エルトン・ジョン 来日公演 2001年

エルトン・ジョンの6年ぶり単独公演が実現いたしました。バンドを従えての通常の公演は74年以来27年ぶりということになります。私が観たのは、11月13日、15日の東京公演両日でした。ここでは、15日を中心に振り帰ってみたいと思います。


♪公演日程

11/12(月) 大阪 大阪城ホール 6:30PM
11/13(火) 東京 日本武道館 7:00PM
11/15(木) 東京 日本武道館 7:00PM


♪セットリスト

1. Funeral For A Friend/Love Lies Bleeding
2. Someone Saved My Life Tonight
3. Bennie And The Jets
4. Philadelphia Freedom
5. Ballad Of The Boy With Red Shoes
6. The Wasteland
7. Rocket Man
8. Daniel
9. I Guess That's Why They Call It The Blues
10 .This Train Don't Stop There Anymore
11. Meal Ticket *
12. I Want Love
13. Birds
14. Country Comfort *
15. Take Me To The Pilot
16. Mona Lisas And Mad Hatters
17. Holiday Inn *
18. Tiny Dancer
19. Levon *
20. American Triangle *
21. Original Sin
22 .I'm Still Standing
23. The Bitch Is Back
24. Saturday Night's Alright For Fighting
−アンコール1−
25. Your Song
26. Crocodile Rock    
−アンコール2−
27. Don't Let The Sun Go Down On Me *
28. Candle In The Wind *
*印は大阪では演奏されず。
葬送〜血まみれの恋はおしまい (「黄昏のレンガ路」 73年)
僕を救ったプリマドンナ (「キャプテン・ファンタスティック」 75年)
ベニーとジェッツ(ヤツらの演奏は最高) (「黄昏のレンガ路」 73年)
フィラデルフィア・フリーダム (シングル 75年)
赤い靴の少年のバラード (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
ウェイストランド (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
ロケット・マン(「ホンキー・シャトウ」 72年)
ダニエル ( 「ピアニストを撃つな」 73年)
ブルースはお好き? (「トゥ・ロー・フォー・ゼロ」 83年)
ディス・トレイン (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
ミール・チケット (「キャプテン・ファンタスティック」 75年)
アイ・ウォント・ラヴ (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
バーズ (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
故郷は心の慰め (「エルトン・ジョン3」 70年)
パイロットにつれていって (「エルトン・ジョン」 70年)
モナリザ・アンド・マッド・ハッターズ (「ホンキー・シャトウ」 72年)
ホリデイ・インのやすらぎ (「マッドマン」 71年)
可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ) (「マッドマン」 71年)
リヴォーンの生涯 (「マッドマン」 71年)
アメリカン・トライアングル (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
オリジナル・シン (「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」 2001年)
アイム・スティル・スタンディング (「トゥ・ロー・フォー・ゼロ」 83年)
あばずれさんのお帰り (「カリブ」 74年)
土曜の夜は僕の生きがい (「黄昏のレンガ路」 73年)
−アンコール1−
僕の歌は君の歌 (「エルトン・ジョン」 70年)
クロコダイル・ロック (「ピアニストを撃つな」 73年)    
−アンコール2−
僕の瞳に小さな太陽 (「カリブ」 74年)
風の中の火のように(孤独な歌手、ノーマ・ジーン 73年)

新作「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」の曲が一番多いが、70年〜71年の曲の多さに驚きます。また、84年以降と90年代の曲は1曲もありませんでした。


♪メンバー紹介

ガイ・バビロン
ガイ・バビロン(キーボード)
89年「スリーピング・ウィズ・ザ・パスト」から参加
ボブ・バーチ
ボブ・バーチ(ベース、ボーカル)
92年「ザ・ワン」のツアーから参加
ジョン・マホン
ジョン・マホン(パーカッション、ボーカル)
97年ぐらいからの参加。
コーラスでは高音を受け持つ。
ナイジェル・オルソン
ナイジェル・オルソン(ドラム、ボーカル)
エルトン・ジョン・バンドのオリジナル・ドラマー。
70年から参加。ワイルドなドラミングと達者なボーカルが魅力的。
ソロでもヒット曲を持ち、ファン・クラブまである。
去年、16年ぶりにドラマーとしてエルトン・ジョン・バンドにカムバック。
デイヴィー・ジョンストン
デイヴィー・ジョンストン(ギター、マンドリン、ボーカル)
音楽監督も務める。
71年「ホンキー・シャトウ」から本格的に参加。
実際には「マッド・マン」からの参加。
以後、ほんの数年間、エルトンから離れるが、いつもエルトンの側で弾いていた。
この人もボーカルが達者。

