてたら、沢村君は石につまずいて転んでしまいました。そこにバイクが突っ込んできました。ジョンは危機一髪で沢村君をセーブしました。しかしジョンの手綱が運悪くバイクの前輪に巻き込まれてしまいました。その時ジョンは首がちぎれて死んでしまったそうです。沢村君はとても悲しみました。
それから6年、高校に入った沢村君はジョンのことをすっかり忘れてしまっていました。中学の頃に、両親の離婚や一緒に暮らしている父親との不仲など、いろいろあったからです。そんなグレ気味の沢村君は暴走族の先輩から族への勧誘をされました。その夜、「うっし行くぞおラあァア」とバイクで家を飛び出しました。すると家の前の道路に、首の無い犬が居たのです。びっくりして家にもどった沢村くんはこの日、恐くて集会には行けませんでした。先輩達には、出かけようとしたところ、警察に捕まって行けなくなったと言ってなんとか許してもらえました。しかし次の土曜日に先頭を走るという約束をさせられてしまったのです。沢村君は恥をかかないようにバイクの運転をしていると、あたりの地面
に犬の足跡と血が突如に発生しました。これを見た沢村君は「ジョンだ、ジョンが怒っているんだ。俺を庇ってバイクに引かれたのに、おれがバイクに乗ろうとしてるから…」「だけどジョンはバイクのせいで死んだんじゃないのに、あれはたまたま鎖がタイヤにからまっただけで、それで…。そうだッ!! バイクは何にも悪くねェんだよ!! ジョンがどんなに怒ったってカンケイねェ!! ゼッタイ
バイクに乗ってやる!!!」と、正論をぶちあげて、土曜日の集会に臨む決心をしたのでした。
土曜の夜、「もォー最高ォッすよッ!! センパイ気持いいッスッ!!」と、沢村君は夜の国道を狂走していました。「ジョンの幽霊なんかなんでもねェーぞ、バイクのよさに比べりゃーよォ」と吠えたそのとき、首無しジョンが沢村君の運転するバイクに併走してきたのです(時速80km
オーバーで)。ジョンは沢村君に幅寄せし、ジャンプして襲い掛かってきました。沢村君は急ブレーキをかけて転倒してしまいました。
そこにセンパイが助けにきてくれました、沢村君は「助けて!! 首のない犬がおれを…ッ」とわめき散らしました。センパイは「沢村ァッ、おまえビビッてんのかァ、いいかげんなこと言いやがってゴマかすんじゃねぇぞ」と激怒して行ってしまいました。
転倒のダメージとセンパイの逆鱗にふれた沢村君は落ち込んで、途方にくれてしまいました。するとセンパイ一同が走っていった道路の先から凄まじい激突音がしました。沢村君が音のした方へ行ってみると、センパイ達が立ち尽くしていました。なんとそこには、胴体と首が切断されたセンパイの、かわりはてた姿があったのです。道路には血塗られたワイヤーが張られてしました。そのブービートラップは、沢村君の入っていたグループと対抗しているグループが、あらかじめ沢村君たちが走ってくるのを見計らって道路に張っておいたそうです。もしも沢村君が先頭だったら…。いつのまにか消えてしまったジョンの幽霊は、沢村君がバイクに乗るのを怒ったわけではなく、危険を知らせようとしていたようです。沢村君はその後、バイクのセンパイたちとはつきあっていないそうです。だいぶ痛い目にはあったようですが……。
動物は人間より危険を知る能力が高いと言われています。皆さんのペットはどうでしょうか…?
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