11月3日 
ナンバーガール
@久留米大学医学部あのく祭


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表紙


朝起きてみると、あいにくの雨だった(って前の時と同じ書き出しですが・・)。俺は大宰府に住む友人Renalikaのアパートで目を覚ました。この日はナンバーガール、九州最後のライブである。天気が良ければ野外ステージで行われるはずだが、この雨では屋内に決定だろう。何故か休みの日には早起きになる性質なので、時計はまだ7時半前だ。できればライブに備えて、充分な睡眠をとっておきたかったのだが。マイペースなRenalikaは、案
の定熟睡中。暇なのでRenalikaの愛読書「あずみ」を読んだりして時間を潰す。あずみ、マジでおもろい。
そして色々と準備を済ませ11時過ぎには出発。会場である久留米大学医学部までの道は、Renalikaがだいたい分かると言うので任せる。車中ではもちろんナンバーガールが流れている。CDと一緒に「ばりやばい!」なんて叫んでみたりして。もう今からテンション上げてます。
少し早めに着いたらレコード屋でものぞけばいいし、学園祭というもの自体初めてなもんでライブが始まるまで色々見て廻ろう、などと考えていた。まあ、それは甘かったのだが・・・。

ナンバーガールを初めて見たのは、1996年の夏頃にビブレホールで行われたイベントだった。色んなバンドが出ている中、トリに現れた彼らの演奏にはショックを受けた。どこかアマチュア然とした他のバンドとは一線を画した圧倒的な演奏力。しかも女の子の弾くギターが相当かっこいい!向井さんのボーカルは現在の様なスタイル
ではなかったが、少しだけ聴き取れた歌詞からは、その独特の世界感が強く伝わってきた。ライブ終了後に速攻で物販に行き、「omoide in my head」という3曲入りのカセットを買った。そして、家に帰って繰り返し聴いた。その後もライブには時々足を運ぶようになった。ただ、以前に発売されていた「Atari shock」というカセットは手に入れることができなくて「omoide in my head」ばかり聴いていた。いつの間にかナンバーガールは自分にとって最重要バンドのひとつになっていた。

12時半頃に久留米に着いたが、大学の場所がなかなか分からず予定より少し遅くなってしまった。駐車場に車を停め大学へ向かうと、何かすごい行列が。よくよく確認すると、ナンバーガールライブの行列らしい。近くに貼ってあるポスターには11時から整理券配布との文字が。ええっ!聞いてないよー!こりゃレコード屋どころ
じゃないな、と思い列の最後尾に続く。並んでいると次々と情報が入って来る。整理券はすでに残ってなく、この列は物販のもので、しかも目玉商品であるはずのライブCDは間に合わず、Tシャツと去年出ていたライブカセットくらいしか売っていないとの事。Renalikaと2人で「甘ちゃんやな。」「俺ら、甘ちゃんや。」としきりに反省しあう。甘ちゃんコンビは今に始まったことではないので仕方ないとして、ライブはなんとかならんものか。しばらくすると、この列とは別に整理券を持たない人の列があるという事が分かり、かすかな希望を胸にそっちへ並ぶことにした。約1300人程の整理券所持者が会場に入り終えた後、余裕があるようなら入れるかもしれないということだった。ねばれるだけねばろうと思い小雨のぱらつく寒空の下、並び続けた。とりあえずTシャツだけでも買いたかったので、途中俺が列を離れ物販へ。すぐに買えたのでまた並び直し、途中トイレに行ったりもしながら待ち続ける。雨も降ったり止んだりでかなり寒い。その間久留米大学の学生達が「温かいおでんはいかがですかー」「豚汁はいかがですかー」などと寄ってくる。かーっ、いい商売しやがるぜ、学生さん!2時間以上は待っただろうか。開場時間も過ぎてようやく列が動き出す。といってもそれは整理券がある者の話。こっちは依然として入れるかどうかは分からないまま、それでも並び続ける。待っているとTシャツに短パンという格好の若者を見かけた。この寒いのになんちゅう気合いの入った奴や、と思いよく見てみると、Tシャツには「PENPALS」とプリントが。お〜い、ちょっと違うやろーとは思うがその気合いは買った。そしてとうとう整理券の列はなくなり、こっちの列も動き出した。やったー!どうやら入れるようだ。どこからともなく喜びの声があがる。
中に入ると、そこは普通の体育館といった感じだ。荷物を置きRenalikaと2人、すぐさまTシャツに肩掛けタオルという姿に。人込みを縫って進むと結構前の方まで行くことができた。もうステージ上には今日の対バンであるラムタグが登場している。ラムタグを見るのは、もう3,4年ぶりくらいになる。ナンバーガールのメンバーも
皆このバンドのファンであるらしいので、ナンバーガールファンには結構知られているのではないだろうか。演奏の方はトリオとは思えないほどゴツく分厚いサウンドだ。せつなさを感じさせるメロディーとハスキーで熱いボーカル。かっこいい!お客の反応も上々。そしてなんと、ナンバーガールの「DRUNKEN HEARTED」の素晴らしい
カバーも披露してくれた。ラムタグもいい感じで終了し、いよいよナンバーガールである。しかしセッティング
に手間取っているのか、なかなか始まらない。やはり学生主導のスタッフの為、スムーズに行かない部分があるのかもしれない。でも今まで外で散々待たされたんだから、もう少しくらい平気やろ。とは思ったが本当に始まらない。場内のイライラもピークに近づいてきた。フラストレーション・イン・マイ・ブラッドって感じやなあ。