アルバム「ワン・ナイト・オンリー」で聴かれる昨年のコンサートのように、数名のコーラスが加わるかと思っていましたが、この5人のみでした。ガイ・バビロン以外は全員コーラスができるので、この人数で正解だった思います。特に、パーカッションのジョン・マホンが高音部をこなしていたのは、ちょっとした驚きでした。

♪衣装

大阪では水色で白い水玉模様のジャケット、サングラスも同色。13日はスパンコール付きの黒、黒いサングラスで、エルトンの表情がわかりづらく少し残念。15日は、大阪より淡い青で、やはりスパンコールでした。サングラスも同色でしたが、時々はずして素顔を見せてくれたりしました。


♪コンサート

会場について、まず目を惹いたのは、アルバム「ヒア・アンド・ゼア」でも見られるバスドラに「NIGEL OLSSON」と刻印された、大きなドラム・セット(今回のはツイン・バスドラ)。エルトンは、いつものようにYAMAHAのピアノでした。

13日は6分遅れ、15日は2分遅れで、ショーはスタートしました。
客電が消えると、聴きなれた風の音のSE。ステージにはガイ・バビロン一人登場。「葬送」でスタートです。曲の途中でエルトンと他のメンバーがものすごい歓声の中登場。15日にはエルトンは、ピアノをミスし、しばらく弾くのを止めてしまい、ガイ・バビロンを見て苦笑いをしていました。

「血まみれの恋はおしまい」が終わると、各方向の観客に丁寧におじきするエルトン。もちろん、スタンディング・オベーションで迎えられます。ライオン・キングから「愛を感じて」がヒットした直後の95年、「キャンドル・イン・ザ・ウィンド97」がヒットした後の98年の来日公演と違い、当日集まったのは、にわかエルトン・ファンではなく、本当に彼の音楽を愛する人たちだとわかって、胸がいっぱいになりました。

「今夜は新しい古い曲と新しい曲を織り交ぜて演ります。次の曲はこんな感じです。」と言って始まったのは、名盤「キャプテン・ファンタスティック」からのヒット曲、「僕を救ったプリマドンナ」。日本初登場です。数年前からキーを下げて歌っていたのですが、今のエルトンにしっくりきています。「Bye-bye」の後の「ウー・ウー・ウー〜」のコーラスは、ナイジェルのソロ・ボイス、ああ感動。バンドのコーラス・ワーク、デイヴィーのギター・ソロも冴えています。

「ベニーとジェッツ」は、最初の一音から大歓声。早速、すごいピアノ・ソロを披露しました。コール&レスポンスは、まあまあというところでした。続いても、ライヴではおなじみの「フィラデルフィア・フリーダム」。かなりこなれた演奏でした。

「続いてはニュー・アルバム「ソングス・フロム・ザ・ウェスト・コースト」からの曲です。」と言って紹介されたのは、「赤い靴の少年のバラード」。デイヴィーは、マンドリンを披露します。ストリングスはガイ・バビロンのシンセで代用。

同じく新作からブルース調のウェイストランド」に続いて、「ロケット・マン」。以前、スライドを弾いていたデイヴィーは、今回はアコースティック・ギターをプレイ。ガイ・バビロンがSEを担当していました。特筆すべきは、エルトンのボーカルで、後半のインピロヴィゼーション気味に「ロケット・マン♪」と歌う個所では、久しく使っていなかったファルセットまで聴かせてくれました。

ピアノの音色を変え、聴きなれないフレーズから、おなじみのイントロへというアレンジの「ダニエル」「ブルースはお好き」は以前よりも力のこもった歌い方で、大喝采でした。