(多分)21歳の時に初めてナンバーガールを見たが、もう年末には28歳を迎えてしまう。考えてみると20代の半分以上はナンバーガールを追っかけてきたことになる。いままでできる限りライブは見てきたつもりだ。今回の学園祭ツアーは11月末まで続くのだが、自分にとってはこれが見ることのできる最後のライブだ。しかし全
然実感が湧かない。ここ数年恒例となっていた年末の福岡でのライブ。俺も毎年最後はナンバーガールのライブで締めると決めていただけに、今年は年末の楽しみが無くなってしまう。今の所、予定は未定である。淋しいものである。(注意 この先、筆者興奮状態にあった為、曲目、曲順の記憶違い、あるいは思い込み等があるかもしれませんが御了承ください。)

ようやく準備も済んだようで、久留米大学のスタッフから注意事項が放送される。「危険なのでライブ中絶対に周りの人を押さないで下さい。それではナンバーガールライブをお楽しみください。」やった!やっと始まる!メンバーが登場すると、皆さっきの注意事項なんか知るかといった感じで押しまくって前へ進む。これだけ待たされたんだから当然や!向井さんがギターを手にし、おなじみのひと言「博多区から参りましたナンバーガールです。」会場からは大歓声が。そして鳴らされたイントロにマジで驚いた。いきなり「omoide in my head」とは!
初期の名曲にしてナンバーガールを代表するこの曲は、ライブでは必ず演奏される1曲だ。いきなりクライマックスとはこの事である。客はもちろん大興奮。2曲目はなんとメジャーデビューシングル「透明少女」!最近のライブではあまり演奏されることのなかった1曲で、これは久しぶりだ。始まる前にRenalikaと「透明少女聴きた
い」と話していたので本当に嬉しかった。途中何故か顔が歪み泣きそうになった。この即死級ナンバー2曲を、惜しげもなく頭に持ってきたところに、メンバーの今日のライブに対する本気を感じた。体育館という構造上からか、決してクリアーな音だとは思えなかった。でも逆にそれぞれの音が混ざり合って渦を巻くような、すさまじいサウンドが展開されているようにも感じられた。だいたいこの際、音の良し悪しなんてそんなに気にはならない。
この先あまり覚えてません。今やライブの定番「zegen vs undercover」は、皆「ばりやばい!」と叫びたくてウ
ズウズしている。「TRAMPOLINE GIRL」、「TATOOあり」などアルバム「SAPPUKEI」収録曲ではやはり盛り上がる。あの近田春夫も大絶賛の「URBAN GUITAR SAYONARA」これも久しぶりだ。新作からはノリが最高なナンバーガール流ファンク「NUM AMIDABUTZ」や「CIBICCOさん」、「性的少女」、「MANGASICK」、クールな「delayed
brain」など。そして信じられないイントロが流れ出す!「センチメンタル過剰」というごく初期の曲だった。前述したカセット「omoide in my head」の1曲目を飾り、インディーズ時代のアルバム「SCHOOL GIRL BYE BYE」にも収録された疾走感おびただしい名曲。この曲こそナンバーガールを好きになったきっかけの1曲で、そういう意味で個人的には「omoide in my head」以上に思い入れの強い曲だ。メジャーデビュー後のライブでは、まるで封印してしまったかのようにいっさい演奏するのを見たことがなかった(と思う)ので、もうたまらんかった!嬉しすぎて涙も出ない。いつもなら3,4曲ほどやるとMCが入るのだが、今回は全くせず演奏のみが続く。中
盤でようやく向井さんが話し出す。地元の人間にだけ分かるらしいラーメントークだった。ある雑誌でラーメンしか食べないと公言していたのは本当なのかもしれない。すごい人や・・・ってゆうかただの偏食家か?その後も演奏は続き、「YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING」でも跳びまくり。「DISTRACTION BABY」は