12月にシングル・カットされる新作からの「ディス・トレイン」。新しい曲はどれも、今のエルトンとバンドに馴染んでいて、かなりまとまりのある演奏でした。

続いては、これも日本初登場「ミール・チケット」。デイヴィーがレコードさながらのソロを聴かせてくれました。引き締まったいい演奏でした。

「アイ・ウォント・ラヴ」では、デイヴィーはダブル・ネックのギターを持ち、スライドを織り交ぜたテクニックを披露。天井から下げられていた両サイドのスクリーンには、この曲のプロモ・クリップが映し出せれていました。

続いても、新作からの曲で「バーズ」。ガイ・バビロンによるサンプリングされたリズムが中心になっていました。

「「タンブルウィード・コネクション」からカントリー・テイストの曲」と言って紹介されたのが、なんと「故郷は心の慰め」。71年初来日でも演奏されていて、ナイジェルの復帰を祝うような選曲。涙が出そうになりました。また、15日には、「Old-Fashioned Feeling」の前に「Good」という言葉を付けて歌いました。ナイジェルやデイヴィーとまた一緒に演奏できる喜びや、いにしえの日本公演での想い出が、エルトンにそう歌わせたのでしょう。

おなじみの「パイロットにつれていって」はピアノ・ソロに続き、ここでは、オリジナルのイントロから始まりました。エンディングではリズムに合わせゴリラのように自分の胸を叩いたエルトン。大盛り上がりでした。

ここで、メンバー紹介。やっぱり、ナイジェルやデイヴィーへの拍手がとても大きかったです。

ニューヨークで起きたテロ事件に言及した後に始まったのが、「モナリザ・アンド・マッド・ハッターズ」。以前のようにパート2とのメドレーではなく、パート1のみの演奏です。ここでもデイヴィーはマンドリンをプレイ。ハーモニーの下のパートは、ジョン・マホンが担当していました。15日は特に素晴らしい歌唱でした。

「「マッドマン・アクロス・ザ・ウォーター」から3曲」と言って始まったのは、「ホリデイ・インのやすらぎ」。デイヴィーはそのまま、マンドリンを弾きます。思えば、これがデイヴィーが始めてエルトンのレコーディングに参加した曲でした。これも71年の初来日公演でも披露。

続いては、日本初演奏の「可愛いダンサー」。この曲が聴けるなんて、ラッキー!!この曲でもデイヴィーは、ダブル・ネックのギターを持ち、スライドを披露してくれました。これが、とても効果的で、ガイ・バビロンによるストリングス・パートの音量をも少し絞ってくれたなら、と思ったほどでした。

そして、95年にも披露された「リヴォーンの生涯」。後半、テンポを上げて、もの凄いピアノ・ソロを聴かせてくれました。もちろん、大喝采でした。ここで気付いたのですが、「エルトン・ジョン3」や「マッドマン」からの選曲が多いのは、新作のムードが、これら2作と似通ってるからだったのではないでしょうか。実際、新作中心のコンサートにこれらの曲が混ざっていても、違和感があるどころか、すごくしっくりきていました。

次は、新作の中でも特に出来のよかった2曲。「アメリカン・トライアングル」「オリジナル・シン」。前者は去年から歌っていただけあって、バンドの演奏がよく馴染んでいました。アルバムではルーファス・ウェインライトがコーラスを担当。「バニーによる美しい詩」と紹介された後者は、一番のサビまでは、デイヴィーはスタンドに固定された、アコースティック・ギターをプレイし、その間エルトンは、まったくピアノに触れず、客席の方を向いて、訴えかけるように歌っていました。強く胸を打ちました。間違えなく、コンサートのハイライトはこの曲だったと思います。

あまりの完成度、曲のシリアスさのせいで、会場はいささか静まりかえりました。
「ムードを変えよう」と言って始めたのが、次の3曲。
まずは、「アイム・スティル・スタンディング」。少しづつですが、観客は立ち始めました。この辺の緩急のつけ方がとても上手く、エルトンが他の追従を許さない存在なのはこんなところにも要因があるだと強く思いました。このことはアルバム作りにもいかされていると思います。「Yeah Yeah Yeah」は合唱になりました。

ピアノの上に乗っかって、観客を煽るようにして始まったのが、「あばずれさんのお帰り」。Aメロの「オ、オ、オ♪」も合唱になりました。この曲からは、完全に総立ちでした。

間髪入れずに、「土曜の夜は僕の生きがい」。イヤでも盛り上がってしまいますね。ジョン・マホンは、タンバリンを持ってステージ真ん中まで出てきて、ナイジェルのドラムの方に向かっていったりしました。エルトンも熱の入ったプレイを聴かせてくれました。

大盛り上がりの中、本編は終了しました。

アンコールの1回目、一人で登場したエルトン。15日にはCDやジャケット(服)にサインをもらうファンもいました。13日には「ファビラス・オーディエンス」、15日には「グレイト・オーディエンス」と言ってくれました。95年からエルトンを観ているのですが、やっと日本の観客の反応に満足していただけたのではないでしょうか?

1曲目は「僕の歌は君の歌」でした。とても心のこもった歌唱だったと思います。一番の「This One's For You」では、拍手が起こりました。
2曲目は「クロコダイル・ロック」で、日本では74年以来のプレイになります。コーラス部分は、ブレイクして観客に歌わせました。男性ファンはファルセットで歌うか、表で歌うか迷ったらしく、また表で歌っても声が通らないので(笑)、女性ファンの声ばかりよく響いていました。エルトンがファルセットを聴かせることはありませんでした。

2度目のアンコールでは、バンドを従えて「僕の瞳に小さな太陽」。そしてソロで「風の中の火のように」でした。
15日にはジャージ姿で登場しました。いつもそうなのですが、最終日はジャージで登場するようです。
また、「僕の歌は君の歌」と「風の中の火のように」では、いつものように、予め録音されていたシンセの音が使われていました。13日の「風の中の火のように」は、「ライヴ・イン・オーストリア」で聴かれるように、「Never Knowing〜」からは一音上げての熱唱でした。

鳴り止まぬ拍手の中、手を振ってエルトンはステージを去りました。
2時間50分という長丁場、会場にいた全ファンは大満足した幸せそうな表情をしていました。
生きていれば、いいこともあるものですね。

♪エピソード

エルトンは、11日に東京へ到着。渋谷のタワー・レコードで、なんと60万円分のお買い物。なんでも、ボーナス・トラック入りの日本盤がお気に入りのようで、同じ物を4枚づつ購入したそうです。自宅用、車用、別荘用と、同じ作品を最低4枚は買うそうです。

大阪公演は、当日21:30の新幹線で、東京へ移動しなければならなかったため、18:30からのスタート、曲数も少なくなってしまったようです。

13日は風邪を弾いていたようで、途中鼻を噛むシーンがありました。元々が鼻に少しかかった声なので、さほど気になりませんでしたが、15日の声を聴く限り、やっぱり風邪の影響はあったようです。

13日の模様は、14日にフジテレビ「めざましテレビ」で紹介されました。また、エルトンの短いコメントも放送されました。

13日の公演はシューティングされていて、11月30日(金)にNHK-BSで放送されました。


♪感想

2000年のライブ・アルバム「ワン・ナイト・オンリー」を聴いた私は、声のパワーが落ちてしまったエルトンに、いささかがっかりしました。しかし、今回の公演では、そこで聴かれるエルトンは別人かと思われるぐらい、パワフルでエネルギッシュないつもエルトンがいました。新作の出来が素晴らしいこともあったかと思いますが、まさかバンドを従えて、3時間近いフル・サイズのコンサートが見られるとは夢にも思っていませんでした。それも、ナイジェルまで日本に来てくれるなんて・・・。若いアーティスト達にも見習って欲しいと思った、まさにプロフェッショナルなお手本と感じさせた最高のコンサートでした。しばらくはこの幸せに浸っていたいと思います。

また、私がファンになった80年代は、エルトンの日本での人気の低さは寂しい限りでした。本人の力でここまで人気を回復させたことに感服するとともに、これだけ熱いファンのみなさんと時間を共有できたことを、心から嬉しく思います。


♪テレビ放送された曲(90分ヴァージョン)

1. Funeral For A Friend/Love Lies Bleeding
2. Philadelphia Freedom
3. Rocket Man
4. Daniel
5. This Train Don't Stop There Anymore
6. I Want Love
7. Take Me To The Pilot
8. Mona Lisas And Mad Hatters
9. Original Sin
10. The Bitch Is Back
11. Saturday Night's Alright For Fighting
12. Your Song
13. Crocodile Rock    
14. Don't Let The Sun Go Down On Me
15. Candle In The Wind


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