最近よく演奏されていたダブバージョンではなくオリジナルバージョンで、というところに今日のこだわりを感じた。「はいから狂い」はシングル「透明少女」のカップリングで、CDではギターの絡みがとても美しいイントロを聴かせるが、今日はもっと混沌とした印象だ。「俺の眼鏡が焼けていく」と歌われるこの曲は同じ眼鏡野郎の俺の胸にグサグサ突き刺さる。ライブも終盤に近づいてきた。向井さんが「日常に帰ってください。日常を生きていってください。」と言い残し演奏された「日常に生きる少女」。この曲の時 俺はイントロのカウント4で跳ぶことに決めている。このライブが終わると日常に帰ってしまうんだな、と思いこの日最高の高さでジャンプした。そしてこの日、アヒト・イナザワの姿を確認してなかったことに気づく。今日は前方の平均身長が高い為なかな
か見ることができなかった。あわてて確かめる。かつて蝶人(ちょうじん)とも言われたその怒涛のドラムはやはりしびれる!この4人を見ることができるのも今日で最後だ。目に焼き付けろ、という気持ちで見た。モッシュの中、人に足を踏まれ押しつぶされそうになりながらもそこに最高に幸せを感じることができる。そんなこともこ
れで最後になるのだろうか。そして演奏も終わり、メンバーの姿もステージ上から消える。すぐさまアンコールを要求する手拍子が起こり、それに合わせて向井コールが起こり、田渕コール、中尾コール、アヒトコールと続いていく。しまいには「ナンバガ」コールが。するとメンバーが再び登場し会場も沸き返る。これでおそらく最後になるであろう1曲は何をやるのか。「IGGY POP FANCLUB」かなあ、などと考えていた。「我々が最初に録音した曲・・・」えっ!?「TRANPOLINE GIRLという曲をやります。」マジで?デジマ、マジデジマ!
最初のカセット「Atari Shock」とかなり前に出ていた福岡のバンドを集めたコンピレーションCDで聴くことのできるナンバーガールの原点ともいえる記念すべき1曲だ。(アルバム「SAPPUKEI」収録曲とは同名異曲、というか今確認したら「TRANPOLINE」のところが「N」と「M」で違ってました。)
まさかこの曲までやってくれるとは!何てことや!これを演奏するという事が本当に最後を象徴しているようにも思えた。聴いたことのないお客も少なくないであろう。それではそんなに盛り上がるとも思えない。
しかし安易なファンサービスに走ることなく、自分達の原点を見せつけるかのようなパフォーマンスに心底感動させられた。ベストの選曲、懐かしい曲の数々、それを当時以上の演奏で聴かせてくれた。俺は最高の満足感をもらった。そして全て終わった。お客の間から「ありがとう。」の声が聞こえる。口にこそ出さないが俺も同じ気持ちだった。明かりがつき皆それぞれに動き出す。俺もRenalikaを探し出して駆け寄る。汗だくになったので着替えながら話す。「もう、マジで最高やった!」「まさかセンチメンタル過剰やるとは思わんかった。」「TRANPOLINE GIRLまでやるとはね。」お互いまだ全然興奮が醒めず、座り込んだまま話し続ける。一晩中でも語り合えそうな気分だ。Renalikaは先日の警固公園のライブを後ろの方で見ていたらしく「不完全燃焼やった。」と言っていたので、この日のライブにかける意気込みは相当なものだった。彼も充分満足できたであろうことは、その汗が物語っていた。名残惜しかったが、最後に片付けの始まったステージを眺めて外へ出た。もうすっかり暗くなった空に雨はまだ降り続いていた。昼間よりも冷え込みが厳しくなったようだが体の方は熱気に包まれたままで、喉もカラカラだ。寝不足で臨んだライブはきつかったが忘れられないものとなった。今回のライブを主催した久留米大学の学生さん達には本当に感謝したい。おかげで素晴らしいライブを見ることができた。帰りの車ではライブの余韻に浸りながらも、ばかばかしい話などが続いた。Renalikaは次の日仕事にも関わらずわざわざ家まで送ってくれた。いつもサンキュー。今後のことは分からないが向井さんはもちろん、各メンバーのその後もできる限り追
いかけたいと思っている。とりあえずは通信販売となってしまったライブCDを手に入れることが先決だ。
今月下旬には曽我部恵一のライブもあることだし楽しみは尽きない。でも年末はどうしよう。まだ考え中である。